※この作品はR-18です。

欲望のネギ   作:おっさん

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第49話:情報統制と、機械仕掛けの純真なる狂気

 麻帆良学園には、古くから語り継がれる怪談や都市伝説が無数に存在する。その一つに「旧校舎の幽霊」というものがあった。

 つい先日、原作のシナリオ通りなのか、我が三年A組の周囲でちょっとした幽霊騒動が起きた。結果として、出席番号一番の相坂さよという幽霊が、報道部であり僕の忠実な『白濁の監視眼と淫悦の操り人形(オクルス・アルブム・エト・ゴーレム・ヴォルプタス)』の使い手である朝倉和美の親友として憑きまとうようになったのだ。

 和美の背後にふわりと浮かぶ、透き通った身体の少女。

 僕の率直な感想を言えば――「ぶっちゃけ、幽霊には全く性欲が湧かない」であった。

 

(どんなに美少女の姿をしていようが、質量を持たない霊体では意味がない。僕の無尽蔵の精液を注ぎ込むための温かい子宮も、激しいピストンを受け止める肉の弾力も、絶頂に狂って痙攣する脳髄も存在しないのだ。肉便器としての利用価値はゼロ。交尾が成立しない女など、僕の欲望の対象外だ)

 僕は心の中で冷酷に切り捨てた。だが、問題はそこではない。

 相坂さよは和美に懐き、常に行動を共にしている。和美は僕の極小監視ゴーレムを生成し操作するために、日常的に自らの処女の秘部を慰め、僕の白濁を欲して発情し続ける痴女へと作り変えられている。もし、親友となった幽霊が和美の異常な生態に気づき、その洗脳を解こうと干渉してくれば非常に厄介だ。

 

(和美の調教の邪魔にならないよう、近いうちに相坂さよには『僕と和美の性的な繋がりから目を逸らす』という、強力な認識阻害の催眠魔法だけはかけておくとしよう。幽霊といえど、精神体である以上は魔法の干渉を免れることはできないのだからな)

 そんなふうに、幽霊対策を後回しにして今後の凌辱計画を練っていた僕の元へ、使い魔のオコジョ――カモミール・アルベールが血相を変えて飛び込んできた。

 

「あ、兄貴! 大変だぜ! 緊急事態だ!!」

「どうした、カモ。そんなに慌てて。英国紳士たるもの、常にティーカップの紅茶を揺らさない程度の落ち着きが必要ですよ」

 

 僕は表向きの紳士的な微笑みを浮かべながら、内心では舌打ちをした。

 

「悠長なこと言ってる場合じゃねえ! 出席番号二十四番、葉加瀬聡美だ! あの天才発明バカが、今日の放課後、絡繰茶々丸の『定期メンテナンス』をやるって言い出したんだよ!」

「……なに?」

 

 僕は持っていた万年筆をピタリと止めた。思考が急速に回転し、事態の深刻さを弾き出す。

 絡繰茶々丸。エヴァンジェリンの従者であり、魔法と科学の融合によって生まれたガイノイド。彼女は常にエヴァの傍に控えている。

 ――ということは、だ。

 

(茶々丸の視覚センサー、及び記憶領域(メモリー)には……俺がエヴァを徹底的に凌辱し、プライドを粉々に砕いてマゾヒスティックな肉便器へと堕とした一部始終が、高画質で記録されているということか!?)

 それだけではない。地下の決闘場やダイオラマ魔法球で、神楽坂明日菜の直腸に極太の悪魔の尻尾プラグをねじ込み、一・五リットルの浣腸で多重絶頂の狂乱へ叩き落とした映像。古菲の道着を引き裂き、気功波の燃料として僕の精液を大量に中出しした映像。和美の処女子宮に白濁を注ぎ込み、監視ゴーレムを産み出させた映像。

 その全てが、茶々丸の内部データとして保存されている可能性が極めて高い。

 

「兄貴、ヤバいぜ! 葉加瀬の奴、メンテナンスのついでに茶々丸のログデータを麻帆良工学部のメインサーバーにバックアップする気だ! もしあんな映像がサーバーに上がってみろ! 学園長や魔法協会の連中、いや全世界のハッカーの目に触れることになるぞ!」

「……ッ!!」

 

 僕の背筋に冷たい汗が伝った。

 データが外部サーバーに保存される。それは僕の構築した「合法的な欲望の狩り場」の完全なる崩壊を意味する。もし漏洩すれば、僕はサーバーへのアクセス権を持つ何百、何千という人間を際限なく殺戮するか、全員を洗脳して記憶を改竄しなければならなくなる。そんな真似をすれば、魔法世界や完全なる世界(コズモエンテレケイア)の連中まで巻き込んだ大戦争に発展してしまう。僕の平穏でエロティックなハーレム生活が、根底から覆る。

 

(ふざけるな。絶対に阻止しなければならない。……手っ取り早いのは、葉加瀬聡美を今すぐ誘拐し、脳髄までトロトロに溶かして僕の性奴隷に作り変えることだが……)

 僕は瞬時に己の欲望とリスクを天秤にかけた。

 

(いや、駄目だ。葉加瀬は超鈴音(チャオ・リンシェン)の協力者だ。超は未来から来た天才であり、僕の転生前の『原作』の知識でも、彼女の持つ技術と知略は桁違いに厄介だ。今、不用意に葉加瀬を性奴隷にまで堕とせば、超が必ず異変に気づき、僕を排除対象としてタイムパラドックスすら辞さない攻撃を仕掛けてくる危険がある)

 したがって、葉加瀬への過度な性的な干渉は今は悪手だ。

 必要なのは、ピンポイントで強固な「情報統制」。ヤバい映像に関しては、茶々丸の内部ストレージのみに留めておき、葉加瀬には絶対にそれを認識させないようにするしかない。

 

「カモ君。茶々丸のメンテナンスが行われる場所と時間は?」

「工学部第三研究棟の、葉加瀬のプライベートラボ、今日の放課後でさぁ。」

「……決まりですね。尾行しますよ」

 

 僕は冷酷な支配者の顔に戻り、外套を羽織った。

 夜の麻帆良学園。巨大な大学キャンパスに立ち並ぶ工学部のビル群は、深夜であっても煌々と明かりが点いている。

 僕とカモは、気配遮断の魔法を展開しながら、茶々丸の後をつけて第三研究棟の奥深く、葉加瀬聡美の研究室へと侵入した。

 ラボの中は足の踏み場もないほどに機械部品やケーブルが散乱し、アルバート・アインシュタインのポスターが壁に貼られていた。白衣を着た葉加瀬が、ベッドに横たわる茶々丸の首筋にあるポートに、太い光ケーブルを接続しようとしているところだった。

 

「さてさて、茶々丸。最近のエヴァちゃんの動向も含めて、二ヶ月分のメモリのバックアップと、論理回路のデフラグをちゃっちゃと済ませちゃいますよー」

 

 葉加瀬がキーボードを叩き、モニターに膨大なデータが文字列となって流れ始めた。

 あと数秒で、深層領域の映像フォルダにアクセスされる。

 

「――そこまでですよ、葉加瀬さん」

 

 僕は気配遮断を解き、影の中から歩み出た。

 

「えっ? ネ、ネギ先生!? どうしてこんな所に……って、ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ!」

 

 葉加瀬は驚きに目を丸くして振り返った。僕は紳士の笑みをかなぐり捨て、圧倒的な魔力を瞳に集中させた。僕の両目に、深紅の『写輪眼』が浮かび上がる。

 

「申し訳ありませんが、急を要する事態でしてね。……『催眠魔法』」

 

 僕はエヴァンジェリンの十倍という莫大な魔力を乗せ、強力な催眠魔法を葉加瀬の脳髄に直接叩き込んだ。

 

「なっ……!? ま、魔法……!? 視神経への異常な干渉……っ!?」

 

 葉加瀬の顔が苦痛に歪んだ。彼女はただの科学オタクではない。麻帆良学園が誇る天才であり、魔法の存在を知る人間だ。彼女の明晰な頭脳が、外部からの不条理な情報書き換えに対して、猛烈な拒絶反応を示した。

 

「させませんよ……! 私の脳は、私だけの領域です! 論理的裏付けのない事象を、私の理性が受け入れるはずがありませんっ……!」

 

 葉加瀬は白衣を握りしめ、必死にモニターのキーボードへ手を伸ばそうとした。自律神経を強制的にコントロールし、緊急防壁プログラムを起動させようとしているのだ。

 

(……ほう。大した意志の強さだ。天才的な論理的思考力が、強固な精神防壁となっている。しかも魔法に対する防壁まであるのか。)

 僕は内心で賞賛しつつも、容赦なく魔力の出力を引き上げた。

 

「無駄な抵抗です、葉加瀬さん。君の理性を、僕の狂気が凌駕する。君は今後、茶々丸の深層データ内にある『僕と女子生徒たちの性的な記録』を一切視認できなくなる。映像を見てもノイズにしか見えず、不具合だと思い込む。そして、それらのデータは絶対に外部サーバーへは移行させず、茶々丸のローカル領域にのみ封印し続ける……!」

「ああああっ……! ろ、論理回路が……矛盾、矛盾しています! なぜ、データが存在するのに、見えないと規定するのですか! 私は科学者……真実を、全て解き明かさなければ……!」

 

 葉加瀬の瞳から涙が溢れる。彼女のアイデンティティである科学者としての探求心が、僕の催眠によって暴力的にへし折られていく。

 

「真実など、僕の前では無意味です。眠りなさい」

 

 僕が指を鳴らすと、写輪眼の暗示が完全に葉加瀬の脳に定着した。彼女の体が糸の切れた人形のように崩れ落ちそうになるのを、僕は魔力で支え、再び椅子に座らせた。

 葉加瀬の虚ろな瞳が、数秒後に瞬きをして焦点を結ぶ。

 

「……あれ? 私、何を……そうでした、茶々丸さんのバックアップですね。ええっと、エラーログの確認と、日常データの転送っと。……よし、機密データ領域にはノイズがかかっているみたいですから、これは無理に引き出さず、ローカルに暗号化して残しておきましょう。サーバーの容量の無駄ですからね」

 

 天才科学者は、僕の植え付けた都合の良い言い訳を、自らの論理で補完して呟いた。完全な洗脳の完了だ。

 僕はホッと息を吐き、写輪眼を解除した。これで、僕の破滅のリスクは完全に去った。

 

「見事な情報統制ですね。ネギ先生」

 

 不意に、無機質で平坦な声が響いた。

 メンテナンス用のケーブルを繋がれたままの茶々丸が、ベッドの上に身を起こし、真っ直ぐに僕を見つめていた。彼女は気を失ってはおらず、僕が葉加瀬に行った精神操作の一部始終を、その高性能なAIで冷静に分析していたのだ。

 

「……茶々丸。君の記憶も消去した方が良いかな? 自分のメンテナンス担当者が洗脳されたんだ。マスターへの忠誠心から、僕を排除しようと戦闘モードに入ってもおかしくないが」

 

 僕は即座に魔法の準備をし、冷たく言い放った。ガイノイドの戦闘能力は未知数だ。場合によっては、ここで茶々丸を破壊し、記憶媒体を物理的に奪う覚悟もできていた。

 だが、茶々丸は静かに首を横に振った。そして、ベッドの上で端座し、僕に向かって深々と頭を下げたのだ。

 

「いいえ。むしろ、お礼を申し上げます。ネギ先生」

「……なんだと?」

 

 想定外の反応に、僕は眉をひそめた。

 

「私は、マスターであるエヴァンジェリンに仕えるために造られました。稼働を開始して約二年。私の至上命題は『マスターの幸福の追求と、その維持』です」

 

 茶々丸は淡々と語り始めた。

 

「マスターは過去十五年間、『登校地獄(インフェルヌス・スコラスティクス)』の呪いにより魔力を封じられ、退屈と絶望の中で生きておられました。しかし……ネギ先生、あなたがマスターを力で屈服させ、『闇の魔法』を教え、激しい性的な苦痛と快楽を与えるようになってから……マスターのバイタルデータと精神波形は、かつてないほどの『充実』を示しています」

「……」

「言葉ではあなたを罵倒し、尊厳を奪われていると嘆いておられますが……深層心理の解析結果は明らかです。マスターは、自らを圧倒的な力でねじ伏せ、所有してくれる強大な存在を無意識下で求めていた筋金入りのマゾヒスト。今、マスターはあなたという主人を得て、生命の喜びに満ち溢れています。つまり、マスターは現在、極めて『幸せ』なのです」

 

 茶々丸の論理回路は、人間の一般的な倫理観を完全に無視し、純粋なデータのみで「幸福」を定義していた。

 

「もし、ハカセが先ほどの映像データにアクセスし、事態を公にすれば……あなたは学園を追われ、マスターは再びあの退屈で孤独な十五年間に逆戻りすることになります。それは、私の至上命題に反する最悪のシナリオでした」

 

 茶々丸は頭を上げ、その無機質な瞳の中に、確かな感謝の色を浮かべて僕を見た。

 

「あなたがハカセに催眠魔法を施してくれたおかげで、マスターの現在の『幸福な奴隷生活』は守られました。該当の機密データは、私のコア内部で最高レベルの暗号化を施し、絶対に外部へは漏らしません。……これからも、どうかマスターを、その変態的で情け容赦ない力で、激しく満たしてあげてください」

「……くっ、ふははははっ!」

 

 僕はたまらず、低く下劣な笑い声を漏らした。

 なんという機械仕掛けの純真なる狂気。主人を凌辱する男に対して「これからも肉便器として扱ってやってくれ」と懇願するロボットなど、前代未聞だ。

 

「面白い。本当に面白いよ、茶々丸。君のその素晴らしい論理回路に敬意を表しよう。安心しろ、君の愛するマスターは、僕の精液と暴力で一生手放せない身体に作り変えてやる」

「はい。マスターも、身体の芯からそれを望んでおります」

 

 茶々丸は満足そうに頷いた。

 葉加瀬のメンテナンスが無事に(僕に都合の良い形で)終わり、僕とカモは夜の工学部を後にした。

 麻帆良祭の開催まで、あと僅か。

 僕の絶対的な支配領域は、誰にも知られることなく、さらに強固なものとなった。お化け屋敷という名の狩り場の準備は順調だ。次はどの純潔を、絶望と快楽の底へ引きずり込んでやろうか。

 見上げる夜空の月は、僕の歪んだ欲望を祝福するかのように、怪しく赤く輝いていた。

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