※この作品はR-18です。

欲望のネギ   作:おっさん

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第63話:盤上の激突と模倣の限界

 古菲の折れた腕を、木乃香さんを散々啼かせて作らせた『白濁生産の符術縛衣』の超回復の御札で治癒し終え、俺が闘技場の選手控え室に戻った頃には、すでに第5試合は終了していた。

 周囲の観客たちが興奮冷めやらぬ様子で噂話をしているのが耳に入ってきた。

 どうやら、第5試合は高音・D・グッドマンと、田中さん(型番:T-ANK-α3)という明らかに人間ではないロボットの対戦だったらしい。そして結果は高音の勝利で終わったようだが、観客たちが熱く語っているのは勝敗についてではなかった。

 

『見たかよ、あのアメリカ娘! ロボットの攻撃で服がビリビリに破れて、すっげぇおっぱいが丸出しになってたぜ!』

『ああ! あれはいいものを見た!』

 

 ……なるほど。高音・D・グッドマンの豊かな胸が白日の下に晒されていたのか。

 俺は先ほど高音が「オーッホッホッホ!」と自慢気に胸を張っていた姿を思い出した。あの自信満々な女が、大観衆の面前で服を剥ぎ取られ、羞恥に顔を染めながら胸を隠す姿……想像するだけで、股間が熱くなってくる。

 

(ちっ、古菲の治療に行っている間に、そんないい見世物があったとは。まあいい、彼女は2回戦に勝ち上がったのだ。次の試合では、俺のこの写輪眼で、そのおっぱいとやらをしっかりと拝ませてもらうとしよう)

 変態的な思考を巡らせながら舌舐めずりをしていると、会場内に司会である朝倉和美のアナウンスが響き渡った。

 

『さぁ、続きましては一回戦、第6試合! 麻帆良学園英語教師、ネギ・スプリングフィールド選手! 対するは、学園広域指導員、タカミチ・T・高畑選手!』

 会場がどっと沸く。身内同士、しかも教師同士の対決ということもあり、生徒たちの期待も高いようだ。

 俺はゆっくりと石段を登り、龍宮神社の特設リングへと足を踏み入れた。

 反対側から、スーツ姿のままのタカミチが、静かな、しかし確かな闘志を纏って現れる。

 向かい合う二人。

 

(さて……この男相手に、俺の力を何処まで見せて良いものか)

 俺は内心で思案した。俺の真の力は、エヴァンジェリンの10倍という圧倒的なチート魔力と写輪眼、そして数々の変態的なアーティファクトによる従者たちとの連携(性的な意味を含む)にある。だが、この大会は呪文詠唱が禁止されている上に、ここで全力を出せば、裏で糸を引くチャオに手の内を明かすことになる。

 適度に手を抜きつつ、それでもこの面倒な男を圧倒して排除しなければならない。

 

「ネギ」

 

 タカミチが、眼鏡の奥の目を細めて俺を見た。

 

「エヴァから、君が凄く強くなったと聞いたよ。……昔のように、また君と戦えるのが楽しみだ」

 

 ノリノリである。まるで青春の1ページを取り戻したかのような、爽やかな笑みすら浮かべている。

 ……カチンときた。

 

(あの吸血鬼幼女め……勝手に俺の情報をペラペラと喋りやがって)

 表向きは「マスター」と「弟子」の体裁を保っているが、エヴァの肉体はすでに俺の激しい陵辱なしでは生きられないほどに調教済みだ。この大会が終わったら、あの生意気な金髪幼女には、一晩中身動きが取れないように拘束し、たっぷりと濃密な『お仕置き』をしてやらなければなるまい。

 

「……僕も楽しみですよ、タカミチ先生。手加減は無用でお願いします」

 

 表面上は紳士的な笑みを返しつつ、俺は殺気と情欲を肚の底に沈めた。

 

『ネギくーん! がんばれー!』

『てめえ、負けたら承知しねえぞ!』

『ネギ先生、ファイトですー!』

 

 観客席を見上げると、神楽坂明日菜が大きく手を振り、その隣で長谷川千雨が腕を組んで憎まれ口を叩きながらも視線を送ってくれていた。他にも、俺の愛しい従者たちがこちらを見守っている。

 

(ふふ……可愛い従者たちが応援してくれている以上、あの男相手に無様なところは見せられないな)

 彼女たちの胎内には俺の魔力が注がれ、心身ともに俺に縛られている。そんな彼女たちの前で、圧倒的な強者としての姿を示すことは、支配をより強固にするための重要な儀式でもあるのだ。

 

『それでは……はじめ!!』

 

 和美の合図とともに、試合開始の銅鑼が鳴り響いた。

 

「——ッ!」

 

 俺は即座に動いた。呪文詠唱は禁止だが、無詠唱による単純な魔力操作なら問題ない。

 俺は極小の魔力を練り上げ、自身の前方に無詠唱で風の防御結界、風楯(デフレクシオ)を展開。それと同時に『瞬動』を発動し、爆発的な脚力で一気にタカミチの懐へと肉薄した。

 常人ならば目で追うことすら不可能な速度。

 だが、タカミチは慌てる素振りすら見せなかった。彼はズボンのポケットに両手を突っ込んだまま、微かに腰を落とした。

 

「甘いよ、ネギ」

 

 直後、タカミチのポケットから、視認不可能な速度で右拳が振り抜かれた。

 ——居合拳。

 抜刀術の要領で、極限まで初動を殺し、最高速で放たれるタカミチの必殺の拳。

 ガァァンッ!!

 凄まじい衝撃音が響き、俺が展開していた風楯(デフレクシオ)が、タカミチのたった一撃でガラスのように粉砕された。

 

(……やはり、腐っても実力者か)

 だが、風楯が破られることは計算済みだ。俺はその衝撃を殺さず、破片を突き抜けるようにしてさらにタカミチへと近づく。

 

「ほう……!」

 

 タカミチの目に驚きの色が浮かぶ。彼はポケットから両手を完全に引き抜き、連続して拳を振るってきた。空気を裂く音とともに、重い拳の連打が俺を襲う。

 俺は写輪眼の動体視力をフルに活用し、その連撃を紙一重で躱しながら、タカミチの上段——顔面へ向けて鋭い正面打ちを放った。

 パシッ!

 タカミチの左腕が、俺の正面打ちを的確にガードする。

 だが、それも囮だ。

 俺はガードされたことに構わず、沈み込ませた下半身から、タカミチの左脚へ向けて強烈なローキックを叩き込んだ。

 ドゴォッ!

 丸太を蹴り折るような鈍い音が響く。タカミチの身体が微かに沈んだ。

 だが、ローキック一発で止まるようなヤワな男ではない。タカミチは蹴られた痛みを顔に出すこともなく、踏みとどまった足の反動を利用して、俺の胸ぐらを狙う強烈な中段突きを放ってきた。

 鋭く伸びてくるタカミチの腕。

 俺はそれを躱すのではなく、自らの両腕を絡ませるようにして、合気道の要領で関節を取りにいった。

 

「……!」

 

 タカミチは俺の狙いを察知し、腕を絡め取られる寸前で、即座に拳を引き戻した。その反射速度は見事と言うほかない。

 

「……エヴァから、合気道も習ったんだね」

 距離が僅かに開き、タカミチが余裕の笑みを浮かべて言った。

 俺の脳裏に、夜な夜な俺の股間で喘ぐエヴァの姿が浮かぶ。合気道など習っていない。写輪眼によるコピーと、圧倒的な魔力による身体操作の賜物だ。

 俺はタカミチの言葉を完全に無視し、再び踏み込んでローキックを放った。

 

「同じ手は食わないよ」

 

 タカミチは素早く左脛を上げて俺の蹴りを受け止める。そして、その姿勢からバネのように跳ね起き、俺の顔面めがけて高速の右ストレートを放ってきた。

 風を切り裂く拳。

 俺はその拳を躱すため、極限まで姿勢を低くして屈み込み、タカミチのがら空きの懐へと一気に飛び込んだ。

 

「しまっ……!」

 

 懐に潜り込まれたタカミチの顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。柔術的な「投げ」を警戒したタカミチは、咄嗟に後方へ飛び退き、距離を取ろうとした。

 だが、逃がさない。

 

「遅いですよ、タカミチ先生」

 

 俺は後退するタカミチを逃さず追いかけ、大地を踏みしめた右足から全身の捻りを連動させ、古菲から学んだ(コピーした)中国武術の極意——渾身の『崩拳(ほうけん)』を、タカミチの胸板へ向けて深々と叩き込んだ。

 ドバァァァンッ!!

 

「ぐはぁっ……!?」

 

 空気を叩き潰すような爆音とともに、タカミチの長身がゴム鞠のように弾け飛び、闘技場の石畳をバウンドしながら後方へと吹き飛ばされていった。

 

 

※※※※

 

 

 土煙が晴れた闘技場の中央。

 俺の放った渾身の『崩拳(ほうけん)』を胸板にまともに受けたはずのタカミチは、数メートル後方に吹き飛ばされたものの、両足でしっかりと石畳を踏みしめ、平然と立ち上がっていた。

 

「……素晴らしい踏み込みだ。クーフェイくんの中国武術も、しっかりと自分のものにしたんだね」

 

 タカミチはスーツの埃を軽く払いながら、まるで教え子の成長を喜ぶ恩師のような、爽やかで温かい笑みを浮かべて俺を褒め称えてきた。

 

「お褒めいただき、ありがとうございます。ですが……まだまだ手は緩めませんよ!」

 

 表面上は礼儀正しく応えながらも、俺は間髪入れずに次の踏み込み動作へと移行した。

 だが、内心では酷く冷めた分析を下していた。

 

(……俺の体術は、所詮エヴァや古菲の『見様見真似』に過ぎない)

 『写輪眼』という圧倒的なチート能力を神から授かった俺は、一度見た技の形や筋肉の動き、魔力の流れの「一つ一つ」を完璧に記憶し、再現することができる。しかし、それには明確なデメリットが存在していた。

 夜な夜なエヴァの肉体を貪る合間に、彼女から格闘戦の稽古(という名のシゴキ)を受けていた時のことだ。

 

『お前の技は、一つ一つの動作は完璧だが、技と技の「繋ぎ目」が完全に途切れている。ただ記憶した動きを順番に出力しているだけの機械のようだ。それでは一流には通用しないぞ、坊や』

 

 そう言って、彼女には何度もボコボコにされた。

 どんなに写輪眼で形をコピーできても、長年の血のにじむような反復練習を経て、意識せずとも身体が最適解を導き出すような「達人の領域」には至れない。それが、ズルをして力を手に入れた俺の明確な限界だった。

 

(達人になれないなら、圧倒的な手数と魔力で押し潰すまでだ!)

 俺は攻め続けることを選択し、再びタカミチの懐へと飛び込んで、二度目の『崩拳』を放った。

 

「——甘い」

 

 だが、完全に初見を終えたタカミチに同じ技は通用しなかった。彼は俺の突き出された右腕を、最小限の動きで軽々と横へと「いなした」。

 

「しまっ……!」

 

 完璧なタイミングで力を流された俺は、大きく体勢を崩して前のめりになる。

 そこへ、タカミチの重い左の拳が、俺の横っ腹に深々とめり込んだ。

 

「ぐはぁっ!」

 

 内臓を揺らす鈍い衝撃とともに、今度は俺の身体が闘技場の床を転がるように吹き飛ばされた。

 

「……まだまだだね、ネギ。君の動きには、思考のノイズが多すぎる」

 

 タカミチは再び両手をズボンのポケットに突っ込み、余裕の表情で俺を見下ろした。

 そして、距離が離れているにも関わらず、ポケットに手を入れたままの不自然な姿勢から、超高速のパンチを繰り出してきた。

 シュガァァンッ! と空気を引き裂く衝撃波が、真空の刃となって俺を襲う。

 

『おおっと! ネギ選手、一方的に防戦に回っております! 高畑選手のあの見えない拳は一体何なのでしょうか!?』

 

 実況席では、絡繰茶々丸の横でマイクを握った解説のクソガキ——さっき小太郎に負けて泥水に浸かっていた豪徳寺とかいう敗者が、得意げに解説を始めた。

 

『フッ……アレは抜刀術の原理を応用した絶技、「居合い拳」だ! 初動を完全に殺し、ゼロの状態から最高速で拳を放つ。よほどの達人でなければ、反応することすら不可能だぜ!』

 

(……解説ご苦労なこった。だが、その通りで近づけねえ)

 俺は写輪眼でタカミチの筋肉の微細な収縮を読み取り、飛んでくる見えない衝撃波をギリギリで躱しながら舌打ちをした。

 さらに厄介なことに、タカミチの身体から立ち上るオーラの色が変わった。

 

「……気と魔力の合成、か」

 

 純粋な身体エネルギーである「気」と、精神エネルギーである「魔力」。その相反する二つの力を、タカミチは自身の体内で見事にブレンドし、爆発的なパワーアップを果たしやがった。

 俺の写輪眼は、タカミチの体内で何が起きているのか、その術式からエネルギーの比率まで、すべてを完璧に読み取っていた。

 だが——同時に、それが「俺には絶対に真似できない技術」であることも、残酷なまでに理解させられた。血の滲むような鍛錬と、彼自身の歩んできた人生の土台があって初めて成立する絶技。チートで得た目玉では、決して手の届かない領域。

 

(……ああ、本当に腹立たしい)

 逃げ回ることしかできない現状と、純粋な努力の結晶を見せつけてくるタカミチの姿に、俺の中のどす黒い感情が沸点に達しようとしていた。

 

「どうした、ネギ! 逃げ回ってばかりでは勝てないぞ!」

 

 タカミチの喝とともに、これまでの比ではない、極大の気と魔力を練り上げた『超・居合い拳』が放たれた。

 砲弾のような衝撃波が闘技場の石畳をえぐりながら直進し、回避が間に合わなかった俺の身体を正面から撥ね飛ばした。

 

「がぁぁっ……!」

 

 俺の身体は錐揉み回転しながら宙を舞い、地面に激しく叩きつけられた。

 

『む、ネギ先生ぇぇっ!!』

 悲痛な叫び声を上げて、実況席にいた朝倉和美がマイクを放り出して駆け寄ってきた。

 彼女は俺に強引に犯され、タイムトラベルによる過酷な連続中出しの交尾地獄を強制された被害者だ。だが、アーティファクトの契約と、俺が注ぎ込んだ魔力の依存性により、今や彼女の魂は完全に俺の支配下にある。だからこそ、彼女の目には、俺を心配する本物の涙が浮かんでいた。

 

「大丈夫ですか、先生っ! 誰か、救護班を……っ!」

「……心配いりませんよ、和美さん。これくらい、どうってことありません」

「えっ……?」

 

 俺は和美の細い肩にポンと手を置き、土埃を払いながら、何事もなかったかのように即座に立ち上がった。

 全身の骨が何本か折れていてもおかしくない直撃。だが、俺の肉体はすでに、常人のそれとは構造が変わりつつあった。

 

(幸いなことに、エヴァに盗んだた『闇の魔法(マギア・エレベア)』の修業の反動で、俺の身体は順調に人間を辞め始めているからな)

 負の感情をエネルギーとする闇の魔法。それを多用し、その魔力を身体に定着させ続けた結果、俺の肉体は魔物のような異常な耐久力と再生力を獲得しつつあった。

 

「……ほう。あの直撃を受けて、すぐに立ち上がるとは」

 

 タカミチは少し驚いたように目を見張った後、またしても「教え子の成長を喜ぶ顔」になった。

 

「驚いたよ。君は本当に強くなった。かつての、泣き虫だった頃の君とは見違えるようだ。……立派になったな、ネギ」

 

 上から目線で、こちらの強さを肯定し、賞賛してくるタカミチ。

 

(……ムカつく)

 俺は本来のネギではない。お前が勝手に幻影を重ねて、勝手に感動しているだけだ。その偽善的で真っ直ぐな大人の態度が、無性に癪に障る。

 

「……お褒めの言葉は、勝負の後に聞かせていただきますよ!!」

 

 俺は地面を蹴り砕き、三度目の正直とばかりにタカミチへと突撃した。

 だが、怒りに任せた単調な突進など、タカミチの敵ではない。

 

「熱くなりすぎだ、ネギ!」

 

 タカミチは俺の拳を冷静に受け流し、俺の胴を抱え込むようにして、豪快な裏投げを放った。

 空を舞う視界。

 俺の身体は闘技場のリングから完全に外に投げ出され、そのまま龍宮神社を囲む深い湖の水面へと、激しい水柱を上げて叩き落とされた。

 ——ザバーンッ!!

 

『ああっ! ネギ選手、場外の池へと落下しました!!』

 観客席から大きなどよめきが上がるのが、水中に沈んでいく俺の耳にも微かに届いた。

 

(……冷たいな。頭が冷える)

 ぶくぶくと泡を吐きながら、俺は暗い水の中で目を開いた。

 タカミチの強さは本物だ。小手先の体術や、中途半端な魔力攻撃では、あの居合い拳の絶対領域は崩せない。

 達人にはなれない。ならば、俺は俺のやり方——圧倒的な魔力の暴力という「チート」で、あの男の理不尽なまでの完成度を粉砕するしかない。

 

(術式固定……)

 俺は水中で両手を広げ、無詠唱で魔力を練り上げた。

 風の精霊と雷の精霊を合成した、強力な攻撃魔法。本来であれば対象に向かって放つそれを、俺は自らの周囲に留める。

 

(『雷の暴風(ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)』!)

 水中で、激しい紫電と竜巻が渦を巻き始めた。

 

(掌握……そして、術式兵装!!)

 俺はその狂い狂う雷と風の魔法エネルギーを、エヴァが開発した『闇の魔法』の理論に従い、自らの肉体へと強制的に取り込んだ。

 バチバチッ! と凄まじい放電現象が全身を駆け巡り、俺の筋肉と神経を極限まで励起させる。タカミチに対する「ムカつく」という怒りと負の感情が、闇の魔法の極上のエネルギー源となって俺を魔物へと作り変える。

 

「……ッ!!」

 

 ドッバァァァァァァァンッ!!!

 龍宮神社の湖面が爆発し、巨大な水柱とともに、俺は闘技場の上空へと飛び出した。

 全身に紫電を纏い、瞳を紅く光らせた俺の姿に、タカミチが初めて明確な戦慄の表情を浮かべた。

 

「なっ……魔力と肉体の、融合だと……!?」

「驚くのはまだ早いですよ、タカミチ先生!」

 

 雷の暴風を取り込み、限界を超えて強化された身体能力。俺は空中で不可視の足場を蹴り、これまでに無い、文字通り「稲妻の速度」でタカミチの懐へと飛び込んだ。

 居合い拳の迎撃すら間に合わない圧倒的な速度。

 

「させるかぁっ!」

 

 タカミチが防御の姿勢を取るより早く、俺は右拳を大きく引き絞った。

 その拳に、無詠唱で練り上げた光の矢——『魔法の射手(サギッタ・マギカ)』を、なんと20本も同時に展開し、束ね合わせる。

 魔力の矢を纏い、ドリル状に回転する破壊の拳。

 

「これで、終わりだぁっ!!」

 

 俺はその紫電と光を纏った拳を、中国武術の五行拳の一つ『鑽拳(サンケン)』の捻りとともに、タカミチのがら空きの顎へ向けて、下から上へとかち上げるように撃ち抜いた。

 ガガァァァァァァンッ!!!

 脳を直接揺らすような強烈な打撃音と、雷鳴のような轟音が闘技場に響き渡る。

 タカミチの長身が、宙を舞った。

 眼鏡が宙を舞い、意識を完全に刈り取られた彼は、人形のように力なく石畳の上に落下し……二度と、立ち上がることはなかった。

 

『き、決まったぁぁぁぁっ!! 勝者、ネギ・スプリングフィールド選手ゥゥゥッ!!』

 

 沈黙の後、和美の絶叫とともに、会場を揺るがすような大歓声が巻き起こった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 俺は全身の雷を散らしながら、ゆっくりと立ち上がった。

 戦いは見事、俺の勝利に終わった。達人の領域を、チート能力の暴力でへし折ってやったのだ。

 

(……だが、少し派手にやり過ぎたか)

 歓声に包まれながらも、俺は闘技場の暗がりから、先ほどとは違う強烈な視線を向けられているのを感じ取っていた。

 銃口を向けるような龍宮真名の鋭い気配。

 そして、計算外の事態に目を細める、超鈴音(チャオ)の冷徹な警戒の気配。

 俺がここで見せた力は、彼女たちの計画にとって明確なイレギュラーとして認識されたはずだ。

 だが、まあいい。

 

『ネギくーーん! かっこよかったわよーっ!』

『やったアル、ネギ! すごいネ!』

『ネギ先生、お怪我はありませんか!?』

 

 観客席の最前列で、神楽坂明日菜が飛び跳ねて喜び、古菲が折れた腕の完治をアピールするように大きく手を振り、のどかや夕映たちが目を輝かせて俺を見つめていた。

 彼女たちのその無防備で俺に依存しきった笑顔を見ていると、裏の連中からの警戒など、些細なことのように思えてくる。

 

(可愛い従者たちが喜んでくれているんだ。……まあ、良いか)

 俺は内心のどす黒い欲望と野心を隠し、表向きはボロボロになりながらも生徒に応える「優しい教師」の笑顔を作って、大きく手を振り返した。

 

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