タカミチとの死闘(俺にとっては達人をチート能力でねじ伏せる遊戯だったが)を制し、会場が熱狂の渦に包まれる中、まほら武道会一回戦は淀みなく進行していた。
続く第7試合。
闘技場の石畳の上に立つのは、神楽坂明日菜と桜咲刹那。
奇しくも、俺の愛しい従者(おもちゃ)同士の対決であった。
「いっくわよー、刹那ちゃん!」
「いざ……尋常に、勝負です!」
銅鑼の音と共に、二人の少女が激突する。
明日菜の身長は163センチ、刹那は151センチ。共に18歳の成人を迎え、女性として完全に成熟した肉体を持つ彼女たちの動きは、観客の目を釘付けにするほどしなやかで力強かった。踏み込むたびに明日菜のEカップの胸が大きく揺れ、刹那のEカップの双丘もまた、道着の下で激しく自己主張をしている。
だが、純粋な戦闘技術においては、京都神鳴流の剣士として幼い頃から血の滲むような修行を積んできた刹那が圧倒的に上回っていた。
武器の使用が禁止されているため徒手空拳での戦いとなったが、刹那の鋭い手刀と足捌きは、明日菜の直感的な攻撃を悉く躱し、的確に反撃を叩き込んでいく。
(……順当に行けば、刹那の圧勝ですね)
俺は腕を組み、余裕の表情で観戦していた。
刹那の身体には、アーティファクト『忠義の代償と獣の肉棒(プレティウム・フィデリタス・エト・ファルス・ベスティア)』の能力によって、俺が事前にたっぷり注ぎ込んだ白濁(魔力)が蓄積されている。ただでさえ技術で勝る彼女が、俺の精液による身体能力強化(ブースト)を受けているのだ。明日菜に勝ち目などあるはずがない。
そう確信した矢先だった。
「……っ!?」
防戦一方だった明日菜の動きが、唐突に変わった。
刹那の鋭い回し蹴りを、まるで軌道が最初から分かっていたかのように最小限の動きで回避し、そのまま鋭いカウンターの拳を放ったのだ。
「くっ……!」
予想外の反撃に、刹那が僅かに体勢を崩す。明日菜はその隙を見逃さず、立て続けに重い連撃を叩き込み始めた。
(ほう? 随分と動きが良くなりましたね……いや、違う)
俺の『写輪眼』は、闘技場に流れる微細な魔力の波長を完璧に捉えていた。
明日菜の脳に直接、極めて高度な『念話(テレパシー)』の魔力パスが繋がっている。
視線を観客席の隅へ向けると、そこには深くフードを被った若い男——第2試合で圧倒的な実力を見せた謎の男、クウネル・サンダースの姿があった。
あの男が、念話で明日菜の動きを誘導し、的確なアドバイスを送っているのだ。
(…………あの、クソ野郎が)
俺の心の中に、どす黒い怒りと独占欲が急速に膨れ上がった。
俺は純粋な試合の勝敗などどうでもいい。だが、あの男が『俺のアナル奴隷』である明日菜の頭の中に、許可もなく土足で踏み込んだ事実が許せなかった。
明日菜の心も、身体も、その最奥にある直腸すらも、すべては俺が開発し、俺の快楽に染め上げた俺だけの所有物だ。彼女に命令を下し、彼女を操っていいのは、この世界でただ一人、主人である俺だけだ。
(よくも俺の従者(おもちゃ)に気安く触れてくれたな。……決勝で対戦したら、ただでは済まさない。その底知れぬ余裕ごと、完膚なきまでに叩き潰して目にもの見せてやる)
殺気を抑え込みながら、俺は冷酷な目で試合の行く末を見守った。
クウネルの念話による誘導を受け、明日菜は刹那を相手に見事な善戦を繰り広げていた。だが、所詮は付け焼き刃。決定打には至らない。
原作の知識通りであれば、ここで彼女は隠された力を覚醒させ、巨大な大剣であるアーティファクト『破魔の剣(エンシス・エクソルキザンス)』を召喚して形勢を逆転させるはずだった。
しかし、俺が介入し、欲望のままに世界を歪めたこの現実において、明日菜のアーティファクトはそんなヒロイックな代物ではない。
彼女のアーティファクトは『破魔の尾と露出(カウダ・エクソルシザンス・エト・ヌーディタス)』。
召喚呪文『アデアット』を唱え、アナルプラグ型の黒い尻尾を直腸に挿入した瞬間、彼女の衣服は胸と局部を完全にさらけ出した淫乱なサキュバス衣装へと強制的に書き換えられてしまうのだ。
数千人の観客が固唾を飲んで見守るこの公衆の面前で、そんな変態的なアーティファクトを使えるわけがない。
「……ここまでです、明日菜さん!」
結局、地力に勝る刹那が明日菜の隙を突き、強烈な掌底を胴体に叩き込んだ。
「きゃあぁっ!」
明日菜は短く悲鳴を上げて吹き飛ばされ、そのまま場外の池へと落下した。勝負ありだ。
順当な結果に観客が沸き立つ中、俺は冷たい視線でクウネルを一瞥し、そして続く第8試合へと意識を切り替えた。
『さぁさぁ、一回戦最後の試合! 第8試合! 魔法使いの……ええと、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル選手! 対するは、山下慶一選手!』
和美のアナウンスと共に、身長130センチの金髪幼女、エヴァンジェリンがリングに上がった。
対するは、筋骨隆々の巨漢である山下慶一。
だが、エヴァの様子が少しおかしい。彼女の周囲には、普段の気怠げな態度とは打って変わって、ピリピリとした強烈な戦意と怒りのオーラが立ち上っていた。
そして、その怒りの視線は、巨漢の対戦相手ではなく……観客席のクウネル・サンダースに向けられている。
(……なるほど。あのフードの男、エヴァにまで念話でちょっかいを出しやがったな)
『はじめ!』
開始の合図と同時だった。
「邪魔だ」
エヴァは鬱陶しそうに呟くと、巨漢の山下が動き出すよりも早く、瞬動で懐に潜り込み、その重い拳をボディに一閃した。
「ごぼぁっ!?」
魔法すら使わない純粋な体術のたった一撃で、山下は白目を剥いて崩れ落ちた。一瞬の出来事に、会場中が静まり返る。
エヴァは倒れた男を一瞥もせず、フンと鼻を鳴らしてリングを降りた。
(……あのアマ、本当にやりやがったな)
俺の額に青筋が浮かぶ。
先ほどのタカミチの件といい、今回のクウネルの件といい、エヴァは最近、俺以外の男からの干渉を受けすぎている。かつての英雄の仲間だか何だか知らないが、今の彼女は俺に散々陵辱され、俺の魔力と肉棒なしでは生きられないドマゾの肉便器に成り下がっているのだ。
主人は俺だ。俺のモノに、他人が勝手に過去の因縁を持ち込んで刺激を与えるなど言語道断。
(やはり、エヴァには徹底的な『お仕置き』が必要ですね。あの生意気な口が二度と俺以外の男の名前を呼べないように、一晩中拘束して、プライドが完全にへし折れるまで脳髄を快楽で焼き尽くしてやりましょう)
次なる調教のメニューを脳内で組み立てながら、俺は選手控え室へと向かう薄暗い通路を歩いていた。
その時だ。
『——あ、ネギ先生。聞こえるか? 私だ』
脳内に、長谷川千雨からの念話が届いた。彼女のアーティファクト『淫電の配信網と絶対支配(レテ・オブスケーナム・エト・ドミナ・キベルネティカ)』を通じた、暗号化された極秘回線である。
「どうしました、千雨さん」
『どうもこうもねえよ。チャオの奴が仕掛けた工作の件だ。この武道会の一回戦の映像、完全にネットの動画サイトに流出し始めてるぞ。それも、魔法を使ってる連中の戦闘データ付きでな』
「……やはり、始まりましたか」
千雨からの報告を聞いても、俺に驚きは一切なかった。
そもそも、千雨のハッキング能力(俺と彼女が裏でコスプレセックス配信を繰り返し、80万人の変態たちから奪い取った演算能力)によって、チャオ・リンシェンのシステムは既に掌握済みだ。彼女が「記録機器は使用できない」と嘘をつき、自らが設置した隠しカメラで魔法使いの戦闘を世界中に配信して『魔法バレ』を引き起こそうとしている計画など、とうの昔に把握している。
『チャオのネットワーク自体はこっちで完全に監視下に置いてるから、いつでも配信を止めるなり、フェイク映像に差し替えるなりできる。指示をくれ』
「今はまだ泳がせておいてください。彼女の作ったその配信網自体を、後で丸ごと『俺の目的』のために乗っ取りますから」
『……相変わらずエグいこと考えてやがるな。了解した。引き続き監視を続ける』
「ええ、頼みましたよ。それにしても……」
俺はため息をつき、呆れ果てた視線で、闘技場の周囲に配備されている魔法先生たち(警備担当の教師たち)を見上げた。
世界中に魔法の映像がリアルタイムで流出しているというのに、彼らは誰一人としてその異常に気づいていない。チャオの張ったダミーの隠蔽結界にすっかり騙され、平和ボケした顔で試合を観戦している。
(本当に……呆れるほどザルですね、この学園の教師陣は)
タカミチのような個人の戦闘力だけは一丁前でも、組織としての危機管理能力は皆無に等しい。未来人一人に出し抜かれ、足元で世界規模の陰謀が進行していることに全く気づけない無能の集まりだ。
「……まあ、その無能さが、僕にとっては非常に都合が良いのですがね」
俺は暗い通路の中で、誰にも見られないことを確認し、口角を歪めて邪悪な笑みを浮かべた。
教師たちが無能であればあるほど、俺が裏で従者たちにどんな淫らな行為を強要し、どんな非道な手段で魔力を搾取しようとも、絶対にバレることはない。俺にとって、この学園はすでに巨大な箱庭であり、都合の良い実験場なのだ。
『ネギ先生。あと20分で、2回戦の第一試合が始まりますよ』
和美のアナウンスが、会場に響き渡る。
20分。
その時間があれば、時間を遡るチート魔導具『カシオペア』を使うまでもなく、一つの準備を整えるには十分すぎる。
「さて……次は誰の胎内に、僕の魔力を注ぎ込んでおきましょうか」
俺は懐の『カシオペア』の冷たい感触を指先でなぞりながら、次の獲物を求めて、祭りの喧騒と熱狂の裏側へと静かに足を踏み出した。