あんまり修正する気も起きなかったので、何かミスもあるかも。
「貴方の父親……英雄ナギ・スプリングフィールドの件で、少し話があります」
そんな思わせぶりなメッセージと共に、俺は麻帆良学園が誇る巨大な地下図書館――通称『図書館島』の最深部へと呼び出されていた。
薄暗く、埃とカビ、そして古い羊皮紙の匂いが立ち込める地下空間。魔力が淀むこの深層エリアで、俺はひそかに苛立ちを募らせていた。
(……ナギ・スプリングフィールド、ね)
内心で冷笑する。
この身体の本来の持ち主にとっては偉大なる父親であり、探し求めるべき人生の目的目標なのだろう。だが、中身が入れ替わっている俺からすれば、ナギなどという男の安否や過去など、どうでもいいにも程がある。
とはいえ、相手はかつてナギと共に世界を救ったという『赤き翼』のメンバー、アルビレオ・イマ。俺の知らない原作の裏設定や、今後の計画に利用できる何らかの追加情報を持っている可能性はゼロではない。だからこそ、俺は面倒を承知でこの地下深くへと足を運んだのだ。
だが、指定された開けた空間に足を踏み入れた瞬間、俺の苛立ちは別のベクトルへと跳ね上がった。
「ネギ……」
「ネギ先生……っ」
そこにいたのは、俺を待ち受けるアルビレオ・イマだけではなかった。
神楽坂明日菜、宮崎のどか、綾瀬夕映といった、図書館島探索に縁のある俺の『従者』たちが、なぜか揃って呼び出されていたのだ。彼女たちは俺の顔を見るなり、まるで主人を見つけた忠犬のように頬を染め、安堵の表情を浮かべた。
(……なぜ、僕の『雌(おもちゃ)』たちがここにいる?)
腹の底から、ドス黒い殺意がふつふつと湧き上がる。
アルビレオ・イマ――まほら武道会で、俺の所有物である明日菜やエヴァの脳内に勝手に念話で干渉してきた、極めて不愉快な男。そいつが今度は、俺の許可もなく俺の従者たちをこんな地下深くに呼び集めているのだ。
今すぐこの場でチート魔力を全開にし、『雷化』で首から上を消し飛ばしてやりたい。そんな凶暴な衝動が脳髄を焼くが、俺は深呼吸を一つして、その殺気を分厚い理性の皮で押さえ込んだ。
「やあ、よく来てくれたね。ネギ君、そしてお嬢さんたち」
本棚の影から、ローブを羽織った男が静かに姿を現した。
柔和な笑みを浮かべてはいるが、その底には得体の知れない強者の余裕がへばりついている。
「彼の父親の真実を求めるならば、貴方たちのような信頼できる仲間が必要だと思いまして」
「……お招きいただき、ありがとうございます。アルビレオ・イマさん」
俺が最高に優等生らしい、無垢な少年の顔を作って頭を下げると、男は苦笑して肩をすくめた。
「いや、その名前はあまり使いたくないんだ。……僕のことは、偽名の『クウネル・サンダース』と呼んでくれないか?」
(は……? 偽名で呼んでくれ、だとか?)
イラッ。
俺の額に青筋が浮かびそうになる。わざわざ本名を隠すような状況でもない身内だけの空間で、変な偽名を使いたがるその古臭い感性。やはり、この底の知れない男とは根本的に反りが合わない。
「……分かりました、クウネルさん。それで、父の件というのは?」
俺は湧き上がる殺意と苛立ちを完璧な笑顔の下に隠し、先を促した。
「ああ。単刀直入に言おう。君の父親、ナギ・スプリングフィールドは生きている」
クウネルはもったいぶるように間を置き、俺と、そして息を呑む従者たちを見回した。
「だが、彼はこの地球上にはいない。彼を探し出すためには……『魔法世界』を探して見るのも良いかもしれません」
「魔法世界……ですか」
「そうだ。そして、その魔法世界へ繋がるゲートは、君の故郷であるイギリスのウェールズにある。君はそこへ向かい、真実を見つけ出さなければならない」
とうとうと語るクウネルの言葉を聞きながら、俺は内心で盛大にため息を吐いていた。
(……はぁ。なんだ、ただの次のステージへの『お使いイベント』の案内か)
魔法世界へ行け。ウェールズのゲートを通れ。
勿体ぶって俺の従者たちまで巻き込んでおいて、結論としてはそれだけか。
そもそも、この男が仰々しく語る『魔法世界』の正体を、俺は原作の知識として知っている。一般の魔法使いには秘密にされているが、その実態は別次元などではなく、テラフォーミングされた『火星』に過ぎない。
そして何より、俺を一番呆れさせたのは、このクウネルという男の情報の古さだ。
(……というかコイツ、ナギの身体がすでに『ラスボス』に乗っ取られている事実を知らないのか?)
かつての英雄ナギ・スプリングフィールドは、今や完全なる世界(コズモエンテレケイア)の黒幕、造物主(ライフメーカー)にその肉体を奪われている。助けに行くも何も、ナギの魂を救うことなど絶望的な状況なのだ。
そんな致命的な事実も知らずに、あるいは知っていて隠しているのかは定かではないが、得意げに「ウェールズへ行け」などと抜かすこの男を、俺はやはり今すぐこの場で八つ裂きにしてやりたかった。
だが、俺は再び殺気を抑え込み、従者たちの前で『父親を想う健気な息子』を演じ切った。
「……ありがとうございます、クウネルさん。父が生きている可能性があるなら、僕はどこへでも行きます」
「ネギ……」
「ネギ先生、私たちも一緒に行きますからね!」
俺の言葉に、明日菜やのどかたちが感動したように目を潤ませ、俺の背中を力強く支えようと寄り添ってくる。俺はその温かい感触を味わいながら、内心で舌舐めずりをした。
(まあ、いいでしょう。これで、堂々とこの愛らしい玩具(ハレム)たちを引き連れて、魔法世界(火星)へと乗り込む『正当な口実』ができましたからね)
俺はクウネル・サンダースへの殺意を未来の楽しみに取っておき、これから始まる魔法世界での新たな凌辱と支配の旅へと思いを馳せていた。