ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
早朝の自由都市クオーレ。 普段なら開門と同時に商隊が行き交う巨大な門が、今は重厚な鉄格子で閉ざされていた。城壁の上には完全武装した騎士団が並び、殺気立った空気が漂っている。
「……なんか、物々しいな」
森から戻ってきた俺たちは、門の前で立ち尽くしていた。 俺の両腕には、左右から美女がしがみついている。 右腕には、真紅の髪のヴァミ。左腕には、銀髪のシルヴィア。二人ともフードを目深に被っているが、その下から漏れ出る「隠しきれないフェロモン」と「強者のオーラ」が、周囲の空気を歪ませていた。
彼女たちは周囲の厳戒態勢などどこ吹く風で、俺の腕を巡る冷戦を繰り広げている。
「旦那様、重くないですか? その犬、一人で歩かせた方がいいのでは?」
ヴァミが俺の右腕を豊満な胸で挟み込みながら、冷ややかな視線を左に向ける。
「ご主人様、暑苦しくない? そのトカゲ、離した方がいいと思う。汗かいちゃうよ?」
シルヴィアも負けじと、スレンダーな体を俺の左腕に密着させ、ひんやりとした肌の感触を押し付けてくる。
「(仲がいいのか悪いのか……)」
俺はため息をついた。 だが、そんな呑気なことを言っていられる状況ではなかった。
俺たちが門に近づくと、城壁の上から怒号が飛んできた。
「止まれッ!! 森の方角から来たな!? 『嘆きの森』で局地的な地震が観測され、フェンリルの存在も報告されている! フェンリルがこの街にも襲来するでのはないかと大騒ぎになっているんだぞ!」
衛兵たちが殺気立っている。 やはり、昨日の大喧嘩――最強種同士の痴話喧嘩による衝撃が、街にまで伝わっていたらしい。
(バレてる……というか、騒ぎがデカくなりすぎたな)
どう言い訳するか。 「嫁たちが喧嘩しただけです」なんて言えば、即座に危険生物として駆除(という名の戦争)が始まってしまう。 俺が口を開こうとした時――。
「あ、あれは……!!」
城壁の隅から、一人の男が身を乗り出した。 ボロボロの革鎧に、泥だらけの顔。 昨日の荷物持ち(ポーター)だ。俺が森で助け、逃がした男。
「間違いない! 団長! あの人です! フェンリルの前に立ちはだかり、俺を逃がしてくれた冒険者は!」
男の必死な叫びに、騎士団長らしき立派な髭の人物が目を見開く。
「な、なんだと……!? あの若者が、伝説の神狼と対峙して……生きて戻ったというのか!?」
ざわ……ざわ……! 騎士たちの間に動揺と畏怖が走る。
「嘘だろ?」「あんな優男が?」「でも、あの連れている女たち……ただならぬ雰囲気だぞ」
俺は一瞬考えた。 これは使える。 下手に隠すより、彼らの勘違いに乗っかった方がスムーズに入国できるかもしれない。
俺は咳払いを一つして、堂々と声を張り上げた。
「ああ、なんとか戻ったぞ! フェンリルは……俺を見逃してくれました! もうあの森にはいない!」
嘘ではない。 フェンリル(シルヴィア)は今、俺の左腕に抱き着いて、俺の匂いをスンスン嗅いでいる。 だから森にはいない。ここにいる。
「神狼が、人間を……見逃しただと!?」
騎士団長が疑わしげな目を向ける。当然だ。フェンリルは遭遇=死の災害。話し合いで解決する相手ではない。
「……嘘だと思うなら、これを見てください」
俺は左腕のシルヴィアに目配せをした。 彼女は一瞬キョトンとしたが、すぐに俺の意図を察し(というより、ご主人様の役に立ちたい一心で)、懐から「何か」を取り出した。
それは、昨日の戦いでちぎれた、フェンリル時代の自分の毛皮の一部(変身する時に換毛期のように抜けたやつ)だった。
「ほら……証拠の『神狼の毛皮』……♡」
シルヴィアが掲げた、銀色に輝くその毛束。 それは朝日に照らされ、神々しいまでの魔力の光を放っていた。素人目に見ても、ただの獣の毛ではないことが分かる。
「おぉぉぉッ……!!」
城壁の上から、どよめきが上がった。
「本物だ! あの輝き、伝説の文献にある通りだ!」 「神狼の体毛を持ち帰るなんて……英雄か!?」 「開門! 開門せよ! 英雄の帰還だ!」
ギギギギギ……と重厚な音を立てて、鉄格子が上がり始める。 俺は冷や汗を拭った。
「は、はぁ……まあ、運が良かっただけで……」
英雄扱いはこそばゆいが、とりあえず中には入れそうだ。 俺たちは騎士たちの敬礼を受けながら、堂々と街へ足を踏み入れた。
◇
入国審査を通過した後、俺たちはポーターの男――ハンスに呼び止められた。 彼は涙を流しながら、何度も俺の手を握りしめてきた。
「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます! 貴方が助けてくれなかったら、俺は今頃フェンリルの餌になってました……!」
「いいってことよ。……それより、飯でも食いながら話さないか? 少し聞きたいことがある」
俺たちは近くの安酒場に入った。 朝から営業している店で、客はまばらだ。 テーブルに着くなり、ハンスは自分の事情を語り始めた。
「俺、Fランクの冒険者で……。実家の借金を返すために、割りのいい仕事を探してたんです。そしたら、あの有名な勇者パーティ『暁の剣』が、荷物持ちを募集していて」
「『暁の剣』……?」
俺の眉がピクリと動いた。 聞き覚えがあるなんてもんじゃない。
「はい。Sランクパーティの彼らです。俺、運がいいなって思って……。でも、森の奥に入ってフェンリルに遭遇した時、彼らは俺の足を魔法で固めて……『お前が餌になっている間に、俺らは逃げる』って……」
ハンスは悔しそうに拳を握りしめた。
「……もう死んだと思いました。まさか、勇者様たちが俺を囮にするなんて……」
ガタンッ!
俺は無意識に、テーブルを叩いていた。 やはりか。 俺の時と同じだ。
「……ハンス。あいつらが誰かを囮にするのは、今回が初めてじゃないぞ」
「え?」
「俺もだ。俺も以前、あの『暁の剣』に雇われた」
俺は静かに語った。 「役立たず」と罵られながらも、荷物持ちとして必死に働いたこと。 そして――赤龍王(ヴァミ)に遭遇した瞬間、置き去りにされたこと。
「な、なんですって……!? じゃあ、貴方も!?」
「ああ。奴らは常習犯だ。Fランクの身寄りのない冒険者を雇っては、危険地帯での『使い捨ての囮』にしている。名声のあるパーティだから、誰も疑わないのをいいことにな」
俺の言葉に、ハンスは顔面蒼白になった。
「ハンス。お前は生きろ。奴らの悪事を証言できるのは、俺とお前だけだ。いつか必ず、奴らの化けの皮を剥いでやる」
「は、はい……! 俺、諦めません。この命、貴方に救われたものですから!」
重苦しい空気が流れる酒場。 シリアスな復讐の誓いが交わされた――その時だった。
グゥゥゥゥ~~~~~~ッ!!!
キュルルルル~~~~~~ッ!!!
腹の底に響くような、猛獣の咆哮が二つ。 テーブルの空気が凍りついた。 音の出処は、俺の両隣。ヴァミとシルヴィアの腹だ。
「……ご主人様。難しい話は終わりましたか?」
ヴァミが真顔で俺を見る。その目は据わっている。
「お腹が空きました。昨日の夜、あんなに動いたのに、まだ朝ご飯も食べてません」
「……ん。私も。エネルギー切れ……。ご主人様の種だけじゃ、カロリー足りない……」
シルヴィアもテーブルに突っ伏した。 最強種二体の燃費は、俺の想像を遥かに超えているらしい。
「あ、あの! 食事なら俺が奢ります!」
ハンスが慌てて財布を取り出した。
「命の恩人ですから! これくらいさせてください! 店主、ここのメニュー、端から端まで持ってきてくれ!」
「おお、いいのか? 悪いなハンス」
俺は少しホッとした。 しかし、その安堵は数分後に粉砕されることになる。
◇
「おかわりッ! この『唐揚げ』という肉、あと山盛りで十皿!」
「んぐっ、むぐっ……このお魚、おいしい……♡ 焼き魚、追加で二十匹……」
テーブルの上には、空いた皿がタワーのように積み上げられていた。 ヴァミとシルヴィアの食欲は、ブラックホールだ。 店中の在庫が次々と消えていく。
「……あ、あの……ユウさん……」
ハンスの顔色が、青を通り越して土色になっていた。彼の手元の財布は、すでに空っぽだ。
「……足りないか?」
「は、はい……。俺の全財産、銀貨30枚だったんですが……もうとっくに……」
俺は伝票を見た。 そこに書かれている金額は――金貨1枚と銀貨数枚。 一般市民の数ヶ月分の生活費が、たった一食で消し飛んでいた。
「……すまん、ハンス。これは俺が払う」
俺は泣く泣く、ヴァミの巣から持ってきた数少ない金貨を取り出した。 ハンスに奢らせるには、あまりに額が大きすぎた。
「ふぅー! ごちそうさまでしたご主人様♡」
「ん……。美味しかった。……まだ入るけど、我慢する」
満足げに腹をさすり、ケロッとしている二人を見て、俺は頭を抱えた。
(……詰んだ)
オークの牙の報酬なんて、一瞬で消える。 というか一食分ですら足りない。 最強種二体を養うには、Fランク冒険者の稼ぎじゃ絶対的に足りない。 食費破産。それが、俺の目の前にある現実だった。
「ユウさん……これからどうするんですか?」
ハンスが心配そうに聞いてくる。
「……金だ。とにかく金がいる」
俺は懐から、あの「青い石」を取り出した。 商業ギルドで国宝級と認定され、売るに売れなくなった『海神の涙』。
「地道な依頼じゃ無理だ。一発デカい山を当てるか、この『海神の涙』を換金するしかない」
クオーレのような規模の都市では、こんな国宝は扱いきれないし、足がつく。 もっと大きく、もっとカネと物が動く場所でなければ。
「あら? その石ころ、売るんですか?」
ヴァミが口元のソースを舐めながら覗き込んできた。
「なら、海に行きましょうご主人様! 南の方にある、海に面した国!」
「海?」
「はい! 海ならお魚がいっぱいいます! 魚が食べ放題です! それに、その石ころは海の匂いがしますから、故郷なら高く売れるかもしれませんよ?」
確かに。 『海神の涙』というくらいだ。海沿いの国なら、この宝石の価値を正しく理解し、あるいは裏ルートで買い取ってくれる大富豪もいるかもしれない。
「……そうだな。ここにいても、食い扶持は稼げない」
俺は決断した。
「よし、目的地は決まった。商業と貿易の大国――『蒼海公国ヴェネーラ』だ!」
そこは大陸最大の港町であり、金と欲望が渦巻く場所。
「海……。お魚……。楽しみ……♡」
シルヴィアも目を輝かせている。
こうして、俺たちの慌ただしい帰還と、次なる旅立ちが決まった。
翌朝。 俺たちは馬車を一台チャーターし、騒がしい自由都市クオーレを後にした。 目指すは南。青き海と、無限の海産物、そして莫大な富が待つ場所へ。
「待っててね、お魚さんたち! 全部食べ尽くしてあげますから!」
「……ご主人様。馬車の中、狭い……。膝の上、乗っていい? ……ん、種も欲しい……♡」
馬車の中でも、左右からの密着攻撃は止まらない。 俺は嬉しい悲鳴(と将来への不安)を抱えながら、揺れる馬車に身を任せた。