ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
蒼海公国ヴェネーラ。
海の上に築かれた白亜の都は、正午を過ぎてなお、むせ返るような活気に包まれていた。 港から吹き抜ける潮風。運河を行き交う小舟の音。 そして何より――市場(マルシェ)から漂ってくる、強烈なまでの「食欲を刺激する香り」。
「ご主人様! ここがヴェネーラの市場ですね! 素晴らしい匂いです!」
俺の右腕にしがみつく真紅の髪の美女――ヴァミが、目をキラキラと輝かせて尻尾をブンブン振っている。 普段は肉食の彼女だが、昨日の馬車での会話から「海の幸」への期待値が爆上がりしていたのだ。
「聞いていましたよ! この国の魚は、世界一美味しいと! 龍王として、この世の美味なるものは全て味わい尽くさねばなりません! さあ、どこから攻めますか!?」
「……ん。お魚……。いっぱい……♡」
左腕のシルヴィアも負けてはいない。彼女の狼耳はピコピコと動き、視線はすでに屋台に並ぶ巨大なマグロやカニにロックオンされている。
「よし、今日は好きなだけ食っていいぞ。二人とも、我慢してたもんな」
俺が言うと、二人は満面の笑みで俺の頬にキスをした。
「「大好きですご主人様ぁッ!♡」」
俺たちは早速、一番手近な寿司の屋台へと突撃した。 屋台の親父が威勢よく迎えてくれる。
「へいらっしゃい! ヴェネーラの『大トロ』は口の中で溶けるぜぇ!」
「大トロ! それをください! 一番大きいのを!」
ヴァミがカウンターに身を乗り出す。その迫力に親父が一瞬たじろぐが、すぐに職人の顔に戻り、手際よく握ってくれた。 出されたのは、脂が乗ってピンク色に輝くマグロの握り。表面に塗られた特製醤油が艶やかに光っている。
「……じゅるり。い、いただきます……ッ!」
ヴァミは震える手で寿司を掴み、大きな口を開けて放り込んだ。 ハムッ、と一口。 瞬間。 カッ!! と彼女の深紅の瞳が見開かれた。
「――ん、んんんんん~~~~ッッ!?♡♡」
ヴァミは頬を両手で押さえ、身悶えしながら絶叫した。
「な、なんですかこれはァッ!? 噛んでないのに……口に入れた瞬間、魚が『ほどけ』ましたッ! 濃厚な脂の甘みが舌の上で爆発して……この黒い聖水(醤油)と絡み合って、脳みそがとろけそうですぅッ!♡」
「そんなにか?」
「はいぃッ! お肉の暴力的な旨味とは違う、優しくて、でも濃厚で、えっちな味です! 海って……海ってすごいです! ご主人様、おかわり! ここのネタケースにある魚、端から端まで全部握ってください!」
ヴァミの食欲に火がついた。 次々と出される寿司をブラックホールのように吸い込んでいく。
「……ずるい。私も」
シルヴィアも参戦だ。彼女はもっとワイルドだ。 隣の屋台で売っていた『焼き魚(一匹丸ごと)』を手に取ると、頭からガブリと齧り付いた。
「バリッ、ボリッ……ん……♡」
「おいシルヴィ、骨があるぞ!?」
「……平気。骨はカルシウム。……んっ、香ばしい。皮がパリパリで、中がふわふわ……♡」
彼女は硬い骨すらも最強種の顎で噛み砕き、綺麗に平らげてしまった。 さらに、その隣の店で売っていた『生牡蠣』に目をつけ、チュルンと吸い込む。
「んんっ……♡ 濃厚……。海のミルク……♡」
彼女は唇についた白い汁を、艶めかしく指で拭った。 そして、上目遣いで俺を見る。
「……ご主人様のアレみたいに、濃厚でクリーミー……♡ 精力つきそう……♡」
「公衆の面前でその例えはやめろ!」
それからは、まさに爆食いデートだった。 海鮮丼、カニのボイル、エビのフリット、海鮮スープ。 目につく端から買い食いをし、二人の美女は幸せそうに頬を緩め続けた。 ヴァミは口の周りを醤油だらけにして笑い、シルヴィアは尻尾を振って次の獲物を探す。 可愛い。 世界を滅ぼす最強種だということを忘れるくらい、ただの食いしん坊な彼女たちが愛おしい。
だが――現実は非情だ。
「……まいどあり! 金貨一枚になります!」
最後の屋台で会計をした時、俺の腰袋が軽くなった。 中を覗く。 空っぽだ。 ヴァミの巣から持ってきた金貨も、すべて二人の胃袋に消えた。
「……ご主人様? 次はデザートに、あの『真珠貝のアイス』を食べたいのですが」
「……ん。私、イカ焼き食べたい」
二人が期待に満ちた目で俺を見上げてくる。 俺は乾いた笑い声を漏らした。
「はは……悪い、二人とも。これで無一文だ」
「「えっ」」
二人の動きが凍りついた。 世界の終わりを見るような絶望的な顔をするのはやめてくれ。俺だって辛いんだ。
「だ、だからこそ! 今から金を作りに行くんだ。例の『石』を売りにいくぞ」
俺は懐の奥底にしまってある『海神の涙』の感触を確かめた。 もうこれしかない。 この国宝級の宝石を換金し、俺たちは大金持ちになって、死ぬほど寿司を食うんだ。
◇
俺たちは賑やかな市場を離れ、一本奥の通りへと足を踏み入れた。
そこは、表通りの開放的な雰囲気とは少し違う。 石畳は整備されているが、建物は高く、道幅は狭い。 並んでいる店も、看板のない骨董品屋や、会員制のサロン、窓のない倉庫など、どこか閉鎖的な空気が漂っている。
いわゆる「裏通り」だ。 ここでは表の法では裁けない高額な品々――密輸品や禁制品が取引されている。 『海神の涙』のような出所不明の国宝を売るには、うってつけの場所だ。
「……ふあぁ。お腹いっぱいで、眠くなってきました……」
ヴァミがとろんとした目で、俺の肩にもたれかかってきた。 満腹になるとすぐに眠くなる。
「ご主人様、おんぶ……♡」
「おいおい、歩けよ最強種」
「やだぁ……。おっぱい、背中に押し付けてあげますからぁ……♡」
「……ずるい。じゃあ、私だっこ」
シルヴィアも正面から抱き着いてくる。 俺は前後に美女(という名の重り)を抱え、ヨロヨロと裏通りを歩く羽目になった。 まあ、役得といえば役得だが、歩きにくいことこの上ない。
その時だった。
「おっと。そこまでだ」
路地の先から、数人の男たちが現れ、道を塞いだ。 薄汚れたゴロツキではない。 質の良いシャツを着崩し、腰には短剣やナイフを差した、マフィアの下っ端風情の男たちだ。
「ここから先は『組織(ファミリー)』の許可証がないと通れねぇぜ?」
リーダー格の男が、ニヤニヤしながら俺たちを見回した。 そして、俺にくっついているヴァミとシルヴィアに気づき、下卑た口笛を吹く。
「ヒューッ! 上玉連れてんじゃねぇか、兄ちゃん。こんな場所には似合わない極上の女だなぁ」
「へへっ、いい匂いがしやがる。なぁ、通行料代わりに、その姉ちゃんたちと少し遊ばせてくれよ?」
男の一人が、シルヴィアの銀髪に触れようと手を伸ばした。 ピクリ。 俺の腕の中で、二人の空気が変わった。
「……あぁん? せっかくの食後の余韻が台無しです」
ヴァミが目を開ける。その瞳孔は縦に裂け、怒りの炎が揺らめいている。
「汚らわしい。その手を伸ばした瞬間、骨まで炭にしますよ?」
「……邪魔。噛み殺す」
シルヴィアからも、絶対零度の殺気が漏れ出す。 彼女たちの殺意だけで、周囲の気温が乱高下する。
まずい。 ここで彼女たちが暴れたら、この裏通り一帯が消滅してしまう。 俺たちは「穏便に」換金しに来たのだ。
「待て。二人ともステイだ」
俺は二人の肩を強く抱き寄せ、制止した。
「食事の直後に暴れると消化に悪い。それに、こんな雑魚相手に手を汚す必要はない」
「ですが……」
「……ご主人様?」
俺は二人の前に一歩進み出た。 そして、男たちを静かに見据えた。
Lv.145。 人間を超越し、龍と狼の力を取り込んだ俺のステータス。 魔法を使うまでもない。 ただ、俺の中に渦巻く「格」を、少しだけ漏らすだけでいい。
(……消えろ)
俺は言葉に出さず、ただ念じた。 全身から、目に見えるプレッシャーを放射する。 それは殺気とも違う。生物としての位階(ランク)の差を、魂に直接理解させる「威圧」。
ドォォォォンッ……!!
大気すら震えるほどの重圧が、男たちを襲った。
「あ、あ……あが……っ!?」
男たちの顔が引きつり、白目を剥いた。 彼らの本能が警鐘を鳴らしたのだ。目の前にいるのは、人間ではない。触れれば死ぬ、絶対的な捕食者だと。
ジョボボボボ……。
水音が響く。 男たちは全員、その場で失禁し、泡を吹いて崩れ落ちた。 気絶している。恐怖のあまり、脳がシャットダウンしたのだ。
「……汚いな。行こうか」
俺は冷ややかに言い捨て、気絶した男たちを跨いで進もうとした。 ヴァミとシルヴィアが、うっとりとした顔で俺を見上げている。
「ご主人様……素敵です♡ 指一本触れずに倒すなんて……♡」
「ん……。強いオス……。好き……♡」
二人に惚れ直されたのはいいが、これで道は開けた――はずだった。
パチ、パチ、パチ……。
路地の奥から、乾いた拍手の音が聞こえてきた。 俺は足を止めた。 闇の中から現れたのは、先ほどのチンピラとは明らかに雰囲気の違う、黒いスーツを着た男たちだった。 三人。全員が隙のない動きをしている。かなりの使い手だ。
「お見事です。暴力に訴えず、気迫だけで人を制するとは。……只者ではありませんな」
真ん中の、執事のような風貌の男が恭しく一礼した。
「申し訳ありません。うちの末端の者が、お客様に粗相をいたしました」
「……あんたたちは?」
「この街の秩序を管理する者……とでも申しましょうか」
黒服の男は、俺の懐に、チラリと視線を走らせた。
「我々の『ボス』が、貴方様にお会いしたがっておられます。……それに、懐に『素晴らしいもの』をお持ちのようだ」
「……!」
気づいているのか。 俺は服の上から石を押さえた。 ただの石ころに見せかけているが、やはりそこから漏れ出る微弱な魔力を、プロの目は見逃さなかったらしい。 あるいは、俺たち三人が放つ異質なオーラそのものを嗅ぎつけたか。
「拒否権は?」
「ございますが……その石を『正当な価格』で売りたいのであれば、我々を通すのが一番かと。それに、ボスは貴方様のような『規格外』な方を歓迎しております」
男は敵意を見せず、ただ静かに道を空け、奥を指し示した。 罠かもしれない。 だが、最強種二人を連れた今の俺に、恐れるものなどない。それに、この街の支配者とコネができるなら、願ってもないチャンスだ。
「……分かった。案内してくれ」
「賢明なご判断に感謝します。こちらへ」
俺たちは黒服たちに導かれ、裏路地のさらに奥へと進んだ。 一見すると普通の高級レストラン。 だが、その厨房の奥にある隠し扉を抜けると、そこには下へと続くエレベーターがあった。
ガゴォォォ……。
重い音と共に箱が下降していく。 やがて扉が開くと、そこには――地上の喧騒を忘れさせる、別世界が広がっていた。
「うわぁ……キラキラしてます!」
「……眩しい」
地下カジノ。 魔法のシャンデリアが輝き、黄金の装飾が施された広大なホール。 着飾った紳士淑女が、カードやルーレットに興じている。 欲望と金、そして享楽の匂いが充満する、大人の遊び場だ。
「VIPルームへどうぞ」
俺たちはホールを抜け、重厚な扉が開かれる。
部屋の中は薄暗く、甘い香の匂いが漂っていた。 深紅の絨毯が敷き詰められた部屋の中央。 革張りのソファに、一人の女が座っていた。
長い脚を組み、スリットの入ったドレスから白磁のような太ももを覗かせている。 手には長いキセル。 紫煙をくゆらせながら、彼女は妖艶な笑みを俺たちに向けた。
「ようこそ、ヴェネーラへ。そして私の城へ」
「……ふふ、いい匂いがするわね。潮の香りと、血の匂い。そして……」
彼女はキセルの先を、俺の胸元へと向けた。
「その懐の『石』。……私が買い取ってあげようか?」
街の支配者、裏社会の女帝――ネレイド。 彼女との出会いが、俺たちの運命を、そして懐事情を大きく変えることになる。