ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
蒼海公国ヴェネーラを出発して数日。
海沿いの快適な気候とは打って変わり、俺たちの目の前には、赤茶けた大地と噴煙を上げる火山が聳え立っていた。
その火山の麓。
常に噴き出す蒸気と、金属を打つ重厚な音が響き渡る場所。
大陸有数の工業地帯にして、ドワーフ族が治める国――『鋼鉄都市アイゼン』だ。
「……あ、暑い……」
街の入り口に立った瞬間、シルヴィアがぐったりと肩を落とした。
彼女は氷雪地帯を縄張りとする神狼フェンリルの化身だ。本来なら環境適応能力は高いはずだが、この街特有の「地熱」と「湿気」は苦手のようだった。
「ご主人様……。私、溶けちゃう……。アイスみたいに、ドロドロになっちゃう……」
シルヴィアは暑さに耐えかねて、着ていたローブの前を大きくはだけさせた。
その下にあるのは、ヴェネーラで買った薄手のキャミソールと、スリットの入ったスカートだ。
汗ばんだ白い肌が、蒸気に濡れて艶めかしく光っている。豊かな胸の谷間を汗が伝い落ちるのが見えた。
「おいおい、そんなにはだけるなよ。目のやり場に困るだろ」
「……ん。でも、暑い。ご主人様、冷やして……」
彼女は俺の腕にしがみつき、ひんやりとした自分の肌を押し付けてくる。
役得ではあるが、周囲のドワーフたちからの視線が痛い。
「だらしないですねぇ、駄犬は。この程度の気温で音を上げるなんて」
対照的に、元気いっぱいなのがヴァーミリオンだ。
赤龍王である彼女にとって、高熱はむしろ好環境らしい。
「素晴らしいです! この硫黄の匂い、肌を焦がす熱気! 実家を思い出して落ち着きますねぇ! ああ、久しぶりにマグマ浴がしたいです!」
深紅のドレスを翻し、彼女はスキップでもしそうな勢いだ。
「元気なのはいいけど、あまり目立つなよ? ここは俺たちの庭じゃないんだからな」
「分かっていますよ。ほら、駄犬もシャキッとしなさい」
「……うぅ。ご主人様おんぶして……」
俺はバテバテのシルヴィアの腰を支えながら、蒸気機関と歯車の回る音が鳴り止まない、鋼鉄の街へと足を踏み入れた。
◇
アイゼンのメインストリートは、多くの冒険者や商人で賑わっていた。
だが、今日の街の空気はいつもと少し違っていた。
人々が道の両脇に寄り、何かを待ち構えるようにざわついているのだ。
「なんだ? 祭りか?」
俺が首をかしげていると、遠くからファンファーレのような音が聞こえてきた。
人々の歓声が上がる。
「来たぞ! 勇者様だ!」
「『暁の剣』の凱旋だ!」
「今度はベヒーモスを討伐してくれるんだってよ!」
その単語を聞いた瞬間、俺の足が止まった。
心臓がドクンと嫌な音を立てる。
「……チッ。タイミングが悪かったな」
俺はとっさにフードを目深に被り、ヴァミとシルヴィアを手招きして路地裏の影に身を隠した。
人垣の隙間から、パレードの様子を伺う。
やってきたのは、煌びやかな装備に身を包んだ一団だった。
先頭を歩くのは、光り輝く聖剣を腰に差した金髪の男。
勇者アレクシオス。
整った顔立ちに、爽やかな笑みを浮かべ、民衆に手を振っている。
かつて俺を「無能」と罵り、ヴァミの餌にしようとした張本人だ。
その隣には、派手な杖を持った魔法使いの女、エレナ。
そして、最後尾には清楚な白衣を纏った美女――聖女セレスが、慈愛に満ちた微笑みを振りまいていた。
「(……相変わらず、外面だけはいい連中だ)」
俺の腸(はらわた)が煮えくり返るような感覚を覚える。
だが、今の俺の目は、彼らの華やかな姿ではなく、別の一点に釘付けになっていた。
大柄な男、重戦士ガルドだ。
全身を重装甲で固めた巨漢の彼が、今日は武器ではなく、ある「荷物」を大事そうに肩に担いでいた。
「……あれは」
それは、一見するとただの背負いカバンのように見える。
だが、違う。
カバンの隙間から、禍々しいほどに透き通った紫色の結晶体(クリスタル)が覗いている。
機械仕掛けの台座に埋め込まれた、奇妙な装置。
既視感があった。
嫌な汗が背中を伝う。
――『おい、荷物持ち。お前はこれを大事に持ってろ』
かつて、俺が彼らに雇われ、ヴァミの住処へ向かわされた時。
ガルドに無理やり背負わされたのが、まさに「あれ」と同じ形状の装置だった。
当時は、ただの補給物資か、結界を張るための魔導具だと思っていた。
重くて、冷たくて、背負っているだけで体力を削られるような不気味な荷物。
俺が足を折られ、囮として置き去りにされた時には、その装置は勇者達に回収されていた。
「(あの装置は何だ?)」
違和感がある。
街中だというのに、かなり慎重に扱っているように見えた。
「……ご主人様?」
俺の殺気を感じ取ったのか、シルヴィアが心配そうに顔を覗き込んできた。
ヴァミも、パレードの方を睨みつけ、目を細めた。
「あれが、旦那様の敵ですね? ……今すぐブレスで消し飛ばしましょうか?」
「待て。ここで暴れたら一般人が巻き込まれる」
俺はヴァミを制した。
パレードは歓声の中、街の中心部にある領主の館の方へと消えていった。
「……場所を変えよう」
俺たちは人混みを離れ、少し寂れた裏通りの宿屋に入った。
部屋に入り、人払いを済ませると、俺は二人に問いかけた。
「なぁ、さっきのガツい男が背負っていた『装置』……どう見えた?」
最強種である彼女たちなら、俺には分からない「魔力的な何か」を感じ取れたかもしれない。
シルヴィアが眉をひそめた。
「……気持ち悪かった」
「気持ち悪い?」
「ん。あれ、ただの箱じゃない。……周りの空気を、無理やり吸い込んでた。掃除機みたいに」
ヴァミも頷く。
「ええ。微弱ですが、周囲のマナ(魔力)を強制的に吸収し、結晶内部に蓄積する術式が組み込まれているようでした。自然界の摂理に反する、下品な魔道具ですね」
「魔力を、吸収する……?」
俺の中で、点と点が繋がりかけた。
俺が囮にされた時。場所は赤龍王(ヴァミ)の住処の近くだった。
そして今回、彼らが狙っているのは、剛獣ベヒーモスの住処だ。
最強種の住処には、強大な魔力が満ちている。
もし、彼らの目的が「討伐」そのものではなく、その場に満ちる「高純度な魔力」を回収することだとしたら?
「(俺を囮にしたのは、単に逃げる時間を稼ぐためだけじゃなかったのか?)」
囮が最強種の注意を引きつけている数分間。
その時間を利用して、あの装置で魔力を回収し、用が済んだら逃げる。
俺は「捨て駒」であると同時に、「回収作業のための時間稼ぎ」だったのではないか。
そして今、ガルドがあの装置を持っているということは、まだ「使い捨ての荷物持ち」を雇っていないということだ。
これから現地で調達するつもりなのだろう。
何も知らない、金に困った弱者を。かつての俺のような人間を。
「……ふざけやがって」
ドンッ!
俺は壁を殴りつけた。
推測が正しければ、彼らは冒険者ですらない。ただのハイエナだ。
最強種という災害を利用し、人の命を犠牲にして私腹を肥やす、寄生虫だ。
「許さない。……絶対に、邪魔をしてやる」
俺の怒りに呼応するように、ヴァミの髪が炎のように揺らめき、シルヴィアの周囲の空気が凍てついた。
「いいですね。その顔です、旦那様」
ヴァミが妖艶に笑う。
「私たちも協力しますよ。旦那様をコケにした連中に、本物の『地獄』を見せてあげましょう」
「……ん。私も。ご主人様の敵は、私の敵。噛み殺す」
心強い嫁たちの言葉に、俺は頷いた。
「ああ。頼むぞ、二人とも」
俺は決意を新たにした。
まずは情報収集だ。
奴らがいつ、誰を雇い、どのルートでベヒーモスの元へ向かうのか。
それを突き止め、最悪のタイミングで介入してやる。
俺たちは宿を出て、情報が集まる場所――武器屋や酒場を回ることにした。
そこで俺たちは、一人の少女と運命的な出会いを果たすことになる。
鋼と熱の都市アイゼン。
この灼熱の街で、過去の因縁を断ち切るための戦いが、静かに幕を開けた。