※この作品はR-18です。

ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件   作:kokoko146666

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第20話:鋼と熱の都市アイゼン

 蒼海公国ヴェネーラを出発して数日。

 海沿いの快適な気候とは打って変わり、俺たちの目の前には、赤茶けた大地と噴煙を上げる火山が聳え立っていた。

 

 その火山の麓。

 常に噴き出す蒸気と、金属を打つ重厚な音が響き渡る場所。

 大陸有数の工業地帯にして、ドワーフ族が治める国――『鋼鉄都市アイゼン』だ。

 

「……あ、暑い……」

 

 街の入り口に立った瞬間、シルヴィアがぐったりと肩を落とした。

 彼女は氷雪地帯を縄張りとする神狼フェンリルの化身だ。本来なら環境適応能力は高いはずだが、この街特有の「地熱」と「湿気」は苦手のようだった。

 

「ご主人様……。私、溶けちゃう……。アイスみたいに、ドロドロになっちゃう……」

 

 シルヴィアは暑さに耐えかねて、着ていたローブの前を大きくはだけさせた。

 その下にあるのは、ヴェネーラで買った薄手のキャミソールと、スリットの入ったスカートだ。

 汗ばんだ白い肌が、蒸気に濡れて艶めかしく光っている。豊かな胸の谷間を汗が伝い落ちるのが見えた。

 

「おいおい、そんなにはだけるなよ。目のやり場に困るだろ」

 

「……ん。でも、暑い。ご主人様、冷やして……」

 

 彼女は俺の腕にしがみつき、ひんやりとした自分の肌を押し付けてくる。

 役得ではあるが、周囲のドワーフたちからの視線が痛い。

 

「だらしないですねぇ、駄犬は。この程度の気温で音を上げるなんて」

 

 対照的に、元気いっぱいなのがヴァーミリオンだ。

 赤龍王である彼女にとって、高熱はむしろ好環境らしい。

 

「素晴らしいです! この硫黄の匂い、肌を焦がす熱気! 実家を思い出して落ち着きますねぇ! ああ、久しぶりにマグマ浴がしたいです!」

 

 深紅のドレスを翻し、彼女はスキップでもしそうな勢いだ。

 

「元気なのはいいけど、あまり目立つなよ? ここは俺たちの庭じゃないんだからな」

 

「分かっていますよ。ほら、駄犬もシャキッとしなさい」

 

「……うぅ。ご主人様おんぶして……」

 

 俺はバテバテのシルヴィアの腰を支えながら、蒸気機関と歯車の回る音が鳴り止まない、鋼鉄の街へと足を踏み入れた。

 

 ◇

 

 アイゼンのメインストリートは、多くの冒険者や商人で賑わっていた。

 だが、今日の街の空気はいつもと少し違っていた。

 人々が道の両脇に寄り、何かを待ち構えるようにざわついているのだ。

 

「なんだ? 祭りか?」

 

 俺が首をかしげていると、遠くからファンファーレのような音が聞こえてきた。

 人々の歓声が上がる。

 

「来たぞ! 勇者様だ!」

「『暁の剣』の凱旋だ!」

「今度はベヒーモスを討伐してくれるんだってよ!」

 

 その単語を聞いた瞬間、俺の足が止まった。

 心臓がドクンと嫌な音を立てる。

 

「……チッ。タイミングが悪かったな」

 

 俺はとっさにフードを目深に被り、ヴァミとシルヴィアを手招きして路地裏の影に身を隠した。

 人垣の隙間から、パレードの様子を伺う。

 

 やってきたのは、煌びやかな装備に身を包んだ一団だった。

 

 先頭を歩くのは、光り輝く聖剣を腰に差した金髪の男。

 勇者アレクシオス。

 整った顔立ちに、爽やかな笑みを浮かべ、民衆に手を振っている。

 かつて俺を「無能」と罵り、ヴァミの餌にしようとした張本人だ。

 

 その隣には、派手な杖を持った魔法使いの女、エレナ。

 

 そして、最後尾には清楚な白衣を纏った美女――聖女セレスが、慈愛に満ちた微笑みを振りまいていた。

 

「(……相変わらず、外面だけはいい連中だ)」

 

 俺の腸(はらわた)が煮えくり返るような感覚を覚える。

 だが、今の俺の目は、彼らの華やかな姿ではなく、別の一点に釘付けになっていた。

 

 大柄な男、重戦士ガルドだ。

 全身を重装甲で固めた巨漢の彼が、今日は武器ではなく、ある「荷物」を大事そうに肩に担いでいた。

 

「……あれは」

 

 それは、一見するとただの背負いカバンのように見える。

 だが、違う。

 カバンの隙間から、禍々しいほどに透き通った紫色の結晶体(クリスタル)が覗いている。

 機械仕掛けの台座に埋め込まれた、奇妙な装置。

 

 既視感があった。

 嫌な汗が背中を伝う。

 

 ――『おい、荷物持ち。お前はこれを大事に持ってろ』

 

 かつて、俺が彼らに雇われ、ヴァミの住処へ向かわされた時。

 ガルドに無理やり背負わされたのが、まさに「あれ」と同じ形状の装置だった。

 

 当時は、ただの補給物資か、結界を張るための魔導具だと思っていた。

 重くて、冷たくて、背負っているだけで体力を削られるような不気味な荷物。

 俺が足を折られ、囮として置き去りにされた時には、その装置は勇者達に回収されていた。

 

「(あの装置は何だ?)」

 

 違和感がある。

 街中だというのに、かなり慎重に扱っているように見えた。

 

「……ご主人様?」

 

 俺の殺気を感じ取ったのか、シルヴィアが心配そうに顔を覗き込んできた。

 ヴァミも、パレードの方を睨みつけ、目を細めた。

 

「あれが、旦那様の敵ですね? ……今すぐブレスで消し飛ばしましょうか?」

 

「待て。ここで暴れたら一般人が巻き込まれる」

 

 俺はヴァミを制した。

 パレードは歓声の中、街の中心部にある領主の館の方へと消えていった。

 

「……場所を変えよう」

 

 俺たちは人混みを離れ、少し寂れた裏通りの宿屋に入った。

 部屋に入り、人払いを済ませると、俺は二人に問いかけた。

 

「なぁ、さっきのガツい男が背負っていた『装置』……どう見えた?」

 

 最強種である彼女たちなら、俺には分からない「魔力的な何か」を感じ取れたかもしれない。

 

 シルヴィアが眉をひそめた。

 

「……気持ち悪かった」

 

「気持ち悪い?」

 

「ん。あれ、ただの箱じゃない。……周りの空気を、無理やり吸い込んでた。掃除機みたいに」

 

 ヴァミも頷く。

 

「ええ。微弱ですが、周囲のマナ(魔力)を強制的に吸収し、結晶内部に蓄積する術式が組み込まれているようでした。自然界の摂理に反する、下品な魔道具ですね」

 

「魔力を、吸収する……?」

 

 俺の中で、点と点が繋がりかけた。

 

 俺が囮にされた時。場所は赤龍王(ヴァミ)の住処の近くだった。

 そして今回、彼らが狙っているのは、剛獣ベヒーモスの住処だ。

 

 最強種の住処には、強大な魔力が満ちている。

 もし、彼らの目的が「討伐」そのものではなく、その場に満ちる「高純度な魔力」を回収することだとしたら?

 

「(俺を囮にしたのは、単に逃げる時間を稼ぐためだけじゃなかったのか?)」

 

 囮が最強種の注意を引きつけている数分間。

 その時間を利用して、あの装置で魔力を回収し、用が済んだら逃げる。

 俺は「捨て駒」であると同時に、「回収作業のための時間稼ぎ」だったのではないか。

 

 そして今、ガルドがあの装置を持っているということは、まだ「使い捨ての荷物持ち」を雇っていないということだ。

 これから現地で調達するつもりなのだろう。

 何も知らない、金に困った弱者を。かつての俺のような人間を。

 

「……ふざけやがって」

 

 ドンッ!

 俺は壁を殴りつけた。

 推測が正しければ、彼らは冒険者ですらない。ただのハイエナだ。

 最強種という災害を利用し、人の命を犠牲にして私腹を肥やす、寄生虫だ。

 

「許さない。……絶対に、邪魔をしてやる」

 

 俺の怒りに呼応するように、ヴァミの髪が炎のように揺らめき、シルヴィアの周囲の空気が凍てついた。

 

「いいですね。その顔です、旦那様」

 

 ヴァミが妖艶に笑う。

 

「私たちも協力しますよ。旦那様をコケにした連中に、本物の『地獄』を見せてあげましょう」

 

「……ん。私も。ご主人様の敵は、私の敵。噛み殺す」

 

 心強い嫁たちの言葉に、俺は頷いた。

 

「ああ。頼むぞ、二人とも」

 

 俺は決意を新たにした。

 まずは情報収集だ。

 奴らがいつ、誰を雇い、どのルートでベヒーモスの元へ向かうのか。

 それを突き止め、最悪のタイミングで介入してやる。

 

 俺たちは宿を出て、情報が集まる場所――武器屋や酒場を回ることにした。

 そこで俺たちは、一人の少女と運命的な出会いを果たすことになる。

 

 鋼と熱の都市アイゼン。

 この灼熱の街で、過去の因縁を断ち切るための戦いが、静かに幕を開けた。

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