※この作品はR-18です。

ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件   作:kokoko146666

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第21話:ドワーフの借金少女

 鋼鉄都市アイゼン。

 活火山の麓に築かれたこの街は、地面そのものが熱を持っているかのように暖かい。いや、熱い。

 あちこちから蒸気が噴き出し、巨大な歯車が回る音が響き、空気には硫黄と鉄の匂いが混じり合っている。

 

 そんな「溶鉱炉通り」と呼ばれるメインストリートの一角にある屋台街で、俺たちは足を止めていた。

 

「はぁ……はぁ……。ご主人様、暑い……。私、蒸発しちゃう……」

 

 銀髪の美女――シルヴィアが、俺の背中にだらりともたれかかっている。

 極寒の地を統べるフェンリルの化身である彼女にとって、この街の気候は天敵だ。

 彼女は暑さに耐えかねて、ヴェネーラで買った薄手の白いキャミソールの胸元をパタパタと仰いでいる。

 汗ばんだ白い肌が、街の灯りを受けて艶めかしく光っていた。首筋から豊かな胸の谷間へと、一筋の汗がツーっと伝い落ちるのが見える。

 

「我慢しろシルヴィ。この先に美味いものがあるらしいから」

 

「……美味いもの。……ん。なら、頑張る」

 

 食い意地だけで意識を保っているようだ。

 対照的に、元気いっぱいなのが右隣の赤龍王、ヴァーミリオン(ヴァミ)だ。

 

「ふふふっ! 素晴らしい熱気ですね! 肌がジリジリと焦げるようなこの感覚、龍の血が騒ぎます!」

 

 深紅のドレスを翻し、彼女は屋台街を闊歩する。

 その視線が、ある一点で止まった。

 

「旦那様! あれです! あの暴力的な匂い!」

 

 彼女が指差した先には、真っ赤に焼けた溶岩石の上で、分厚い肉塊を焼いている屋台があった。

 ジュウウウウウッ!! という食欲をそそる音と、鼻の奥を刺激する香辛料(スパイス)の香り。

 

「いらっしゃい! アイゼン名物『マグマ焼きステーキ』だよ! 激辛ソースたっぷりで、食えば火を吹く美味さだ!」

 

 ドワーフの店主が威勢よく叫ぶ。

 

「それ! 一番大きいのを三つください!」

 

 ヴァミが即答し、俺の財布(ネレイド印の白金貨袋)を取り出した。

 数分後。

 俺たちの目の前には、顔ほどの大きさがある骨付き肉が置かれた。溶岩プレートの上で、脂が跳ね踊っている。

 

「いただきますッ!」

 

 ヴァミはナイフもフォークも使わず、骨の両端を掴んで豪快にかぶりついた。

 

「んむッ! んふぅッ……!♡」

 

 彼女の深紅の瞳が見開かれる。

 

「あ、熱いッ! でも、美味しいですぅッ!♡ 噛んだ瞬間に、熱々の肉汁が口の中で爆発しました! それにこのソース! 舌が痺れるような辛さが、肉の旨味を極限まで引き立てています!」

 

 ハフハフと熱い息を吐きながら、彼女は次々と肉を咀嚼していく。

 口の周りを赤いソースと肉汁でテカテカに光らせ、恍惚の表情を浮かべる姿は、まさに捕食者。ワイルドでありながら、どこか扇情的な色気がある。

 

「旦那様もどうぞ! 口の中が火事になりますよ!」

 

「お、おう……」

 

 俺も一口食べてみる。

 辛い! でも美味い!

 最強種基準の激辛だが、この熱気の中で汗をかきながら食うには最高だ。

 

「……ご主人様。私、無理。熱いの、やだ」

 

 シルヴィアがテーブルに突っ伏して抗議する。

 彼女の前には、まだ手付かずのステーキがあるが、熱気だけで参っているようだ。

 

「分かってるよ。ほら、こっちも頼んでおいたぞ」

 

 俺は別の屋台で買ってきた飲み物を、彼女の火照った頬に押し当てた。

 ヒヤッ。

 

「んひゃっ!?」

 

 シルヴィアが可愛らしい悲鳴を上げて飛び起きる。

 俺が差し出したのは、ガラスの器に入った、鮮やかな青色の液体だった。中にはクラッシュアイスと、凍らせた果実がたっぷりと入っている。

 

「『氷結晶のフルーツ酒』だ。まあ、アルコール抜きのジュースだけどな」

 

 地下の氷室で冷やされたそれは、グラスの表面に結露を作り、見るからに涼しげだ。

 

「……冷たい。……氷」

 

 シルヴィアの目が輝いた。

 彼女は両手でグラスを包み込むように持ち、ストローに口をつけた。

 

 ちゅぅぅぅ……。

 

「んっ……♡」

 

 一口飲んだ瞬間、彼女の身体がビクンと跳ねた。

 

「……生き返る……♡ 冷たいのが、喉を通って……お腹の中に染み渡る……♡」

 

 彼女は恍惚とした顔で、グラスの中の氷を口に含み、舌の上でコロコロと転がした。

 ガリッ、と氷を噛み砕く音。

 

「……ん。美味しい。甘酸っぱくて、ひんやりして……。ご主人様、これ好き……♡」

 

 汗で張り付いた髪をかき上げ、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。

 その仕草が無自覚にエロい。

 周囲のドワーフたちが、肉を焼く手をとめて彼女に見惚れているのが分かる。

 

「お前ら、本当に美味そうに食うなぁ」

 

 俺は苦笑しながら、二人の最強種が幸せそうに食事をする姿を眺めた。

 この平和な時間。

 これから起こるであろう面倒ごとの前に、少しでも英気を養っておいてやりたい。

 

 ◇

 

 腹ごなしも兼ねて、俺たちは「職人街」へと足を向けた。

 目的は、ヴァミが持っている魔剣のメンテナンスだ。

 以前、彼女の巣から持ち出した国宝級の剣だが、先のレヴィアタン戦での激しい戦闘で、わずかに刃こぼれを起こしていた。

 

「いらっしゃい! うちの剣は折れないよ!」

「最新のミスリル加工だ! 見てってくれ!」

 

 大通りには立派な店構えの武器屋が並んでいる。

 だが、俺のスキル『野生の勘』は、それらの店をことごとくスルーしていた。

 観光客向けの大量生産品か、腕はいいが魂がこもっていない品ばかりだ。

 

「……こっちだ」

 

 俺は賑やかな通りを外れ、薄暗い路地裏へと入っていった。

 煤と鉄錆の匂いが濃くなる。

 その突き当たりに、古びた看板を掲げた小さな工房があった。

 

 『赤鉄の槌(レッド・ハンマー)』。

 

 建物はボロボロだが、そこから聞こえてくる音は違った。

 

 カァンッ、カァンッ、カァンッ……!

 

 一定のリズムで、力強く、そして繊細に鋼を打つ音。

 迷いのないハンマーの響きが、職人の腕を雄弁に物語っている。

 

「ここなら、任せられそうだ」

 

 俺は工房の扉を開けた。

 

「たのもう」

 

 中は熱気と火の粉が舞っていた。

 部屋の中央にある金床に向かい、一心不乱に槌を振るっている小さな背中があった。

 

「いらっしゃい! ……って言いたいところだが、今は手が離せねぇ! そこに座って待っててくれ!」

 

 振り向かずに叫んだ声は、鈴を転がしたように高いが、男勝りな口調だった。

 俺たちは言われた通り、隅にある木箱に腰掛けて作業が終わるのを待った。

 

 数分後。

 ジュウウウッ……と、焼入れの水蒸気が上がり、作業が終わったようだ。

 

「ふぅ……。待たせたな、客さ……ん?」

 

 額の汗を拭いながら、その職人がこちらを振り返った。

 俺たちは一瞬、言葉を失った。

 

 ドワーフ族特有の、子供のように低い身長。140センチほどだろうか。

 炎のような赤い髪をツインテールに結び、顔には煤がついている。

 だが、何よりも目を引いたのは――その身体つきだ。

 

 油まみれの作業着(タンクトップとオーバーオール)の上からでも分かる、暴力的なまでの爆乳。

 小柄な体躯には不釣り合いなほど巨大な双丘が、サスペンダーに食い込み、今にも弾け飛びそうな存在感を放っている。

 動くたびにボヨンボヨンと揺れるそれは、ヴァミのそれにも匹敵する質量だ。

 

「……なんだよ。人の顔ジロジロ見て」

 

 彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 あどけない顔立ちに、そばかす。可愛い。

 まさに「ロリ巨乳」というジャンルを体現したようなドワーフの少女だった。

 

「いや、すまん。いい音をさせていたから、つい見とれてしまってな」

 

「ふん、お世辞はいいさ。……で? 何の用だい? 見ての通り、うちはしがない修理屋だ。新品が欲しいなら大通りに行きな」

 

「修理だ。こいつを見てくれ」

 

 俺はヴァミから預かった魔剣を差し出した。

 少女は面倒くさそうに剣を受け取り――鞘から抜いた瞬間、その表情が一変した。

 

「ッ!? な、なんだこれ……!?」

 

 彼女の大きな瞳が見開かれ、顔を極限まで刀身に近づける。

 

「こいつは……『ヒヒイロカネ』と『龍の牙』の合金か!? それに、この紋様……千年前の失われた術式じゃねぇか! すっげぇ……! 本物の国宝だ!」

 

 少女の手が震えている。恐怖ではなく、職人としての歓喜で。

 

「すげぇ歪み方をしてるな……。並の鍛冶師じゃ触るのも怖がる代物だ。……でも、私なら直せる」

 

 彼女はニヤリと笑った。

 

「やらせてくれ! 頼む! こんなすげぇ剣、触らせてもらえるだけで光栄だ!」

 

「ああ、頼む。いくらだ?」

 

「金なんかいらねぇよ! ……と言いたいところだが、材料費と炭代だけでいい。あとの技術料はサービスだ!」

 

 彼女は即座に作業に取り掛かった。

 その手際は、まさに神業だった。

 魔力を帯びたハンマーを振るい、硬度な刀身を飴細工のように調整していく。ヴァミも「ほう、なかなかやりますね」と感心している。

 

 作業の間、俺は彼女に話しかけた。

 

「あんた、名前は?」

 

「ガーネットだ。親父の後を継いで、この店をやってる」

 

「腕は超一流に見えるが……なんでこんな路地裏に?」

 

 大通りに店を構えれば、行列ができるレベルの腕前だ。

 ガーネットの手が、一瞬止まった。

 

「……借金だよ」

 

「借金?」

 

「ああ。親父が死んだ後、悪徳商会に騙されてな。親父が残した借金ごと、この店を乗っ取られそうになってるんだ」

 

 彼女は悔しそうに唇を噛んだ。

 

「腕には自信がある。でも、いい材料を買う金もねぇし、宣伝もできねぇ。ジリ貧さ」

 

 ありがちな話だ。だが、才能ある若者が搾取されているのを見るのは胸糞が悪い。

 

「……でも、大丈夫だ!」

 

 ガーネットは明るい声を出して、剣を研ぎ上げた。

 

「今度、デカい仕事が入ったからな! 前金だけでも借金の半分は返せるし、成功報酬が入れば店を買い戻せる!」

 

 彼女はキラキラした目で俺を見た。

 

「へぇ、よかったな。どんな依頼だ?」

 

「へへっ、驚くなよ? あの有名な勇者パーティ『暁の剣』からの直接依頼だ!」

 

 ――ピクリ。

 

 その名を聞いた瞬間、俺とヴァミ、シルヴィアの空気が凍りついた。

 

「……なんだって?」

 

「だから、勇者様だよ! 今度行われる『ベヒーモス討伐』のサポートメンバーに選ばれたんだ!」

 

 ガーネットは誇らしげに胸を張った。巨乳が揺れる。

 

「私の腕を見込んでくれたんだ。『君のような優秀な鍛冶師が必要だ』ってさ!」

 

「具体的には、何をするんだ?」

 

 俺は努めて冷静に聞いた。

 嫌な予感がする。

 あのクズどもが、単に腕がいいからという理由だけで、現地のドワーフを雇うはずがない。

 

「ああ。討伐中に武器が折れた時の予備戦力……ってのもあるけど、メインは別だ」

 

 ガーネットは店の奥から、一つの「荷物」を持ってきた。

 それは、俺が昼間にガルドが背負っているのを見た、あの装置に似ていた。

 機械仕掛けの台座に、紫色の結晶が埋め込まれている。

 

「これさ。『特殊な魔力計測器』だって」

 

「……計測器?」

 

「ああ。ベヒーモスの弱点を探るために、戦闘中の魔力データを取る必要があるらしい。私がこれを背負って、ベヒーモスの近くでデータを記録するんだ」

 

 彼女は無邪気に説明する。

 

「勇者様たちが戦って注意を引きつけている間、私が物陰からこいつを守っていればいい。戦闘には参加しなくていいし、安全だって言われたよ」

 

「……ッ!」

 

 俺は奥歯を噛み締めた。

 嘘だ。

 全部、デタラメだ。

 

 ヴァミとシルヴィアが言っていた。あの装置は「計測器」ではない。「吸収機」だと。

 そして、「ベヒーモスの近くで装置を守る」ということは――。

 

 ベヒーモスは、自分の魔力を吸い取る不快な装置を、真っ先に狙うに決まっている。

 つまり、彼女は「観測係」ではない。

 「魔力タンクの運搬係」兼「最強種から逃げるための囮」だ。

 

「……ガーネット」

 

 俺は彼女の肩を掴んだ。

 

「その依頼、断れ」

 

「え?」

 

 ガーネットがきょとんとする。

 

「やめておけ。あいつらは信用できない。お前を囮にする気だ」

 

 俺は真剣な眼差しで訴えた。

 かつての俺のように、使い捨てにされる未来が見える。

 

「何を……言ってんだよ」

 

 ガーネットが俺の手を振り払った。

 彼女の表情が硬くなる。

 

「勇者様だぞ? 世界を救う英雄だぞ? そんなことするわけないだろ!」

 

「あいつらは外面がいいだけだ。裏じゃ何をしてるか分からない。その装置だって、本当に計測器かどうかも怪しいぞ」

 

「……あんた、部外者のくせに何が分かるんだよ!」

 

 彼女は声を荒らげた。

 

「私は……私はこの仕事に賭けてるんだ! この店は、親父との思い出の場所なんだ! これを逃したら、店を奪われちまうんだよ!」

 

 彼女の瞳に涙が滲んでいた。

 切羽詰まっている。

 溺れる者は藁をも掴む。彼女にとって、勇者からの依頼は、暗闇に差し込んだ唯一の希望の光なのだ。

 それを、ポッと出の冒険者に否定されて、納得できるはずがない。

 

「……修理は終わった。代金はいらねぇから、帰ってくれ」

 

 ガーネットはヴァミの剣を突き返し、背を向けた。

 

「明日の朝、出発だ。……邪魔しないでくれよな」

 

 彼女は店奥の居住スペースへと引っ込み、乱暴に扉を閉めた。

 残されたのは、俺たち三人だけ。

 

「……止められませんでしたね」

 

 ヴァミが静かに呟いた。

 

「……ん。あの子、死ぬ気?」

 

 シルヴィアが悲しげに扉を見つめる。

 

「……いや」

 

 俺は剣を腰に差し、工房を出た。

 夕闇が迫る空を見上げる。

 

「死なせないさ。……ガーネットも、ベヒーモスも」

 

 言葉だけじゃ届かないなら、行動で示すしかない。

 俺たちのやることは決まった。

 

「行くぞ。明日の朝、あいつらの『遠足』に、招待されてないゲストとして参加してやる」

 

 俺の言葉に、二人の最強種がニヤリと笑った。

 復讐の準備は整った。

 あとは、舞台に上がるだけだ。

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