ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
鋼鉄都市アイゼン。
活火山の麓に築かれたこの街は、地面そのものが熱を持っているかのように暖かい。いや、熱い。
あちこちから蒸気が噴き出し、巨大な歯車が回る音が響き、空気には硫黄と鉄の匂いが混じり合っている。
そんな「溶鉱炉通り」と呼ばれるメインストリートの一角にある屋台街で、俺たちは足を止めていた。
「はぁ……はぁ……。ご主人様、暑い……。私、蒸発しちゃう……」
銀髪の美女――シルヴィアが、俺の背中にだらりともたれかかっている。
極寒の地を統べるフェンリルの化身である彼女にとって、この街の気候は天敵だ。
彼女は暑さに耐えかねて、ヴェネーラで買った薄手の白いキャミソールの胸元をパタパタと仰いでいる。
汗ばんだ白い肌が、街の灯りを受けて艶めかしく光っていた。首筋から豊かな胸の谷間へと、一筋の汗がツーっと伝い落ちるのが見える。
「我慢しろシルヴィ。この先に美味いものがあるらしいから」
「……美味いもの。……ん。なら、頑張る」
食い意地だけで意識を保っているようだ。
対照的に、元気いっぱいなのが右隣の赤龍王、ヴァーミリオン(ヴァミ)だ。
「ふふふっ! 素晴らしい熱気ですね! 肌がジリジリと焦げるようなこの感覚、龍の血が騒ぎます!」
深紅のドレスを翻し、彼女は屋台街を闊歩する。
その視線が、ある一点で止まった。
「旦那様! あれです! あの暴力的な匂い!」
彼女が指差した先には、真っ赤に焼けた溶岩石の上で、分厚い肉塊を焼いている屋台があった。
ジュウウウウウッ!! という食欲をそそる音と、鼻の奥を刺激する香辛料(スパイス)の香り。
「いらっしゃい! アイゼン名物『マグマ焼きステーキ』だよ! 激辛ソースたっぷりで、食えば火を吹く美味さだ!」
ドワーフの店主が威勢よく叫ぶ。
「それ! 一番大きいのを三つください!」
ヴァミが即答し、俺の財布(ネレイド印の白金貨袋)を取り出した。
数分後。
俺たちの目の前には、顔ほどの大きさがある骨付き肉が置かれた。溶岩プレートの上で、脂が跳ね踊っている。
「いただきますッ!」
ヴァミはナイフもフォークも使わず、骨の両端を掴んで豪快にかぶりついた。
「んむッ! んふぅッ……!♡」
彼女の深紅の瞳が見開かれる。
「あ、熱いッ! でも、美味しいですぅッ!♡ 噛んだ瞬間に、熱々の肉汁が口の中で爆発しました! それにこのソース! 舌が痺れるような辛さが、肉の旨味を極限まで引き立てています!」
ハフハフと熱い息を吐きながら、彼女は次々と肉を咀嚼していく。
口の周りを赤いソースと肉汁でテカテカに光らせ、恍惚の表情を浮かべる姿は、まさに捕食者。ワイルドでありながら、どこか扇情的な色気がある。
「旦那様もどうぞ! 口の中が火事になりますよ!」
「お、おう……」
俺も一口食べてみる。
辛い! でも美味い!
最強種基準の激辛だが、この熱気の中で汗をかきながら食うには最高だ。
「……ご主人様。私、無理。熱いの、やだ」
シルヴィアがテーブルに突っ伏して抗議する。
彼女の前には、まだ手付かずのステーキがあるが、熱気だけで参っているようだ。
「分かってるよ。ほら、こっちも頼んでおいたぞ」
俺は別の屋台で買ってきた飲み物を、彼女の火照った頬に押し当てた。
ヒヤッ。
「んひゃっ!?」
シルヴィアが可愛らしい悲鳴を上げて飛び起きる。
俺が差し出したのは、ガラスの器に入った、鮮やかな青色の液体だった。中にはクラッシュアイスと、凍らせた果実がたっぷりと入っている。
「『氷結晶のフルーツ酒』だ。まあ、アルコール抜きのジュースだけどな」
地下の氷室で冷やされたそれは、グラスの表面に結露を作り、見るからに涼しげだ。
「……冷たい。……氷」
シルヴィアの目が輝いた。
彼女は両手でグラスを包み込むように持ち、ストローに口をつけた。
ちゅぅぅぅ……。
「んっ……♡」
一口飲んだ瞬間、彼女の身体がビクンと跳ねた。
「……生き返る……♡ 冷たいのが、喉を通って……お腹の中に染み渡る……♡」
彼女は恍惚とした顔で、グラスの中の氷を口に含み、舌の上でコロコロと転がした。
ガリッ、と氷を噛み砕く音。
「……ん。美味しい。甘酸っぱくて、ひんやりして……。ご主人様、これ好き……♡」
汗で張り付いた髪をかき上げ、潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
その仕草が無自覚にエロい。
周囲のドワーフたちが、肉を焼く手をとめて彼女に見惚れているのが分かる。
「お前ら、本当に美味そうに食うなぁ」
俺は苦笑しながら、二人の最強種が幸せそうに食事をする姿を眺めた。
この平和な時間。
これから起こるであろう面倒ごとの前に、少しでも英気を養っておいてやりたい。
◇
腹ごなしも兼ねて、俺たちは「職人街」へと足を向けた。
目的は、ヴァミが持っている魔剣のメンテナンスだ。
以前、彼女の巣から持ち出した国宝級の剣だが、先のレヴィアタン戦での激しい戦闘で、わずかに刃こぼれを起こしていた。
「いらっしゃい! うちの剣は折れないよ!」
「最新のミスリル加工だ! 見てってくれ!」
大通りには立派な店構えの武器屋が並んでいる。
だが、俺のスキル『野生の勘』は、それらの店をことごとくスルーしていた。
観光客向けの大量生産品か、腕はいいが魂がこもっていない品ばかりだ。
「……こっちだ」
俺は賑やかな通りを外れ、薄暗い路地裏へと入っていった。
煤と鉄錆の匂いが濃くなる。
その突き当たりに、古びた看板を掲げた小さな工房があった。
『赤鉄の槌(レッド・ハンマー)』。
建物はボロボロだが、そこから聞こえてくる音は違った。
カァンッ、カァンッ、カァンッ……!
一定のリズムで、力強く、そして繊細に鋼を打つ音。
迷いのないハンマーの響きが、職人の腕を雄弁に物語っている。
「ここなら、任せられそうだ」
俺は工房の扉を開けた。
「たのもう」
中は熱気と火の粉が舞っていた。
部屋の中央にある金床に向かい、一心不乱に槌を振るっている小さな背中があった。
「いらっしゃい! ……って言いたいところだが、今は手が離せねぇ! そこに座って待っててくれ!」
振り向かずに叫んだ声は、鈴を転がしたように高いが、男勝りな口調だった。
俺たちは言われた通り、隅にある木箱に腰掛けて作業が終わるのを待った。
数分後。
ジュウウウッ……と、焼入れの水蒸気が上がり、作業が終わったようだ。
「ふぅ……。待たせたな、客さ……ん?」
額の汗を拭いながら、その職人がこちらを振り返った。
俺たちは一瞬、言葉を失った。
ドワーフ族特有の、子供のように低い身長。140センチほどだろうか。
炎のような赤い髪をツインテールに結び、顔には煤がついている。
だが、何よりも目を引いたのは――その身体つきだ。
油まみれの作業着(タンクトップとオーバーオール)の上からでも分かる、暴力的なまでの爆乳。
小柄な体躯には不釣り合いなほど巨大な双丘が、サスペンダーに食い込み、今にも弾け飛びそうな存在感を放っている。
動くたびにボヨンボヨンと揺れるそれは、ヴァミのそれにも匹敵する質量だ。
「……なんだよ。人の顔ジロジロ見て」
彼女は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
あどけない顔立ちに、そばかす。可愛い。
まさに「ロリ巨乳」というジャンルを体現したようなドワーフの少女だった。
「いや、すまん。いい音をさせていたから、つい見とれてしまってな」
「ふん、お世辞はいいさ。……で? 何の用だい? 見ての通り、うちはしがない修理屋だ。新品が欲しいなら大通りに行きな」
「修理だ。こいつを見てくれ」
俺はヴァミから預かった魔剣を差し出した。
少女は面倒くさそうに剣を受け取り――鞘から抜いた瞬間、その表情が一変した。
「ッ!? な、なんだこれ……!?」
彼女の大きな瞳が見開かれ、顔を極限まで刀身に近づける。
「こいつは……『ヒヒイロカネ』と『龍の牙』の合金か!? それに、この紋様……千年前の失われた術式じゃねぇか! すっげぇ……! 本物の国宝だ!」
少女の手が震えている。恐怖ではなく、職人としての歓喜で。
「すげぇ歪み方をしてるな……。並の鍛冶師じゃ触るのも怖がる代物だ。……でも、私なら直せる」
彼女はニヤリと笑った。
「やらせてくれ! 頼む! こんなすげぇ剣、触らせてもらえるだけで光栄だ!」
「ああ、頼む。いくらだ?」
「金なんかいらねぇよ! ……と言いたいところだが、材料費と炭代だけでいい。あとの技術料はサービスだ!」
彼女は即座に作業に取り掛かった。
その手際は、まさに神業だった。
魔力を帯びたハンマーを振るい、硬度な刀身を飴細工のように調整していく。ヴァミも「ほう、なかなかやりますね」と感心している。
作業の間、俺は彼女に話しかけた。
「あんた、名前は?」
「ガーネットだ。親父の後を継いで、この店をやってる」
「腕は超一流に見えるが……なんでこんな路地裏に?」
大通りに店を構えれば、行列ができるレベルの腕前だ。
ガーネットの手が、一瞬止まった。
「……借金だよ」
「借金?」
「ああ。親父が死んだ後、悪徳商会に騙されてな。親父が残した借金ごと、この店を乗っ取られそうになってるんだ」
彼女は悔しそうに唇を噛んだ。
「腕には自信がある。でも、いい材料を買う金もねぇし、宣伝もできねぇ。ジリ貧さ」
ありがちな話だ。だが、才能ある若者が搾取されているのを見るのは胸糞が悪い。
「……でも、大丈夫だ!」
ガーネットは明るい声を出して、剣を研ぎ上げた。
「今度、デカい仕事が入ったからな! 前金だけでも借金の半分は返せるし、成功報酬が入れば店を買い戻せる!」
彼女はキラキラした目で俺を見た。
「へぇ、よかったな。どんな依頼だ?」
「へへっ、驚くなよ? あの有名な勇者パーティ『暁の剣』からの直接依頼だ!」
――ピクリ。
その名を聞いた瞬間、俺とヴァミ、シルヴィアの空気が凍りついた。
「……なんだって?」
「だから、勇者様だよ! 今度行われる『ベヒーモス討伐』のサポートメンバーに選ばれたんだ!」
ガーネットは誇らしげに胸を張った。巨乳が揺れる。
「私の腕を見込んでくれたんだ。『君のような優秀な鍛冶師が必要だ』ってさ!」
「具体的には、何をするんだ?」
俺は努めて冷静に聞いた。
嫌な予感がする。
あのクズどもが、単に腕がいいからという理由だけで、現地のドワーフを雇うはずがない。
「ああ。討伐中に武器が折れた時の予備戦力……ってのもあるけど、メインは別だ」
ガーネットは店の奥から、一つの「荷物」を持ってきた。
それは、俺が昼間にガルドが背負っているのを見た、あの装置に似ていた。
機械仕掛けの台座に、紫色の結晶が埋め込まれている。
「これさ。『特殊な魔力計測器』だって」
「……計測器?」
「ああ。ベヒーモスの弱点を探るために、戦闘中の魔力データを取る必要があるらしい。私がこれを背負って、ベヒーモスの近くでデータを記録するんだ」
彼女は無邪気に説明する。
「勇者様たちが戦って注意を引きつけている間、私が物陰からこいつを守っていればいい。戦闘には参加しなくていいし、安全だって言われたよ」
「……ッ!」
俺は奥歯を噛み締めた。
嘘だ。
全部、デタラメだ。
ヴァミとシルヴィアが言っていた。あの装置は「計測器」ではない。「吸収機」だと。
そして、「ベヒーモスの近くで装置を守る」ということは――。
ベヒーモスは、自分の魔力を吸い取る不快な装置を、真っ先に狙うに決まっている。
つまり、彼女は「観測係」ではない。
「魔力タンクの運搬係」兼「最強種から逃げるための囮」だ。
「……ガーネット」
俺は彼女の肩を掴んだ。
「その依頼、断れ」
「え?」
ガーネットがきょとんとする。
「やめておけ。あいつらは信用できない。お前を囮にする気だ」
俺は真剣な眼差しで訴えた。
かつての俺のように、使い捨てにされる未来が見える。
「何を……言ってんだよ」
ガーネットが俺の手を振り払った。
彼女の表情が硬くなる。
「勇者様だぞ? 世界を救う英雄だぞ? そんなことするわけないだろ!」
「あいつらは外面がいいだけだ。裏じゃ何をしてるか分からない。その装置だって、本当に計測器かどうかも怪しいぞ」
「……あんた、部外者のくせに何が分かるんだよ!」
彼女は声を荒らげた。
「私は……私はこの仕事に賭けてるんだ! この店は、親父との思い出の場所なんだ! これを逃したら、店を奪われちまうんだよ!」
彼女の瞳に涙が滲んでいた。
切羽詰まっている。
溺れる者は藁をも掴む。彼女にとって、勇者からの依頼は、暗闇に差し込んだ唯一の希望の光なのだ。
それを、ポッと出の冒険者に否定されて、納得できるはずがない。
「……修理は終わった。代金はいらねぇから、帰ってくれ」
ガーネットはヴァミの剣を突き返し、背を向けた。
「明日の朝、出発だ。……邪魔しないでくれよな」
彼女は店奥の居住スペースへと引っ込み、乱暴に扉を閉めた。
残されたのは、俺たち三人だけ。
「……止められませんでしたね」
ヴァミが静かに呟いた。
「……ん。あの子、死ぬ気?」
シルヴィアが悲しげに扉を見つめる。
「……いや」
俺は剣を腰に差し、工房を出た。
夕闇が迫る空を見上げる。
「死なせないさ。……ガーネットも、ベヒーモスも」
言葉だけじゃ届かないなら、行動で示すしかない。
俺たちのやることは決まった。
「行くぞ。明日の朝、あいつらの『遠足』に、招待されてないゲストとして参加してやる」
俺の言葉に、二人の最強種がニヤリと笑った。
復讐の準備は整った。
あとは、舞台に上がるだけだ。