※この作品はR-18です。

ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件   作:kokoko146666

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第23話:剛獣の棲む岩山

『剛獣の谷』最深部。

 ガーネットは、勇者アレクシオスの指示通り、広場の中央にある岩陰に巨大な装置を下ろした。

 

 ズシィン……。

 重い金属音が響く。

 装置の水晶は、周囲の熱気とマナを吸い込み、ドクン、ドクンと赤黒く脈打ち始めていた。不気味な低周波が、ガーネットの不安を煽る。

 

「ゆ、勇者様……。これでいいんですか?」

 

 ガーネットが振り返ると、勇者パーティは彼女から数十メートル後方、退路を確保しやすい高台に陣取っていた。

 

「ああ、完璧だ。ガーネット、お前はそこから動くなよ。データ収集には『安定』が必要だからな」

 

 アレクシオスが爽やかな笑みで親指を立てる。

 ガーネットは少し安堵した。勇者様が後ろで守ってくれている。前衛職の彼らが後方にいるのは少し変だが、きっとなにか作戦があるのだろう。

 

「分かりました! 私、絶対にこの機械を守ります!」

 

 彼女はハンマーを構え、洞窟の入り口を睨みつけた。

 

 ――その直後だった。

 

 ゴオオオオオオオオオオッッッ……!!

 

 地鳴りだ。

 いや、大気が震えている。

 洞窟の奥から、凄まじい熱風と共に、生物としての格が違う「絶望」が噴き出してきた。

 

「ひっ……!?」

 

 ガーネットの足がすくむ。

 暗闇の中から、二つの巨大な赤い光が灯った。

 そして、それは現れた。

 

 全長50メートル。

 鋼鉄の皮膚を持つ、巨大な猪と犀を掛け合わせたような魔獣。

 陸の最強種――剛獣ベヒーモス。

 

 その体躯は、まさに動く要塞だった。

 一歩踏み出すだけで岩盤が砕け、鼻息だけで砂嵐が起きる。

 オリハルコンよりも硬いと言われる皮膚は、陽の光を浴びて鈍い輝きを放っている。

 

「ブモオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 咆哮。

 ガーネットは鼓膜が破れそうな衝撃を受け、その場に尻餅をついた。

 怖い。

 本能が「死」を告げている。

 

「ゆ、勇者様! 出ました! 戦闘をお願いします!」

 

 彼女は悲鳴交じりに叫んだ。

 だが、勇者たちは動かなかった。

 

「……チッ、デカいな相変わらず。おいガルド、充填率は?」

 

 アレクシオスは剣を抜こうともせず、ガルドの手元にある小型の受信機を覗き込んでいる。

 

「まだ80%だ。あいつが興奮して魔力を垂れ流し始めたから、あと数十秒で満タンになるぜ」

 

「そうか。おいガーネット! まだだ! 装置が安定するまで耐えろ!」

 

「えっ!? む、無理です! こっちに来てます!」

 

 ベヒーモスが、不快な魔力吸引音を放つ装置――そして、その側にいるガーネットに狙いを定めた。

 巨大な蹄が地面を掻く。突進の予備動作だ。

 

「くそっ……私がやらなきゃ!」

 

 ガーネットは震える手でハンマーを握りしめた。逃げたい。でも、逃げたら借金が返せない。店が守れない。勇者様の期待を裏切ってしまう。

 彼女は必死に自身の膝を叩いて叱咤した。

 

 その時。

 ピピピピピッ!

 装置から甲高い電子音が鳴り響いた。

 水晶が真っ赤に染まり、カシュッという音と共にロックが掛かる。

 

「よし! 回収完了だ!」

 

 ガルドが叫んだ。

 その瞬間、アレクシオスの表情から「爽やかさ」が消え失せ、醜悪な笑みが張り付いた。

 

「撤収だ! 全速力で高台へ走れ!」

 

「えっ? ゆ、勇者様?」

 

 ガーネットは耳を疑った。

 戦わないの? 装置は? 私は?

 勇者たちはガーネットを見捨て、迷わず踵を返して走り出した。

 

「ま、待ってください! 私も……!」

 

 ガーネットは慌てて装置を背負おうとしたが、重すぎて持ち上がらない。

 パニックになり、彼女は装置を放棄して彼らの後を追おうとした。

 

「連れて行ってください! 置いてかないで――」

 

「チッ。邪魔だ、ドワーフ」

 

 アレクシオスが振り返り、冷酷な瞳で彼女を見た。

 

「エレナ。やれ」

「ええ。……『氷矢(アイス・アロー)』」

 

 魔法使いエレナが杖を振るった。

 放たれた氷の矢は、ベヒーモスではなく――駆け寄ろうとするガーネットの足元へと飛んだ。

 

 ドスッ! パキィィィン!

 

「あがぁッ!?」

 

 氷の矢がガーネットの右太ももを深々と貫き、そのまま地面ごと凍結させた。

 激痛と冷気。

 彼女は無様に転倒し、地面に縫い付けられた。

 

「な……なんで……?」

 

 ガーネットは涙で霞む目で勇者たちを見上げた。

 

「なんでって、お前は『囮』だからだよ」

 

 アレクシオスが吐き捨てるように言った。

 

「ベヒーモスは魔力を吸い取られてイラついている。誰かが八つ当たりを受けてくれないと、俺たちが安全に逃げられないだろう?」

 

「そ、そんな……。仲間じゃ、ないんですか……?」

 

「仲間? はっ、勘違いするな。金で雇った消耗品だろうが」

 

 ガルドが下卑た笑い声を上げる。

 聖女セレスは、一度だけ振り返り、憐れむような、しかし無関心な目でガーネットを一瞥し、すぐに前を向いた。

 

「光栄に思え。貴様の命は、俺たちが強くなるための糧になるんだ」

 

 勇者たちは嘲笑を残し、風のような速さで岩陰へと消えていった。

 

 ◇

 

 残されたのは、足を凍らされて動けない少女と、激怒した最強種だけ。

 

「う、うぅ……嘘つき……」

 

 ガーネットは絶望に泣き崩れた。

 痛い。寒い。悔しい。

 信じていたのに。店を取り戻せると、希望を持っていたのに。

 全部、嘘だった。

 

 ズシン……ズシン……。

 

 巨大な影が、彼女を覆い隠す。

 ベヒーモスが目の前まで来ていた。

 その巨大な鼻息だけで、ガーネットの身体が吹き飛びそうだ。

 

「ブモオオオオオオ……」

 

 ベヒーモスは、目の前の小さな生物が、自分の魔力を吸っていた不快な装置の持ち主だと認識している。

 容赦はない。

 巨大な前足が、高く持ち上げられた。

 踏み潰す気だ。

 プレス機のような質量が、ガーネットの頭上から迫る。

 

「あ、あぁ……お父ちゃん……ごめん……」

 

 彼女はハンマーを抱きしめ、ギュッと目を閉じた。

 死ぬ。

 ペシャンコになって死ぬ。

 

 ――だが。

 いつまで経っても、衝撃は来なかった。

 

 代わりに聞こえたのは、鼓膜を揺らすほどの轟音と、誰かの力強い声だった。

 

 ドォォォォォォォォンッッ!!!!!

 

 凄まじい衝撃波が巻き起こり、周囲の砂煙を一瞬で吹き飛ばした。

 ガーネットは恐る恐る目を開けた。

 

「……え?」

 

 信じられない光景があった。

 自分のすぐ目の前。

 振り下ろされたはずのベヒーモスの巨大な蹄が、空中で止まっていたのだ。

 

 それを止めていたのは――たった一人の、人間の男だった。

 

 黒髪の青年が、両手を頭上に掲げ、50メートル級の巨獣の踏みつけを支えていた。

 

「……重いな、流石に」

 

 青年は呟くと、膝をついているガーネットに視線を落とし、優しく微笑んだ。

 

「遅くなって悪かったな、ガーネット。……痛かったろ?」

 

「あ……あんた、は……?」

 

 路地裏の工房に来た客。

 あいつらは信用できないと忠告してくれた男。

 

 ユウが、そこに立っていた。

 

「ここからは俺の番だ。借金も、あのクズどもへの借(ツケ)も……全部俺が片付けてやる」

 

 ユウの背後から、灼熱の赤きオーラと、凍てつく白銀のオーラが立ち上る。

 ヴァミとシルヴィアも、すでに戦闘態勢に入っていた。

 

 岩陰から様子を伺っていた勇者たちが、信じられないものを見る目で立ち尽くしているのが見えた。

 

「な、なんだあいつは!? ベヒーモスの攻撃を受け止めた!?」

「ま、まさか……あの時の『荷物持ち』か!?」

 

 絶望の底で、反撃の狼煙が上がった。

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