ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
ズズズズズンッ……!!
俺の頭上で、凄まじい質量同士がぶつかり合う音が響いた。 地面がクモの巣状にひび割れ、俺のくるぶしまでが土にめり込む。
重い。 流石は「剛獣」と呼ばれる陸の最強種だ。 全長50メートル、体重はおそらく数トン。その踏みつけは、プレス機そのものだ。 レベル215まで上がったステータスでようやく拮抗できるレベル。気を抜けば、俺ごとペシャンコにされかねない。
「……ぐっ、ふんっ!」
俺は全身の筋肉を軋ませ、さらに魔力を注ぎ込んで、鋼鉄の蹄を押し返した。
「ブモッ……?」
頭上で、ベヒーモスが不審げな鼻息を漏らした。 虫ケラを踏み潰したつもりが、地面の凹凸に引っかかったとでも思っているのだろうか。
「……あ、あんた……?」
足元で、ガーネットが呆然と俺を見上げていた。 彼女の瞳は涙で濡れ、顔は恐怖で青ざめている。右足はエレナの魔法で氷漬けにされ、地面に縫い付けられたままだ。
俺は片手でベヒーモスの足を支え、脂汗を垂らしながらも彼女に笑いかけた。
「遅くなって悪かったな、ガーネット。……怖かったろ?」
「う、うん……怖かった……。死ぬかと……」
「もう大丈夫だ。俺が来たからな」
俺は空いている左手で、ベヒーモスの蹄の側面を全力で殴りつけた。
ガギィンッ!!
硬質な音が響き、巨獣の体勢がわずかに崩れる。 その隙に俺はバックステップで距離を取った。
「ブモオオオッ!?」
ベヒーモスはよろめきながら数歩後退し、不機嫌そうに蹄を鳴らした。 その姿は、まさに動く要塞。感情などない、ただ破壊のためだけに存在する鋼の塊に見える。
「な、なんだあいつは!? ベヒーモスの攻撃を、受け止めた!?」
「ま、まさか……あの時の『荷物持ち』か!?」
背後の高台から、勇者アレクシオスと重戦士ガルドの驚愕の声が聞こえた。 俺は肩越しに振り返り、彼らを冷ややかに見据えた。
「よお、英雄サマご一行。随分と無様な逃げ足だったな」
「き、貴様……死んだはずじゃ……!」
「勝手に殺すな。地獄の底から這い上がってきたんだよ。……お前らに、ツケを払わせるためにな」
俺の言葉に込められた殺気に、勇者たちがたじろぐ。 だが、今はあいつらの相手をしている場合じゃない。まずは目の前の「壁」をどうにかしなければ。
ベヒーモスが再びこちらを向き、鼻孔から高温の蒸気を噴き出した。 殺る気だ。 邪魔な異物を、今度こそ粉砕するつもりだ。
「……ご主人様、加勢する」
「旦那様、私たちが焼き払いましょうか?」
左右から、シルヴィアとヴァミが飛び出してきた。
「ああ、頼む! 少し時間を稼いでくれ! 俺はガーネットを確保する!」
俺は地面に膝をつき、ガーネットの凍りついた足に手を当てた。 魔力を流し込み、物理的に氷を砕く。
パリンッ!
「あ痛っ……!」
「歩けるか?」
「だ、ダメだ……。感覚がねぇ……」
ガーネットが顔を歪める。凍傷と、矢のダメージが深い。 この場所に置いておくのは危険だ。
「……仕方ない。捕まってろ」
俺はガーネットを軽々と持ち上げ、片腕で抱きかかえた。 作業着越しに、豊満すぎる双丘が俺の胸板に押し付けられるが、今はそれを楽しんでいる余裕はない。
「よし、行くぞ!」
俺は戦場へと視線を戻した。
「消し飛びなさい! 『紅蓮の吐息(クリムゾン・ブレス)』!」
ヴァミが口から灼熱の業火を吐き出す。 岩さえも溶かす超高温の炎が、ベヒーモスを飲み込んだ。
だが――。
「ブモッ!」
炎が晴れた後、ベヒーモスは無傷だった。 鋼鉄の皮膚が赤熱することすらなく、平然としている。ただ「煙たい」と言わんばかりに鼻を鳴らすだけだ。
「なっ……!? 私の炎が通じないですって!?」
ヴァミが驚愕に目を見開く。
「……ん。なら、物理で砕く」
シルヴィアが巨大な氷の魔剣を生成し、音速で肉薄した。 側面からの斬撃。 硬度と速度を乗せた一撃は、山をも両断する威力があるはずだ。
ガギィィィンッ!!
悲鳴のような音が響き、シルヴィアの氷剣が粉々に砕け散った。
「……っ! 硬い。手が痺れた」
シルヴィアが顔をしかめて後退する。 ベヒーモスの横腹には、白い傷一つついていなかった。
「……マジかよ」
俺は舌打ちした。 聞いてはいたが、ここまでとは。 魔法無効化(アンチ・マジック)の皮膚と、物理攻撃を弾き返す絶対防御。 最強種二人がかりで傷一つつけられない。
「ブモオオッ!」
ベヒーモスが咆哮し、ヴァミたちを無視して俺の方へ向き直った。 どうやら、最初に突進を止めた俺を「最大の敵」と認識したらしい。 ドシンドシンと地響きを立てて迫ってくる。
「……やるしかないか」
俺はガーネットを抱え直すと、地面を蹴った。 逃げるんじゃない。 向かっていくんだ。
「うわあああっ!? 真正面から突っ込む気かあんた!?」 「舌噛むなよ!」
俺はベヒーモスの鼻先へと肉薄し、渾身の右ストレートを叩き込んだ。
「らああああぁぁっッ!!」
ドゴォォォォォンッ!!
拳が鋼鉄の皮膚にめり込む。 凄まじい衝撃音が響き渡り、ベヒーモスの巨体がわずかに揺らいだ。
だが、それだけだ。
俺の拳がジンジンと痺れている。 まるで巨大な山脈を素手で殴ったような感覚。 ベヒーモスは、無感情な赤い瞳で俺を見下ろしている。 「それがどうした?」と言わんばかりだ。
(……ダメだ。硬すぎる)
レベル215の筋力で殴っても、HPバーが数ミリ減るかどうかのレベルだ。 これじゃ、倒すのに何日かかるか分からない。その前にこちらの体力が尽きる。
ベヒーモスが前足を上げた。 次は確実に潰すという殺意。 物理も、魔法も、小細工も通じない。 この絶対的な「盾」を前に、俺たちには打つ手がないように思えた。
――いや。 一つだけ、ある。
外側が硬いなら、内側から溶かせばいい。 物理攻撃が効かないなら、生物としての根本――「本能」をハッキングして、その鎧を脱がせればいい。
「……ガーネット、しっかり捕まってろよ」
「えっ? な、何する気だよ……?」
俺はベヒーモスの巨体を見上げた。 その鉄壁の防御を、俺の「スキル」で貫けるか。 だが、これしか方法はない。
「こいつの鎧(プライド)を、無理やり剥がしてやるんだよ」
俺は右手に全魔力を集中させた。 拳に込めるのは、破壊の力ではない。 生物の理性を焼き切り、強制的にメスへと変える波動。
「行くぞッ!!」
ベヒーモスの蹄が振り下ろされる直前。 俺はガーネットを抱いたまま、その懐――ゼロ距離へと飛び込んだ。