※この作品はR-18です。

ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件   作:kokoko146666

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第31話:聖教国エリュシオンと「空に浮かぶ聖域」

 アイゼンの西門を飛び出してから、俺たちの移動速度はまさに「爆走」の一言に尽きた。

 

 レベル280というステータスは、俺の肉体をすでに人間とは別の何かに変えているらしい。一歩地を蹴るたびに景色が後ろへと弾け飛び、普通の馬車なら数日かかる国境越えを、俺たちはわずか数時間で終わらせてしまった。

 

 たどり着いた聖教国エリュシオンは、これまでのどんな国とも違う異様な空気を纏っていた。街並みは不気味なほど真っ白な石造りで統一され、道行く人々は皆、灰色の法衣を纏ってうつむき加減に歩いている。まるで街全体が巨大な葬儀場にでもなったかのような静けさだ。

 

 「なんだか、落ち着きませんわね、旦那様。この国には『色』も『匂い』も足りませんわ。空気も、人々の情熱も、すべてが薄い霧に包まれているようです。ああ、旦那様の体温だけが今の私の救いですわ……」

 

 右腕にぴったりと抱きついていたヴァミが、大きな溜息をついて俺の二の腕に頬を寄せた。龍種である彼女にとって、この過剰なまでの清浄さは生理的な嫌悪感を呼び起こすらしい。

 

 赤い瞳を潤ませて俺を頼る姿は、最強の龍王とは思えないほど弱々しく、守ってやりたい欲求をそそられる。

 

 「ん……私も、ここ嫌い。匂いが死んでる。ご主人様の匂い、もっと嗅いでないと、鼻が馬鹿になりそう。クンクンしてもいい?」

 

 左側を歩くシルヴィアも、銀髪の間から覗く耳をぺたんと伏せて、俺の服の裾をぎゅっと掴んできた。俺が苦笑して頷くと、彼女は俺の肩口に鼻を押し当てて、深呼吸をするように何度も息を吸い込んだ。最強種の一角である神狼が、仔犬のように甘えてくる姿は何度見ても破壊力がある。

 

 とりあえず腹ごしらえをしようと、俺たちは街で一番立派だと言われる宿屋の食堂に入った。しかし、そこで出されたものを見て、二人の嫁は文字通り絶望のどん底に叩き落とされることになった。

 

 「お待たせいたしました。本日の『清貧定食』、主の恵みでございます」

 

 恭しく店員が置いていったのは、叩けばコンコンと乾いた音がしそうなほど固い灰色のパンと、お湯に野菜の切れ端を浮かべただけの透明なスープ。それと、申し訳程度の塩だけだ。

 

 「……店員さん。これ、調理前の下準備ではありませんわよね? まさか、これがお料理だと仰るのですか?」

 

 ヴァミが信じられないものを見るような目でスープを見つめ、震える声で尋ねる。店員は穏やかに微笑んで答えた。

 

 「美食は堕落への第一歩。聖女様が空の聖域で祈りを捧げておられる間、我ら信徒もこうして欲を絶つのです」

 

 店員が去った後、ヴァミは絶望に満ちた顔でスープを一口啜り、そのままがっくりとテーブルに突っ伏した。

 

 「旦那様……味が……味がしませんわ。これは、聖水という名の間延びしたお湯です。私の龍の魂が、この味気なさに削り取られていきます……。もう嫌ですわ、お肉が食べたいですわぁ……!」

 

 ヴァミは頬をぷくっと膨らませて、今にも泣き出しそうな顔で俺を見上げる。その怒りと悲しみの混ざった表情は、まさに駄々をこねる子供のようで、たまらなく愛らしい。

 

 「ん……パンも、ただの粘土。噛むたびに顎が疲れるだけ。ご主人様、私、死んじゃう。これ以上食べたら、神狼じゃなくてただの野良犬になっちゃう……」

 

 シルヴィアも、お皿の上のパンを指先でつつきながら、耳をしょんぼりと垂らして俺の膝の上に頭を預けてきた。アイゼンや道中の宿場で豪勢な肉料理を食べていた反動が凄まじいようだ。

 

 俺は二人の頭を優しく撫でてやりながら、なんとか機嫌を取ろうと情報を整理した。

 

 「ごめんな、二人とも。でも、店員が言ってただろ。聖女セレスは『空の聖域』にいるって。あいつを捕まえれば、こんな妙な食事ルールも変えられるはずだ」

 

 「空の聖域……。旦那様、あそこですわね」

 

 ヴァミが窓の外、遥か上空を指差す。そこには雲が層をなしており、その先になにがあるのかは地上からは見えない。

 

 「セレス様は、北にある『世界樹』を登り、そこから聖域へと至る光の橋を渡られました。凡人には到底不可能な道のりですが、聖女様は神に選ばれしお方ですから」

 

 通りかかった宿の主人が自慢げに話す。その言葉を聞いた瞬間、二人の嫁の瞳に、これまでにないほど鋭い、そして恐ろしい「復讐の炎」が灯った。

 

 「世界樹、ですわね。そこを登れば、あの味覚音痴な聖女の首根っこを掴めるわけですわね。行きましょう、旦那様。あいつを捕まえて、私が今まで食べた中で一番辛い激辛スープを鼻から飲ませてやりますわ。こんな質素な食事を強いるのがどれほど大罪か、その身に刻ませてやりましょう!」

 

 ヴァミが俺の手を強く握りしめ、紅蓮の瞳を燃え上がらせる。

 

 「ん……私も。世界樹、全力で登る。セレス、絶対に許さない。そして、終わったら私は山盛りのステーキを食べる。絶対に、食べる」

 

 シルヴィアも、普段の物静かさが嘘のように、拳を握りしめて鼻息を荒くしている。どうやら「食」の恨みは、最強種たちを最高に過激なモードへと変えてしまったようだ。

 

 「分かったよ。明日一番で世界樹へ向かおう。……今夜は、この宿でしっかり休んでな。お前たちの腹が満たされるまで、俺が付き合うから」

 

 俺がそう言うと、ヴァミとシルヴィアは同時に俺の腕を左右から奪い合うように抱きしめてきた。

 

 「ええ。食事は最悪ですが、旦那様の精(エネルギー)だけは、世界一の贅沢ですもの……」

 

 「ん……。ご主人様で、お腹いっぱいにする。……覚悟して」

 

 二人の最強種の嫁たちが、甘えるように、そして獲物を狙うように俺を見つめる。聖女セレス。彼女は聖域という安全圏に逃げ込んだつもりかもしれないが、食欲と独占欲を爆発させた俺の嫁たちの怒りからは、世界樹のてっぺんだろうと逃げ切ることはできないだろう。

 

 俺は、空っぽの胃袋と、それ以上に熱く燃え上がる嫁たちの期待を感じながら、夜の闇に聳え立つ巨大な世界樹の影を見据えていた。

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