※この作品はR-18です。

ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件   作:kokoko146666

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第6話:龍の巣の『ゴミ』を換金しに行った件

 カチャ、カチャ、カチャ……。  

 

 上品な銀食器の音が、朝の光に満ちたレストランに響き渡る。  高級宿『銀の月亭』の一階にあるダイニングは、本来であれば優雅な朝食を楽しむ貴族や富裕層の商人たちが、静かに紅茶を啜る場所だ。

 

 だが、今のこの空間は、ある一つのテーブルによって異様な空気に支配されていた。

 

「んふぅ……♡ おいひぃですぅ……♡ ご主人様、この『おむれつ』という黄色いお布団は、なんでこんなにフワフワなんですか? 口に入れた瞬間、シュワって消えました! これは空気ですか? それとも雲?」

 

 満面の笑みでフォークを動かしているのは、真紅の髪を持つ絶世の美女――ヴァミだ。  彼女の目の前には、すでに空になった皿がタワーのように積み上げられている。その高さ、優に一メートル超え。

 

「おかわりです! 次は……あっちにある『厚切りベーコン』という塩辛いお肉を、ここにある在庫全部持ってきてください! あと、その甘いパンも籠ごと!」

 

「は、はいぃっ! ただいまぁッ!」

 

 ウェイターが悲鳴のような声を上げて厨房へ走っていく。  厨房からは「肉が足りねぇ!」「市場へ買い出しに走れ!」「あの美女の胃袋はどうなってるんだ!?」という料理人たちの怒号が聞こえてくる始末だ。

 

「……なぁ、ヴァミ。少しペースを落とさないか? 周りの客が引いてるぞ」

 

 俺は冷ややかな視線を浴びながら、コーヒーを啜った。  昨晩、朝まで――文字通り朝日が昇るまで激しく愛し合ったせいで、俺自身も腹は減っていたが、ヴァミのそれは次元が違った。

 

「だってお腹ペコペコなんですもん! 昨日の夜、ご主人様にいっぱい運動させられたじゃないですかぁ……♡」

 

 ヴァミが頬にケチャップをつけたまま、艶っぽい声で言った。

 

「あんなに激しく腰を振って、あんなに何度もイかされて……。私の生命力、ご主人様に注ぎすぎてカラカラですよぉ。補給しないと、干からびたトカゲになっちゃいます」

 

「ぶふっ!」

 

 俺はコーヒーを吹き出しそうになった。  声がでかい。そして内容がエロい。周囲の客が「腰を振って……?」「何度も……?」と聞き耳を立てて顔を赤らめている。

 

「しーっ! 声が大きい! ……まあ、確かに俺のせいでもあるが」

 

「ですよね? だから責任取って、いっぱい食べさせてください♡ あ、ウェイターさん! その『ぷりん』っていう飲み物、あと二十個追加で!」

 

「プリンは飲み物じゃないぞ……」

 

 結局、ヴァミが満足するまで、さらに一時間かかった。  彼女はリスのように頬を膨らませ、幸せそうに咀嚼し続けた。その姿は確かに可愛い。世界を滅ぼすドラゴンの面影はなく、ただの食いしん坊な美少女だ。  だが、現実は非情だ。

 

「……お会計、金貨一枚になります」

 

 支配人が震える手で差し出した伝票を見て、俺の血の気が引いた。

 

(き、金貨一枚……!?)

 

 この世界の金銭感覚で言えば、銅貨一枚でパンが一つ買える。銀貨一枚あれば、安宿に数泊できる。金貨一枚ともなれば、一般市民の数ヶ月分の生活費に相当する。  それが、たった一回の朝食で。

 

「……支払いはこれで」

 

 俺は引きつった笑顔で、腰袋から金貨を取り出した。  ヴァミが巣から持ってきた財宝の一部だ。まだ余裕はある。あるが……。

 

(昨日の屋台の買い占め、水晶の弁償代、宿の宿泊費、そしてこの朝食……。龍の燃費、悪すぎないか?)

 

 俺の「無限の精力」で彼女を回復させることはできるが、そのエネルギー源となるカロリーは物理的な食事で補う必要がある。  つまり、俺たちが毎晩セックスすればするほど、食費が幾何級数的に跳ね上がるという永久機関の落とし穴だ。

 

(このままじゃ、数日で破産する……!)

 

 俺は危機感を抱いた。  働かなければ。いや、その前に手っ取り早く現金を確保しなければ。

 

「ごちそうさまでしたご主人様♡ お腹、六分目くらいになりました!」

 

「そ、そうか。それはよかったな」

 

 六分目でこれかよ。  俺はヴァミの手を引き、早足で部屋へと戻った。

 

 ◇

 

 スイートルームに戻るなり、俺はマジックバッグの中身をベッドの上にぶちまけた。

 

 ジャラララララッ……!!

 

 黄金の輝きが部屋を満たす。  金貨、宝石、装飾品、禍々しいオーラを放つ剣、古びた杖。  ヴァミが「ゴミ」と言って俺に持たせた、龍の巣のコレクションだ。

 

「ヴァミ。緊急の家族会議だ」

 

「はいっ! なんですか? ベッドの上ということは、朝の種付け会議ですか? 即決で可決します!」

 

 ヴァミが即座にローブを脱ごうとする。  俺は慌ててそれを止めた。

 

「違う! 金の話だ、金!」

 

「かね? 金属ならそこにいっぱいありますよ?」

 

「そうじゃなくてだな……。いいか、お前の食欲は素晴らしいが、今のペースで食い続けると俺たちの財布が死ぬ。だから、ここにある『お宝』を換金して、当面の生活費を確保したいんだ」

 

「ふむ……。そんなことですか」

 

 ヴァミはキョトンとして、ベッドの上の財宝を足の指で突っついた。

 

「そんなガラクタ、全部売っちゃえばいいじゃないですか。なんなら、私がブレスで山を一つ焼き払って更地にして、そこにある金鉱脈を掘り出しましょうか?」

 

「地形を変えるな! あと、全部売るのもダメだ!」

 

 俺は頭を抱えた。  こいつは人間の社会というものを分かっていない。

 

「いいか? 俺たちは昨日、ギルドで水晶を割って目立っちまった。これ以上、騒ぎを起こしたくないんだ。もし俺みたいなFランクの若造が、いきなり国宝級の剣や王冠を持ち込んだらどうなる? 『どこで盗んだ』って大騒ぎになって、衛兵に囲まれるぞ」

 

「なるほど。人間社会は面倒ですね。強い者が奪い、弱い者が差し出す。それだけのシンプルな世界ではないのですね」

 

「違うな。……とにかく、目利きだ。この中で『一番安そうなもの』を選んでくれ」

 

 俺は庶民出身だ。宝石の価値なんて分からない。  ピカピカ光っていれば高いだろうし、汚れていれば安いだろう、くらいの感覚しかない。  だが、長く生きたドラゴンなら、人間の道具の価値も多少は分かるはずだ。

 

「一番安そうなゴミ、か……」

 

 ヴァミは全裸(いつの間にか脱いでいた)であぐらをかき、財宝の山を漁り始めた。  その光景はシュールだった。世界を滅ぼせる美貌の裸婦が、伝説の聖剣を「これは爪楊枝にもならん」と放り投げ、ダイヤモンドのティアラを「これは頭に乗せるとチクチクして不快だった」と投げ捨てていく。

 

「ありました、ご主人様! これなんてどうでしょう?」

 

 彼女が差し出したのは、握りこぶし大の「石」だった。  色はくすんだ青色。表面は白く濁り、カルシウムのような汚れが付着している。光にかざしても輝きはなく、どう見ても川原に落ちているただの石ころだ。

 

「……これは?」

 

「数百年前かな? 私に挑んできた人間が持っていた石です。一度、寝てる間に間違って食べちゃって、奥歯に挟まって痛かったんですよ。硬いだけで魔力もないし、味もしないし、正真正銘のゴミです!」

 

 ヴァミが自信満々に言い放った。  俺はその石を受け取り、まじまじと観察する。  確かに汚い。重さだけはずっしりとあるが、宝石特有の透明感がない。  これなら、「珍しい色の石を拾ったから買い取ってくれ」と言えば、鉱石として銀貨数枚、運が良ければ金貨一枚くらいにはなるかもしれない。

 

「よし、これにしよう。これなら目立たないはずだ」

 

「はいっ! じゃあ、さっさとその石ころを処分して、お昼ご飯にしましょう! 私、次は『すてーき』という肉料理が食べてみたいです!」

 

「……稼いだ金が瞬殺されそうな予感がするが、まあいいか」

 

 俺たちはその「青い石」を懐に入れ、宿を出た。

 

 ◇

 

 冒険者ギルドとは別に、商取引を専門とする『商業ギルド』の建物は、街の東区画にあった。  冒険者ギルドのような荒っぽい雰囲気はなく、スーツを着た商人や、高価なローブを纏った魔導師たちが行き交っている。

 

「うわぁ……ここはまた、別の意味で嫌な匂いがしますね。金と計算と、腹の探り合いの匂い……」

 

 ヴァミがフードの下で顔をしかめた。  今日は一応、大人しくするように言い含めてある。彼女は俺の腕にギュッとしがみつき、借りてきた猫(ただし虎より凶暴)のように振る舞っている。

 

 俺は「買取カウンター」へと向かった。  受付には、白髪の老人が座っていた。片目にモノクルをかけ、分厚い書物を読んでいる。いかにも「ベテラン鑑定士」という風貌だ。

 

「すいません、買取をお願いしたいんですが」

 

「ん……? 予約はしておるかね?」

 

 老人は顔も上げずに言った。

 

「いえ、飛び込みです」

 

「ふむ。飛び込みか。……見たところ冒険者のようじゃが、薬草か? それとも魔石か? 少額の取引なら、そこの窓口ではなく自動買取機を通してくれんか。ワシは今、忙しいんじゃ」

 

 完全にあしらわれている。  まあ、Fランクのタグをつけた若造と、顔を隠した女だ。冷やかしだと思われても仕方がない。  俺は苦笑しながら、懐からあの「青い石」を取り出した。

 

「いや、ちょっと変わった石を拾いましてね。鉱石として売れるか見てもらいたいんです」

 

 ゴトッ。  カウンターの上に、無造作に石を置く。

 

「石……? ただの石なら建材屋に行けと言いたいところじゃが……」

 

 老人は面倒くさそうに本を閉じ、チラリと石を見た。

 

「なんじゃ、汚い石じゃな。表面が石灰化しておる。……まあいい、一応見てやろう」

 

 彼はため息交じりにモノクルを調整し、ルーペを取り出した。  そして、石の表面にレンズを近づけ――。

 

「……ん?」

 

 数秒後。  老人の動きが止まった。

 

「……おい、小僧。これをどこで拾った?」

 

 声のトーンが変わった。低く、鋭い。

 

「え? あー、山の方で……たまたま落ちてまして」

 

「山じゃと? バカを言え。これは海のものじゃ」

 

 老人は震える手で、石の表面を専用の布で軽く拭った。  すると、白い汚れの下から、吸い込まれるような「蒼」が顔を覗かせた。  ただの青ではない。深海そのものを閉じ込めたような、深く、濃く、そして内側から光を放つような神秘的な蒼色。

 

「……っ!?」

 

 老人が息を飲んだ。  ガタガタと椅子が揺れる。彼の手からルーペが滑り落ち、カウンターに乾いた音を立てた。

 

「じ、爺さん? どうした?」

 

「……閉めろ」

 

「え?」

 

「扉を閉めろォォォッ!! 警備員! 警備員は何をしておる! 今すぐ正面玄関を封鎖せよ! 騎士団へ連絡だ! いや、ギルドマスターを叩き起こせぇぇぇッ!!」

 

 突然、老人が絶叫した。  静かだったギルド内が一瞬でパニックになる。  俺とヴァミは顔を見合わせた。

 

「ご主人様、あの爺さん、壊れましたか?」

 

「わからん……俺が持ってきたのが安すぎたから怒ってるのか?」

 

 だが、老人の反応は怒りではなかった。  彼は石を両手で拝むように持ち上げ、涙を流しながら震えていたのだ。

 

「間違いない……! 文献でしか見たことがない、幻の輝き……! 五百年前に没したとされる、伝説の海帝国アトランティアの至宝……『海神の涙(ポセイドン・ティア)』じゃ!!」

 

「……は?」

 

 俺の声が裏返った。

 

「『海神の涙』……? それって、おとぎ話に出てくる、一つあれば海を割ることができるっていう……?」

 

「そうじゃ! 歴史的遺産にして、国家防衛級の魔道具! 小国が三つ買えるほどの値がついたと言われておる! それがなぜ、こんな若造のポケットに入っておるんじゃァァァッ!?」

 

 老人は興奮のあまり、白目を剥いて泡を吹き始めた。

 

「こ、国宝……!? いや、それ以上……!?」

 

 周囲の商人たちが色めき立つ。  「なんだって!?」「海神の涙だと!?」「おい、あの二人を逃がすな!」「商談だ! いや、囲め!」  欲に塗れた視線が、一斉に俺たちに突き刺さる。

 

 俺はヴァミを見た。  彼女は「?」という顔で首を傾げている。

 

「ヴァミ……お前、これが『一番安いゴミ』って言ったよな?」

 

「はい。だってただの石ですよ? 齧ったら硬いし、味もしないし」

 

「……お前の『ゴミ』の基準、高すぎないか?」

 

 最強種にとっての価値観は、人間とは次元が違いすぎた。  彼女にとっては「食べられない石」=「ゴミ」。  だが人間にとっては、それが国を揺るがす秘宝だったのだ。

 

(やべぇ……! 小銭稼ぎどころか、国家レベルの騒動になっちまった!)

 

 このままここにいたら、間違いなく監禁されるか、国に召し上げられて尋問攻めだ。  穏便なスローライフ(と、夜の種付けライフ)が崩壊する。

 

「あー、すいません! やっぱ売るのやめます!」

 

 俺は老人の手から石をひったくった。

 

「ま、待て! 待たんか! それを持ち出すなど許されんぞ! 値段なら言い値で――」

 

「逃げるぞヴァミ!」

 

「はいっ♡ 逃避行ふたたびですね!」

 

 俺はヴァミの手を引き、混乱する商業ギルドを全力疾走で駆け抜けた。  背後から「追えぇぇッ!」「あの石を確保しろぉぉッ!」という怒号が響く中、俺たちは風のように街の雑踏へと消えた。

 

 ◇

 

 商業ギルドから数ブロック離れた路地裏。  俺たちは樽の陰に隠れ、荒い息を整えていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……! 危なかった……!」

 

「楽しかったですね、ご主人様! あの爺さんの顔、真っ赤になって茹でダコみたいでした!」

 

 ヴァミはケラケラと笑っている。危機感ゼロだ。

 

「笑い事じゃないぞ……。これじゃ、巣の財宝はどれも売れない」

 

 俺は手の中の「海神の涙」を見つめた。  一番安そうなこれですら、国宝級。ということは、他の剣や王冠なんて持ち込んだ日には、世界大戦が勃発しかねない。

 

「……当分、換金は禁止だ。この石もマジックバッグの奥底に封印する」

 

「えぇー? じゃあ、今日のお昼の『すてーき』はどうなるんですか? 私、口の中がお肉モードになってるんですけど」

 

 ヴァミが不満げに頬を膨らませる。  そうだ。金がない問題は解決していない。  むしろ、商業ギルドにも顔が割れてしまった以上、まともな商売は難しくなった。

 

「……仕方ない。地道に稼ぐぞ、ヴァミ」

 

「地道に?」

 

「ああ。俺たちの本業に戻るんだ」

 

 俺は立ち上がり、街の中心部を指差した。

 

「冒険者ギルドだ。あそこで依頼を受けて、魔物を狩って、その素材を売る。それが一番、誰にも怪しまれずに金を稼ぐ方法だ」

 

「狩りですか! それなら得意です! 私、狩猟本能がうずうずしてました!」

 

 ヴァミの目が輝いた。

 

「獲物はなんですか? あの山の向こうに『ベヒーモス』の気配がしましたけど、あいつを狩りに行きますか? 肝が美味しいんですよ♡」

 

「却下だ! もっと手頃な、Fランク相応の獲物にするんだ!」

 

 俺たちは昨日、水晶を粉砕して逃亡した冒険者ギルドへと、重い足取りで向かうことになった。

 

 ◇

 

 ギルドの扉を開けると、デジャヴのような静寂が訪れた。  中の冒険者たちが一斉に俺たちを見、そして――。

 

 ザッッッ!!

 

 モーゼが海を割るように、道が左右に開いた。

 

「お、おい……あいつらだ……」 「昨日、水晶を爆破したバカップルだ……」 「目を合わせるな、魂を抜かれるぞ……」

 

 ヒソヒソという囁き声が聞こえる。  完全に「ヤバい奴ら」として認知されている。まあ、チンピラに絡まれるよりはマシか。

 

 俺たちはまっすぐ依頼掲示板の前まで進んだ。  色とりどりの依頼書が貼られている。  Fランクが受けられるのは、主に緑色の紙だ。

 

「えーっと……薬草採取、ドブ掃除、迷い猫の捜索……」

 

 地味だ。報酬も銅貨や銀貨ばかり。これではヴァミの食費(金貨レベル)には到底届かない。

 

「ご主人様、これはどうですか?」

 

 ヴァミが指差したのは、一番上に貼られた赤い紙。  そこにはドクロマークと共に『緊急依頼:SSランク』と書かれていた。

 

【討伐】北の雪山に封印されし『氷獄の巨人(アイス・タイタン)』の討伐 報酬:白金貨10枚

 

「これなら一撃です! お昼ご飯の前に、ちょちょっと氷の塊を砕いてきましょうよ!」

 

「ダメだ! FランクはSSランクの依頼を受けられない!」

 

「むぅ……融通が利かないシステムですね。じゃあ、こっちは?」

 

 彼女が次に指差したのは『オークの集落殲滅』。推奨ランクC。

 

「これなら肉も手に入りますよ!」

 

「……まあ、これならギリギリごまかせるか?」

 

 オークなら、強い冒険者なら倒せる範疇だ。  それに、肉が手に入るのは食費削減という意味でもありがたい。

 

「よし、これにしよう。ただしヴァミ、条件がある」

 

「なんですか?」

 

「ブレスは禁止だ。魔法も禁止。物理攻撃のみで、なるべく原型を留めて倒すこと。肉が消し炭になったら食えないぞ?」

 

「! そうですね! わかりました、手加減して『デコピン』くらいで倒します!」

 

 デコピンで頭が吹き飛ばないことを祈るばかりだ。

 

 俺たちは依頼書を剥がし、受付へと向かった。  受付嬢(昨日の人だ)は、俺たちを見るなり顔を引きつらせたが、拒否することはしなかった。むしろ「早く出て行ってほしい」という顔で、迅速に手続きをしてくれた。

 

「では、オーク討伐ですね。本来、Fランクは受けられないのですが……まあ、お連れの方がいれば大丈夫でしょう……」

 

「なんか……すいません……」

 

 俺たちはギルドを出た。  空は青く、絶好の狩り日和だ。

 

「さあ、行きますよご主人様! 肉です、金です、すてーきです!」

 

 ヴァミが俺の手を引いて走り出す。  その横顔は、遠足に行く子供のように楽しそうだ。

 

 国宝級の石を持ち歩き、最強種の嫁を連れ、Fランク冒険者としてオーク狩りへ。  俺の「平穏な」異世界生活は、どこまでも規格外な方向へと転がり続けている。  だがまあ、彼女の笑顔が見られるなら、それも悪くないか。

 

「……待ってろよ、オークたち。俺の嫁の胃袋を満たすために、犠牲になってくれ」

 

 俺は覚悟を決め、最強のパートナーと共に街の門をくぐった。

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