ハズレスキル『発情』が最強種にだけクリティカルヒット!? 人間には効かないゴミスキルを使ったら、赤龍がドMな爆乳美女になって「種付け」を懇願してきた件 作:kokoko146666
森の空気が、一変した。
さきほどまでオークのBBQで盛り上がっていた熱気など、嘘のようだった。
肌を刺すような冷気。吐く息が白く染まり、周囲の木々がパキパキと音を立てて凍りついていく。
「……ッ、これは」
俺とヴァミは、悲鳴の聞こえた地点に到達した。
そこは、森の植生が完全に無視された氷の世界だった。
そして、その中心に――一人の男が倒れていた。
「あ、あぁ……助け……て……」
冒険者風の装備だが、ボロボロだ。背中には不釣り合いなほど巨大なリュックサックを背負っている。
顔面は蒼白で、唇は紫色。凍傷で指先が変色している。
その姿を見た瞬間、俺の脳裏に既視感が走った。
(……荷物持ち(ポーター)か)
装備の質が低い。武器も護身用のダガーのみ。
あの巨大な荷物は、パーティ全員分の物資だろう。
そして、こんな危険地帯で一人倒れている状況。
――囮だ。
俺と同じだ。
強い魔物に遭遇し、逃げるための時間稼ぎとして、一番弱い荷物持ちが置き去りにされたのだ。
俺の胸の奥で、ドス黒い怒りの炎が燃え上がった。
どこの誰かは知らない。だが、人の命を使い捨てにする「勇者」のような連中が、この世界には蔓延っているらしい。
「ご主人様。……来ますよ」
ヴァミが低い声で警告した。
彼女の視線は、倒れている男のさらに奥、吹雪が渦巻く闇に向けられている。
ザッ、ザッ、ザッ……。
雪を踏みしめる音が近づいてくる。
現れたのは、絶望的なまでに巨大な「銀」だった。
体高は5メートルを超えているだろうか。
月光を織り込んだような美しい白銀の毛並み。氷河のような冷たい蒼色の瞳。
その一挙手一投足が、周囲の大気を凍てつかせていく。
神狼フェンリル。
赤龍王と並び称される、この大陸の頂点捕食者。
『……去れ』
頭の中に直接響く、鈴を転がしたような涼やかな声。念話だ。
フェンリルは俺たちを一瞥すらせず、ただ冷徹に告げた。
『龍の匂いがすると思えば……随分と堕ちたものだな、赤龍。人間如きとつるみ、あまつさえその姿……。誇りを捨てたか』
「あぁん?」
ヴァミのこめかみに青筋が浮かんだ。
彼女の身体から、ボォッ! と熱波が噴き出す。周囲の氷が一瞬で溶け、水蒸気が上がった。
「誰に向かって口を利いているのですか、駄犬。……私の食後のデザート(情事)を邪魔した挙句、私の旦那様を侮辱するとは……死にたいようですね?」
『旦那様、だと? ……滑稽な。まあいい。ここはお前たちの縄張りではない。その獲物(荷物持ち)を置いて、即刻立ち去れ』
フェンリルが倒れている男を見下ろす。
彼女(声からしてメスだろう)にとって、この男はただの侵入者であり、エサに過ぎない。
「断る」
答えたのは、俺だった。
俺は一歩前へ出て、フェンリルを睨みつけた。
「その男は連れて帰る。俺の目の前で、かつての俺と同じような死に方はさせない」
『……人間風情が、我に意見するか』
ゴウッ!!
フェンリルの殺気が膨れ上がった。それだけで物理的な暴風となり、俺の頬を切り裂きそうになる――が。
ガキンッ!!
俺の前に、真紅の腕が差し込まれた。
ヴァミだ。彼女の腕は部分的に龍の鱗と爪に覆われ、フェンリルの殺気を弾き返していた。
「……私の前で、私の夫に牙を剥くとは。いい度胸ですね」
ヴァミの瞳が、爬虫類の縦長のそれへと変貌する。
「いいでしょう。ちょうど小腹が空いたところです。オーク肉の次は、神狼の霜降り肉(しゃぶしゃぶ)にしてあげますよ!」
『下品なトカゲめ。……凍りついて砕け散れ』
開戦の合図は、もはや不要だった。
ドォォォォォォォォォォンッッッ!!
炎と氷。
二つの最強の魔力が激突し、嘆きの森の深部が消し飛んだ。
◇
「ご主人様! その虫(人間)を連れて下がっていてください!」
ヴァミが叫びながら、紅蓮の火球を連射する。
フェンリルはそれを目にも止まらぬ速さで回避し、通り過ぎざまに氷の礫(つぶて)を放つ。
「ああ、頼んだぞ!」
俺はその隙に、倒れている荷物持ちの男へと駆け寄った。
今の俺のステータスはレベル89。敏捷値もAランクを超えている。最強種同士の余波が飛び交う戦場でも、ギリギリ動くことができた。
「おい! しっかりしろ!」
俺は男を抱え上げ、ポーション(ヴァミの巣からくすねた高級品だ)を口に流し込んだ。
さらに生活魔法『ホット・エア』で体温を上げる。
「う……あ……?」
「説明は後だ。死にたくなければ走れ! 森の出口まで一直線だ!」
「は、はいぃっ!?」
男は状況が飲み込めていないようだが、目の前で怪獣大決戦が行われているのを見て、生存本能に火がついたらしい。
彼は「あ、ありがとうございますぅぅ!」と叫び、脱兎のごとく森の出口へと逃走していった。
(……よし。これで心置きなく戦える)
俺は振り返った。
そこには、天地創造の神話のような光景が広がっていた。
ズガガガガガッ!!
ヴァミが両腕から火炎放射のようなブレスを放ち、森を焼き払う。
対するフェンリルは、吐息一つで絶対零度の防壁を作り出し、炎を防ぐ。
熱膨張と急激な冷却により、大気が悲鳴を上げ、水蒸気爆発が絶え間なく起きている。
「逃げ回ってばかりですね! 氷の彫像にして床の間に飾ってあげますから、大人しくしなさい!」
ヴァミが苛立ちを露わにしながら、爪を振るう。
真空の刃が飛ぶが、フェンリルはその巨体に見合わぬ神速で回避する。
『力任せの雑な攻撃だ。……遅い』
フェンリルの姿がブレた。
残像だ。
実体はすでに、ヴァミの背後上空に位置取っている。
(マズい……!)
俺は直感した。
単純な火力(パワー)ならヴァミが上だ。だが、技量と速度(スピード)においては、野生で研ぎ澄まされたフェンリルに分がある。
ヴァミは数千年の間、巣に引きこもって寝ていただけの箱入り娘だ。対人(対龍)戦闘の経験値に差がありすぎる。
『終わりだ。氷牢(アイス・プリズン)』
フェンリルが冷徹に呟いた。
瞬間、ヴァミの周囲の空間そのものが凍結した。
「なっ……!?」
ヴァミの手足が、見えない氷の鎖に縛られたように空中で固定される。
彼女の周囲に六角形の氷柱が出現し、完全に動きを封じたのだ。
「くっ、動きが……! 小賢しい真似を……ッ!」
ヴァミが全身から魔力を放出し、氷を溶かそうとする。
だが、フェンリルの方が速い。
銀色の巨体が、流星のように急降下してくる。その口には、あらゆる物質を噛み砕く最強の牙が光っていた。
『その喉笛、食いちぎってくれる』
「しまっ……!?」
ヴァミの顔に焦りが浮かぶ。
防御が間に合わない。
俺の嫁が、傷つけられる――。
その事実を認識した瞬間、俺の身体は思考より先に動いていた。
ドンッ!!
地面を蹴る。
レベル89の脚力と、スキル『怪力乱神』によるブースト。
俺は音速の領域に踏み込み、ヴァミとフェンリルの間に割って入った。
「――ご主人様ッ!?」
ヴァミの驚愕の声。
フェンリルの巨大な牙が、俺の目の前に迫る。
その距離、わずか数メートル。
普通なら、人間など紙切れのように噛み砕かれて終わりだ。
だが、俺には切り札がある。
最強種を狩るための、最強の「愛の鞭」。
「俺の嫁に……触るなァッ!!」
俺は右手を突き出し、迫りくる神狼の鼻先へと向けた。
狙いは眉間。
意識を集中する。このスキルの本質は、生命力の強制変換。
相手が強ければ強いほど、その膨大な魔力を逆流させ、内側から理性を焼き尽くす。
喰らえ。
神の誇りも、氷の冷静さも、全部ドロドロに溶かしてやる。
「スキル『強制発情(ラスト・トリガー)』――起動ッ!!」
ドクンッ!!
俺の手のひらから、不可視の波動が放たれた。
それはレーザーのような物理的な光ではない。空間を伝播する「概念」の衝撃波。
回避不能の因果律干渉が、フェンリルの脳髄を直撃した。
『ガァッ……!?』
空中で、フェンリルの動きがピタリと止まった。
驚愕に見開かれた蒼い瞳。
その奥で、絶対零度の理性が、揺らぎ、溶け、沸騰していく。
『な、なんだ……この熱は……!? 魔力が……制御できん……ッ!?』
フェンリルの口から、苦悶の声が漏れる。
彼女の全身を覆っていた冷気が、暴走し、ピンク色の蒸気へと変わっていく。
『あ、あつい……ッ! 身体が……芯から……燃えるようだ……ッ! 子宮が……疼く……!? なんだこれは……我は、神狼だぞ……!?』
空中で姿勢を保てなくなり、フェンリルの巨体が地面に落下した。
ズシンッ! と重い音が響く。
「グルゥッ……クゥーン……ッ!♡」
威厳ある唸り声が、甘えたような鳴き声へと変質する。
そして――変化が起きた。
ヴァミの時と同じだ。制御を失った膨大な魔力が、一点に収束し、肉体を再構成していく。
カァァァッ……!
まばゆい白銀の光が、森を包み込んだ。
巨大な狼のシルエットが、急速に縮んでいく。
光が収まった時。
そこにいたのは、一人の全裸の美女だった。
「はぁ……はぁ……ッ♡」
雪のような白い肌。
腰まで届く、流れるような白銀のロングヘア。
頭にはピンと立った狼の耳があり、お尻からはフサフサの尻尾が生えている。
ヴァミが「暴力的な爆乳」だとすれば、彼女は「芸術的な美乳」だった。
モデルのように引き締まったスレンダーな肢体。長い手足。腹筋にはうっすらと縦線が入り、健康的な美しさを放っている。
顔立ちは、氷の精霊のようにクールで整っている……はずだった。
今は、そのクールな相貌が、快楽と熱でだらしなく崩壊していた。
「あぁ……っ♡ 熱い……お腹の下が……きゅんきゅんする……っ♡ だめ……理性、溶けちゃう……っ♡」
彼女は四つん這いになり、自身の身体を抱きしめて震えていた。
切れ長の瞳はとろんと濁り、潤んだ視線で俺を見上げている。
「貴方……♡ 貴方が……私の中に『熱いの』を入れたの……?♡」
フェンリル――いや、銀髪の美女は、ふらふらと立ち上がり、俺に近づいてきた。
「すごい……魔力……♡ 龍よりも……熱くて……強引……♡」
彼女は俺の胸に顔を埋め、くんくんと匂いを嗅いだ。
「いい匂い……♡ オスの匂い……♡ 私、初めて……こんなに胸が高鳴ってる……♡ ねぇ、責任とって……? こんな身体にしたんだから……最後まで、面倒みてよぉ……♡」
彼女は俺の腰に腕を回し、スレンダーな体を摺り寄せてきた。
冷たい肌の感触が心地よい――なんて言ってる場合じゃない。
尻尾が、パタパタと激しく振られている。
完全に「発情期の犬」だ。それも、飼い主に懐きまくっている大型犬だ。
「……おい、離れろ」
俺が困惑していると、背後から凄まじい熱気が迫ってきた。
「――ちょっと待ちなさいよ、この泥棒犬ッ!!」
氷牢を自力(というより嫉妬の炎)で溶かしたヴァミが、鬼の形相で歩いてきた。
人間形態に戻り、その手には炎の剣(魔力)が握られている。
「私の旦那様に、気安く抱き着いてるんじゃないわよ! その薄っぺらい胸を押し付けるな!」
「……あぁん?」
ヴァミの罵声に、銀髪の美女が反応した。
彼女は俺から離れず、むしろ背中に隠れるようにして、ヴァミを睨み返した。
「うるさいメス猫……。旦那様ってことは……この人の『番(つがい)』なの……? じゃあ、私の『ご主人様(ボス)』でもあるってこと……?♡」
「はぁ!? 何言ってんのコイツ!」
「だって……私を負かしたんだもの……。狼の掟では、強いオスに従うのが絶対……♡ それに……」
彼女は俺を見上げ、うっとりとした顔で頬を染めた。
「この人の匂い……嗅いでるだけで、子宮が疼くの……♡ もう、この人なしじゃ生きられない身体にされちゃったみたい……♡ わぉん♡」
彼女は俺の手を取り、自身の頬に擦り付けた。
忠誠と情欲が混ざり合った、絶対服従のポーズ。
「キ、キーッ!! なによその媚びた顔は! 最強種のプライドはないんですかッ!?」
「プライドなんて……この熱の前じゃ、アイスみたいに溶けちゃった……♡ ねぇご主人様、名前……名前つけて? 私、貴方の犬になりたい……♡」
俺は頭を抱えた。
右には、嫉妬で爆発寸前のヤンデレ赤龍。
左には、即堕ちして発情しまくっているクーデレ(崩壊)神狼。
どちらも全裸。どちらも世界最強。
「……とりあえず、服を着ろ。話はそれからだ」
「はぁい♡」
「むぅ……ご主人様がそう言うなら!」
こうして、俺のパーティ(ハーレム)に、二人目の最強種が加わることになった。
森の冷気はいつの間にか消え失せ、代わりにむせ返るような桃色の熱気が、この場を支配し始めていた。
……荷物持ちの彼、無事に逃げ切れていればいいんだけどな。
俺は心の中で彼にエールを送りつつ、目の前の「猛獣使い」としての難題に向き合うことにした。