原作軸にトリップ
夕方。目立ちにくい隅っこで夏油はちょこなんとちいちゃくなって凹んでいた。
タバコを吸いにきた私は我が目を疑う。
夏油は泣いていた。
「よー夏油。どうした、こんな所で」
「あっ 硝子。ちょっとがっつり怒られちゃってさ」
「ウケる。凹んでるんだ。何かやっちゃったの?」
「理子ちゃん、死なせちゃっただろ」
「そだな」
「処分、何もなかったじゃないか」
「そだな」
「問題ないわけないだろアホかって」
「そうか」
私は何も言えなくなる。
確かに、同化できませんでしたで問題ないわけがない。
「私、理子ちゃんのこと、他人事だった。軽く考えてたんだ。でも違った。私、責任取らないといけないんだ。でも私、どうにかなんてできないよ」
「夏油は精一杯頑張っただろ。私ら学生だし」
「……」
グスグスと夏油が泣く。よっぽどキツくお灸を据えられたらしい。
「らしくないな。ほら、ハンカチ」
「ありがとう、硝子」
「実は天元様、問題起こってたの?」
「言っちゃダメなんだ。硝子が殺されちゃう。私も。本当は知ってたらいけないことだから」
「そうか……。結構ガチでヤバイ?」
夏油は頷いた。グスグス。
「硝子。私、呪術界怖いよ」
「そんなやばいんだ」
夏油が恐れるとかしこたま泣かされるとか、ただ事ではない。
「なんかできる事ある? 五条に相談する?」
「悟に言ったら大事になるだろ。悟はまだ学生だから、問題が公になって揉めて困るのは悟だって。それに悟は監視されてるから、悟に相談した時点で公にするも同然だって。わ、私、私が頑張らないと」
「それって相談させないようにしてるだけじゃなくて?」
夏油はきゅっと膝に顔を押し付ける。
「どうにかしたかったら言うこと聞けとは言われた……」
「まじか」
「このまま行くと灰原と七海の最低でも片方はとばっちりで死ぬよって。等級ミスで死なせる予定がもうあって、産土神にぶつける準備もされてるって。私も、ストレートに処刑にはならないけど、鬱に追い込むとか、罪を犯させるとか、丁寧に手順を踏んで殺されはするよって。当たり前だろって。このままだと、悟が私を殺すように段取り組まれるって。でも天元様の問題が公になったら、内々じゃなくて、公に私の秘匿死刑が決まって悟も責任追及されるって」
「やばいじゃん。それマジなの?」
「私は言ってること、本当だと思った。ヒントはあったんだ。私が護衛に呼ばれたのは特級術師だからじゃなくて、術式の関係だったんだ」
「そっか……。術式が問題なのか」
「そう。問題は、悟じゃなく私なんだ。私だけなら処刑から逃げる方法をその人が考えてくれたけど、完全に悟頼りで、悟に迷惑が掛かるんだ。事情も話せないから、悟が頷いてくれるかもわからない。それに、その作戦に必要な呪具を横流す代わりに抱かれろって」
「クズかよ」
「でも私に手助けした事がバレたら殺されるだろうからそれぐらいしろって」
「そっか……」
「それが出来ないなら、自分で呪霊に自分を食わせて死んでおけって。迷惑だから」
「きついな……」
「私、頑張ったんだ。呪具を貰って、明日、事故に遭う段取りも組んでくれて、でも、悟が助けに来てくれなかったらどうしようって」
私は、そこで夏油の首筋の噛み跡に気づいた。もう夏油は体を捧げた後だったのだ。
「段取り聞かせろ。私も協力する」
そして翌日。
「傑っ!!!!!! 」
ホテルに飛び込んできた五条は呪具により女となった風呂上がりの夏油を見て動揺した。
呪詛師に襲われたと口裏を合わせ、なんとか撃退したが夏油が一発やられてしまったと話し、とりあえず風呂に入れて治療はしたと連絡。
実際、夏油が一発やられてるのは事実である。
負けムーブは絶対に必要だった。
夏油が引退する為に。
「悟……。恥ずかしいな。負けちゃった」
夏油、一世一代の誘惑である。私も演技を続ける。
「特級も返上せざるを得ないな、これは」
「悟……君にこんな事を頼むのはすごく申し訳ないけど。知らない奴しか知らないの、すごく嫌なんだ。抱いてくれないかな」
「五条、普段仲良いんだから、それぐらいしてやってもいいだろ。私は先に帰る」
「す、傑」
「駄目、かな」
私は部屋を出る。
五条が夏油を抱き寄せたのが見えた。
そして、翌日。五条は夏油を娶ると宣言した。責任取れて偉い。
程なく、夏油は妊娠。
スムーズに、夏油が引退して五条家で保護される流れが出来たのである。
これで五条家の守りがあるし、無力になった夏油を敵が襲ってきたとしても、再度呪具を使えば夏油は男に戻り、戦えるようになる。ただ、これは五条にも内緒。
ただ、問題が出来た。
夏油が産んだのは、六眼の呪霊操術だったのである。ちなみに名前は優という。
灰原を護衛に夏油を診察しにきた時、宿儺が強襲。
優を庇った夏油の操る呪霊が急に暴走して、私と灰原も巻き込んで今に至る。
「えっ ちょっと待ってくれ。灰原を死なせたのも私が離反したのも全部織り込み済みで罠だったって事なのかい? 天元様の問題って?」
教祖の夏油は泡を食って慌てる。私達はなんか並行世界の夏油が運営している教団の建物に落ちてきたのだ。灰原が咄嗟に夏油を受け止めてくれて助かった。
そして教祖の夏油に事情を話したというわけだ。こちらの夏油はまんまと罠にひっかかったらしい。
「家入さん、俺もその話初耳なんですけど。どういう事ですか?」
「詳しくは私も知らない。夏油が起きたら聞いてくれ」
「弟達、大丈夫かな……」
「五条が来たのも見えたから、そこは信じるしかない。とにかく、子供が流れなくてよかった」
マシュマロ
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