次回、お茶タイムです。
出荷だー!
六眼相手に情け容赦ないな。
本当に出荷した!
さわさわと騒めく。
「私は、自世界の平和さえ守れればいいのです。そして、五条術師と夏油術師には、天元様の同化を遂行するという依頼を失敗した落とし前をつけてもらわないといけません。私が甘やかした事で、逆に彼らが腑抜けてしまった事は大いに反省いたしましょう。貴方達という、強くなれた実例があったのですから。なればこそ、私はどのような手段をとっても、帳尻を合わせましょう。それこそ、五条家には涼夜だけ返して、最愛なるクラスメイト達にここで行方不明になって貰っても、です」
「クラスメイト?」
「五条くんと夏油くんと家入くんとは同級生だったので。こちらの私は死産していますが……そういう未来もあったという事です」
思わず未来に殴りかかろうとした夏油を五条が止める。
「僕が萎縮して、君がそんな無法を押し付けられる。一言でわかる事情、というのがなんなのか興味あるね。言ってくれるんでしょ? まあ、僕も予想はついてきたけど」
「はい。覚悟は決めてきました」
「答え合わせいいかな?」
「では同時に」
依頼の落とし前。
呪霊操術が唐突に迫害される対象となった理由。
天元様の同化の理由。唐突な護衛の指名。
それらが、五条の頭をめぐっていた。
「「進化した天元様は呪霊操術で操れる」」
夏油は目を見開き、口をハクハクと動かした。
「……多くの意思があの依頼では絡み付いていました。天元様を狙う為、呪霊操術を狙う者。六眼の暗殺を狙う者。天内 理子の生存を願うもの。五条くんと夏油くんに踏み絵を踏ませようとするもの。相反するものから全然別ベクトルのものまで、それはもう沢山ね」
「……」
五条は過去を思い返していた。
「確かなのは、天元様が進化してしまった場合、その日本その物を覆う結界術に干渉することで、呪霊から抽出した術式を日本全土に術式効果を波及できる事。特級術師の選定要件、国を滅ぼせるほどの術師という条件に当てはまってしまうこと。夏油くん。呪霊操術の奥義の中に、多くの呪霊を混ぜ合わせ術式を抽出する技があるんだけど、君は辿り着けているかな?」
「私は何も聞いてない! 天元様を操る意図もなかった!!」
「そうだね。同化遂行させられずとも、その命を守り切るか、せめて呪術界への忠誠を見せていれば、縛るくらいで許された可能性はあるかもね。でも例えば、独断て逃亡教唆してその挙げ句守りきれないで死なせたりなんてしてたら、印象は最悪かな。大事な依頼で失敗は許されないとは伝えられていたはず」
図星を刺されて、夏油が手を握りしめる。その手を五条が握った。
「俺も天内を逃すことには同意してた。これは俺のミスでもある。……あー。それでか。確かにあの後依頼多かったね。僕も潰される予定だったのか。色々納得した。けど、学生相手にそれは荷が重くないかな。夜蛾セン! 夜蛾セン知ってたの?」
「そんなわけあるか。知っていたら……ガッデム!」
「私が……私が悪かったっていうのか」
「17ダロ。子供ダ」
夏油側の護衛として来ていたミゲルが気遣う。
「ごめん。意地悪言ったよ。夏油くんが踏み絵を踏んでも、別件で秘匿死刑を得るための追い込みはされたと思う。周囲の人間を死なせたり、胸糞依頼を詰め込んで病ませたりね。洗脳、死者憑依、遺体乗っ取り、人質、正直、意に沿わずとも言うことを聞かせる方法はあるし、実際君の体は狙われている。五条派閥への攻撃と勢力の調整からも、君の脱落は不可避だった。そうでもなきゃ、嫌がらせして特級呪詛師のメンタルケア誤って叛逆されるなんてアホな事、普通にないよ」
顔を下げた夏油を庇うように肩を抱き、五条は息を吐く。
「はっず。俺と傑がやらかしてたパターンなのかよ……。俺がちゃんと家の事とか勉強してれば防げた? 俺が信頼されてれば、傑のこと話されてたのかな。傑、気に病むなよ。ミスの割合としては俺のが大きい」
五条家当主と一般人の学生。どっちが責任が大きいかといえば、やはり五条家当主である。でも。
「その辺梃入れして今詰んでるから、力を求めた君は間違いじゃないよ。君の役割はとにかく勝つことだ。政治を気にすると個人の力を研いでられないからね。同じ六眼同士の戦いなのに、鎧袖一触だったって聞いてる。僕のクラスメイトの五条くんに宿儺を倒せると思えない。これは梃入れ方法を間違えた僕のミスでもある」
「なるほど」
「ただ、自分の運命を決める依頼に参加させたんだ。夏油くんを依頼に参加させた時点で、総監部としては義理を果たしてたと言えると思うよ。九十九はこれ以上の同化に反対だったし、甚爾はそもそも敵側に行ってた。五条くんと夏油くんを揃えて、知り合いの動員を許した以上、他に何ができたかっていると……ね」
「俺の動員は出来ただろう。一級術師の動員をしても良かったはずだ。そうか、国の命運が掛かっているのだ。せめて俺が動くべきだったんだな……。少なくとも、子供2人に背負わせる事じゃない」
「夜蛾セン……」
そこで甚爾は気まずげに頭を掻いた。
「知らなかったとはいえ、悪かったよ。そりゃ五条の坊がやけに必死に説得してくるなとは思ったが、まじで日本の存亡に関わりあるとは思わなくてな。でも金払い良かったから、知ってても受けたと思うが」
「禪院 甚爾! 猿の分際で!」
「向こうでもこっちでも特級2人を退ける有能な猿ですまんな」
煽られて殴りかかる夏油を五条が止める。
「夏油くん。甚爾を甘く見ないでほしい。彼は呪術的にかなり意味ある存在だ。高い呪力を約束された禪院家の生まれでありながら、呪力が全くの0というのは、特別な意味を持つ。一般人が呪力がないのとは違うんだよ」
夏油はギリギリとする。
「六眼と天元と星漿体は呪術的因縁で結ばれていて、成功補正が効くはずだった。呪力0の甚爾が関与する事で、その因縁が断ち切られる事となった。それまでは何があっても都合のいい偶然が起こって同化出来てたけど、それが出来なかったんだ。呪力完全0のフィジカルギフテッドは、領域展開のすり抜けとか、空中起動とか、極めれば出来る事もとても多い。彼もまた非常に特別な存在だよ」
「そーいうこった」
「あと、犯人側だった甚爾は当然、護衛失敗しただけの五条くんと夏油くんより痛い目見るので安心してほしい」
「そーいうこった……」
「とーじくんは悪くない!」
「100%悪いですが何か?」
いかにも禪院家ぽい女の子が甚爾を庇う。
「さて、色々理解して貰ったところで、涼夜と夏油くんと五条くんと絆を連れてきてくれるかな。生まれてたら腹の子もね。二度話すのも手間だろうし、2人から言い訳もあるだろうから」
「ついでにちょっと休憩させてくれない? 総監部は色々知ってたんだろうけど、こっちは初耳の事が多いからね。心の整理がしたい」
「五条さん、お茶と未開封のお菓子をご用意してます!」
「ありがとう、伊地知」
夏油はつぶやいた。
「灰原が死んだのも、私のせいだったのか……?」
「傑」
「灰原はかわいそうに思うよ。でも日本人丸ごと呪霊にするなんて大技も出来かねないからね。全て内々にことを納められるなら、まあ非術師の村一つ、術師1人はコラテラルダメージかな」
「私はそんなに信用できないか? はは……そうだね。実際に私は呪詛師だ」
「傑……」
「君の所の私は? 踏み絵を踏めたのかい?」
「同化失敗の時点で夏油くんの性別変えて逃亡させたよ。総監部に君の体を狙ってるのがいる事はわかってたから、秘匿死刑も実はリスキーだったんだよね。同化失敗したなら非術師として一生逃亡して所在地不明で呪術師の誰にも知られず死んでもらう方が都合が良かった。まあ遊びたい盛りでさびしんぼな夏油くんと五条くんを大人しくさせる事が無理だったんだけど。ちゃんと罪を犯させて逃げさせる工程は必要だったのかなって」
「僕、傑とキャバクラごっこして子供できちゃったって言ってたしね」
「は?」
傑はかなり低い声の「は?」と言った。
「そもそも会うなって話なんだよなぁ」
「まじかよ五条最低じゃん」
「歌姫孕ませたクズ医者がなんか言ってる」
未来の軽口に家入が固まり、ギギギ、と顔を五条夏油と見合わせる。
「お茶が入りましたよー!」
お茶タイムである。伊地知が頑張ってお茶を配った。
なお、総監部は一生懸命気配を消していた。
マシュマロ
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