「優くん! 僕達は男だから、お母さんと家入先輩をしっかり守ってあげようね!」
「はい! 色々わかったし、色んなハンデを粉砕して、傑のかかされた恥を濯ぎ、僕は五条家次期当主になりたいと思います!」
むしろ、なんでか理由がわからず傑が離したがらず、屋敷に閉じ込められていた時。どうしていいかわからず無性に苦しかった。今はやるべき事がわかったのだとやる気十分! 宿儺は当主様が粉砕してくれるだろうし、後は自分が加茂家を粉砕して傑のかかされた恥をそそぎ、五条家として天元様問題を解決して若き日の護衛失敗のミスを挽回するのだ! それが息子であり五条家次期当主たる自分の役目なのである!! 六眼を持っているのだ、当主の座は誰にも渡さない! そして、父と母に自慢の息子だって思ってもらうのだ!
「偉いよ、優くん!」
「まずは目立たないようにしよう、な?」
包帯で目を覆った優の手を取り、妊婦さんの五条傑はゆっくり歩く。
周囲の人は優しく周囲を空けてくれる。
万一ぶつかったら大事故不可避、一気に悪者である。絶対にこの硝子細工に近寄らない構え!
灰原も道路側を歩いて、さりげなく家入先輩をエスコート!
そうして辿り着いたのは、とあるマンション。
「ここですね」
そういうわけで、教祖様のセーフハウスにお邪魔する事になったのだった。
すぐに生活できるよう整えてあり、直近で必要な物をリストアップして買いに行く。
その後、戻った所で教祖からご連絡。
悟に任された事、護衛を送ること。罠の大体の内容を決めた事。
一旦電話を切り、話をする。
「夏油さんは、罠に掛かったとはいえ、もう呪詛師なんですよね……。何かしてあげられる事はないでしょうか」
「こっちでも宿儺とかいるだろうし、悟をどうにかする計略は立てられているだろうしね」
「でも、夏油が出たら処刑されるぞ。指名手配されてんだから。私がいるから、並行世界ってのには一定の信頼度が置けるだろうけど、どんなに良くても監視は絶対つくと思う」
「そうだけど。こっちでもこの呪具はあるんだから、もし悟に使われたらと思うと……。やっぱりこういう危険なものや存在があるよって警告ぐらいはしたいよね」
「傑って女の子の名前でも通用するよな。最初から女の子だった事にするとか」
「今の私のスペックだと四級も無理だよ。呪専に入学ができないと思う」
そこで、優が声を上げた。
「僕! 隠し子のふりしてメッセンジャー出来ると思います! 指名手配されてないし! 当主様の所までは辿り着いてみせます! 幸い、僕は当主様そっくりです!」
「呪霊操術はどうすんの」
「隠し通します。術式が発動する所を見られない限り、何かあるとはわかっても看破は出来ません。明らかに訳ありなのは確実ですし、誤魔化し通します。それに、当主様はもう加茂家の横槍に揺らぐお立場ではないでしょう」
「そっか……。そうだね。どうする、夏油」
「ちゃんと、悟と……当主様と上手にお話しできる?」
「はい!」
「念の為、お手紙用意しておこうか」
そういう事で、灰原、五条傑、家入はそれぞれ手紙を書き、それを呪霊にINして優は傑から呪霊を受け取った。
呪霊を暴れさせる事は今の五条傑には出来ない。
同じ呪霊操術の優に呪霊の受け渡しをする事ぐらいだ、出来るのは。
優を送り出す事を教祖にも連絡。
悟の所なら自分以上に問題なかろうと教祖も快諾。自分も手紙を託すとのこと。
心配そうにしていた五条の事を奇跡的に思い出し、教祖は作戦の事も記してあげた。更に、当主様から式神で一筆もらった。これで完璧。
ラルゥが教祖傑と当主様の手紙を持ってきて、優に優しく語りかけた。
「貴方がしっかりしなくちゃ駄目よ。傑ちゃんはちょっと……うっかりした所もあるし、五条悟は噂によると強い代わりに陰謀関係はさっぱりだから。貴方が行くのはそのど真ん中よ」
「は、はい」
そんなわけで、優は表向きのお手紙を持って、食料と毛布を鞄に入れ、呪専へと向かったのだった。
9歳で学校にたどり着けた。えらい。いや、本当に偉い。
何故なら、優は悟同伴でないと外に出る事を決して許されなかったからだ。
なんなら悟同伴でも渋い顔をされる。それは加茂家のせいだったのだけれども。
そんな状態で目的の場所まで辿り着けたのだからとっても偉い。
でも多分、セーフハウスへはもう辿り着けない。地名とかメモしてないので。
ちなみに不審者はいっぱい出たがひと睨みですごすご帰っている。
「すみません、五条 悟を呼んでください」
「ご……五条術師に何か御用ですか?」
「お手紙とお届け物があるんです。必ず本人に渡さないといけないので、帰るまでここで待たせてください。ご安心ください、一週間までならお泊まりセットあります」
「えっとぉ……学長をお呼びするのでお待ちください」
それから、すぐに学長が現れた。
「私は夜蛾という。この学校の学長だ」
「僕は優です」
「君は、まさか悟の? 子供がいるとは聞いてなかったな。お手紙とお届け物とは?」
「本人に直接お伝えせよ、とのことですので」
「悟にはなんと伝えればわかる? 息子が来ていると言えばいいか?」
「五条 悟は僕の事を知らないのでわからないと思います。でも、僕の髪の毛をDNA検査してもらえば親子と出るので、お話は聞いてもらえるかと」
「………………そうか。ちなみに年齢を聞いても?」
「9歳です」
夜蛾はスマホを取った。
早く出ろ。早く出ろ。そして早く帰ってこい。
五条 悟は荒ぶっていた。
高校二年生の時に子作りなんてしてるわけねーだろ!
ぜんっぜんそれどころじゃなかった時だろ! 知ってるじゃん!
それと普通に貞操観念くらいあるわ!! 知らない間に子供ができてるなんて絶対ない!
明らかな厄介ごと。自分は全く悪くないのに、悪者になりそうな気配。
しかも罪もない幼い子供は確実に傷つく。嫌だ嫌だ嫌だ。
子供が門で待っていて動かないというので予定を変更して急遽学校へ。
母親聞き出して締め上げてやる、なんて考えつつ人だかりのできている門に着く。
「あ、お父さん来たよ!」
そんな乙骨の言葉に、目隠しをした子供が危なげなくててて、と寄ってきた。
目隠しなんてあからさまな僕の真似やめて。そんな事しても六眼生えないよ。
やめて生徒たち、隠し子持ってる先生か、なんて顔しないで。誤解。誤解だから。悪質な罠だから。
そして、子供は地べたに平伏した。ねぇそれやめて。僕、悪者に見えるじゃん。
一応、僕の子って言っても通じる程度には僕に似てんのね。白い髪は地毛か。呪力は大きいから、いらないっていうなら引き取るのはありかもしれない。
自分の子としてではないけど、母親を受け入れるなんてゼッテーないけど。
「御当主様、お手を煩わせてすみません。母から手紙を預かってまいりました」
「お前、分家か何か? 僕に似てるから勘違いしちゃった?」
「手紙を読んでいただければと」
僕は手紙を取ってあえて声に出して読んだ。苛立っていたし、潔白を証明したかったし、あとはちょっとした嫌がらせ。僕に隠し立てするような事は何もない。
「あーなになに? 『裏に流れていた貴方の精子を買い取って受精したものです。大きくなったらカレピッピにしようとしていましたが、新しいカレピッピができて邪魔になったのであげます。私の事は話さないよう縛りを結んであります』……は?」
子供がスルスルっと包帯を解く。そこから現れたのは、同時に二つは決して現れないはずの至高の蒼。細めでわかりにくいけど、確かに六眼だった。僕みたいにキュルンとしてない、誰かを思い出すような、狐みたいな目。誰に似てるんだろう。
「部屋を出る事が許されなかったので、あまり知識もありませんが……。身を守る事ぐらいは出来ます。母が振られて迎えに来るまで、お側においてはいただけませんか。お礼ですが、呪霊退治を教えていただければ大人になった時、お仕事を手伝えるかと思います。僕も9歳、独り立ちしようかとも思ったのですが、六眼は懸賞金が掛かっているので、ご当主様の庇護を得るしか生き延びる方法も思いつかなくて」
ギギギ、と僕は子供を見た。
マジか、といった顔でみんなドン引きしている。
パンダが憂太の肩に手を置いた。
「見たか、棘、憂太。あれが有名税だ。気をつけろよ」
「ええっ!? そんな!」
「おかか!」
え? えっ!? えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!??
マシュマロ
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