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衝撃的な言葉に、一同が固まり、戦々恐々として見守る中、五条先生は動いた。
「ええっとぉ……まず、君の保護と親子鑑定はします」
無難である。確かにそれしかない。
「ありがとうございます。安心してください。迎えは必ず来るので認知は不要です」
しっかりしてるなぁ、お子さん……。でも、所詮お子さんである。この状況でお母さんが必ず迎えに来てくれると信じているのだ。
「君、お母さんすき?」
五条先生は慎重に問いかける。多分、嫌いと答えればすぐさま完全に身柄を五条家で預かるのだろう。いや、この場合好きって答えても身柄を預かるべきなんだけど。とにかく本人の意思は大事である。
「若干至らない所もありますが、守るべき人です。生涯守って行く覚悟です」
「若干……若干かぁ……えーっと…………。あ、そうだ、君、術式あるよね!? なになに!? もしかして無下限!?」
早くも会話に窮した五条先生は、話題を術式に移す。
別に呪術師としてしか子供を見てないわけではなく、先生も混乱して他に何も思いつかなかったのだろう。
「無下限でなくてはいけませんか……?」
「全然! 全然そんな事はないよ! どんな術式でも大丈夫!」
「母は僕の術式を好ましいと思っていなかったので……使いたくも知られたくもないです」
「なんで? あるだけ凄いよ! それに……それに、えっ 君、術式二つ持ってない? こんなの僕初めてみるんだけど」
「えっ」
「えっ」
「よくわかんないけどさ。君の事、もっと肯定してこ! 大丈夫、君は才能あるよ」
「ご当主様……」
戸惑いがちに、抱きしめようとして躊躇する子供を、そっと抱きしめる五条先生。
突然の「貴方の子よ!」に対して、なんて優しい……。男として尊敬します、五条先生!
「伊地知、とりあえず予定全撤廃」
「そうですよね……」
伊地知さんがガックリと肩を落とす。かわいそうだけど、これは仕方ないだろう。
「憂太、棘、真希。悪いけど、子供の買い物に付き合ってくれないかな。身の回りのもの揃えないと」
そういう五条さんの、ちょっと縋るような眼差しに、僕達は一も二もなく頷いた。
「学校は、通った事ある?」
「いいえ」
「ご家族は……」
「縛りでいう事ができなくて」
「好きなもの聞いていい?」
「呪力操作です」
どうしよう。会話が途切れて、僕が困っていると、真希さんが口を開く。
「ずっと家ん中いたのか?」
「はい」
「新しいカレピッピどんな奴?」
「太陽のような方です。母はご当主様やカレピッピのような太陽のような方が好きなので」
「太陽のような奴はお前みたいなのを見過ごさねぇんじゃねぇかな……」
「おおらかで、細かい事には疎いので」
「細かくはねぇかな……。っていうかおおらかなのはお前だよ。大人すぎてこえぇよ」
割とぶっ込んで行く真希さんだが、真希さんもまた言葉を失った。
強敵すぎる。
五条先生はずっと実家と連絡を取り合っている。
いうまでもなく大変そうだ。
学校で出た五条先生関連のゴミが売り捌かれた可能性が高いとして、警備体制についても話し合っている。五条先生は高校二年生の時に外泊した際のゴミをどうしたか必死に思い出そうとしている。いや、流石にそこまで気をつけろというのは無理があるよ。大変なんだな、最強っていうのも。
服をポイポイっとカゴに入れていくと、あまり高いのは返金が大変だとか、滞在期間はそんな長くないので量はいらないとか言って、戻していく。あと選ぶものが無地など無難っぽい。
「いいから、大人に甘えなさい! 僕の顔を潰すつもりかな?」
「あっ 申し訳ありません……!」
顔がざっと青くなったので、五条先生の方が慌てた。
「あ、ごめんね。大丈夫! 子供が心配しないでって言いたかっただけでね。君は好きなものを教えてくれればいいよ」
「ぼ、僕はもう7歳超えてるので」
「そっかぁ。でも、僕は君に可愛いのも着せたいから、ここは僕の顔を立ててくれないかな? 嫌な服着せるのも申し訳ないから、僕と君の趣味の合うの見つけてこうよ」
「は、はい」
それから、お買い物はスムーズに進んだ。
多分、いっぱい我慢してたんだろうな。大人ぶってはいるけど、ほんとうは可愛いキャラものも好きらしく、仕方ないと言いつつも、幼児向けのキャラクターの描かれたそれを買ってもらうと表情が緩んでいた。五条先生はさすがだなぁ。
「母は、僕が目立たないようにするのが好きで……でも、ご当主様様は、その、こういうのって、僕が着るの、嬉しい、ですか……?」
「すっごく嬉しいし楽しい! それに、ご当主様様ってのもあれだよね。パパって呼んでいいんだよ!」
「いえ。甘えるわけには」
「んー。僕と君の仲が悪くみえるとさ、付け込もうと有象無象が寄ってくると思うんだよねー」
「わかりました。……パパ」
せ、せんせー! 子供を守ってあげるって決意が垣間見えて、さすが先生だなぁ!
そのままレストランに行って、優くんにはお子様ランチを頼む。
僕達は、五条先生の奢りでハンバーグを頼んだ。
優くんは、お子様ランチに度肝を抜かれていた。
お子様ランチをガン見していた。
「ひ、飛行機の上にご飯が……!?」
「うんうん。夕飯は立派寿司に行こうか。そっちは新幹線が見られるよ」
はわー! と言った感じでプルプルする優くん。
いっぱい我慢して、それが当然で。とても大人で。
五条先生が膝の上に乗せると、遠慮していたけど、ポンポンと背中を叩くと秒で眠りについてしまう。
「五条先生。優くんのお母さんに、渡しませんよね」
「当然でしょ。六眼は五条家の当主になる決まりなんだ。子供のうちに確保できて良かったよ」
「しゃけ!」
「でも、おかしくねーか? 悟の精子を買い取るとか、術式が嫌いとか、縛りを結ばせるとか、明らかに術師だよな? 六眼の術式二つ持ち、呪力も十分な大当たりを返すか……? 売り飛ばすならまだわかるけどよ」
「おかしい事が沢山あるのは重々承知だよ。どんな罠だろうと、この子の保護最優先で動く。それだけだよ」
そして、学校に戻り、新品のパジャマに着替えるのを褒め称える。
アイマスクも可愛いのを夜蛾学長が作ってくれていた。そして幼児向けアニメ。
テレビが許されなかったらしく、二歳児向けのヒーローをガン見している。
「じゃあ、一緒に寝ようか。お母さんいないで寝るの耐えられる?」
「えっ でも夜は邪魔してはいけないのでは……あっ はい! 頑張ります!」
うとうとしていた優の咄嗟の言葉に、一同の脳内に宇宙が広がる。そういえば、この子性的虐待の可能性もあるんだった。
カレピッピに育てるって実の母に言われてるんだった。
「優。一応言っておくが、何も頑張んなくていいんだぞ」
真希さんが心配そうに語りかける。
「いえ、きちんと勤めを果たします」
「勤めって何かな。五条先生は怖い事しないよ。しませんよね」
「9歳の男の子相手に何言ってんだよ……。流石にないよ。ないよね?」
「しゃけしゃけ!」
「なんで悟が自信なさそうに問いかけんだよ、お前の事だろ」
「僕はしないけどさぁ! お母さんがなんか強要してたわけ? 九歳児に?」
心配そうに問いかける。優くんは眠そうで、だから素直に話してくれそうだ。
「いえ、母は何も……。母は夜は侍る勤めがあるので、忙しいですし。僕は弟達と寝てます」
「弟!? 弟がいるの!?」
「あ、いえ、はい。今は、その……無事でいるか不明、ですが」
「不明なの!?」
「敵対者の襲撃があったので……」
「襲撃があったの!??」
「それはいいんです。今は勤めの話です」
「何もよくないけど?」
「じゃ勤めって何」
「なんとか……当主様を高専の結界外に誘い出さないと……2人きりになって、術式を……。僕が守らないと……」
なんだろう。よっぽど凄い術式で、家族を人質にされているんだろうか。
「あーもう、雪だるま式に問題増えてく〜! 伊地知! 調査お願い!」
「はい!」
「僕もう寝る!」
そう言って、眠ってしまった優くんを抱き上げる。
「あの! 罠ならば、危険なのでは」
「9歳の子供に負けると思うの? この僕が?」
「いえ」
「罠ごと食い破るよ」
五条先生は格好いい大人である。
翌日。優くんはとてもご機嫌だった。
五条先生の添い寝がとっても嬉しかったらしい。
一生懸命謙遜しつつも、ドヤ顔で自慢。
大人との添い寝はとっても安心できてぐっすり眠れて、時間をとってもらってる、愛されてるという感じがするのだとか。
どこまでも不憫な子である。
その五条先生はどうしても外せない任務があるとお仕事へ。
先生はメチャクチャ抗議したが、どうしてもダメらしい。
夜蛾学長も任務。棘くんも真希さんも任務。
僕もお仕事を頼まれたのだが、何か胡散臭い気がして、初めて仮病を使ってサボってしまった。真希さんが、失敗料理を無理やり食べさせてしまったのだと誤魔化してくれた。棘くんも早く帰ってくれると約束してくれた。持つべきものは友達だ。
パンダくんと優くんと呪力操作遊びをしていると、五条家から迎えが来た。六眼なのだから当然だろう。懸賞金もかかっているという事だし。
だが、何か揉めているようだった。
「本物の五条家が来たら呼んでください」
優くんは冷たい目をしてそう言い放つ。
「何を言っているんですか。私達は本物の五条家のものですよ」
「御当主様の前でもそれ言えます? そうだ、一緒にご当主様を待ちましょう」
「ええい! 来い!」
無理に車に詰め込もうとするので、僕は止めに入った。
「五条先生に確認をとって、僕が五条家まで送っていきますよ。知らない人だと不安でしょう」
「明らか誘拐だからやめようぜ?」
「五月蝿い!!」
呪具!!?
呪具が優くんを襲った時、優くんから呪霊が飛び出してくる。アラームがすごい勢いでなる。だが呪霊はあっという間に祓われた。
「何をするんです!」
僕は慌てて優くんを庇おうとする。彼らは刀を振るってきて、優くんが僕を庇って前に出る。肝が冷えた。
だが剣が見えない何かに阻まれている。無下限!! 無下限持ってたのか!
「傑を辱めた加茂家の術師! 現行犯逮捕なら捕まえられる!!! ずっと裏からネチネチ傑をいじめて、絶対許せない!!」
待って加茂家って御三家? すぐるってお母さんの名前? 縛りで言えないんじゃ?
呪霊が次々と出てきて術師を襲う。ちょっと騒然とした。
「何事だ!」
「こいつがいきなり私たちを襲って!」
「嘘です、この人達誘拐犯です!!」
「こいつが見えないか!」
ついに奴らは子供の人質まで出してきた。
優くんが凄い顔をする。
「僕の体を加茂家に渡すわけにはいきません。天元様を操る計画がバレてないとでも? ご当主様にご迷惑をかけるぐらいならこの場でこの身を呪霊に食わせて死にます。だから、ごめんなさい」
更に呪霊が出される。呪霊による追手への攻撃!
子供が!
【動くな!】
「パンダアターック!」
「棘くん! パンダくん!」
猛スピードで車が来て、車の助手席から叫ぶ棘くん。固まった犯人からパンダくんが人質を助ける。
何が起こってるの!? 全然わからないんだけど! 天元様って何!?
ワタワタしていると、急激な眠気がしてきた。
眠り薬!? しまった、五条先生の助けを一番に呼ぶべきだった!!!!
バタバタと倒れていく。呪具が優くんに使われる。誘拐されてしまう。
どうしよう、里香ちゃん!!
【憂太ぁぁぁぁぁぁぁ!!!】
里香ちゃんが全てを吹っ飛ばして、目が覚めた時には犯人は消えて、優くんは記憶を失っていた。
眠り薬の効かないパンダくんによると、呪具を使われた優くんをなんとか奪還。五条家を名乗る犯人は別働隊の犯人が回収。同時に来た第三陣が優くんを攫おうとして、抵抗を頑張っていたけど、多勢に無勢。
もうダメかと思っていた所で、元から警戒してて里香ちゃんの顕現にも気づいた五条先生が助けに来てくれたらしい。
捕まえられたのは第三陣の何も知らない非術師混じりのチンピラと、五条先生に泣きじゃくって縋り付く優くんだけ。記憶はないけど、本能で五条先生を父だと認識したらしい。
更に驚愕の事実。
優くんは、よっぽど教育で抑圧・矯正されて本来の性格が殺されていたらしく、記憶がなくなった事で性格が激変。
何か色々役目を持っていたらしい大人びた優くんは、何も知らないハイパーワガママ生意気ボーイにクラスチェンジしてしまったのだった!
謎と火種を撒くだけ撒いて、である。
五条先生は泣いていい。
だけど、記憶喪失後の優くんの方が子供らしくて五条先生にそっくりな今の方が幸せそうで好ましいのも悩みどころなのである!
柵を弄して周囲を欺いたり時を待つより、誠実にかつ即座に確実に手紙を渡したほうがマシでしたね……。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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