「御当主様! なんで僕1人だったの!? なんで傑いないの!? おかしいでしょ!!」
記憶を奪われ、混乱状態の優は僕に縋り付いて泣きじゃくる。
「はいはい、ごめんね。加茂家とか天元様ってどういう事?」
「何それ」
「だよね……。うーん。この写真さぁ。見覚えある? 傑ってこの人?」
傑の写真をスマホで見せると、優はあっさりと言って見せた。
「? パパがよく見てる写真。傑は違うよ」
違う……? でも術式がもう傑なんだよなぁ。確かに傑は男だけど、そういえばこの目、傑にそっくりなんだ。なんだか凄い嫌な予感がするんだけど。
「傑ってどんな人?」
「んーと、細くて、ママって言っちゃダメで、おっぱい大きくて、悪辣な呪具なんだよ」
「悪辣な呪具」
見えてきた。何も知りたくないけど、仕方ない。
「傑、術式使えないし、ゴリラが子猫ちゃんだし、御当主様は寂しいけど一番辛いのは傑なんだよ」
「君、もしかして未来から来てる?」
そうとしか思えなかった。この後何かがあって、悪辣な呪具とやらで傑が女の子にされて、僕との間に子供を作って、その子供が過去に飛んできた。
そんな事ある?????
「?」
「君のお家は? 住所言える?」
子供がスラスラと言ったのは、五条家の実家の住所で。
それに、僕を御当主様と呼んでいたのも、母である傑が微妙な立場で、優が六眼だったならば説明がつく。
そんな事ある?????
大体、おかしいでしょ、術式が二つってありえないし、今代で六眼2人なんてありえない。一体何があったらそうなるんだよ。
その時、呪霊が人形の紙を吐き出した。それは僕の姿を取る。
「御当主様!」
『優。時間がない。よく聞いて。僕はこれから宿儺と決闘をする。その決闘で、僕は負ける可能性が高い。お前は五条家次期当主として、そっちの傑と傑、そして宿儺の器である恵を守れ。出来ないなら殺して死体を処分して死んで。必ず自分含めて灰にして。十種影法師を持たない宿儺なら、そっちの僕でもなんとか倒せるはず。絶対に羂索に呪霊操術の術式は渡せない。本当に日本人丸ごと呪霊にされかねない。宿儺には勝てないけど、なんとかこっちの羂索は殺しておく。僕、頑張るよ。だから願わくば、そっちを解決して、強く大きく育って、戻ってきて僕の仇を取って、五条家をよろしくね。君なら出来る。僕の大事な息子だからね。……出来れば、男に戻った傑に会いたかったし、君に一度で良いからパパって呼ばれたかったな」
ぎゅうっと優を抱きしめ、それは紙切れに戻って燃えた。
多い多い要求が多い。
何か声を掛ける前に消えてしまった。あの、僕もお話し聞きたかったんですけど……! あとやっぱり、現状、傑は女なの? 何があったの??
「御当主、様。パパ。パパ……!!」
優はグスグスと泣く。
「お話し全然わかんなかったよぉ……!! 御当主様の遺言なのにどうしよう……!」
「僕が聞いてたから大丈夫だよ。傑が今どうしてるか調べようか。これタイムパラドックスどうなんの?」
という事で、優を抱き上げ、学校に入る。色々と総監部や学長ともお話し合いである。
「伊地知、恵呼んで。大至急ね。あと、後片付けお願い」
「あの、本当にこの子、未来人なんですか……!? 何をどうやったら呪詛師になってる夏油さんと五条さんが結婚して子供を作る事に?」
「わかんないよ、そんなの。僕は普通に女の子が好きだし、傑は親友とは思ってるけど恋愛対象じゃないよ。今は秘匿死刑対象だし」
ということで会議である。
「で、加茂家とか総監部がグルなんです?」
「何を言いがかりを!」
「任務を無理やり言い渡されて直後に息子襲撃されてるんですけど、このタイミングで疑うなと?」
「それより、祈本里香の事だ! どう責任を取る!」
「話逸らすなよ、乙骨の味方をするとかじゃなく、五条家として相対するぞ。僕の息子を攫って、天元様を操って、日本人を呪霊にするとしか聞こえなかったんだけど、その疑いを晴らすのが先じゃないですか?」
「証拠があるのか!」
「だから、なんで息子がポップした翌日になんで無理やり任務ネジ入れたんですか? って言ってんじゃん。学長や乙骨憂太、それにご丁寧に学生まで。で、当日に誘拐とかあからさま過ぎでしょ。傑にも何かやってました? 呪霊操術を狙ってたって、そういう事なんです? 呪霊操術で天元様が操れるから、秘匿死刑になるように誘導してました? 羂索って誰なんですか。宿儺を甦らす計画があるんですか」
「妄想だ!!」
「天元様に聞いても良いです? 白黒はっきりつけましょう」
「そんな事を言って、天元様を操るつもりだろう、そうはいかん。大体天元様は植物のような状態で、話せる状態ではない」
「操れるって認めるって事ですか?」
「貴様こそ、夏油傑と繋がっているのだろう!」
「現在の居場所すら知らないんですけど。それと、日本丸ごと呪霊にする計画があるなら、残念だけど対策取れないなら、恵と優と傑には灰になってもらうしか」
「それはならん! できるはずがない!!!」
「なんで? 恵だけならまだしも、五条家からも涙を飲んで優を処分すると言ってるんですよ?」
「優の処分はならん! 実の子供だろう!」
「はぁぁ? 今までそんなお優しい言葉聞いた事なかったですが? 今までなら絶対秘匿死刑ゴリ押ししてたじゃないですか。もしかして、遺体から術式を呪具にする技術かなんかあるんです? 今まで秘匿死刑ゴリ押してたのそれ?」
「違う!!!」
「羂索って誰だよ。加茂家の術師? 総監部の術師? 両方?」
「知らん!!! 大体、日本丸ごと呪霊にする計画など聞いてないぞ!」
「それ以外は聞いてるんです?」
「っ!!!!」
「天元様へ面会して傑の現在地探しますね。あと、育休取らせてもらいます。これが受け入れられないなら、五条家として正式にストライキします。流石に日本丸ごと呪霊計画の嫌疑が掛かってる状態で総監部に従えません。潔白証明して」
後日、加茂家と禪院家は無関係なので事態を静観すると通達が来たのだった。
そして、天元様と面会する。
「呪霊操術は天元様を操れる」「羂索の術式は死体を乗っ取る事」「天元様を狙っていた」「出身は加茂家」「六眼2連続は、甚爾が運命を壊した事で因果が崩れたかもしれない」との証言を得たのだった。
また、流石に羂索の計画を総監部が全て知っていたわけではないので、総監部自体も動揺し、内部でゴタゴタしていた。
いずれにせよ、五条家が総監部の一斉入れ替えを考えるには十分すぎる出来事である。流石に禪院家からも恵を処刑しないなら横槍は入れないとの通達が来たし。
マシュマロ
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