スキル《人畜 無害》で無双する!誰も敵意を向けないので、乳も尻も触り放題のハーレムを堪能します 作:kokoko146666
店を出て、街の門を抜けた頃には、俺の手には漆黒のナイフが握られていた。
妙にしっくりくる。
まるで、最初から“こうなる”と決まっていたみたいに。
エルナ「ほんとに買ったんだ……」
俺の隣で、彼女が苦笑する。
エルナ「呪いの武器が最初の装備とか、普通の新人じゃありえないんだけど」
悠「まあ、俺……普通じゃないからな」
エルナ「それはもう、分かってるけどね」
そう言って、彼女は小さく笑った。
俺たちは今、街外れの草原にいた。
陽の光が眩しくて、草の香りが風に乗る。
空気は澄んでいて、遠くにうさぎのような魔物ホーンラビットの影がちらほら。
悠「じゃあ、あいつで……」
俺は黒いナイフを握り、ゆっくり歩き出した。
ぷるぷると揺れながら、ホーンラビットがこっちに気づく──が、反応は鈍い。
《無害》が効いている。
俺を“敵”として認識していないのが、見てわかる。
ホーンラビットの正面に立ち、腕を伸ばして──ナイフを、ただすっと振った。
スルッ。
という感触とともに、刃がホーンラビットの身体を真っ二つに貫いた。
ずぶんっ……という手応えすらない。
悠「……今、斬った……よな?」
フィノ「それが、黒哭クオリティ☆」
ふわりと、俺の肩の上にフィノが姿を現す。
フィノ「さっきバタバタしてて説明できなかったけど──今ならいいかな?」
悠「聞かせてくれ。……こいつ、やっぱただのナイフじゃないよな」
フィノ「そ〜だねぇ。じゃ、解説ターイム♪」
フィノ「まず主効果。《殺意の貫通》!」
フィノ「このナイフは“対象の防御”を完全に無視する。鎧でも、魔法防壁でもお構いなし!」
フィノ「つまり、刺す=死ぬ。そういう理屈無視なヤツ!」
悠「えっ、それって……反則じゃ……」
フィノ「でしょ? でも代償もあるよ〜。ふたつね?」
フィノ「ひとつ。『油断すると自傷』」
フィノ「ナイフが持ち主に殺意を持っていて、“逆手にして持ち主を刺そうとする”の。刺されたら幻痛が残るし、心まで削れるよ」
フィノ「ふたつ。『血を吸うほど鋭くなる』」
フィノ「自己進化タイプなんだよね〜。でも進化すればするほど、“殺すこと”が目的になっていくから、使うほど危険」
悠「……でも俺は、さっきからなにも……」
フィノ「そこがバグだよね。無害スキル、すごすぎ!」
フィノ「殺意も敵意も向けられないから、呪いも発動しないってわけ。だからこいつ、ユウの手にあるとただの“対モンスター専用兵器”!」
悠「そんなの、怖すぎるって……」
でもその声には、呆れよりも、“凄み”に対する驚きが混じっていた。
フィノ「そのナイフで何も起きないなんて、本当に君だけなんだろうね」
悠「かもな。でも、それなら使いこなす価値はある」
スティレットの柄を軽く握り直す。
その漆黒の刃が、陽光を反射して妖しく光った。
ホーンラビットを数体倒し、空になった革袋に素材を詰め終えた頃だった。
エルナ「……うん。これくらいで今日は、充分かな?」
俺は手にした《黒哭のスティレット》を見つめたまま、
その黒い刃の先に、ほんの少しだけついた粘液の感触を拭い取る。
悠「まだ動ける。ちょっと奥まで行ってみようか」
エルナ「え……? もうちょっと強い魔物が出てくるかもだよ?」
警戒を含んだエルナの声に、俺は静かにうなずいた。
悠「試してみたい。この武器が、どこまで通用するか」
風が草を揺らす。
その音の向こうで──確かに、地面を這うような低い唸りが響いた。
エルナ「……来た。悠、右前!」
視線を向けた先、茂みからのその姿は──
赤黒い鱗に覆われた四足の魔物。
体高は俺の胸ほどもあり、太くねじれた尻尾を地面に叩きつけている。
【地喰いトカゲ(グラウロス)】。
ギルド基準でDランク、鋭い爪と素早い突進が厄介な中級モンスター。
悠「……ちょうどいい」
エルナ「ちょっと! 本気でやる気!?」
彼女の叫びも、風の音にかき消された。
俺は、そっと《黒哭》を構え、歩き出した。
グラウロスの赤い瞳が、俺の方を見据えている。
だが──攻撃の気配は、ない。
エルナ「悠、待って! あいつ突進してくるタイプだよ! 今の距離は危ない!」
俺の耳には、彼女の声が届いていた。
だけど、足は止まらない。
目の前にいるのは、確かにDランクの魔物。
だが、俺に向けるその視線には──敵意がない。
悠(……これが、“無害”の力)
牙を剥くでもなく、威嚇の咆哮すらない。
魔物は、まるで“俺の存在を認識しているのに”、攻撃という概念を忘れたような反応を見せていた。
フィノ「……ねぇ、悠。たぶんあいつ、君のこと“石”くらいにしか思ってないよ」
肩越しに浮かぶフィノの声が、皮肉めいていた。
フィノ「グラウロスって、基本“動くもの=敵”で反応するのに、真正面にいる君をスルー。ほんっと……無敵すぎ」
だが、俺自身はそんなふうに調子に乗れる心境ではなかった。
悠(……これ、怖いな。ほんとに、何しても攻撃されない)
いくら近づいても、魔物の爪も牙も、まるで俺に届かない。
悠「……なら、試させてもらう」
ナイフを低く構え、魔物の背後へまわる。
音を立てないように、一歩ずつ距離を詰める。
悠「殺意がなくても、斬ることはできる。そうだろ、《黒哭》」
握りしめたナイフの柄が、ぴくりと震えた気がした。
背後──首元。
その柔らかそうな鱗の隙間を狙って、
俺は静かに、深く刃を突き立てた──
──ずぷっ。
刃が入った瞬間、何の抵抗もなかった。
まるで、水面に棒を差し込んだみたいに、黒いナイフは魔物の首元へとすり抜けていく。
ぐぐ、と手応えがあったのは、骨を貫いたときだけ。
それ以外の感覚は──“沈む”ような柔らかさだった。
グラウロスの身体が、小さく痙攣する。
でも、咆哮はなかった。
苦しみも、怒りも、何ひとつ発することなく──その場に、崩れ落ちた。
地面に血が広がる。
だが、それすらも“美しい模様”に見えてしまうほど、
その死は、あっけなく、そして静かだった。
エルナ「……う、そ……一撃……?」
息を呑む声が、背後から届く。
彼女の目に映る俺は、ただナイフを構えて立っているだけだった。
だが──
フィノ「はい、殺意貫通入りました〜。首から中枢ぶち抜き。これでDランクモンスターさんも即リタイア☆」
悠(……こんなに、あっさり……)
血のついた刃先を見つめながら、手の震えが少しだけ残る。
フィノ「すごいね、悠。このナイフ、血を吸ったぶんだけ“満足”してくっきり光ってるよ?」
悠「……光?」
たしかに、漆黒だった刃の奥が──
微かに赤黒く脈打っているように見えた。
それは、まるで。
ナイフ自身が「生きている」みたいだった。
エルナ「……君、ほんとに……何者なの……?」
その声に、俺は答えなかった。
ただ──《黒哭のスティレット》の柄を、静かに握り直した。
ギルドのカウンターには、革袋に詰めた魔物の素材が二つ。
受付嬢が袋の口を開けた瞬間、その顔が一瞬で引き締まった。
受付嬢「……これは、グラウロスの……しかも急所が綺麗に抜かれてる……」
悠「換金、お願いできますか?」
俺は落ち着いた声でそう告げる。
だが受付嬢は、目を見開いたまま俺とエルナを交互に見た。
受付嬢「……この二人で? 討伐に出たのは、今日が初めてですよね?」
エルナ「う、うん。そうだけど……」
悠(……説明は、めんどくさい)
やがて、彼女は素材を確認し、銀貨八枚分をカウンターに置いた。
受付嬢「Dランクの素材にしては、上々の品質です。……どうやって倒したのか、気になりますけど」
悠「運が良かっただけ、ってことで」
軽く笑ってごまかすと、彼女は苦笑を返した。
受付嬢「まあ、魔物が一撃で仕留められてる時点で、運どころじゃないと思いますけどね……」
受け取った銀貨を袋に収めて、俺は肩をすくめる。
隣のエルナも、何か言いたそうな顔をしながらも黙っていた。
ギルドの喧騒の中、俺たちだけが少し浮いているように感じた。
だが──それで、いい。
この世界で《無害》というスキルが、どれだけ“イレギュラー”なのか。
俺は、少しずつ実感し始めていた。
街の中心にある小さなレストラン。
ギルドのすぐ近くで、冒険者にも人気の店らしい。
エルナ「……今日は、ちょっと贅沢していいんじゃない?」
そんなことを言って、彼女は席に座るなり、ラムステーキと野菜スープのセットを注文した。
俺は銀貨を見て、軽くため息をついたあと──彼女と同じものを頼んだ。
料理が運ばれてくるまでの間、沈黙が続いた。
エルナは、コップの水を指でなぞりながら、ぽつりと呟く。
エルナ「……あのナイフ、本当におかしいよ」
悠「うん」
エルナ「だって、あの魔物。普通なら、あんな一撃で倒せないもん。防御力、高いし、皮も厚いし」
悠「ナイフの性能だと思う」
エルナ「……ほんとにそれだけ?」
その問いに、俺は答えなかった。
否定する理由もないし、肯定しても面倒になるだけだ。
やがて料理が運ばれてきた。
分厚いラムステーキが、ジュウと音を立てて、目の前に置かれる。
ナイフとフォークを手に取るエルナの横顔は、どこか嬉しそうだった。
エルナ「ねえ」
悠「ん?」
エルナ「宿代、今日も割り勘にしよっか。……というか、また一緒の部屋でいいよね?」
悠「……いいのか?」
エルナ「うん。ほら、慣れたし。……あったかいし」
そう言って、彼女は頬を赤く染めた。
“ただの同室”のはずなのに──その響きは、昨日とは少し違っていた。