スキル《人畜 無害》で無双する!誰も敵意を向けないので、乳も尻も触り放題のハーレムを堪能します 作:kokoko146666
フィノ「じゃ、ここからは君の冒険スタートってことで!」
悠「いやいや待て待て、俺まだ現実を受け入れきれてないんだけど……」
フィノ「ふふふ~。でも、時間は待ってくれないよ?」
光球──いや、精霊のフィノは空中でくるくる回りながら軽口を飛ばす。その姿は浮いてるだけなのに、妙に楽しそうで腹立たしい。
けれど、この草原で唯一会話が通じる相手だ。文句は言いつつも、心細さの中で、俺は自然とフィノの存在を頼っていた。
数時間後──
草の道を歩き続けた俺は、地図も方角もわからぬまま、気づけば緩やかな丘にたどり着いていた。
空は、ほんのりオレンジに染まりはじめている。
悠「……そろそろ、どっか泊まれる場所探さないと、マジで詰むな」
フィノ「うん、日没すぎると魔物が活性化するから、下手に動かないほうがいい。……あ、でも安心して。ほら、あそこ」
フィノがフワリと飛び、丘の先を指す。見れば、数十メートルほど下に、冒険者風の人影が見えた。篝火を囲んで休憩しているようだ。
悠「人……! やっとまともな人間だ!」
フィノ「ふふっ、これぞ異世界名物“街道での出会い”ってやつだね。冒険者や商人が街と街の間で泊まるために、半野営することがあるの。とりあえず話しかけてみよっか?」
悠「……うん」
緊張で喉が渇く。
でも、ここで引き返してたら、一生この世界で何もできない。
深呼吸して──俺は、彼らの元へと歩を進めた。
篝火のそばにいたのは、ミントグリーンの瞳をした、ポニーテールの少女。
細身の剣を脇に置きながら、赤く焼けた空をぼんやり見上げていた彼女は、俺の気配に気づくと、ふわりと微笑んだ。
???「……あれ、旅人さん?」
悠「あっ、えっと……その、すみません。日が暮れそうで……、その、少しだけ火を……」
少女「もちろん。よかったら、こっち来て」
彼女はまるで旧知の友人にでも話しかけるようなトーンで、何の警戒もなく俺に隣の丸太を指差した。
(あれ……? 普通、初対面の男に、こんなに……)
違和感はあった。
でも、それよりも何よりも──
彼女のその笑顔に、俺は救われた気がした。
しばらくして──
フィノ「ん~、これスキル《無害》の効果、もう出てるねぇ」
悠「……やっぱり、あれも?」
フィノ「うん。普通は初対面で焚き火分けてくれたとしても、警戒の目くらいは向けるはず。あれは“好意”じゃなくて、“警戒できない”って状態だよ」
悠「……でも、ありがたいよ。誰にも拒絶されないって、こういう感覚なんだな……」
フィノ「そう。でも忘れないで。“好かれてるわけじゃない”ってこと。あくまで“嫌われない”だけ」
悠「……うん」
だけど、それでも──
今は、これでいいと思った。
少女「そういえば、まだ名前聞いてなかったね。私はエルナ。エルナ・クラリッサ。冒険者やってるんだ」
悠「……俺は、ユウ。日辻 悠(ひつじ ゆう)」
エルナ「ユウ……ふふ、変な名前。でも、ちょっと呼びやすいかも」
篝火の火が、揺れる。
彼女の目元が、オレンジ色に染まっていた。
◇ ◇ ◇
パチ……パチ……
焚き火の赤が、夜の暗さをかろうじて押し返していた。
隣の丸太には、冒険者の少女――エルナが座っている。
剣を手の届く場所に置き、肩にかけたマントを直す仕草すら絵になるほど、どこか凛としていた。
エルナ「ユウって、不思議な人だね。旅人なのに、魔物避けも持ってないし、地図もないなんて。」
悠「……はは、色々あってさ……。」
思わず苦笑いが漏れる。
フィノは遠巻きに光を漂わせながら、焚き火の煙に紛れていた。
エルナ「でも、今日は安心していいよ。街道沿いだから、魔物も滅多に出ないし……私もいるから。」
悠「……そうだね。ありがとう、エルナ。」
彼女の笑顔が、ほんのひとときだけ、この世界の恐ろしさを忘れさせてくれる。
フィノ「うんうん、いいねぇ、青春っぽい~。」
悠「お前は黙ってろ。」
ふっと、頬をなでる風が止んだ。
同時に――空気が、重く変わる。
エルナの表情が一瞬で引き締まった。
エルナ「……ユウ。焚き火を離れて。」
悠「え?」
エルナ「いいから。」
彼女はすっと立ち上がり、剣の柄を握る。
マントの裾が、ひらりと翻った。
フィノ「……おーっと、来ちゃったねぇ。」
悠「な、何が……?」
耳を澄ます――
草を裂くような、微かな音。
月明かりの下。草むらが、ゆらりと動いた。
エルナ「……来る。」
次の瞬間、焚き火の明かりをかすめて、何かが低く唸った。
悠「……っ!」
毛並みの荒い、獣の姿が浮かび上がる。
四肢を伏せ、背を丸め、獲物を睨む眼。
フィノ「スラッシュビーストだね。夜行性で群れを作ることもある……単体でも厄介だよ。」
悠「っ……エルナ、一人でやれるのか……?」
エルナの瞳が、焚き火の光を映して揺れる。
剣を構える肩が、わずかに震えた。
エルナ「……余裕だって言いたいけど……連戦続きで魔力が……。」
ズ……ッ
獣がにじり寄る。
唸りが低くなる。
草の上を滑るような足音が、耳を刺す。
悠(俺には……何もできない……。)
手には武器もない。
技も知らない。
立っているだけで、足が震えている。
――ギャアアッ!
咆哮が、草原の夜気を切り裂いた。
エルナ「来るッ!」
焚き火の周囲を風がうなる。
エルナが剣を閃かせ、獣と正面からぶつかり合う――
しかし、悠の足は一歩も動けなかった。
エルナの剣が、青白い軌跡を描いて獣の肩を浅く裂いた。
だが、獣は怯まない。逆に興奮したように、低い唸り声を洩らした。
エルナ「くっ……!」
もう一度踏み込もうとした彼女の動きが、わずかに鈍る。
荒い息。震える肩。――限界が近い。
フィノ「……マズいね。脚を狙えば止まるけど、あの子の剣じゃ力が足りない。」
悠「……じゃあ……どうすれば……。」
フィノ「どうするの? 君は武器も力もない――。」
悠(そんなの、わかってる……!)
それでも――
目の前で必死に戦う彼女を、見捨てるなんて――できない。
スラッシュビーストが跳ねた。
鋭い爪が、エルナの肩を掠め、赤い飛沫が焚き火に散った。
エルナ「っ……ああっ……!」
倒れる――その背を、俺の足が飛び越えていた。
悠「……っ、うおおおおおっ!!」
無我夢中だった。
気づけば、茂みを蹴って、彼女と獣の間に割り込んでいた。
フィノ「ユウッ!? 馬鹿ッ、やめ――!」
獣の目と、俺の目が合う。
次の瞬間――
……何も、起きない。
獣は俺を一瞥すらせず、すっと横に首を向けた。
俺の存在など、はじめから無かったかのように。
悠「……え……?」
恐怖が一瞬だけ薄れた。
その隙に、視界の端で何かが転がるのが見えた。
――朽ちた木の枝。
俺はそれを掴むと、獣の背中に飛びつき、無我夢中で振り下ろした。
バキッ!
獣の頭が揺れ、低い唸り声が漏れた。
エルナ「ユウ……!? 何を――」
悠「俺が……俺がやる!」
枝が砕ける感触と、獣の体温が手のひらを焼く。
枝が折れた。今度は落ちていた石を握った。
何度も、何度も――背中を、首筋を叩きつけた。
ギャアッ……!
獣が低い悲鳴をあげ、地面に崩れ落ちる。
エルナは茫然と、その様子を見ていた。
悠「……はぁ……はぁ……!」
フィノ「……すご……。これが《無害》の本質……“敵視されない”って、こういうことなんだ……。」
俺の手のひらに、血がついていた。
獣の体はもう動かない。
それでも――
心臓だけが、狂ったように暴れていた。
◇ ◇ ◇
……静かだった。
焚き火の赤は弱くなり、夜気に揺れる火の粉が頼りなく空へ昇っていく。
スラッシュビーストの死骸のそばに、俺は座り込んでいた。
足元には砕けた枝と、血のついた石。
震える指先で、それを何度も見つめてしまう。
エルナは、少し離れたところで肩を押さえていた。
魔法で止血したのか、血はすでに滲んでいない。
それでも、あの強い瞳は、どこか怯えたように揺れていた。
フィノ「……どう? 生きてる実感、ある?」
焚き火の奥で、フィノがふわりと浮いていた。
月明かりを背に、光球の輪郭が揺れている。
悠「……これが……俺が殺した命か……。」
小さく呟いた声が、夜気に溶ける。
フィノ「君がやらなきゃ、彼女が死んでたよ。」
悠「わかってる。……でも……。」
頭の奥がぐらりとする。
胃の底が冷たくなる。
でも、手のひらの感触だけは、どこにも逃げてくれない。
エルナが、そっとこちらに近づいてきた。
彼女の瞳が、焚き火に照らされて揺れる。
エルナ「……ユウ、ありがとう。……本当に、ありがとう。」
かすれた声。
その一言で――胸の奥が、ふっとほどけた。
悠「……俺がいなかったら……エルナは……。」
フィノ「そう。君の《無害》は、敵には攻撃されない。」
悠「……ズルい力だな……。」
フィノ「うん。でも孤独でもある。戦場のルールから、君だけ外れてるんだよ。」
言葉が、冷たく心に刺さった。
自分だけ“被害を受けない”。
だから誰も、俺を“戦力”としては見ない。
それでも――
悠「……でも、助けられた。……俺でも……。」
焚き火の火が、小さくパチリと弾ける。
東の空が、わずかに青みを帯びてきた。
誰かに必要とされたこと。
自分の存在が、誰かを救えたこと。
――それが、たまらなく、嬉しかった。
悠「……これが……俺のスキルか……。」
フィノ「そうだよ。君だけの力。……どう使うかは、君が決めるんだ。」
朝が、もうすぐ来る。
命を奪った手を握りしめて、俺は心の奥で、何かを決めた。