週末の夜10時を過ぎた単身赴任先のワンルームマンション。
男は50歳。妻と子供を地元に残し、地方都市に単身赴任して4年を迎えていた。
男の住居は古いワンルームマンション。8畳ほどの部屋に、安っぽいベッドとテーブル。
冷蔵庫と電子レンジ、最低限の家電は揃っていたが、生活感は乏しく、ただ寝起きするための空間に過ぎなかった。
会社を出たらコンビニ弁当と缶ビールを買い、まっすぐ部屋に帰るのが習慣になっていた。
レンチンした弁当を口に運び、飲みかけの缶をテーブルに並べてテレビをつけ見ながら、いつの間にか寝落ちする毎日。
休日も変わらない。朝遅く起き、洗濯と掃除を少し済ませて、あとはベッドに寝転びながらスマホをいじるだけ。たまに散歩をしようと外に出ても、行き場はなく、商店街をぶらついて時間を潰す。結局はコンビニに立ち寄り、酒とつまみを買って帰るのがオチだった。
ただ、そんな乾いた生活の中でも消えない欲望があった。
──女とセックスがしたい。
妻以外の女の肌を、もう一度味わいたい。抱きしめ、突き上げ、声を聞きたい。
その欲望だけは、いくら年齢を重ねても消えることはなかった。
だが現実には、金がない。風俗に通う余裕などなく、繁華街に繰り出す気力も湧かない。
知り合いもいない土地で、女と出会うきっかけなど望めるはずもない。
行き場を失った性欲は、鬱積し、苛立ちと孤独をさらに増幅させる。
気づけば男の人生は、乾いた砂漠のような日々へと変わり果てていた。
こんな男も若い頃は、女性にモテていた。妻と結婚するまでは複数の女性と付き合い、関係を持った。
ただ、当時の男には、誰にも言えない秘密…変態的嗜好があった。
それは──部屋に連れ込んだ女とのセックスを、密かに盗撮するという背徳的行為だった。
撮影することが目的のセックス。これが、男の本当の顔であった。
男は過去5人の女との関係を持ち、家に連れ込んでセックスを隠しビデオカメラで撮影することに成功していた。
そのコレクション映像とは…。
ある女の映像は、男のチ◯ポを握りしめ、大きく口を開けて深く咥え込み、顔を激しく上下に振り、「チュバッ!チュバッ!」と音を立てながら亀頭を強烈に吸い上げる。舌先で亀頭を執拗に舐め回し、「大きくて美味しいー!」と恥ずかしい言葉を口にするフェラチオシーンだった。
別の女は両脚を男の肩に担がれるように大きくVの字に広げられ、身体を折り曲げられた屈曲位の体勢にさせられていた。完全に上を向いた無防備なオ◯◯コに、男が容赦なく上から巨根を打ち込むように突き刺している。
「ズブっ!ズブっ!」と激しいピストンで出入りする長い肉棒には、女の白濁した愛液がベットリと絡みついているのが映像にはっきりと写っている。女は紅潮した顔を左右に振り乱しながら「気持ちいいーーー!」と絶叫をあげている映像。
さらに別の女は四つん這いにされ、後ろから突きまくられているシーンが撮影されていた。
「ズブッ!ズブッ!ブチュッ!」と肉と肉がぶつかる音が部屋中に響き、激しいピストンで女は顔を上げて苦悶と快楽の入り混じった表情を晒し、「アッ…あぁっ…!もっと突いてぇーー!」声を張り上げて叫んでいた。
その恍惚の表情がビデオカメラに生々しく刻まれていた。
全ての映像には、女たちが無防備に恥ずかしい格好を晒し、そして喘ぎ声をあげ、歓喜や苦悶の表情を浮かべる姿が克明に残されていた。
そうなのだ、男は全てのセックスの最中に隠しカメラの位置を緻密に計算し、女の顔や体位がバッチリ映るアングルになるように体勢や角度を変えていたのだ。
フェラチオのシーンは女の顔がアップになるように手元のリモコンでズームし記録されていた。男の巧みなカメラワークが5人の映像のいずれにも施されていた。
そのため、どの映像も素人の盗撮映像としては「秀作」の部類に入るものばかりだった。
もちろん彼女たちは、人には絶対見せられない自分のあられもない姿が男によって盗撮されていたなど夢にも思っていない。
「女が無防備にさらす痴態を、後から何度も見返し、その映像でオ◯ニーすること」が男の背徳の悦びそのものだった。
──もしこれら全ての衝撃映像がネットに流出し、知り合いに見られたと知ったなら、彼女たちは一生消えない恥辱と衝撃、そして絶望に苛まれるであろう。
──そうして積み上げてきた背徳の記録も、今では新たに増えることはなかった。
盗撮できる相手もいない孤独な単身赴任生活の中で、男がすがるように没頭している唯一の趣味──それが画像投稿だった。
隠し撮りした女のセックス映像を編集し、いくつかのベストショットを切り抜いてサイトにアップロードするのだ。
もちろん、そのままでは投稿できない。顔や局部には自作のモザイクを施し、あくまで「匿名の一枚」として投稿する。
それでも、盗撮であるにもかかわらず、男が選ぶショットは絶妙だった。女の表情や体位が鮮明に切り取られた画像は迫力を持ち、閲覧者たちからは思いのほか好評を博した。
「エロい」「リアルだ」──そんなコメントが並ぶのを眺めるのが、孤独な夜を埋める唯一の楽しみだった。
モザイクをかけても、そこに映っているのは確かに“自分だけが知る女”。その秘密を切り売りし、見知らぬ誰かに評価を乞う。
誇らしさではなく、歪んだ欲望のはけ口──それが男の現実だった。
その過去に盗撮された5人の女の動画コレクション…その中の1人の女の動画は男が見返したくない、消してしまいたいと思った映像があった。
その女の動画には、女から男の身体的特徴ともいえる性的弱点を突きつけられるシーンがはっきりと記録されており、それは男にとって受け入れられない、屈辱ともいえるセックス映像だったのだ。
なぜなら、その映像は、前戯から男が果てるまで10分とかからない──あまりに短い動画だったからだ。
しかし、その消してしまいたいと男が思った女の映像は他の4人の女とは全く違う、男の本能をくすぐるものがあった。
その女の喘ぎ声は、これまでのどの女とも異なり、いやらしく、艶めかしく、時に絶叫へと変わり、男の理性を根こそぎ奪った。
一度耳にすれば決して忘れられない──本能を狂わせる“最高の声”。
男はその声を思い返すたびに、股間が熱く滾り、何度もその映像で欲望を発散した。
しかし、見返すたびに、男は過去の屈辱の記憶の蘇りと認めたくない自身の欠点に向き合わされる。それでも、男はこの女の悩ましい淫靡な喘ぎ声に魅せられており、その映像を消すことはできなかった。
忘れたいのに忘れられない――その矛盾にも似た葛藤ごと封じ込めるために、男はその女の映像をデータ化し、ハードディスクの奥底へ格納したのだった。
第2章に続く…。