もしマフティーがおっぱい船長の洗脳ハーレムだったら…… 作:a-su
きしむセミダブルに横たわったメイスの心身は、じっくりとかき回されていく。もう手遅れだった。
スペース・シップ『ハウンゼン』の客室乗務員だった女が、港の倉庫街のラブホテルで、今日会ったばかりの中年男に後ろから抱き留められている。全てを捧げるように身を預けていた。
「ん、はああっ……」
そもそも自分の足でここに来た時点で、抵抗意思などあるはずもない。
二時間前、メイスはバーの前でルージュを引き直し、黒いオフショルダー・ニットの肩口を整えていた。場末の港町には不釣り合いな服装だ。
入店すると、漁師や港湾労働者のよこしまな視線が一斉に刺さり、メイスは少しだけ背筋を伸ばす──が、気にしたのはその一瞬だけだった。カウンターの奥にブリンクスがいたからだ。
『よう』
『……ウェッジ様……』
安いカクテルを二杯。甘ったるいリキュールが喉を滑り落ちるたび、ブリンクスの手がダーク・グレーのタイトスカート上を蜘蛛のように這い、膝に、腰に、太ももに触れる。
だが、メイスは払いのけない。払いのける理由が、頭の中から蒸発している。
『んっ……やだ、そんなところ……お酒、まだ残ってるのに……』
三杯目を断ったのは酔いを警戒したからではない。キスされたからだ。カウンターの端で、潮と煙草の匂いがする唇を押し付けられ、目の前が真っ白になる。
『ん、ぅ……んんっ……ウェッジ、様……』
『色っぽい声だすんじゃねえよ、陰茎が苛立つだろ』
バーを出ると、街灯のまばらな倉庫街だった。石畳にピンヒールがもつれ、ブリンクスの腕にしがみつく。
塩害でまだらに変色した、コンクリートの建物が見えた。ネオンの一文字が切れた看板が、「H TEL MARE」と点滅している。ラブホテルだと気づいた時には、もう自動精算機の前に立っていた。
『悪ぃが、持ち合わせがねぇんだ。払っといてくれ』
『……』
『でなきゃ俺は帰る。いいな?』
『はい……私……ウェッジ様と、一緒にいたい……』
そして今、ブリンクスの手が、胸の膨らみを掴んでいる。
「ん、ぅ……」
大きな手だ。太い指は節くれ立ち、爪の間に油汚れがこびりついている。その手が薄手のニット越しにじっくりと、乳房の輪郭を確かめていた。
「ぁ、あ……ウェッジ、様……」
メイスはストッキング越しに内ももを擦り合わせた。ナイロンが湿気を帯びてぬめり、太ももの間に密な摩擦音がひとつ、立った。歯の隙間から押し出された吐息が白く曇り、すぐに消える。
「んんッ、そこ……そんなに揉まないで……」
薄い壁に、くぐもった女の声が響く。あの空で培った低く澄んだ声は、もう跡形もない。
メイスは首をひねり、ブリンクスの顔を探った。あの空で何千人もの客と交わしてきた視線の芯が抜け落ちている。ピントの崩れた瞳は何も映しておらず、ただ目尻に溜まった雫だけが蛍光灯を弾いていた。
「ああ……その手……もっと、ニットの上からじゃなくて……直に……」
「どこをだ。言ってみろ」
「ぁ、さ、先っぽ……乳首、を……つまんで、ほし……うんんッ!」
不意にニットの上から乳房をすくい上げられ、メイスの顎が跳ねた。汗で額に貼りついたブロンドが遅れて揺れ、小ぶりなフープピアスがちりん、と鳴る。
ジャスミンとベルガモットの香りがブリンクスの鼻をくすぐった。潮と油の匂いに、彼女の香水が溶けていく。
(この手……ケネスとは全然違う……)
ケネス大佐の指は整っていた。たくましく、だが計算された力加減で胸に触れる、軍人らしい丁寧な手つき。あの手で触れられれば、メイスは「気持ちいい」と素直に思えた。
なのに──この、荒れた手が。雑な鷲掴みが。ケネスの一晩分を一瞬で超えてくる。
「──これで何カップだ。自分で言え」
両手で下からすくい上げ、重さを量るようにユサユサと揺らす。ブリンクスの質問がどこの何を確認しているのか、手の動きに聞かれた胸が嫌というほど教えてくれる。
何百人もの客を上品にもてなしてきた自分が、安ホテルの一室で中年の船長に胸のサイズを報告しているのか?
その屈辱は理解していた。理解した上で、声は喉の奥からほどけるように湿っている。
「……あ、の……」
口が開くのに、声がついてこない。言葉にした瞬間、自分が何をしているのかを認めてしまう気がした。
ブリンクスの指が乳房を揉む手を止めない。むしろ圧が増す。ムニュ、と柔肉が指の隙間からはみ出し、その度にコチコチに尖った乳頭が人差し指の腹に擦れる。
「聞こえねえな」
低い声がメイスの耳の後ろに落ちた。わざとだ。聞こえていないはずがない。ブリンクスの掌の中で、メイスの心臓がどくどくと早鳴りしているのを、揉んでいる手が感じ取っているはずなのだ。
「……い……E、の……んっ、あ……ッ!」
途切れた。サイズの数字まで辿り着けない。乳首の先をクリッと爪で引っかかれ、腰がビクンと跳ねたからだ。
「Eの、なんだ。ちゃんと全部言え。──ほら、搭乗券の番号だって言えるだろ」
その言い方はずるい。ハウンゼンの客室乗務員として何千回と復唱してきた口が、条件反射のように動いてしまう。
「……Eの、はちじゅう……よん、です……」
裏地にいじられてコチコチに尖った乳頭から、ピリピリと快感が走る。頬の朱が深くなるのは、恥ずかしさのせいだけではなかった。自分の口で言ったことで、乳房が余計に疼いている。
「よし。ちゃんと言えたな」
低くかすれた声で褒められた。──褒められた、と思ってしまった自分に、メイスは目を伏せる。
ブリンクスは、そんな彼女の顎を右手ですくい、自分のほうに振り向かせた
唇を塞がれた。潮と煙草の匂いがする──だがその匂いごと、メイスは吸い込んだ。うっとりと力が抜けていく。
赤い唇でついばみ返し、湿らせ、ブリンクスの唇にルージュの色を移していく。胸を揉み回す左手の圧が強くなると、成熟した身体がピクン、と弾んだ。
(背骨が……ロウソクみたいに……ああ、膝の裏まで痺れて、力が入らない……)
ブリンクスの舌が割り込んでくると、メイスは目尻をだらしなく垂らし、自分から舌を差し出して絡めた。舌と舌がこすれ合うたび、顎の裏から耳の奥へぬるい痺れが這い上がり、考えることをやめさせていく。
Oの字に開いた桃色の唇から、ヌチュヌチュと舌の絡む水音が広がる。
窓の外では港のクレーンの赤い航空障害灯が明滅している。その光がカーテンの隙間から射し込み、二人の影を断続的に赤く染めていた。
「さあ──その胸、全部見せてもらおうか」
「やぁ……明るいところで、見ないで……」
拒む口調なのに声は震えを含み、拒絶とは正反対の色を帯びていた。
ブリンクスの太い指がオフショルダーの肩口に触れる。
「自分で、やります」
脱がされるより、自分でやる。その方がまだコントロールを保てる。客室乗務員は、いつだって自分で身だしなみを整えるものだ。
だがブリンクスはその手をぞんざいに払った。
「いや、俺がやる」
黒いオフショルニットがゆっくりと引き下ろされていく。鎖骨が完全に露出し、さらに下がると、紺のレースブラの上端がのぞいた。
「勝負下着か」
「……違います。いつもセットで──」
「嘘つけ」
見透かしたような笑みだった。メイスの言葉を遮って、ブリンクスの太い指がレースブラの縁をなぞる。紺のレースが蛍光灯の下でほの暗く光った。
「じゃあ聞くが──誰に見せるつもりで選んだんだ、これ」
メイスの息が止まった。
いつもセットで買っている。それは事実だ。事実のはずだ。──なのに今夜、クローゼットの前でこの紺を手に取ったとき、一瞬だけ、ブリンクスの顔がちらついたことを、メイスは覚えている。覚えていないふりをしているだけだ。
「……それ、は……」
乳房を包むレースの上から、親指が乳頭の突起をぐりっと押し潰した。
「んっ……ぁ…………あなたに、です……」
声はほとんど吐息だった。だが確かに言った。メイスの唇が、はっきりとその言葉を形にした。
──この下着をメイスに選ばせたのはブリンクスの施した得体の知れない『処置』なのだが、その事実を知る者はこの部屋に一人しかいない。
メイスは「自分の意思で選んだ」と信じている。だからこそ、今の自白は彼女自身の心を抉った。選んだのは自分。見せたかったのも自分。ブリンクスに──。
紺のレースブラが強引にずり上げられる。モデル体型の細い胴から不釣り合いなほど豊かな乳房がプルン、と揺れて姿を現した。空港の制服に窮屈そうに収まっていたEカップは、蛍光灯の白い光の下で透き通るように白い。
「お……もうこんなに硬くしてるじゃねえか」
「いやぁっ……自分でも、わかってるから……言わないで……」
ムニュウ、と膨らみが指の中で形を変え、メイスの腰がピクリと跳ねた。太い人差し指と中指の隙間から小ぶりな乳頭が顔を出し、コチコチに尖り切っていることを見せつけられる。
痛いくらいに硬くなっていることは、メイス自身が一番よく分かっている。乳房を揉まれるだけで身体の芯からジワジワと快感がにじみ出し、腰の後ろに押し付けられている硬いものの感触にまで背筋がゾクゾクした。
その乳首を、摘み上げられる。
「んあああッ……」
指先ひとつで予想もしなかった快感が弾けた。細い喉が仰け反る。一筋の電流が腰を痺れさせ、跳ね上がった脚の先までびりびりと震えが伝わった。
(この人、摘んだだけで! ああ、今までの男じゃ、こんなのぜったい無理!)
相性がいいのだ、きっと。メイスはそう思った。そう思うことしかできない。
クリュクリュと乳頭を指の腹で転がされるたび、チリチリと火の粉が散る。乳房の奥に溜まった熱が臨界を越え、一瞬──下腹まで貫く閃光が爆ぜた。
遠くで汽笛が鳴る。港の音が、メイスのイキ声に重なった。
「くうううんッ! ッッ……」
ブリンクスの腕の中で、メイスは絞り出すような喘ぎとともに全身を震わせていた。むき出しの乳房は好きなように揉み崩され、陶器じみた肌が桜色に上気している。眉根が寄り、柳眉の下で瞳のピントが合わなくなっていく。
「あッ、ああッ、ウェッジさまぁぁっ……おかしくなってしまいます……」
まっすぐだった背筋が弓なりに反っている。楚々と振る舞うことを旨とする客室乗務員らしさは、もうどこにもない。
「へ、だから早くハメてくれ、ってか?」
「あああああ……」
ブリンクスは腰をずらし、角度を変えてこすりつけてきた。
メイスの腰が、意思とは無関係にうねる。タイトスカートの裏地がよれ、布ごしに当たるものの稜線を臀部がなぞっている。尾てい骨から仙骨に沿って押し返される圧に、背筋がぞわりと粟立った。
「とっくにおかしくなってるんじゃないのか? 今日会った男とヤりたがるなんて」
「……そうかもしれません。もう、中が……熱くて、ずきずきして」
そう──おかしくなっているのだ。メイス・フラゥワーは確実に。ハウンゼン、つまり本物の特権階級しか乗れない便の客室乗務員が、今日会ったばかりの中年男に乳房を晒し、声を上げ、尻をすりつけている。それは端的に言って、おかしい。
だがおかしいと認識する頭と、もっとと求める身体は、すでに別の回路で動いていた。
ブリンクスの腕を押しのけ、ゆっくりと身を起こす。振り向くと、乱れたブロンドの隙間から、据わった瞳がブリンクスを捉えた。
「ん、む……♡」
両手をブリンクスの胸板に置き、のしかかるように唇を押し付ける。不意を突かれたブリンクスの喉が、低く鳴った。
そのまま体重を預けて、押し倒す。ブリンクスは抵抗しなかった。
仰向けの中年男の胸に覆いかぶさったメイスは、粘りつくようなキスを重ねながら、いつしかブリンクスの腕の下に肩を潜り込ませていた。包まれたかったのだ──この太い腕に、全身を。脚まで絡ませて、しがみつく。
「今日会ったばかりなのに……触られてないところまで疼いて……こんなの、初めてよ……ウェッジ様のせい……」
ほっそりした指をいじらしく胸板に滑らせながら、首筋に顔を埋める。ねっとりと絡めた視線が、甘えを隠しきれていない。脚まで絡ませている姿は、メイスの方が完全に参りきっていることを如実に示していた。
「ねえ……ウェッジ様……ううん、ブリンクス……」
ダークグレーのタイトスカート越しに、ブリンクスの掌が尻肉を鷲掴んだ。布地の下で肉が歪み、メイスの腰がクネクネと蠢く。自分で擦りつけにいっていることに、本人は気づいていない。
「会ったその日に、こんなこと……おかしいってわかってるの……でも……メイス・フラゥワーを、あなたの女にして……お願い……」
「俺は船乗りだ。どの港にも女がいる。その中の一人でよけりゃ、構わねえよ」
「え……?」
メイスの蕩けた頭に冷水が注がれた。
(──港ごとの、女……?)
ぼやけていた意識に、蛍光灯の白い光が差し込む。ハウンゼンで地球と宇宙を往復していた自分が、この倉庫街のラブホテルで、中年の船長の「港の女」の一人にされるのか。
口元のほくろが強張った。残りかけのルージュが蛍光灯に光る。
(私はそんな──)
ほんの一瞬、宇宙を飛んでいた頃のメイス・フラゥワーが顔を覗かせた。
だが、身体はすでに答えを出している。
下腹の疼き。
ストッキングの内側の湿り。
ブリンクスの体温。
傍にいるだけでクラクラするほど溢れてくるこの気持ちを、港の女だからと諦めてしまっていいのか。
つまるところ、心にこの男がいる限り、選択肢は一つしかない。
「……それでもいい」
メイスの低いソプラノが震えた。
「それでもいいです。でも……この港に来たときは、私のところに来て……?」
条件を付けた。そのことで自尊心を保ったつもりだった。
だが「港の女の一人」を受け入れた時点で、「ハウンゼンのメイス・フラゥワー」はもう死んでいる。本人だけがそれに気づいていなかった。
「……ああ、いいぜ。お前の港に来たときはな」
軽い。約束の重みがない。各地の港で何度も同じことを言ってきた男の声だ。
だがメイスにはそれで十分だった。
「くれるもんはもらうが──メイスは俺に何をしてくれるのかな」
「ああん……ブリンクスがさせたいことなら、なんでも……ううん、まず……あなたの身体、ぜんぶ、舌で覚えたい……」
起き上がったメイスは、ブリンクスのワークシャツのボタンに指をかけた。上から順に外していく手つきは丁寧だったが、三つ目で焦れたのか、残りはまとめて引き抜く。
ブリンクスの喉仏が小さく上下した。日焼けした胸板が露わになる。
その胸板に唇を押し当てた。チュ、チュ、と軽い音を立てながら、鎖骨の窪みに舌先を滑り込ませていく。
身を乗り出しながら、ブリンクスのベルトのバックルに指を掛ける。その手つきは──搭乗券を揃えるときと同じだった。指を揃え、丁寧に、微笑みを添えて。
そんな所作だけが、まだ
バックルを外し、ジッパーを下ろす。白ブリーフの隆起に触れると、メイスの指先が震えた。腰ゴムと下腹部の間に大きな隙間を作るほど膨れ上がっている。
白ブリーフの中に細い指を差し入れ、手の甲で腰ゴムを押し広げた。窮屈を解かれた逸物が勢いよく跳ね上がると、メイスの瞳が昏く潤む。口元のほくろの横で、唇がわずかに開いた。
「ああっ……手が、回らない……こんなの……指と指が、届かない……」
細い指で肉幹を一周させ、爪先同士がどうしても重ならないことを確かめたメイスは、喉の奥から崩れた声を漏らしながらブリンクスを見つめた。
上目遣いのまま、ルージュの薄れた唇から舌を出し、腹筋の溝に沿って這わせていく。右手はその太さを覚え込むように、ゆっくりと根元から先端まで往復していた。
「ちゅる、んふ……ふぁはああ……んぅ、ちゅ……」
ブリンクスの身体は、ケネスとはまるで違う。日焼けした肌。腹の肉。体毛。潮と油が染み込んだ匂い。メイスの美意識が「醜い」と退けるはずのもの。
(……なんで……この匂いが、こんなに……)
なのに舌を押し当てるたび、頭の芯がぐらぐらと揺らいでいく。この男の肌を舐めずっている自分の存在に、掌の中で脈打つ熱さに、メイス自身の下腹が、きゅうっと内側に引きつれた。奉仕している自分に興奮していることを、もう隠せない。
下腹に舌を這わせ、へその窪みに唾液を落とす。そのまま逸物の根元へ向かって舐め下りていく。
「ふああっ……さっきより、膨らんでる……私が舐めたから……?」
逸物のすぐ傍まで唇が迫ると、ブリーフの残りを指先で脱がす。解放された肉茎に、吸い寄せられるように顔を近づけていく。潤んだ唇が近づくにつれ自然と開き、伸ばした舌が根元にぴたりと貼りついた。
(あああ……鼻の奥が、しびれて……目の裏が、じんと灼けている……)
根元から先端まで一気に舐め上げると、意識がふっと抜けた。舌の付け根からじわりと酩酊が這い上がり、芯から崩れていく身体の奥で、子宮がひとりでにひくついている。タイトスカートから突き出した尻が、意思に反して揺れた。
「美味いか」
「はい……ああ、美味しい……ブリンクスの……味も……匂いも……口の中で脈打ってるのも、全部……」
嘘ではなかった。ブリンクスの『処置』が黒を白と言わせている──のだが、この言葉だけは違った。メイスの心の底から出た本音だった。
実際、陰茎を口に含む行為に完全に没頭しており、乱れた髪の向こうにのぞく美貌は陶然としている。唾液で光る下唇が、逸物にぴたりと吸い付いたまま離れない。
根元に指を添え、残りの茎胴をねっちりと舐めずっていく。裏筋を舌先で辿り、エラのくびれにねっとりと舌を巻きつける。丹念に仕上げるその顔は、口元のほくろの周りまで唾液と先走りでべとべとに光っている。
「ああん……さっきより、筋が太くなってる……舌で辿れるくらい、浮き出して……」
反り返った肉茎に、手入れの行き届いた綺麗な指を添え、惚れ惚れとしごく。熱っぽい息とともに舌が伸び、エラのふちをクルクルと嬲った。
裏筋に達したところで舌の動きが止まり──朱色の唇がゆっくりと開いて、亀頭を丸ごと咥え込む。
(はあああああ……)
喉の奥まで押し広げられる圧迫感に、メイスは目を細めた。視界の端がゆらりと揺らぎ、こめかみの裏側がじんと熱い。
(やぁん……すごい……あごが……外れそう……喉の奥まで、形がわかる……)
鼻を鳴らして頭を揺らし、ぴっちりと窄めた唇で剛直をしゃぶる。口内をぐりぐりと擦られる感触に、メイス自身の喉から媚びた声が漏れる。
咥えきれない茎胴は小さな手でねちねちとしごき、長大な逸物を丸ごと奉仕の対象にしている。
「んふうううっ……んぅんッ、んふぅぅッ……」
先走りが唾液と混ざり合い、口内がドロドロになった。牡臭が鼻腔を満たした途端、尾てい骨のあたりからゾワリと粟立ちが駆け上がる。
霞んだ瞳のまま混濁した粘液を飲み込んでも、唾液は瞬く間に溢れ出し、出し入れする剛直にこね回されてしまう。それを舌で絡めて、ヌメヌメに仕上げていく。
(あああ……たまらない……舌の付け根から、酔いが這い上がってくる……止められない……)
メイスはねっちりと剛直を吸い立てながら、頬の内壁を圧迫する硬さと舌に絡む牡臭が、脳を直に撫でているような心地に酔い痴れる。丸一日でも悦んでしゃぶりつくすだろうほどに、この行為に至福を感じていた。
自分が何をしているのか、頭の片隅はまだ認識している。だが口は離せない。離したくなかった。
しかし、それでも。
「自分で入れろ」
「ふはあ……ぁぁッ、はい……」
その命令が耳に届いた瞬間、メイスの目が輝いた。求められている、使ってもらえる──唇の端が引きつるほどの笑みが、涙のにじんだ目元とともに浮かんだ。交わりの許しを得て喜色に染まるその表情は、盛ったメスとしか言いようがない。
最後にもう一度だけ亀頭の先をちゅっと吸い、唇を離した。唾液の糸が途切れるまで目を逸らせなかったのは、名残惜しさだった。
メイスは身を起こし、紺のレースショーツに指を掛ける。
一瞬だけ手が止まった。ブリンクスの視線が注がれているのを感じたからだ。
それでも──腰を浮かせ、ゆっくりとショーツを下ろしていく。片足ずつ抜いて、くしゃりと丸めたそれをシーツの端に置いた。
脱いだ。自分で脱いだのだ。
ブリンクスの腰を跨ぐ。ダークグレーのタイトスカートが腰までずり上がり、ヌードベージュのストッキングに包まれた太ももが露わになった。
ブリンクスの太い指がストッキングの股間部に触れる。そして──迷いなく、破った。
ビリッ、と繊維の裂ける音がした。
セットで買った高い下着。恋人同士なら、丁寧に扱われるべきもの。それを中年男の荒い指が無造作に引き裂く。
「はあああッ──」
破れたストッキングの穴から剥き出しの秘部が晒され、先端が入り口のふちに触れただけで、メイスの腰骨の内側がキュウッと引きつった。
生の生殖器はケネスにさえ許さなかったが、ブリンクスに対してはそのことを嬉しいとしか思えないでいる。
「ひ、あああああッ!」
先端が潜り込んだ途端、腰から下の感覚が一瞬消えた。支えを失った身体はずぶずぶと沈み、剛直が最奥まで埋没する。
完全に密着した瞬間、遠くの汽笛が鳴った。港の夜がベッドの軋みに重なり、ここが何をする場所なのかを、メイスの身体に思い知らせる。
(こんな……ぁぁ……こんなに奥まで……)
根元まで全部呑み込んだまま、メイスは動けなかった。
動いたら、壊れる。
なのに──突き当たりに押し付けられた先端が、ずん、と脈を打った。それだけで下腹の芯がじわりと溶け、骨盤が意思とは無関係にひくついた。
「……っ」
──動いた。
誰にも言われていない。触られてもいない。ただ、中に入ってるモノの形を──もう一回、確かめたくて。
ほんの少しだけ、腰を前に倒した。
ぬ、ちゅ。
呑み込んだ付け根から、水音が漏れた。
角度がずれた。とたんに──先っぽのカリが中のどこかを引っ掻いた。腰の奥で、びりっ、と電気が走る。
「ひ、ぅ──っ!」
一度動いたら止まらない。腰を上げて、下ろす。上げて、下ろす。持ち上げるたびに入り口のふちがカリの段差にぐっと引っかかり、沈めるたびに子宮の口が、ぐぷ、とこじ開けられる。
自分で自分を串刺しにしてるのがどれだけみっともないかなんて、もう考える頭が残ってなかった。
ブリンクスの腹筋の上に置いた両手が、汗で滑る。爪を立てて、焼けた肌に赤い線を何本も刻みながら、メイスは腰を使い続けた。
「あ、あッ、あン……っ、中ッ、ぜんぶこすれてッ──ひだがッ、伸ばされてくぅ……んんッ……!」
自分の声が遠い。聞こえるのはベッドの軋みと、ぐちゅ、ぐちゅ、と合わさった根元で鳴る水音だけ。
ブリンクスは動かない。腕を頭の後ろで組んだまま、下からニヤニヤと──ぜんぶ、見ている。
「──自分でこんな腰振れるんだ。やるじゃねえか、お嬢さん」
たったそれだけで、膣壁がきりっと収縮して肉棹に吸いついた。
褒められた──そう頭で理解するより先に、身体が勝手に反応していた。
「もっと見せろ。──お前がどんなツラして自分からイくのか、最後まで見届けてやる」
メイスの肩がびくっと震えた。ブリンクスの目が、暗い海の色をして、下からじっとこちらを見上げている。
汗でべたついたブロンドが、腰を振るたびに跳ねる。おっぱいが、半拍遅れてたぷん、と揺れる。くびれた腹に汗が伝い、その下──ちんぽが出たり入ったりするところから、白い泡がぷくぷくと溢れていた。
──ぜんぶ、ブリンクスに丸見え。
(見られてる……おっぱいが揺れてるのも……根元が泡吹いてるのも……ぜんぶ……視線だけで奥が搾られる──どうして──なぜ、こんな──)
なのに。骨盤の回転が速まっていく。ブリンクスの目がへそから下に降りるたび、子宮のあたりがじくじく疼いて、もっと見せたくなる。
「はぁ、あッ──ブリンクスッ、見ないでッ……見ないで、くださいって……言って、る、のにぃ……っ」
口は拒んでいる。けれど腰は止まらない。前後の揺れに、ぐるん、と回転が混じり始めた。角度を変え、傾きを変え、いちばん気持ちいいところを、自分の腰で探っている。
──そこに、見つけた。
子宮口に、真下から突き上げが当たる角度。沈むたびに、ずん、と骨盤の底に響いて──その震えが脊髄をぞわぞわ這い上がり、後頭部でぱちん、と弾ける。
「あ──あ、あ、あッ、あああッ──!」
腰の速度が上がる。もうきれいな動きじゃない。骨盤を前に倒し、剥き出しの陰核をブリンクスの下腹にぐりぐりこすりつけながら、突き当たりを──自分から叩きにいっている。
ハウンゼンのラウンジで脚を揃えて座っていた女の所作は、もうどこにもなかった。
「あ、あッ、イッ──イきますッ、自分でッ──自分の腰でイっちゃいますッ──ブリンクスさまぁッ……!」
ブリンクスの掌が、ようやく動いた。
腰骨を鷲掴みにされる。太い指が肉に食い込み、メイスの骨盤ごと固定された。──そのまま、下から一度だけ、深く、穿ち上げた。
「────ッッッ!!」
視界が裏返った。
全身がびくん、と硬直する。膣が剛直をぎゅうっと搾った。きりきり、きりきり、と何度も絞り上げる。
結合部から、ぷしゅっ、と灼けた汁が噴いて、メイスの太ももを伝いブリンクスの腹へ垂れた。
びくびくが止まらない。中が締まって──ゆるんで──また締まる。締まるたびに、白いのがぷくぷくとあふれてくる。
メイスはブリンクスの胸にぺしゃんと潰れた。汗とよだれでべとついた頬が、男の胸板にぴたりと貼りつく。潮の匂いがする。
「は──ぁ……はぁ……っ……はぁ……」
まだ中に入ったまま。つながったまま。男の心臓がどくどく打つのが、頬骨に直に伝わってくる。
その背中に、大きな手が乗った。ごつごつした指が、背骨のくぼみをひとつずつ、上から下へなぞっていく。犬でも撫でるみたいに。雑で、ぞんざいで──なのに、震えてるところだけ正確に見つけて、撫でてくる。
「……っ、ぅ……」
涙が出ていた。なぜかはわからない。ただ目頭が熱くて、ブリンクスの鎖骨に顔を埋めたまま、しゃくりあげるように肩が揺れた。
体内に埋まったままの肉棹がまだ脈打っている。締まるたびに、ここにいるぞ、と存在を押し広げてくる。
──自分の腰で。自分から。
場末のラブホで、腹の出た中年男性の上にまたがって、自分からイった。
ハウンゼンの客室乗務員メイス・フラゥワーが。
……その事実が、じわっと、頭に染みてくる。
◆◆◆
シーツに爪痕がいくつ刻まれたのか、メイスにはもうわからなかった。
「あっ」
不意に腰を掴まれ、ブリンクスの上から引きはがされた。
ずるん、と抜かれる。ついさっきまで隙間なく詰まっていたものが消え、壁と壁が虚しくこすれ合う。ひくり、ひくり、と空気を吸い込む収縮音が、自分の股間から聞こえた。
「四つん這いになれ。今度は俺のペースだ」
命令が耳に届くより先に、膝が動いていた。だがシーツに手をつきかけた姿勢で、メイスの背筋にひやっと冷たいものが走る。
「……そんな格好、したら……全部、後ろから……」
丸見えになる。ぬるぬるに蕩けた割れ目も、何度もイった痕も、太ももの内側を糸引いて伝う液体も。
「見せたくないのか?」
ブリンクスの声に、嘲りはなかった。ただ事実を確認するような、静かな問いかけ。
──それが余計に、メイスの心臓を鷲掴みにした。
「……見て、ください」
膝を開いた。尻を持ち上げると、エアコンの風が濡れそぼった割れ目を撫でて、メイスは小さく息を呑む。
ブリンクスの掌が、ゆっくりと尻の丸みを撫でた。急がない。品定めするように、メイスの尻から太腿の付け根、そして濡れ光る割れ目までを、順番に指でなぞっていく。
「……いい尻だ。割れ目の下、ぐちょぐちょに開いてんのが丸見えだぞ」
メイスは顔だけを枕に埋めた。
見られている。あの薄暗いバーで出会った中年の船長に、四つん這いの姿勢で、後ろから、全部──。
ブリンクスの太い指が、背中に残っていたニットとレースブラをまとめて掴んで、ずるっと引き抜いた。うなじから背骨が一本の溝になって、ブリンクスの目の前に晒される。
タイトスカートは腰の上までめくれあがったま、もう布切れ同然だ。
ピンヒールはとっくにベッドの下に落ちている。
脚に張りつく破れたストッキングだけが、元の服装の名残だ。
「あ゛あああッ!」
後ろから突き入れられた瞬間、両肘が折れた。
「さっきと──ちがッ──お腹のてっぺんッ、ごりごりされてッ──!」
騎乗位とは角度がまるで違う。さっきは自分で腰を落とした。今度はブリンクスが後ろから押し入ってくる。主導権が完全にあっち側にあることを、突かれるたびにお腹の中が教えてくる。
パンッ。
「あっ!」
尻を平手で張られた。パンッ、と乾いた音が壁に跳ね返る。
パンッ。パンッ。パンッ。
尻を打つ音と、ぬちゅぬちゅと粘膜がこすれ合う水音とが、交互にリズムを刻む。隣の部屋に聞こえてるかもしれない。でも、もうどうでもよかった。
「あ、あッ、あッ、あッ、あッ──」
声が突き上げのたびにちぎれる。まるでしゃっくりみたいな短い悲鳴が、顔を埋めた枕に吸い込まれていく。
さっきまで自分で腰を動かしていた。今は何もできない。腰を掴まれた手に逆らう力なんか残ってなくて、ブリンクスの好きなリズムで、好きな深さで、好きな角度で突かれるだけの肉になっていた。
──今、自分の顔はこの男に見えていない。見えているのは背中と尻と、ちんぽを呑み込んでぐちゅぐちゅ鳴ってる割れ目だけだ。
なのに。
(こっちの方が──ああ、壁という壁、ぜんぶ──押し拡げられて──)
角度がまるで違う。後ろからえぐり上げられるたびに腹膜越しの天井をずるずるこすられ、子宮口に先端がどん、と突き当たる。騎乗位では届かなかった深さを、ブリンクスが一突きごとに穿っていた。
ずぐ。ずぐ。ずぐ。ずぐ。
水音が変わっていた。泡立つような、ぬちゃぬちゃした粘い音。メイスの汁と、さっき騎乗位の時に出たブリンクスの先走りが混じり合って、つながったところに白い泡がリング状にこびりついている。
「もうッ、だめッ、なかッ──かたち、が……ぐちゃぐちゃにッ、されてッ──おかしく、なるッ──」
ブリンクスの手が、尾てい骨のあたりにかかった。腰をぐっと押し下げて、メイスの背中をさらに反らせる。
角度が──変わった。
「あ゛あ゛あ゛ッッ!」
最奥に、ずぶっ、とめり込んだ。
メイスの両手がシーツを鷲掴みにし、つま先がピンと伸びた。全身がひとつの弦みたいに張り詰めて、ぶるぶると震え出す。
「おい。イくのか」
ブリンクスの声が、背中の向こうから降ってくる。顔は見えない。声だけが、命令みたいに耳を打つ。
「イく前に言え。──誰ので、イく」
「ブ、ブリンクスの──ッ」
「ブリンクスの、なんだ」
「……おッ、おちん……っ」
「聞こえねえな」
「ブリンクスのッ、おちんぽで、イきますッ……!」
「フルネームで言い直せ」
「ブリンクス・ウェッジさまのッ──おちんぽでッッ──イっちゃい、ますぅッ──!」
言葉が出た瞬間、脳の奥で何かがぱちん、と弾けた。
自分の口から「おちんぽ」と言った。
その事実への羞恥。
言わされた屈辱。
それを嬉しいと感じてる自分への失望。
三つが同時に膣をひきつらせ、根元まできりきりと搾り上げた。
「──ッッ!! イッ、クッ──ブリンクスさまッ!」
ぐぐぐ、とちんぽを咥え込んだまま、メイスの全身が弓みたいに引きつった。
背中を反らせたまま固まった身体に、ブリンクスが覆いかぶさってきた。汗に濡れた胸板が、メイスの背中にぺたりと重なる。
耳元で、低い声がした。
「いい子だ」
──動物の格好で、おちんぽって叫んで、よだれ垂らしてイった女に向かって。
その四文字が、まだ震えの止まらないメイスの頭にじわっと染みた。
「……っ、ぅ……ぁ……」
目尻から涙が一筋、枕に落ちる。
意識が遠い。身体が重い。中はまだちんぽを咥え込んだまま、きゅ、きゅ、と弱く締まったり緩んだりを繰り返している。
──「いい子だ」と言われて嬉しいと思う。それがどういう意味か、今のメイスには、もう考えられなかった。
◆◆◆
やがて「洗え。──まだ終わってねえ」と、腕を引かれた。
ベッドから下りた脚がもつれて、ブリンクスの二の腕にしがみつく。自分の体重すら支えられない。
シャワー室の大きめの鏡に、知らない女が映っていた。
髪は絡まり放題。ルージュの痕跡もない唇。汗とよだれの筋がこびりついた頬。目の焦点が、まだどこか合っていない。
──これが今の自分だ。メイスは数秒、鏡の中のその女から目を逸らせなかった。
(……だれ?)
安っぽいボディソープの泡で、互いの身体を洗い合う。男のごつい指が股間を滑った瞬間、膝が折れた。さっきまでちんぽが入っていた場所が、石鹸のぬるぬるだけでひくひくと収縮して、メイスの口から「あ」と声が漏れた。
気づけばタイルの冷たさも忘れて膝をつき、泡だらけの手でブリンクスのちんぽを両手で持ち上げて、大きく開いた唇を近づけていた。
ベッドに戻った時には、二人の肌を隔てるものは何もなくなっていた。
ブリンクスの腰の上にまたがり、向かい合う。対面座位だ。素肌と素肌がぴたりと重なる。おっぱいがブリンクスの胸板に押し潰されて、乳首が焼けた肌にこすれるたびに、背筋がびくっと跳ねた。
その姿勢のまま、腰を落とす。
ずぶ、と。
また──いちばん奥まで、串刺しにされた。
「ひ、ぁ──ッ」
顔が近い。息がかかる。ブリンクスの目が、暗い海の底からこちらを覗いている。
下から突き上げられるたびに白い喉を仰け反らせ、声を枯らし、それでも腰を止められない。迎えにいく骨盤の動きが、もう自分の意志では止まらなかった。
「イっ──っ、ブリンクスの──中ッ、ぜんぶ届いてるッ──もう──イくッ、イくぅぅッ……!」
いちばん奥をごりごりと擦る圧が、またびりっと火を散らした。限界を突き抜けた電流が背骨を貫いて、視界が白く反転する。
ぎゅう、と締まった中がちんぽにしがみつき、つながったところからぷしっ、と熱い汁が噴いた。
イくたびに、ハウンゼンの記憶がちらつく。
客室で政府高官にシャンパンを差し出す自分の手。爪を揃えて、指を揃えて、微笑みを添えた──あの手。
今その手は、ブリンクスの背中にしがみついて、爪を立てている。
だがその記憶の輪郭はどんどん薄れ、残るのはブリンクスの顔と声と匂いだけだった。
「何回イった。──数えてたか?」
「……わから、ない……かぞえ、られなく、て……ごめんなさい……っ」
ブリンクスが、目の前で揺れるおっぱいにかぶりついた。指の跡が残る柔肉に歯を立てて、ぴんと立った乳首を舌でぐりぐりと弄ぶ。
それだけでメイスの中がぎりぎりと締まって、うねった。
「ひっ、あ、ああッ、壊れちゃう……んあ、あッ、んんぅッ」
乳首からの刺激が、イくたびに過敏になった全身を隅々まで走り抜ける。
腕はだらんと垂れて、指の先までひくひく引きつっていた。でも──腰だけは止まらない。対面座位のまま、円を描くように腰を回し始めている。ブリンクスの首に絡めた両手を支点にして、骨盤を前後にずらし、奥にいちばん当たる角度を自分で探っている。
「はあッ、ああッ……中がッ、覚えちゃう……ッ、ブリンクスの……おちんぽの形に──なかが……馴染んじゃ……っ、もう……他のじゃ……埋まらなく、なっちゃうッ……!」
制御を失った腰が独りでに動いて、結合部からぐちゅぐちゅと水音が鳴った。練り上げられた体液が粘い糸を引き、動くたびに音を立てる。髪は乱れ、ルージュはとうに落ちていた。
もうあの空を飛んでいた女はどこにもいない。ここにいるのは、中年オヤジの腰の上で声を上げる、港の女だった。
「ひいいいいいッ!」
乳首を歯で軽く挟まれた瞬間、びりびりと稲光がお腹の中まで貫いた。メイスの思考が吹き飛ぶ。中が自分から蠢いて、ちんぽを呑み込むようにぎゅうっと引きつり上がった。
「そろそろ一発出しとくか」
まるで、今まで手加減してたみたいな言い方だった。
──たぶん、本当にそうなのだ。この男がどれだけ余力を残しているのか、メイスにはまるで見当がつかなかった。
「生だからな、ナカにぶちまけるぞ。いいな?」
「……奥に……出して……っ」
ためらいは、一拍だけだった。
「奥にッ……いちばん奥にッ……ブリンクスの全部、預けてッ……メイスが受け止めるから……ひっ」
尻を抱え込まれた途端、尾てい骨からぞくっと寒気が走った。自分から何度もイってしまっているのに、この男に腰を使われたらと想像しただけで、中がじゅくりと先走りの一滴を搾り出す。
そして──腰を鷲掴みにされ、ぐっと引き寄せられた。
「──あ゛ああああぁぁッ!」
同時に下から穿ち上げられ、お腹の芯を貫く衝撃がメイスの身体を跳ね上げた。意識が灼け落ちる。メイスという名前も、ハウンゼンも、ケネスの顔も、快楽のいちばん底に沈んでいく。
「あッ、ひぅッ──イ、ぐ、もう──ッッ!」
イき終わる前に、次の突き上げが来る。痙攣してる中をそのまま突かれて、意識が飛びかけて──また同じ衝撃で引き戻される。
ブリンクスの腰つきが変わっていた。さっきまでの余裕がない。息が荒い。メイスの中で、ちんぽがひと回りでかくなって、中をみちみちに押し広げている。
「あああああッ!」
ブリンクスの頭をおっぱいで挟み込むように抱えたまま仰け反り、突き上げのたびに全身を跳ねさせ、汗に濡れたブロンドを踊らせる。
「こりゃ……おお……ッ」
声がかすれていた。それまで涼しい顔を崩さなかったブリンクスの声から、初めて余裕が剥がれた。
おっぱいに埋まった首筋に、汗の筋が一本光っている。焼けた肌にこもった熱が、乳房越しにじかに伝わってくる。
太い顎が歯を食いしばって、その振動が乳首に届くたびに、メイスの中がきゅっと搾った。
「ああッ! あッッ! んああッ──ブリンクスさまッ……!」
メイスの声が絶頂の叫びになった。
ブリンクスの腰がぐっと持ち上がり──止まった。
いちばん奥に、どくん、と脈打つ灼熱が叩きつけられる。
「ッ────!」
熱い。
精液が、一条ごとに、子宮の壁を叩いて震わせる。その振動がメイスの背骨を駆け上った。
どくん。どくん。どくん。
世界が音を失った。色が消えて、輪郭が消えて──ブリンクスの腕の圧だけが、メイスを現実につなぎとめていた。
一度、二度、三度──。
注ぎ込まれるものの一脈一脈を、子宮で受け止めている。
ブリンクスの腕がメイスの背中に回って、背骨が軋むほどの力で抱き締められた。焼けた腕が、かすかに震えている。
(ああ、ありがとうございます──私は、気持ちよかったでしょうか? ブリンクスさま……遊んでくださって、ありがとう、ございます……)
全身から力が抜ける。指一本動かしたくなかった。
もう何も要らない──この男の精を、このまま一滴もこぼさず抱えていたかった。
◆◆◆
ベッドの軋みが止んだ。残ったのはエアコンの唸りと、遠い港の汽笛だけだった。
頭の下にブリンクスの腕枕がある。塩と油の匂いが染みた腕に頬を預け、メイスは長い息を吐いた。
「……すごかった」
ソプラノがかすれている。全身の力が溶けて、声帯にまで届かないのだ。ブリンクスの胸板に額を押し当て、目を閉じる。
「こんなに気持ちよかったの、初めて……」
脇腹にきゅっと身を寄せ、しがみつく。お腹の奥にまだ熱いものがとろりと溜まっている。その充足ごと、この腕に包まれていたい。
これまでの男とは何もかも違う。誰と寝ても「もてなし」や「いたわり」を忘れなかった自分がこんな、小娘みたいに……。
メイスの指が、無意識にブリンクスの胸板をなぞっていた。指を揃え、ゆっくりと、滑らせるように。客に飲み物を差し出す時と同じ手つきで、ブリンクスの肌を撫でている。
客をもてなす手の使い道は、もう変わってしまっている。ただひとりの男に尽くす手になっていた。
窓の外で港のクレーンの航空障害灯が赤く明滅し、メイスの裸の肩を断続的に染めている。
(……あの赤い灯りの下に、この人の船がある)
次にいつ来るのか、訊けなかった。訊けば「港の女」の惨めさを自分で認めることになる。
「おい、明日、暇か?」
「……え?」
「俺の船を見せてやる」
何でもないことのように、煙草に火を点けるくらいの気軽さで、メイスの人生を次の段階へ蹴り込んでくる。
船──この男の世界に足を踏み入れるということだ。赤い灯りの向こう側へ行く女になる。
(行ったら、もう──)
戻れない。なのに口は、嬉しさを堪えきれないまま動いていた。
「──はい。ぜひ、お願いいたします」
ブリンクスは鼻で笑い、ごつい手がメイスの髪をぐしゃりとかき回した。雑で、乱暴で──それでいて、そこにしか温もりがなかった。
メイスはその手に小さく頬を擦りつけ、目を細めて微笑んだ。お腹の奥で、まだぬるい精液がとくんと脈打った気がした。
(続く)