※この作品はR-18です。

That's insane!   作:解毒発酵DNA

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致している描写が入ります
ここまで長かったな君たち
ここから大きく変わっていく部分があります



改めて今まで読んできたものを思い返すと、やはりこの二次創作もある程度影響を受けているものだなあと感じます





11

目が覚める。

見覚えのない部屋、嗅ぎなれない匂い、自分の普段寝るベッドよりも硬いスプリング。

その傍らに男が見えた。621は見覚えのあるその髪と肌色から当たりをつけて、その名を呼んだ。

 

「イグアス」

「………起きたか」

 

凪いだ目をしている。

相変わらず刃物みたいに綺麗な顔だな、とぼんやり眺めた。

 

「1日寝こけやがって」

「ごめん」

「………機体はある。輸送コンテナにてめえを詰めたあと、その辺に置いていく」

「うん」

「あとは好きに帰れ」

「ありがとう」

 

しばらく見つめられる。

武骨な指が唇をなぞってきて、不可解な行動にイグアスを見上げた。口付けでもされるんだろうか。ここで?

やっぱり分からない。

ただ、ふにふにとその感触を弄ばれていることだけは分かったので、仕返しとばかりに指を食んだ。

 

「………」

「………」

 

無言で見合う。ぺろ、と舌先で指を舐めれば、眉が顰められた。

 

「舐めてんじゃねえ」

「ナメてないけど………」

「指の話だ、鴉ってのは案外馬鹿か」

「うるさい………」

 

起き上がって、顔を近づけた。軽く唇を合わせれば盛大な舌打ちが返ってくる。どうせそうだろうと思ったので、そのまま首筋に噛み付いた。

 

「痛てッ、おい野良犬」

「何」

「噛んでんじゃねえ………!」

「だって」

 

してくれないなら痕でもつけておこう。そう思ってしただけだ。不満を表すように、ぢゅ、と首筋を吸えば、粗雑に抱き寄せられた。

 

「節操ねえのかてめえ」

「イグアスが最初にしたんじゃない」

「うるせえな」

「するの?」

「ンな場所でヤれるか」

「ここ医務室?」

「に決まってんだろ」

 

苛立つイグアスのため息が、抱き寄せられているせいで首筋にかかる。それが妙にそわそわとして、欲しいな、くれないかな、という鈍い欲が顔を出した。

 

「欲しいのに」

「………正気かてめえ………」

 

腕の力だけで近づこうとしたのを、さらに寄せられてあっさり太腿の上に乗せられた。筋肉の硬い感覚を内腿に感じ、きゅ、と力が入る。

 

「珍しいね」

 

昏い目が見ている。相変わらず目に光の入らない男である。別にそれがどうという訳では無いが、殴るか罵倒するかただそうしただけか、全く以て分からないのは困るのだ。

 

言いながら手を伸ばせば、彼はゆっくりと621の顔に触れた。目が合っている。

やっぱりイグアスは前からちょっとおかしい。

なんでおかしいのか、621にはこの男の心境の変化など理解できないままだが。

そのまましばらく見つめあっていると、イグアスが口を開いた。

 

「レイヴン」

「………、なあに」

 

名を呼ばれて心臓が跳ねる。

たしかに触れて欲しかったし、食らいついてその痕を刻んで欲しかったのだが、こういう雰囲気になりたかったという訳でもない。

 

目が泳ぎそうになる。

それは明らかに照れから来ているとわかっている。そりゃあそうである、好きな男に触れられて嬉しくない女がいるなら教えて欲しいくらいだ。

 

顔をそのまま引き寄せられ、唇を優しく吸われた。唇を舌でなぞられ、受け入れればそれが入ってくる。

慣れた煙草の苦い味がした。そういえば、せっかく届いたのに頼んだっきり開けていないのを思い出す。

 

しばらくそうしていたが、一向に放してくれない舌と体温に溺れそうになる。621の息が上がり始め、はふ、と音を立てて必死に息をしようとする。

いつものような口付けなら、ここまで息が合わないことなどないのに。

 

優しく体温を与えられ、内腿に感じる熱にじわりと秘部が滲んでいる。すっかりその気になって、ただそうして優しく溶かされるような心地に浮かぶように身を委ねた。

 

また目が合う。

生理的に滲んだ涙を指で拭われ、唇が銀糸を引いて離れた。呼吸の温度が近い。湿り気が近い。疼く身体に男の熱が注がれたら、一体どれだけ気持ちのいいことだろう。

久しぶりの感覚に期待するように、腹の奥が欲して仕方が無かった。

 

「逃げねえのか」

「………なんで?」

 

唐突なその一言に目を丸くする。優しくされているのには不思議な気分になるが、逃げるというほどではない。

621がぽかんとしていると、男の口の端が持ち上がった。笑った、と思う。

 

思う、とつけたのは、嘲笑でも皮肉でもなく持ち上がったのが分かったからそう言っただけで、一般的な笑うという表情からは程遠いものであったからだ。

 

「なに………?」

「………押せば来る」

 

指したのはボタンだった。おそらくナースコールである。

 

「………なんで逃げるのよ、私が」

「だろうな」

「してくれるの」

「………」

 

脚を動かされ、向き合う形で抱きしめ合う構図になった。股座に硬く熱いものが当たり、なんだかんだこの男も乗り気なのがわかる。

じわ、とまた秘部が滲む。

もう一度今度は短く口付けて、男の唇が動いた。

 

「野良犬」

「なに」

「いいんだな」

「………いつも聞かないじゃない………」

 

答えれば、優しく肌着の下に手が入った。

素肌に直接手の感触と温度を感じ、また腹の奥が求めるように疼いた。

そのまま胸部に到達した指先が、探るように双丘の頂点に触れる。硬く立ち上がったそこを丁寧に触れられて、微かな声が漏れた。

感じる硬さが湿気を帯びる。ボトムスを縛るベルトに手をかけても、何も言われはしなかった。

 

そのまま緩めたそこに手を入れる。

反り立つその熱さに触れて、また互いに口付けた。先っぽから溢れる欲の形を指に取って、擦るように先端から頭、血管の浮き上がるほどいきり立つそれに滑らせていく。

 

「こんな場所でって、言ったのに」

「てめえが誘ったんだろうがよ」

「乗り気じゃなかったでしょ」

「………うるせえな」

 

言う割には不機嫌が滲まない。

そのまま互いに優しく触れるだけだった。自分はこの男にひどくしたことはないが、やはり、男が優しいのは妙な気分になる。

 

気持ちはいいが、何故、が頭に浮かんだ。

しばらくそうしていて、指に絡まる欲の量が増えてきたのに気づく。とろりとしたそれは自分の白い指先を艶やかにしていて、少し白く濁っていた。

 

「ちょうだい」

「分かってる」

 

随分器用に下を脱がすものだ。首元にしがみつきつつ、濡れて糸を引く秘部に熱いものが宛てがわれたのが分かった。

また優しく口付けられながら、胸元を愛撫されている。秘部にくっつくように宛てられている肉棒が、蜜口を解すように動いた。

 

どうしても息が合わずに苦しくて息を吐く。気遣っているつもりなのか、冷たく昏い目がじっとこちらを見ていた。なんだかちょっと怖い気がする。

 

「………ふ、………」

「やめるか?」

「やだ」

「ん」

 

優しい口付けが終わって、これだけで蕩けきった蜜口に徐々に肉棒が入ってくる。

ひらかれるような久々の感覚に、嬉しそうに自分の中は舐るようにそれを受け入れていった。

身体が少し跳ねる。それを押さえつけるように抱き締められるのは相変わらずだが、力はいつもよりも弱かった。互いに触れて、体温を分ける程度の力である。

 

「身体は」

「痛くない、よ」

 

本当になんで優しいのか。

不思議な心地になりながら、本当に、恋人か何かのように優しく中を擦られている。

水音すらも普段の倍以上に小さく優しく、また身体同士がぶつかる音も殆どない。奥に到達する振動に気持ちがよくなって震えれば、少しだけ動きが早くなった。

 

「は、あっ………ふ………」

 

出来る限り声を抑えるように彼の服に顔を埋めれば、抱き寄せるように手で顔を押し付けられた。息苦しくはない。

体温を分けて、抱き竦めて、温める。

多方様々な動物種が、冬にでも行うような温かみがそこにあった。2人だけの寂しさの分がここにある。服にしがみつくように、ただ621は蕩けきったその身体を預けていた。

 

 

 

 

『送り狼にはなるなよ』

だったか。送る前に食ってちゃただの獣である。自嘲気味にそう思いながら、甘えてくる鴉の黒目がちな目を見た。

 

蕩けた大きな目は困惑の色を浮かべている。お前が煽ったんだろうが、とは口にせず、優しく女の唇を食んだ。その度中身が更なる快感を欲してせがむように締まるので、骨に残った肉を丁寧に齧りとるようにその身体に食らいついた。

 

女の身体が腕の中で微かに痙攣する。中も同じようにビクビクとしながら自分の肉棒を舐るので、ああ、達したのかと思いながらも執拗に内壁を擦った。

 

「は………んっ、ふ………っ」

 

白い手が服に縋り付いて、胸板に押し付けられた顔は熱い息を押し殺しながら吐いていた。

その頭を優しく抱きつつ、自分の快感だけを貪らないようにと抑えながら女の身体を攻め立てた。

何故そうしたのか。

とにかく言えるのは、自分はこの女をどうしたいのかという答えがこの行為であると言うことだけだ。

 

見ているなら、見られているなら、求められるなら、それでいい。

前のように髪は掴まなかった。

頭を押さえていた手を離し、顎を持ち上げる。

 

「顔」

「は………ぁ………」

「………っは」

 

快楽で潤んだ目と蕩けた顔がそこにある。

全く自分から食われに飛び込んできたくせに、いざ食いつかれてみれば戸惑ったままその羽毛も嘴も風切羽も、どう毟られても大人しい。

 

女の微かな声すらも腹に収めるように、また口付けた。そのまま少しだけ激しく突き立て、中で果てる。吐き出した温かさを咀嚼するかのように、中がうねってまた痙攣した。

 

潤んだ目から涙が溢れた。まだ硬さを残している自分のそれをそのままに、女の目元を拭った。

 

「なんだそのツラ」

「う、るさい………いつも、こんな、ふうじゃ」

 

また中が震えた。また少し内側を擦ってやれば、身体を跳ねさせてまた服に顔を押し付けている。その様子がまた、まだ食えるような骨が残っているのだと分かるのであった。

 

「なんで」

「泣くか普通」

 

女は何故か目に涙を溜めている。呆れて目元に口付けてやった。なんで食われに来といて、いざこうしてカラス鍋にされたら泣き始めるのか。

 

「笑ってるじゃ、ない………」

「………あァ?」

 

笑っている、らしい。

不満そうにした女の手が、自分の口許をなぞっていった。確かに、本当に微かに口角が吊り上がっていた。高揚感か、征服欲が満たされたからか。どういう意味で自分が笑っているのかはいまいち理解できてはいなかった。

 

「………」

「自覚、なかったの?」

「笑ってねえ」

「ふ………無理が、あるんじゃない………?」

 

揺すられながらも女はそう言って笑った。こういう顔が見たかっただとかそんなんでは無かったが、女が笑う様は悪くはない。

結局、ああしてまで女の首を掴まなくても良かったのだ。それに奇妙な安心と、いくら食らいついても満たされなかった欲求の満足を感じていた。

 

「………笑えるぜ」

「酷いわね」

 

女に言ったのでは無かったが、拗ねた顔が馬鹿みたいで面白いので否定はしなかった。

そのまましばらく、その鴉の骨身から出た味を飲み干すように溶け合ったのだった。

 

「結局会ったらこうなるわよねえ」

「てめえがネギ背負って鴨鍋になりに来たんだろうが鳥頭」

「野良犬からグレードアップしてるわね」

「食えることをグレードアップっつーてめえがおかしいんだよ」

「美味しい方がいいでしょ」

 

意味の分からない回答が返ってきた。まあ確かに、食えるんなら別に文句は言いやしないが。

体力を消耗したせいで歩けない女を抱き上げつつ、艦内の間取りが分かりにくい部分を選んで通っていった。ドックには入らず艦体下部まで下がり、薄暗い通路を抜けてMT整備の区画まで歩いていった。

 

「来ましたね」

「詰めとけ」

「言われなくたってあとはG13詰めるだけでしたよ、何してたんです」

「鴨鍋にした」

「どういうこと………?まあいいか」

 

補給部隊の人間がそう言ってレイヴンを担いだ。女は油断しきって寝こけそうだったらしく、うわ、などと言ってバタついた。

 

「二度と来るなよ野良犬」

「言われなくたって来れないわよ」

 

不満そうなまま女はコンテナの内部に担がれていった。このままどこかしらに、補給部隊のACが連れていくんだろう。見送ることはせずにさっさと立ち去った。

 

女の体温がまだ残っている気がする。

 

先程通った通路は通らず、そのまま中層部のドックに上がる。ここから上がる時顔を出すことになるのはいつも4番ドックだ。よく───アイツと一緒に、サボるためにあの通路を使っていた。

 

全く自分も、あの時のお前を笑えねえ。

 

妙に、いつか女に本気になっていたような様子を笑っていた自分が、今度は自ずとそうなった自分を嫌悪していた。こんなことは認めたくないという幼稚な感情の現れだった。

 

ウォッチポイント・アルファ。

あの怪物が守っていたそこは、強いコーラル反応と深さによって外界と隔絶されるような大穴が空いている。

死にに行くのと同じであった。残っているレッドガン全員───ミシガンすらも、あの連中は使い潰すだろう。

 

予感があった。

ベイラムでは、このウォッチポイントは突破できない。

 

ミシガンなら、五花海なら、自分なら、レッドなら。やりようはある。『自分たちだけであれば』だ。

いつもそうだった。レッドガンの足を引っ張るように、それを楽しむようにベイラムの連中は色々と無茶なことを言いに来る。

 

「………」

 

手の内の端末を見た。

そこにはオールマインドからのメッセージが入っている。

 

『G5 イグアス。貴方に依頼があります』

『ベイラム・インダストリーおよびベイラム専属AC部隊“レッドガン”による、ウォッチポイント・アルファへの突入作戦時に頼みたいことがあります』

『深度2に到達後、返信をお願い致します』

 

───女は二度と離さない。だからお前が俺を使って何をする気か、女は一体お前を利用して何を求めているのかを、探ってやろう。

 

画面を消して雑にポケットへ突っ込んだ。煙草を取り出して咥える。

整備部隊も補給部隊も慌ただしく駆け回っていた。3番ドックと5番ドックの間にあるここも、人通りが多かった。

ドック下部から上がっていけば、丁度五花海がこちらにやってきていた。横にはレッドもいる。

 

「吹っ切れたような顔ですね」

「あ?………チッ、なんだ嫌味でも言いに来たか」

「そういう訳では。ウォッチポイント・アルファ突入時の動きについて話があります。どうせここに居ると思っていましたよ」

「そうかよ」

 

足場の手すりに凭れれば、同じように横に五花海が立つ。少しだけレッドが離れて立った。

 

「G13には話を持ち掛けなかったので?」

「………はっ、ベイラムがアレを上手く使えるかってんだ。せいぜい手酷くつつかれて終わりだぜ」

 

煙草に火をつける。五花海とレッドにライターを向ければ、五花海は自分の煙草を1本取り出して火をつけた。レッドは特に動かなかったので、そのままライターをしまった。

 

「変わりましたね、貴方も」

「うるせえな」

「ヴォルタが見たら驚きますよ、きっと」

「どうせ喧しい、クソみてえな雰囲気が多少マシになるかどうかだ」

「フフ」

 

五花海は軽く笑った。

そのまま、その目がこちらを見る。前のような冷えた感情は奥にあれど、今はあまり冷ややかではなかった。

 

「そうなれば彼女はアーキバスを頼るでしょうね」

「アイツの『飼い主』の目的もある………あっちがカラスにつつかれる分には問題ねえ」

「それもそうですね」

 

しばらく無言になった。

走り回る人間の音と、何かの排気音。ACやMTの駆動音が響いている。

 

「レッドガンを抜ける気はありますか」

「………ンだ急に」

「言ってみただけですよ」

「てめえが抜けてえとでも言うみたいじゃねえか」

 

急にそう言った五花海を睨めば、苦笑とともに煙を吐いた。空調に巻き上げられていく様を追っていると、案外静かな声がした。

 

「死ぬよりよいでしょう、無駄死になどしたくはない」

「無駄かどうかは俺たち次第だ」

「いいえ、無駄ですよ」

 

何故言い切る、と五花海を見た。男はただ笑っている。

 

「この奥にコーラルがあるとして、運良く地中から吸い上げるための装置があったとして────ベイラムの技術では、地上部までの延伸は不可能でしょう」

「………」

 

それはとっくに分かりきったことだった。だから、俺たちは無駄死にする。そう言いたいらしい。

聞いていたレッドが、戸惑うような風で何かを言いあぐねていた。

 

「ならとっととてめえは出て行きゃあいい」

「ちょ、っ、先輩」

「はっ、てめえもだレッド………つか、てめえが1番どこでも行って生き延びておけよ」

「フフ、それには同感ですねえ………家族がいるのですから」

 

軽口のように流したのに五花海が乗った。

レッドはそれにまた何かを言いかけて、そうしてやめた。

 

「で、無駄口叩きに来たわけじゃねえんだ………とっとと本題を言え」

「そうでしたね」

 

その後は普通の作戦会議といった風だった。ウォッチポイント・アルファ内部にある自動防衛装置は出来る限り破壊するなという。

防衛に残しておきたいんだろうが、ンなもんあの鴉にやらせれば直ぐに終わるのだから意味は無い。

 

その後深度2へ到達した後に、深度3への手がかりを掴む。そこから更に探索していくが、その先は誰も知らない未踏領域である。その先に、企業が求めてやまないコーラルがあるのだ。

 

「………はァ………」

「ため息ですか」

「当たりめーだ。てめえもさっき、うんざりしてたろ」

「フフ、そうですねえ」

「死ぬのに調子アガるヤツはあの野良犬だけでいい」

「ええ………氷原の怪物退治の話は聞きましたとも」

 

ふふ、とまた笑った五花海は、そうそう、と言った。

 

「医務官殿から言伝が」

「あ?」

「掃除しろと」

「………」

 

無言で煙を吐いた。そりゃバレるか。

 

「今言うんじゃねえ」

「気が抜けました?」

「ああ、本当に………ったく」

 

医務室の方面へと歩き出した。五花海はそのまま煙草を吸っているし、レッドは少々戸惑ってから、あ、という顔をして渋面を作った。

 

「貴方という人は………」

「はっ、てめえも死ぬ前にやることやっとけ」

「しません………」

 

後輩の頭を雑に撫でて、後ろ手を振った。

この場所が無くなる日も近い。

煙を肺に落とし、やはり変わらない味を感じて吐き出した。見栄を張って吸い出したこの銘柄は、やはりいつまでたっても美味しくない。

 

「………」

 

ただあの野良犬がこの匂いを覚えてしまったので、仕方なく、変えることなく吸っていた。

本当はアイツが吸っていたような重さの方が、自分の好みであったのだった。

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