That's insane! 作:解毒発酵DNA
書いていてたまに、ライブ感すぎて矛盾していることがあります。ノリで書くからいけない………
まとまって休む時間ができると、やはり、筆は進みます
補給艦内もそれはそれは地獄のようであったが、母艦よりは遥かに人間の戦いの痕が残っていた。
血溜まり、腕、脚、臓器。たまにぶら下がる膜。この血腥い臭いに安心するあたり、自分も戦場の人間である。
ACパーツのある区画に入れば、すぐにわかった。コンテナの中にある、MELANDER C3のパーツをオールマインドの手先と思わしき無人機が回収していった。
『これでお分かり頂けましたか』
「………何がだ」
そんな中響く随分と嫌味なその言い方に、少しの棘の入った声を返す。オールマインドは特に気にした風もなく、淡々と喋った。
『主要な指揮系統が消えれば、組織の崩壊というものは容易なものです。G1 ミシガンも、じきにV.Ⅳラスティにより殺害されるでしょう。そうなればレッドガンは消滅するのみです』
「あのクソジジイをキザ野郎が殺すって?………はっ、有り得ねえな」
その言葉に、オールマインドはにべもなく返す。
『彼は高い戦闘能力を持ちます───適切な機体であれば、V.Ⅰフロイト以上の結果が出るでしょう』
「………はァ………?」
『専用の機体を解放戦線が開発しています。彼はスパイですから』
「はァ!?」
サラッととんでもねえこと言いやがったなてめえ。どこでそんな情報握りやがった、とも思ったのだが、下手に詮索して処分されてはたまったもんじゃない。
「………だが、それなら………」
『もちろんアーキバスも勘づいています。それ故にG1の殺害を彼に任務として渡しているのですよ』
「だろうな。そこで死ねば万々歳、死なねえならレイヴンの処理に回せばいい………そこでダメならクソ役人に捕まえさせて再教育か」
『ええ。効率的ですね』
「気に入らねえ」
ミシガンを簡単に殺せると思っているアーキバスも、殺せるだろうあの気障ったらしい狼も、レイヴンを捕まえられる気でいるクソ役人も気に食わない。
が、それはそれで、これはこれだ。
今は機体をオールマインドに構成させたあと、もう一度ウォッチポイント・アルファを降下しなくてはならない。
それが1番面倒くさい、と舌打ちが漏れた。
『G5 イグアス』
「なんだ」
『それでは改めて、V.Ⅲオキーフの暗殺依頼について話をしましょう』
その話を聞きながら、補給部隊達の遺体を避けて外に出る。
人の消えたその場所には武骨な足場に似合わない、オレンジ色のカラベラが1つ転がっていた。
深度1。
根から折れた食虫植物の残骸の横に、蜘蛛のような頭部に四足のACが降り立った。
ライガーテイル───G1 ミシガンの乗機である。そこに近づく重四脚MTの姿があった。
『進捗はどうだ、オオサワ』
『はっ、現在深度2にて局所的にアーキバス勢力との戦闘が勃発、G3 五花海、G6 レッド共に交戦中であります。通信途絶した艦隊からの最後のログは、心療内科医であるレナ医務官からのメッセージでした』
その言葉を聞いて少しだけミシガンの、息をつくような音が入った。
『内容は』
『それが………なにか、暗号のようなのですが、意味は………』
『見せろ』
『はい』
しばらく沈黙が続く。
その内容はこんなものであった。
-----MED LOG / FINAL ENTRY-----
CMBT : NR
TECH : NR
SUP : NR
SCAN : NEG
DX : LOSS
MSG FOR G1
“SANITIZED”
ミシガンはそれを見て、しばらくして息をつく音をさせた。
『────“口封じ”か。なるほど、母猫のように甲斐甲斐しく役立たずどもの世話を焼いていただけはある』
『総長………?』
『母艦及びレッドガン率いる地上艦隊は全滅した!何者かによる襲撃が行われたらしい』
動揺こそあれど、隊員たちはそれを静かに聞いていた。
『G5を探せ、恐らくアイツは分かっている』
『ええっ、でもアイツは死んだって………』
『随分気楽に居るようだなオールバニー!G5に起こった異常は機体反応のロストのみだ!死んだとは分かっていないッ、重箱の隅をつつくように探してやれ!』
『は、はいっ!総長!』
『早急にG3とG6に伝達しろッ!俺は狼の相手をしてやる必要がある』
その上を、静かに見る青い影があった。
V.Ⅳラスティである。口枷のついた狼のエンブレムが雪の反射を受けて少し浮き上がった。
『………なるほど。何者かが動いているらしいが、今は…………』
地面に降り立つ狼と、虎の尾を持つ獅子が対峙する。
『お互い、それを気にしている場合ではないな………こうして“歩く地獄”に合間見えるとは。光栄だ、G1 ミシガン』
『座学は十分足りているようだなV.Ⅳ!貴様はそこいらのAC乗りに比べて見所がある』
きっとこの男は笑っている。
ラスティは純粋な強者への尊敬と礼節、そしてほんの少しの畏怖を込めて返した。
『私にはやるべき事がある。例え貴方の誇りをこのルビコンに打ち捨てる事になろうとも』
『いい覚悟だ伊達男め』
ミシガンの怒声に近い鼓舞が響いた。
『愉快な遠足の始まりだ!突撃しろ、役立たずども!』
同時に襲いかかるMT部隊達とミシガンに、ラスティはスライサーを起動させながら薙ぎ払う。
数体が墜ちようとも士気の衰えないレッドガンに末恐ろしい気になりながらも、蹴り潰し、撃ち抜き、そして刻む。
『強い………!』
『ヴェスパーってのは4番手でもこんな強いのか?羨ましいな!』
『無駄口を叩くなケネベック、G4もG5も貴様らの100倍は強い!そこの伊達男はその20倍強いというだけだッ!一体貴様らの何倍になるか、そのスカスカの脳みそで計算してみろ!』
会話はまるでコントのようだが、全員攻撃の手は全く緩んでいない。それどころか折れる様子もなく立ち向かうMT達とミシガンに、やはり敬意は尽きなかった。
『本当に凄まじい、流石はレッドガンの精鋭』
『俺を前に役立たずどもを褒める暇があるようだな』
2連グレネードの発射音と共にラスティの機体がスタッガーする。そこに腕を振り上げてナパーム弾を撒こうとしたミシガンに、ラスティのアサルトアーマーのパルスが掠めた。
『強者への敬意だとも』
『空きがあればナンバーを与えてやるところだ』
『光栄だが、私はこのⅣの数字が気に入っていてね』
互いに笑っているだろうことは容易に分かった。いつしか声は減っており、ミシガンとラスティの機体だけが、折れた食虫植物の根元で飛翔している。
『ところで』
『まだ無駄口を叩く余裕があるか』
『レッドガンの母艦をアーキバスは捕捉していない』
『………ほう』
『独り言だ………強化人間の悲しい、な』
『ならば俺も幻聴ということにしておいてやる』
その一言をなぜラスティが言ったのか、ミシガンは追求しなかった。そのまま飛ぶ2機はしばらく戦闘音を響かせていたが、ついに決着が着く。ライガーテイルの四足が折れた。胴体が沈み、蜘蛛のようなライトは少しずつ光量を落としていく。
『ミシガンは転んで死んだ、伝記にはそう書いておけ』
『………ああ、伝えておくとも』
青い機体も無事ではない。ところどころ焼き切れたように煙を上げながら膝をついた。
『………これは、要請が必要か………』
聞こえていた会話や自分の持つ情報を照合しつつ、ラスティは独り言ちる。
『G5………君は何を考えている?………戦友の行動も、彼女の飼い主の意思とは違う所にあるようだ………』
補給を待つ間、そうしてラスティは食虫植物の根元で思索に耽るように機体を陰に潜めさせていたのだった。
─── 一方その頃、621はと言うと。
『正面で待ち構えるやつがあるか………!』
「絶対当たるんだから正面に立つでしょ、何を言ってるの」
『お前が何を言っている!』
解放戦線のミドル・フラットウェルと共に、V.ⅤホーキンスとV.Ⅷペイターに奇襲を仕掛けていたのだった。奇襲というか、真正面から突っ込んで行ってホーキンスをパイルバンカーでどついた、が正しいが。
『面白い子だねえ』
『ホーキンス隊長、鴉というのはもう少し賢い筈では?』
『そうだねえ………賢いと思うよ?今とても驚いたし、奇襲としてはインパクトが強くて───』
『まともな人間が居ないな』
頭の痛そうな声をしたフラットウェルに、621はおかしそうに笑うだけだった。
『しかし君いいねえ、ヴェスパーに来ないかい?第四世代型でその実力なら、すぐに新しい型の手術を受けさせて貰えるだろうね』
「褒めてくれてありがとう、ヴェスパーにも優しい人って居るのね」
『誰も彼もスネイルみたいと言うわけじゃないさ』
別にスネイル自体は指していなかったが、ホーキンスも同じく思うところはあるらしい。それにくすくすと笑いながら、ホーキンスの乗る四脚ACに鴉の嘴が迫る。
『おおっと』
「貴方みたいな人ばかりなら考えてあげても良かったわ」
避けるホーキンスを追うが、撃たれるプラズマライフルを回避する。なかなかしぶとくて硬い、と621は歯噛みした。
「難しいわね」
『レイヴン、焦らずいきましょう』
「そうね、エア」
返事を返し、ホーキンスのブレードを避けつつ再びミサイルとリニアライフルでスタッガーさせる。パルスアーマーの展開をアサルトアーマーで相殺しつつ、その嘴を振り抜いた。
「嫌いじゃ無いけれど、死んで」
『ぐあっ………!?』
『ホーキンス隊長ッ!』
削り切れなかったのが分かったのですかさず2連グレネードを撃ち込む。命中とともに、ホーキンスの通信が響いた。
『いいねえ、君………ラスティ君が入れ込むだけの、ことはある………』
「………最期まで命乞いじゃないなんて、素敵ね」
それだけ言って621はペイターとフラットウェルに身体を向けた。ペイター相手にまだ生き残っているとは、フラットウェルも中々やるようである。
「お飾りじゃ無いのっていいわね、士気が上がるわ」
『褒めているつもりか?』
「ホーキンスと同枠って言ってるんだから褒めてるわよ、ちょっと話して殺しただけの関係だけど」
『貶しているのかもわからんな』
どういう意味かは分からないが、まあ悪くはない評価のようであるとフラットウェルは結論づけた。そのまま2人でペイターを追い詰めると、ペイターは声を震わせてホーキンスを惜しんでいる。
『馬鹿な………第5隊長殿………そんな………!』
「あら、悲しめるタイプなの?いい事ね」
『第5隊長ペイター………うう………悪くない響きだ………!』
「………うん?」
理解し難い発言に、621は宇宙を背負った。
なおもペイターは泣いているのに嬉しげに話し始める。
『ホーキンスさんが空けてくれた番号………身が引き締まる思いだ』
「さっき隊長って呼んでたのに」
『これを足がかりに、もっと上を目指さなければ………!』
「聞いてる?」
『ヴェスパー第5隊長ペイター………やはり悪くない響きです………ありがとう………ホーキンス………』
「おかしい人ね?」
自分のことなどそっちのけで621はそう言った。お前が言うなとフラットウェルは言いたい気分だったが抑え、少し引く。
『ここまでか』
「こんな人と2人きりは嫌ね」
嘴が刺さるがターミナルアーマーが発動し、ペイターがリペアキットを使う。フラットウェルが撤退したのを見ながら、621はため息を着いてペイターを追うのだった。
「イグアスより分からない人、初めて見たわね」
『レイヴン、彼のことは理解しなくて良いのですよ』
呆れたようなエアの声をBGMに、621はまたペイターに向けてパイルバンカーを振るうのだった。
『V.Ⅲオキーフは深度3、レイヴンが解放戦線の依頼によってV.ⅤホーキンスとV.Ⅷペイターへの強襲を行っている間に未踏領域深部へと向かうようです』
「………ミシガンは」
『既に墜ちているようですね』
あの機体構成なら短期決戦も当然か。持久戦に持ち込まれてしまえばミシガンに圧倒的に有利になる。
オールマインドの評価通りだったことに舌打ちをしつつ、慣れたMELANDER C3のフレームを装備したまま降下していく。
第1MT部隊もきっちり全員殺していったらしい。50機以上の残骸がそこに打ち捨てられていた。そこに墓標のように沈む、獅子の残骸に目をやった。
「狼に蹴っ躓くたァ、アンタも耄碌したか」
それを横目に、深度2へと進んでいく。ヴェスパー部隊の残骸も墜ちていたが、見ただけでは誰なのかは分からなかった。
『深度3までもうすぐです』
「V.Ⅲは」
『貴方の後を追う形で深度2を進んでいます』
「バレてんな」
『そんなはずは───』
直感がそう言った。しかし慌てる必要はない。深度3、用途の分からない巨大な構造物の見える空間に到達し、身を隠す。
『なぜそう思ったのですか、G5 イグアス』
「勘」
しばらく待っていると、ホバリングする四脚ACの姿が見えた。
V.Ⅲだ、と察する。機体を少し動かし、リニアライフルをチャージしながら近づいた。
『お前は………なるほど。いよいよ豪華な人選だ』
「チッ」
気づかれた。チャージショットは外れて橋のような構造物に着弾し、少しだけ鉄骨を崩壊させる。
「避けてんじゃねえ、殺せねえだろ」
『………オールマインドと関わるのはやめておけ、ロクなことにならない………。お前は第四世代型だったな』
「だったら何だ」
『私は第二世代型だった』
オールマインドの目的のことを指しているのだろう。旧型だったとわざわざ言ったのなら、これは忠告だとでも言いたいんだろう。
「関係ねえ、てめえさえ死ねばいい」
『………お前も旧世代型ならわかるだろう』
バーストライフルが掠めていった。その隙にブレードを入れてやれば、リペアキットを使ったのが見える。
『止むことのない耳鳴り、頭痛………苛まれる劣等感や、同じ人間とは思えない苦しみが』
「………」
『アイツはそこにつけ込んでくる、概ね“選ばれている”だとか、“特別な存在だ”と言って………事実そうだ、リリース計画には旧世代型が必要だ』
どうやらオールマインドはこいつにも逃げられたせいで、自分を選んだらしい。舌打ちが漏れた。苛立ちがリニアライフルに現れて、荒々しくもオキーフの機体に突き刺さる。
「はっ………どうせそんなこったろうと思ったぜ、てめえにも野良犬にも噛まれたんで俺を選んだってな」
『………分かっているなら何故やめない』
オキーフに向けてブレードを振ったが、逃げられプラズマライフルを当てられる。
警告音に舌打ちしながらリペアキットを使った。
「レイヴンを殺すためだ」
『………なるほど、それは理屈では動かせない。惚れた女のためか』
「どいつもこいつも………」
これが恋だとか愛ならこの世の全員、頭がお花畑だ。これを思うのも2回目だ、と思いながらリニアライフルとオービットで確実に削っていく。
『味気のないレーションを食い、泥水のようなフィーカを啜る………うんざりするが、それが人間だ』
「急に詩人になってんじゃねえ、何が言いてえ」
オキーフは少しため息をついて言った。
『………リリース計画はそういったものを全て壊すということだ。お前たちには下らなくても、それを惜しむヤツはいる………私のように』
「そうかよ」
生憎自分にはもう、そういう思いを共有できるような人間は居なくなっている。
苛立ちながらもオービットとリニアライフルでオキーフを壁際に追い詰めるが、パルスアーマーが見えた。瞬間、チャージの終わった肩口のプラズマライフルに撃たれてしまう。
「チッ………!」
『実にわかりやすい男だ。なぜ踏み外したかもわかりやすい』
「黙れ………!」
『死神のような鴉に惚れてしまうとは………お前もまたあの男のように空ばかり見ている』
「キザ野郎と一緒にするんじゃねえ!」
カラスを見上げる男など、自分以外にはあの気に食わない狼しか居ない。
苛立ちのあまり声を荒らげて蹴り飛ばしたが、重量の差であまり距離は開かなかった。
「さっさと死ね………!てめえに手こずってる場合じゃねえんだよ………!」
『それは………困るな』
「何も変わりゃしねえのを望むてめえと、俺は違う」
リニアライフルを放ち、オービットによって追い立てる。そこにミサイルを撃ち込んで、スタッガーしたオキーフにブレードを振って迫った。
「俺はあの女を殺す」
『………』
「邪魔だ。そんなに下らねえことが大事なら、俺の前に立ってんじゃねえ」
ブレードを振り抜き、オキーフの機体を袈裟斬りにした。そのままゆっくりと花が散るようにオキーフの機体は壁際を伝ってバラバラになっていく。
『ようやく………まともに眠れるか………』
「………チッ、下らねえ」
微かな頭痛と耳鳴りを訴える頭を押さえつつ、橋のような構造物の上に上がる。一息つけば、オールマインドからの通信が入ってきた。
『V.Ⅲオキーフの撃破を確認しました。お疲れ様です、G5 イグアス』
「………次は」
『報酬は別途相談を。次は未踏領域に進み、その奥にある巨大構造物を目指してください。Rb23 独立傭兵レイヴンの目的地もそこにありますが………その前に、V.Ⅱスネイルの処分をお願いします』
「ああ」
暗い穴の奥に機体を沈めていく。
もう戻ることの出来ない陥穽がそこにあるかのようであった。