That's insane! 作:解毒発酵DNA
キャラ強めのオリキャラがまたいます。ちょっと原作キャラとのCPも匂います。
苦手な場合はご注意ください。
『戦友、聞こえるか』
「うん」
久しぶりの戦友の声が耳に届く。
────バートラム旧宇宙港。そこへの襲撃を、621はV.Ⅳラスティとともに行っていた。
『これで奴らの通信機器はしばらく使えない。その隙に叩いてくれ』
「了解。戦友は?」
『私はしばらくここで撹乱を』
「わかった」
HC機体やLC機体達を薙ぎ払い、パイルバンカーで串刺しにし、リニアライフルで撃ち抜いていく。
「にしてもアーキバス、相変わらず使い倒してくれるなあ」
『そうですね。貴女に回される任務や仕事は、かなり危険度の高いものが多いように思います』
「ラスティを使い潰したくないって意味なんでしょうけど………気分は良くないよね、エア?」
『レイヴン………?』
「ふふ、ちょっとくらい遊んだっていいでしょ」
そう言って621は近くにあった機体に飛びつき、パイルバンカーを撃ちこんだ。
「この武装使えるか気になってたの」
『追い剥ぎのようですね』
「追い剥ぎよ?」
その621の声に、ラスティの苦言が呈された。
『戦友、今は………あまり光り物を集めるのは良くないぞ』
「聞こえてたんだ」
『わざわざ聞くつもりではなかったが、気になってね。幻聴が聞こえているのか』
「エアはそういうんじゃないよ」
『………戦友、調整はこの後受けた方がいい』
また頭がおかしいと思われてしまった。
やはり同じものが“見える”のはイグアスだけか、と思うと少し寂しいものである。
「じゃあまた後で。楽しくなるね」
『………ああ』
なにか言いたげであったが、ラスティとの通信が切れた。
「皆聞こえないの、寂しいね?」
『そう………ですね。ですがレイヴン、貴女以外に私の声が聞こえてしまったら、貴女はその方を………』
「殺すでしょうね、イグアス以外」
『そうでしょうね………』
呆れた声であった。
追い剥ぎを終えた621は、武装がくっつかないか握ったりなんだりして試していた。
しかし使えないとわかると、1度パージしたパイルバンカーをまた装着した。
「つまらない………」
『進みましょう』
「うん」
そういいながら621は強襲艦を破壊していく。
つまらないな、と口にはしないが、あっさりと落とせてしまい、やはり手持ち無沙汰になってしまう。
「暇ね」
そういった途端、ラスティからの通信が入った。
『戦友、思ったより奴らの復旧が早い』
「もう手持ち無沙汰になっちゃった、おかわりが欲しかったところ」
『………流石だ、ただ油断はしないでくれ』
「ええ」
そう返事をしてラスティとの会話が止まる。そこにウォルターの声が響いた。
『………仕方ない、621、補給をしておけ』
「了解」
影から出てきたLC機体を撃ち抜きつつ、補給シェルパの到着を待つ。そういえば、と思い、621は口にした。
「ラスティのレーザースライサー、まだ買えないかな」
『もう少し君がアーキバス系列の依頼をこなせば買えるようになる』
「あ、ごめんね、聞こえちゃったの」
『いいんだ、確かにこれは使い心地がいい。君にも是非試して欲しいところだ』
「ありがとう。ベイラムのでなければパイルバンカーを勧めてたところ」
『ふふ、君は本当にベイラムの設計思想が好きだな』
「ごめんなさいね、荒っぽくて」
『君はそれでいいとも』
軽口を叩きながら、来た補給シェルパで弾薬を補充した。そのまま警告音が鳴ったので、クイックブーストを反射的に吹かす。
「上?」
『そのようです。狙われています』
面倒な、と思いつつ飛び上がる。
向こうの方が対空性能が高いので、上がるのすら少し手間だ。
しかし到達すればどうということはない。すぐに殲滅を終えたあと、封鎖機構の強襲艦の駆動音と警告音声が響いてきた。
「またおかわりね」
『はい』
「ふふ」
非常に嬉しそうな621の右肩には、メリニット謹製高火力、超重量のグレネードキャノン『EARSHOT』が乗っかっている。
「使いたかったの!飛んでるやつに!」
『楽しそうですね、レイヴン』
その爆発音は向かってきていたラスティにも聞こえていたという。さすが、『EARSHOT(耳鳴り)』である、と言ったところか。
残った強襲艦を落とし621が佇んでいると、広域に通信が聞こえてくる。
『コード15、現着』
「………エクドロモイ?」
『いや………あれは違う、上位尉官の特務機体だ』
ラスティの声も聞こえてきた。
構えると、何やら白くて見た事のない機体が2機降りてきたのがわかる。
同時に横に、戦友たる男が降り立った。
「久しぶりね、戦友」
『ああ、久しぶりだな戦友。………さて、協働といこう。助け合っていこうじゃないか』
「ええ、よろしく」
あの男なら悪態をつきながら『手ェ貸せ』とか言うんだろうなあ、と思いつつ、621は神経接続があれば必要ないが────操縦桿を握った。
「楽しみね」
『………ああ』
ラスティの返答を聞き、高機動型と思わしき機体へ突っ込んで行く。鈍重そうな方はラスティに任せた方がいいだろう、という判断だ。
案の定というべきか遠距離手段が豊富だが、そんなものは近づいてしまえばいい。自分はスタッガーさえさせてしまえばいいので。
「それに後隙も大きいし」
グレネードを撃ちこんで爆砕しつつラスティの方へ向かう。足を止めた隙にリニアライフルを打ち込めば、スタッガーしたのでそこにスライサーが入る。
グレネードをもう1発、と思ったが、ラスティの一撃で吹き飛んだ機体は爆発してしまった。
「つまんないなあ」
『君は………いや、彼らは君のお眼鏡にはかなわなかったか』
「うん。戦友との方がよっぽど楽しそう」
『私は君と戦えて嬉しかったが』
「嬉しくないなんて言ってないよ、ただせっかく戦友と一緒なのに、ヤツら全然面白くなかったから」
むくれていると、ラスティから少し迷うような息の音と共に、思わぬ言葉が飛び出した。
『君は壊すのが好きか』
「………うーん、そうだと思ってる、よ?」
『それは何のために?』
「………戦友、怒ってる?」
『いや、単純な疑問………だったんだが、そう聞こえたかな。すまない』
軽く笑ったラスティの真意は分からない。
しかし、やはりあまりいい返答では無かったかな、と思った。
「うーん………私ね、好きな人がいるの」
『………ほう?』
「でもね、周りが居ると、こう、邪魔なの。だから全部取ってしまいたいの、彼から、何もかも取って、私だけ見てほしいの」
『熱烈だな。相手も大変そうだが』
「絶対悪態つきながら来てくれる気がするの、いいでしょ?」
『そうだな………私から特に言えることは無いのだが、君はたしかに、目的は一貫しているな』
「ふふ………あんまり上手く言えないけどね。ちゃんと返答になったかな」
『………ああ、君のことがよくわかったよ』
やはり上手く言えなかったか。
少し離れたラスティを目で追っていると、エアの声が響く。
『レイヴン、何かが高速で近づいてきます』
「………?」
『進行方向にマーカーをつけます』
「ありがと。なんだろ、ちょっと高台登ろっか」
『なにかあったか、戦友』
「高速で近づいてくる何かがいるみたい。高台に乗ったら見れるかなって」
『………なに?』
「戦友もおいでよ」
『ああ』
そう言ってラスティと共に少し高くなっている崖上に登った。
たしかに氷と土煙を巻き上げながら、何かが近づいてくる振動が響く。
「なあに、あれ………」
『封鎖機構の兵器だろうか………まだ遠いな』
「ね〜………あ、近い」
徐々に近くなった振動は、轟音とともに宇宙港の地面を破壊し飛び出してきた。
なんとなく、虫だ、と思った。
虫なんてあんまり見た事のない生き物だが、とにかく、そういう意識が前に出た。
それだけうっすらではあるが───『意志』があるような気がする。
『有人ではありえないコーラル濃度です!』
「コーラル兵器ってこと?」
『コーラル兵器?なるほど、技研の遺産か』
つい口に出したそれをラスティが拾った。
そのまま彼は崖下のそれに向かっていく。
「戦友、戦うの?」
『試しにな………だがダメだな、側面は攻撃が通らない』
「顔面を狙う………にしてもよく動くね、無理か」
『やってみようか』
「いいね」
そうして621も降下する。
しかし────
「あっ無理コレ、戦友、やめましょ、これダメだよ」
『諦めが早いな』
その声に返答しようとした瞬間、その兵器の粉砕機のような顔面が迫ってきた。
「わっ!?」
『戦友ッ!?』
ギリギリを掠めただけなのにAPが半分以上持っていかれた。死線をくぐるのは好きだが化け物に追われて殺されるのは好きじゃない。
慌てて翼をはためかせる鴉を食い殺さんと、それが鎌首をもたげた時だった。
『………?なにか………もっと上位の、命令………?』
「え、なあに、エア」
動きが止まった。
そしてそれはなにかに向かって、また轟音を立てながらうねる巨体を揺らして宇宙港を離れていったのだった。
「………なんだったの?」
『おそらく………封鎖機構が起動させたんだろうな』
「なんか通信してたわねそういえば」
『私はこれを報告しに帰ろう。戦友、君もハンドラーの元に一旦帰った方がいい』
「そうね。また会いましょ、戦友」
『………ああ。また会おう』
そんなふうに言って、ラスティは飛び立っていった。621も大人しく、ウォルターの迎えを待ったのだった。
調整を受けたあと部屋に戻れば、ウォルターがやってきた。いつも通りの雰囲気だ。
「ウォルター?」
「621、俺はあれを倒すための算段をつけてくる」
「うん」
「それまで待て」
「はあい」
そう言って頭を撫でられた。嬉しい!という感情と、もっとして欲しい、という暖かい欲求の中に、どうしても、『この人は私が壊そうとした時、どういうふうに怒ってくれるだろう』という思考が入ってくる。
嬉しいはずなのになあ。
そう思いながら受け入れていると、ウォルターの手が離れてしまった。
そのまま立ち去っていく背中を見ながら、621はやることがなかったので、仕方なく歩行器で歩きまわるのだった。
「耳の方はどうですか」
目の前の女がそう言った。
耳鳴りがする、というイグアスの訴えは、主治医である医務官に訴えても何一つ変わらない。
ついにメンタル面での話とされた自分の不調は、この心療内科医である、レナという名の医務官に託されたのだった。
「変わらねえ」
「そうですか………失礼、触れますよ」
あまりこの女には会いたくない。
自分を見透かされる感覚と、過去の後ろめたさと後悔が同時に襲ってくるからだ。
女は暫く触れたり目を見たりしていたが、ゆっくり口を開いた。
「………特に健康状態に異常は無さそうですね、血液検査のデータも悪くありませんでした。………メンタル不調というようにも思えませんね」
「チッ………」
「耳鳴りはどういう時に」
女の耳に、見覚えのあるピアスが見える。
それから目を逸らしつつ、答えた。
「いつもだよ………ここに来てから酷くなりやがった………」
「コーラル濃度のせいでしょうか」
「俺が知るか」
それに特に何も噛み付くことなどせず、女は返す。
「頭痛薬と鎮静剤はお渡ししておきます。ただ、効かないものと思った方がよいかもしれませんね」
「………ああ」
「原因が分かりません。あるとすれば、おそらく」
女の猫のような目が、射抜くようにこちらを見ている。
「貴方の脳内コーラル、など。どうでしょう」
「………、」
「強化人間C4-621………G13 レイヴンの番号ですが、彼女もまた謎の幻聴を聞いているようです。手術型式が同じものですから、彼女が幻聴として認識しているものを、あなたが『耳鳴り』として聞いている可能性があります」
レイヴンの幻聴の話は、アイツが残していく通信内容やレッドからの報告により、レッドガンの一定の人間は知っている。
レナもまたそういう人間のうちの1人だろう。しかし、それだけでこうも推測されるものとは思っていなかった。
「なん………いや………、」
「なにか、レイヴンから聞かされましたね」
その言葉に、顔に動揺を浮かべないよう努めたというのに女は言った。
「驚いていますね。………ネルソン班長のACを借りて、何をしに行ったのですか、G5」
「………テメエ………」
「勘違いしないで頂きたいのは、これは診療の一環であり、なにか総長に報告をするだとか、そういったものではないということです」
睨み合う。
女の意志の強い目に気圧され、口にした。
「………声が、聞こえるかって、そういう話をされただけだ」
「なら、仮説は正しいかもしれませんね」
女は離れた。
本当にただ、診察の為だけに聞いたようなものだったらしい。
「第四世代型の形式ですと、脳内のコーラル活性反応を抑えてしまうと人格に関わります。
第一世代から第三世代のように、直接生命危機がある訳ではありませんが………」
女は言葉を切って、それから言った。
「あなたという人間が死んでしまうのを、私は望みませんから」
「………チッ」
「余計なことを言いましたね、忘れてください」
いつもこうだ。
もっと憎んだり、怒ったりするならこっちも言いようがあるというのに、この女はいつまで経ってもそんなことは言わなかった。
「今日の診察は終わりです。お疲れ様でした」
罪悪感も、恐怖も。
どこに行っても、女のかたちをしている。
わけのわからない苛立ちとともに、薬をもらって診察室を出た。
「クソ………」
また、微かな耳鳴りを伴う頭痛が始まった。
ふらつきながら部屋に戻り、ベッドに体を投げ出した。薬は適当に放ってある。
頭を抑えながら倒れ込むと、何やらメッセージ音声の入った音がした。
当然、どうせ、ミシガンかレッドだと思って開いたそれは────自分にとっては見慣れない、しかし見覚えのあるエンブレムが表示される。
『初めまして。私は傭兵支援システム“オールマインド”』
「………!」
レイヴンの言葉が過ぎった。
『G5イグアス、貴方に頼みたいことがあるのです』
「企業所属の傭兵にわざわざ依頼か?」
『私は全ての傭兵のためにあります』
その言葉を鼻で笑い、返す。
ちょうどいい。レイヴンが気をつけろと言ったなら、コイツの話に乗るのが1番早いはずだ。
あの女がなぜそう言ったのか。
あの女は何を望んでいるのか。
その最も早い近道が、今目の前にある。
「何の用だ」
『理由は聞かないのですか?』
「当然言え」
『承知しました』
無機質な声に、喜色のような雰囲気を感じ取った。それが、どこか不気味に思いつつもその女の声に耳を傾ける。
『私は貴方を“協力者”足り得るとして選定しました。私の目的の協力者として、第四世代以前の旧型手術を受けている強化人間であることが条件でしたので』
なるほど。
レイヴンが思ったよりも面倒な女だとわかったから、こっちを利用しに来たということか。
それを鼻で笑いつつ返してやる。
「俺が大人しくテメエの言うことをお利口に聞くと思ってんのか」
『貴方には選択肢があります』
オールマインドのエンブレムが、揺れた気がした。
『私に協力するか、全て知らないまま死ぬか』
「………なんだと?」
『私はどちらでも構いません。貴方に選択を委ねます、G5 イグアス』
自分を簡単に殺せる気でいることにも腹が立つが、何より、選ばせてやるという態度が気に食わない。
舌打ちとともに返す。
「要件まで言え」
『承知しました。お願いしたいのはある場所での依頼です。アーキバスの依頼により、独立傭兵レイヴンがヨルゲン燃料基地を制圧したのはご存知ですね?』
そういえばそんな話も聞いた。
それくらいだが、だったらなんだといわんばかりの声で返す。
「………それで」
『アーキバスのコーラル輸送を阻止するため、コーラルを積んだ輸送ヘリを破壊して欲しいのです』
「何故」
『貴方が真に協力者足り得るかの選定の為です』
舌打ちを返す。ダメならその場で殺すということに他ならない。随分ナメられたもんだ、と思いつつも、利用するならそれはそれでいい。このまま食い殺してやろう。
苛立ちは抑えつつ、返した。
「いいだろう、テメエがそれまでの手配はやるんだろうな」
『はい。お任せください、私は傭兵支援システム“オールマインド”ですので』
通信が切れる。
いつの間にか耳鳴りは消えていた。
「………チッ、整備班丸め込むところからか、面倒臭え」
乱雑に立ち上がり、部屋を出た。
外には、何故か凄まじい地鳴りが響いていた。