俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
チュンチュン……と、小鳥のさえずりが聞こえる。
俺はゆっくりと目を覚ました。
知らない天井だ。
いや、知っている。月明かり亭の天井だ。
「そっか……俺、異世界にきたんだっけ」
身体を起こし大きく伸びをする。
ベッドの寝心地は悪くない。昨日の疲れもすっかり取れていた。
窓を開けると朝の光と共に、街の活気が流れ込んできた。
今日も良い天気だ。絶好の冒険日和と言えるだろう。
……冒険はあんまりしたくないけど。危険だし
「さて……行くか」
俺は顔を洗い、身支度を整えて一階へ降りた。
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「おはようございます、レンさん」
食堂に降りるとミレーヌさんが笑顔で迎えてくれた。
朝陽を浴びて栗色の髪がキラキラと輝いている。
エプロン姿のGカップが歩くたびに揺れるのが目に毒だ。
「おはようございます、ミレーヌさん」
「朝ごはんできてますよ。焼きたてのパンとミルクとオムレツです」
「ありがとうございます。美味しそうです」
出された朝食はシンプルだが温かみのあるものだった。
一口食べるとホッとする味が口いっぱいに広がる。
「美味しいです……!」
「ふふ、良かったです。たくさん食べて、力をつけてくださいね」
ミレーヌさんが俺の隣に立ち、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
ミルクを注ぎ足してくれたり、パンくずを拭いてくれたり。
(レンさん……本当に美味しそうに食べてくれる)
(若い男の子の食欲って、見てて気持ちいいわね)
(亡くなったあの人も、こうやって朝ごはんを楽しみにしてくれてたっけ……)
心の声が聞こえる。
やはり亡くなった旦那さんをまだ引きずっているのが分かる……。
「行ってきます、ミレーヌさん」
「はい、行ってらっしゃいませ。気をつけてくださいね」
ミレーヌさんに見送られ、俺は宿を出た。
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冒険者ギルドに到着した。
朝のギルドは依頼を求める冒険者たちでごった返している。
俺も早速Fランク向けの依頼ボードを確認した。
「えーと……」
【街の清掃】
報酬:銀貨2枚
内容:大通りのゴミ拾いと掃除
【下水溝の掃除】
報酬:銀貨3枚
内容:詰まりの除去(悪臭注意)
【荷物運び】
報酬:銀貨2枚
内容:商店から倉庫への運搬
……うーん。
やっぱり街の中の安全な依頼は報酬が安い。
銀貨2枚だと宿代を払ったら消えてしまう。
装備を整えたり、貯金したりするには全然足りない。
その隣に少し高めの報酬の依頼があった。
【薬草の採取】
報酬:銀貨5枚(成果報酬あり)
内容:街の近くの森で「ヒーリングハーブ」を採取する
【ホーンラビットの討伐】
報酬:銀貨6枚
内容:畑を荒らす魔物の駆除
街の外に出る依頼だ。
危険は伴うが、報酬は倍以上。
「……薬草かぁ」
俺は少し悩んだ。
正直不安はある。昨日のオークとの遭遇が脳裏をよぎる。
だが、あの時のような危機的状況になっても、俺の【鑑定】はメスの魔物には効くことが証明されている。
弱点を見抜いてなんとかできるかもしれない。
問題は薬草を見分ける知識がないことだ。
俺の【鑑定】は、あくまで「女性のエロステータス」専門。
草だの鉱石だの、そういうものには一切反応しない。
クソスキルめ。
まあ、でも図鑑か何かがあれば地道に探せばなんとかなるだろう。
「これにするか」
俺は【薬草の採取】の依頼書を手に取った。
討伐依頼は戦闘必須だが、採取なら逃げ回りながらでもできる。
俺は依頼書を持ってカウンターへ向かった。
受付には、今日もエマさんがいた。
「おはようございます、エマさん」
「あ、レンさん! おはようございます」
エマさんがパッと顔を輝かせた。
(レンさんだ! 今日も来てくれた!)
(昨日の荷物運び、ちゃんとこなしてたみたいだし、真面目な人だわ)
心の声が弾んでいる。好感度は順調に上がっているようだ。
「この依頼を受けたいんですけど」
「はい、確認しますね……えっ? 採取依頼ですか?」
エマさんが少し心配そうな顔をした。
「街の外に出る依頼ですよ? 装備もないのに……」
「あ、はい。でも、薬草採取なら戦闘は避けられるかなって」
「うーん……確かにそうですけど……森には魔物も出ますし……」
エマさんは迷っているようだ。
俺の身を案じてくれている。優しいな。
「大丈夫です。危険だと思ったらすぐに逃げますから」
「……分かりました。無理はしないでくださいね? 命が一番大事ですから」
「はい、約束します」
エマさんは少し渋りながらも、手続きをしてくれた。
「あ、すいません。図鑑かなにかありますかね?」
「図鑑ですか?でも、レンさんは鑑定があるんじゃ……」
「あー……か、鑑定があっても分からないことも多くて!図鑑があると知識の照らし合わせができるし!」
俺の車切れの言い訳に彼女は首を傾げたが、快く貸してくれた。
「鑑定でも分からないことがあるんですね……これ、持っていってください」
エマさんがカウンターの下から、小さな図鑑のようなものを取り出した。
「これに採取する薬草の特徴が載ってます」
「ありがとうございます! 助かります」
やっぱりこれが必要だよな。
俺のポンコツ【鑑定】じゃ、草の種類なんて見分けられないから。
女性のエロステータスは見抜けるけど。
「いえいえ。……本当に、気をつけてくださいね」
エマさんの心配そうな視線を背に、俺はギルドを出発した。
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街の門をくぐり、草原を歩く。
そして東の森に来た。昨日、オークと遭遇した場所の近くだ。
まずは薬草探しだ。
俺はエマさんに貸してもらった図鑑を開いた。
『ヒーリングハーブ』
特徴:葉は楕円形で、縁にギザギザがある。茎は緑で、白い小さな花が咲く。
香り:ミントに似た爽やかな香り。
生息地:森の木陰や水辺に多い。
ふむふむ。絵も載っている。これを探せばいいわけだ。
俺は地面を見回しながら、慎重に歩いた。
「えーと……これは違うな……これも違う……」
似たような草がたくさんあって、正直よく分からない。
図鑑と見比べながら一つ一つ確認していくが、効率が悪い。
あぁ、【鑑定】が普通に使えればどれだけ楽か。
なんで女性のエロステータスしか見えないんだよ。せめてアイテム鑑定くらいできないのか。
女性器の形とか分かってもしょうもない。
腐っても神様からもらったスキルなのに、この使い勝手の悪さはなんなんだ。
……文句を言っても仕方ない。
俺は黙々と探し続けた。
30分くらい経っただろうか。
ようやく、それらしい草を見つけた。
「これ……か?」
図鑑の絵と見比べる。
楕円形の葉、縁のギザギザ、白い小花。
匂いを嗅ぐと、確かにミントっぽい爽やかな香りがする。
「よし、間違いない」
俺はその草を丁寧に摘み取った。
根っこから抜くと品質が落ちるらしいので、葉と茎だけを採取する。
「一個ゲット……」
だが、これだけじゃ全然足りない。
最低でも20本は欲しい。成果報酬を狙うなら、もっと必要だ。
俺は更に奥へと進んでいった。
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1時間後。
袋の中には、なんとか10本ほどのヒーリングハーブが入っていた。
思った以上に時間がかかる。
「はぁ……疲れた……」
慣れない作業で、身体も心も消耗していた。
しゃがんだり立ったりの繰り返しで、足腰にも来ている。
……ん?
その時、地面がわずかに揺れた気がした。
ズシン……。
幻聴じゃない。確かに揺れている。
この感覚。
この重量感。
昨日も感じたやつだ。
まさか──
俺は恐る恐る振り返った。
そこの茂みの陰から、ニューッと巨大な影が現れた。
緑がかった茶色の肌。
2メートルを超える巨体。
そして、重量感のある垂れ乳。
昨日のメスオークだ。
俺は身構えた。
昨日はなんとかなったが、今日はどうだ?
また発情して襲ってくるのか?
だが──オークの様子が昨日とは違っていた。
棍棒は背中に背負っている。
手には何も持っていない。
そして、俺を見つけると、その豚鼻をフゴフゴと動かし、パァァァッと顔を輝かせたように見えた。
「レン!」
オークが嬉しそうな声を上げた。
ドスドスと駆け寄ってくる。
迫力満点すぎて怖い。
「お、おい! ストップ! ストップだ!」
俺は手で制した。
オークは俺の目の前でピタリと止まった。
「レン、来タ。待ッテタ」
「待ってた……?」
「ウン。ズット」
オークが頷く。
俺の視界に、鑑定結果が表示される。
【鑑定結果】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【基本情報】
名前:なし(命名されていない)
種族:オーク(上位種)
性別:メス
年齢:28歳(人間換算)
身長:215cm
体重:180kg
【バスト情報】
カップサイズ:Iカップ相当(人間基準)
乳房の形状:重量感のある垂れ乳
乳首の形状:大きく突出
乳首の色:暗褐色
乳首感度:B(やや敏感)
【発情・ホルモン状態】
現在の発情度:微発情(レンを見て上昇中)
性欲レベル:75/100(やや高い)
最後の性的接触:昨日(レンとの触れ合い)
【心の声】
(レン! レンガ来タ!)
(嘘ツキジャナカッタ。マタ会エタ!)
(嬉シイ……匂イ嗅ギタイ……撫デテホシイ……)
(昨日、首撫デラレタノ……忘レラレナイ……)
【現在の状態】
友好度:MAX(レンを主として完全に認識)
忠誠度:絶対服従
状態:一晩中、森の入り口付近でレンを待っていた
空腹度:高い(レンを待つことを優先した)
【攻略ヒント】
既に完全に懐いており、攻略済み状態。
主として絶対的な信頼を寄せている。
何かを頼めば喜んで応じる。
名前を付けると更に忠誠度が上がる。
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……まじか。
友好度MAX。忠誠度、絶対服従。
しかも、一晩中待ってた?
お腹も空いてるのに、俺を待つことを優先した?
なんだこの忠犬っぷり。
いや、忠オーク?
「お前……ずっと待ってたのか?」
「ウン。レン、戻ルッテ言ッタ。ダカラ、待ッテタ」
オークは当然のように言った。
純粋な瞳を見ていると、なんだか巨大な犬に見えてきた。
凶悪な魔物のはずなのに可愛げすら感じてしまう。
「そうか……ごめんな。待たせて」
「イイ。会エタカラ」
オークがニコーッと笑った。牙がすごいけど。
さて、どうしようか。
再会したのはいいが、俺は仕事中だ。
「俺、今仕事中でさ。薬草を探してるんだ」
「ヤクソウ?」
「ああ。こういう草だ」
俺はさっき採ったヒーリングハーブと、図鑑を見せた。
「コレ、探ス?」
「そうそう。こういう草が欲しいんだけど、なかなか見つからなくて……」
「分カッタ。ワタシ、探ス」
オークが鼻をフゴフゴと動かした。
そして、茂みの方へズカズカと入っていく。
「え、ちょっ……」
数分後。
オークは両手いっぱいの草を抱えて戻ってきた。
「コレ。同ジ匂イ」
見ると──確かに、俺が採っていたヒーリングハーブと同じ草だった。
図鑑と見比べても間違いない。
「す、すげぇ……!」
俺が1時間かけて10本だったのに、こいつは数分で20本以上。
しかも、よく見ると葉が大きくて立派なものばかりだ。品質が良さそう。
「嗅覚で分かるのか……」
「草ノ匂イ、覚エタ。同ジ匂イ、他ニモ、タクサンアル」
オークの鼻……めちゃくちゃ便利じゃないか?
そのうちトリュフとかも探してくれるかもしれない。
この世界にトリュフがあればだが。
「助かるよ。ありがとう」
「レン、喜ブ。ワタシ、嬉シイ」
俺が礼を言うと、オークは身体をクネクネさせて喜んだ。
……これ、もしかして最高のパートナーなんじゃないか?
戦闘力はあるし、力持ちだし、鼻も利く。
街に入れないのが難点だが、外での採取活動なら無敵だ。
俺はふと思いついた。
「なあ……お前に名前、付けてもいいか?」
「名前?」
「ああ。ずっと『お前』じゃ呼びにくいし」
「レン、名前、クレル?」
オークが目を丸くした。
「イイノ? ワタシ、名前モラッテ」
「もちろん。……そうだな」
俺は少し考えた。
うーん、安直だけど……
「『ベル』はどうだ? 響きが可愛いし」
「ベル……」
オークが繰り返す。
「ベル……ベル……」
気に入ったようだ。
その巨大な顔が、みるみる歓喜に染まっていく。
「ワタシ、ベル! レン、ツケテクレタ! ベル!」
ベルはドシンドシンと飛び跳ねて喜んだ。
地面が揺れる。やめてくれ、地震になる。
「ベル、落ち着け!」
そう言うと落ち着いた。
だが、尻尾は千切れんばかりに振っている。
俺はため息をつきつつも、思わず笑ってしまった。
鑑定結果を確認すると──
【名前:ベル】(更新)
【友好度:MAXを超えて上昇中】
【心の声】
(ベル! ワタシ、ベル!)
(レンニ名前モラッタ! 最高!)
(モット役ニ立チタイ! レンノタメニ!)
……完全に忠豚だこれ。
「よし、ベル。もうちょっと薬草探すの手伝ってくれるか?」
「モチロン! ベル、頑張ル!」
ベルは嬉しそうに鼻を鳴らすと、再び森の中へと走っていった。
さて、この強力な助っ人と共に、採取を続けよう。
これなら、予想以上に稼げるかもしれない。
────────────────────────────────────────
1時間後。
俺の袋は、パンパンに膨れ上がっていた。
中身は全てヒーリングハーブ。数にして、軽く50本は超えている。
しかも、ベルはヒーリングハーブ以外にも、色々な草を持ってきてくれた。
「コレ、違ウ匂イ。デモ、良イ匂イ」
「えーと……これは……」
図鑑を確認する。
『マナハーブ』
特徴:青みがかった葉。ラベンダーに似た香り。
用途:魔力回復薬の原料。
おお、これも価値がある薬草だ。
依頼にはなかったが、採取すれば追加報酬がもらえるかもしれない。
「ベル、これもいいよ。採ってきてくれ」
「分カッタ!」
ベルはまたドシドシと森の奥へ消えていった。
俺は木陰に座り、しばし休憩することにした。
……いやぁ、ベルの存在がチートすぎる。
俺一人じゃ一日かかっても無理だった量が、あっという間に集まった。
しかも、品質も良い。
これ、毎日ベルに手伝ってもらえば採取依頼だけで結構稼げるんじゃないか?
戦闘しなくていいし安全だし。
問題はベルを街に連れて行けないことくらいか。
でも街の外で待っててもらえばいい。
そうすれば採取→街に戻って売却→また採取……というサイクルが成り立つ。
そんなことを考えていると、ベルが戻ってきた。
両手いっぱいのマナハーブを抱えている。
「持ッテキタ!」
「ありがとう、ベル。これで十分だ」
俺は立ち上がり、荷物をまとめた。
袋は重いが、達成感がある。
「さて、街に戻るか」
「ベル、ツイテク」
「え? いや、街には……」
「分カッテル。街ノ近クマデ」
ベルが頷いた。
どうやら、昨日と同じように、街の手前まで護衛してくれるつもりらしい。
「ありがとう。心強いよ」
「レン、喜ブ。ベル、嬉シイ」
ベルがまた身体をクネクネさせた。
俺たちは並んで森を歩き始めた。
ベルが前を歩き周囲を警戒してくれている。
おかげで、行きよりもずっと安心して歩ける。
途中、小さな魔物……ゴブリンっぽいのが現れたが、ベルがギロリと睨んだだけで逃げていった。
すげぇ。威嚇だけで追い払える。
やがて森の出口が見えてきた。
向こうに広がる草原と、遠くに見える街の城壁。
「ベル、ここまででいい。あとは一人で行ける」
「レン。マタ、来ル……?」
「ああ、来るよ。明日も来る」
「ホント?」
「本当だ。約束する」
俺がそう言うと、ベルの顔が輝いた。
「ワカッタ! 待ッテル! 明日モ、待ッテル!」
「ああ。また明日な、ベル」
俺は手を振り、草原を歩き出した。
ベルは森の入り口で俺が見えなくなるまでずっと見送っていた。
振り返るたびに、大きな手をブンブンと振っている。
なんか巨大な犬を置いてきた気分だ。
だが、悪い気分ではなかった。
異世界で頼れる仲間ができた。
たとえそれがオークであっても心強いことに変わりはない。
俺は足取り軽く、街へと戻った。