俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
翌朝。
チュンチュン……と、小鳥のさえずりで目が覚めた。
俺はベッドから身体を起こし、窓を開けた。
朝の光が部屋に差し込む。良い天気だ。
「さて、今日も頑張るか」
昨日の報酬で装備を整えたし、今日からは本格的に冒険者として活動できる。
まぁ戦うのはベルだけど……うん……。
革の胸当てを身につけ短剣を腰に差す。
鏡を見るとすっかり冒険者らしい姿になっていた。
よし、行こう。
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階下へ降りると、ミレーヌさんが朝食の準備をしていた。
「おはようございます、レンさん」
「おはようございます、ミレーヌさん」
彼女はいつものエプロン姿。
だが、俺の目にはどうしても昨夜の鑑定結果がちらついてしまう。
──「レンくん……レンくん……♡」
脳内で再生される幻聴。
やめてくれ。朝から変な気持ちになる。
「今日も装備、かっこいいですね」
「あ、ありがとうございます」
ミレーヌさんが微笑む。
(レンさん、本当に冒険者らしくなって……)
(かっこいい……なんだか胸がドキドキしちゃう……)
心の声が聞こえる。
好感度は順調に上がっているようだ。
「今日も森に行くんですか?」
「いえ、今日はギルドで別の依頼を受けようかと」
「そうなんですね。気をつけてくださいね」
「はい。行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
ミレーヌさんに見送られ、俺は宿を出た。
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冒険者ギルドに到着すると、朝から賑わっていた。
俺は依頼ボードの前に立ち、今日の仕事を探した。
【薬草の採取】
報酬:銀貨5枚(成果報酬あり)
昨日と同じ依頼だ。
ベルと組めば、また大量に稼げるだろう。
だが──
【ゴブリンの討伐】
報酬:銀貨8枚
内容:森の北部に出没するゴブリンの群れを討伐せよ
ランク制限:F~E
こちらの方が報酬が高い。
ゴブリンか。
俺は少し考えた。
昨日までなら絶対に受けなかっただろう。
装備もないし、戦闘経験もない。ゴブリン相手でも危険だ。
だが──今は違う。
ベルが俺と共に戦ってくれるだろう。
あの怪力が俺の味方だ。
しかも絶対服従の忠誠心を持って。
(ベルに倒してもらえば、楽勝なんじゃないか?)
男として情けない……ような気もするが、しょうがない。頼れるベルがいるなら、頼りたいのだ。
ヒモとか言うなよ。
俺は【ゴブリンの討伐】の依頼書を手に取った。
エマさんのカウンターへ向かう。
「おはようございます、レンさん……あ、今日は装備を!」
エマさんが目を輝かせた。
(わぁ、レンさんかっこいい……!)
(装備を整えてきたんだ……真面目だなぁ……)
心の声が好意的だ。
「おはようございます。この依頼を受けたいんですけど」
「はい、確認しますね……えっ? ゴブリン討伐ですか!?」
エマさんが驚いた顔をした。
「レンさん、大丈夫ですか? これ、戦闘がメインですよ?」
「はい、大丈夫です」
「でも……ゴブリンは群れで襲ってきますし……」
エマさんが心配そうに眉をひそめる。
(レンさん、昨日薬草採取で成功したから、調子に乗ってない……?)
(ゴブリンは危険なのに……心配……)
心の声が俺を心配している。
ありがたいことだ。
「装備も整えましたし、自信があります」
「……分かりました。でも、本当に気をつけてくださいね。無理だと思ったらすぐに逃げてください」
「はい、約束します」
エマさんが渋々ながらも手続きをしてくれた。
「あ、そうだ。これ、持っていってください」
彼女がカウンターから何かを取り出した。
小さな笛だ。
「これは緊急用の笛です。もし危険な状況になったら、これを吹いてください。近くにいる冒険者が助けに来てくれるかもしれません」
「ありがとうございます」
俺は笛を受け取った。
エマさん、本当に優しいな。
「それと……あの……」
「はい?」
「お、お仕事が終わったら……その……報告に来てくださいね! ちゃんと無事に戻ってきたか確認したいので……!」
エマさんが顔を赤らめた。
(レンさんが心配……無事に帰ってきてほしい……)
(ああ、なんでこんなに心配しちゃうんだろう……)
心の声が完全に俺を気にかけている。
「分かりました。必ず報告に来ます」
「は、はい! お待ちしてます!」
エマさんの笑顔を背に、俺はギルドを出た。
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街の門を抜け、草原を歩く。
目指すは森の入り口。
ベルが待っているはずだ。
しばらく歩くと、見覚えのある巨大な影が見えた。
「レン!」
ベルが嬉しそうに駆け寄ってきた。
地面が揺れる。相変わらずの迫力だ。
「おはよう、ベル」
「オハヨウ! レン、来タ! ベル、嬉シイ!」
ベルが尻尾を振っている。豚の尻尾だ。
完全に巨大犬だ。いや、……巨大豚?
「今日も一緒に頼むよ」
「ベル、頑張ル!」
俺はベルに今日の依頼内容を説明した。
「今日はゴブリンを倒す依頼なんだ。森の北部にゴブリンの群れがいるらしい」
「ゴブリン?」
「ああ。小さくて緑色の魔物だ。弱いけど、群れで襲ってくるから危険らしい。……ベル倒せるか?」
「ゴブリン、知ッテル。弱イ。ベル、倒セル」
ベルが自信満々に言った。
やっぱりな。
ベルにとっては楽勝なんだろう。
「じゃあ、頼むよ。でも──」
俺はベルの目を見た。
「襲ってくるゴブリンは倒していい。でも、戦う気がないゴブリンは倒さないでくれ」
「……? ナゼ?」
ベルが首を傾げた。
「可哀想だから」
「可哀想?」
「ああ。俺たちが襲われたら、正当防衛で倒すのは仕方ない。でも、向こうが逃げたり、降伏したりしたら、それ以上追いかけないでほしいんだ」
ベルはしばらく考え込んでいたが、やがて頷いた。
「分カッタ。ヨクワカラナイケド……ベル、レンノ言ウ通リニスル」
「ありがとう、ベル」
俺はベルの頭を撫でた。
ベルが嬉しそうに目を細める。
(レン、撫デテクレタ……嬉シイ……)
(レン、優シイ……ベル、モット役ニ立チタイ……)
心の声が聞こえる。
よし、それじゃあ行くか。
「森の北部へ向かおう」
「ウン!」
俺たちは森の奥へと進んでいった。
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森の北部。
依頼書によれば、ここにゴブリンの群れが出没するらしい。
俺は周囲を警戒しながら歩いた。
ベルが前を歩き、俺を守るように進んでいる。
「……ベル、何か分かるか?」
「ウン。匂イ、スル。ゴブリン、近イ」
ベルが鼻をフゴフゴと動かした。
さすが嗅覚が鋭い。
「どの方向だ?」
「アッチ」
ベルが右手の茂みを指差した。
俺はその方向を注視した。
すると──
ガサガサッ!
茂みから、小さな影が飛び出してきた。
緑色の肌。
醜い顔。
粗末な棍棒を握っている。
ゴブリンだ。
しかも一匹じゃない。
次々と現れる。
10匹……15匹……20匹以上いる。
「ギィィィ!」
「ギャハハハ!」
ゴブリンたちが俺たちを取り囲んだ。
完全に包囲されている。
まずい──
そう思った瞬間。
「レン、下ガッテ」
ベルの低い声が響いた。
俺は反射的にしゃがんだ。
その直後──
ドゴォッ!!!
ベルの棍棒が、横薙ぎに振り抜かれた。
一撃。
それだけで、5匹のゴブリンが吹き飛んだ。
「ギャアアアアッ!!」
悲鳴を上げながら、木に激突するゴブリンたち。
そのまま動かなくなった。
……つ、強い。
ベルの戦闘力、半端ねぇ。
「ギ、ギィィ!?」
残りのゴブリンたちが動揺している。
だが、数の優位を信じているのか、再び襲いかかってきた。
「ギャハハ!」
「ギィィ!」
ベルは動じなかった。
むしろ、楽しそうですらある。
「ベル、負ケナイ!」
ベルが再び棍棒を振るう。
草を刈るかのように、ゴブリンたちを次々と薙ぎ払っていく。
俺は呆然とその光景を見ていた。
楽勝、どころの話じゃない。完全に一方的な虐殺だ。
数分後。
地面には、20匹以上のゴブリンの死体が転がっていた。
「……ベル、すごいな」
「エヘヘ。ベル、強イ。レン、褒メテクレタ」
ベルが嬉しそうに尻尾を振った。
その時──
ガサッ。
茂みの奥から、また何かの気配がした。
俺とベルが身構える。
だが──
現れたのは、小さなゴブリンだった。
他のゴブリンより一回り小さい。
子供……?
ゴブリンは地面に転がる仲間たちの死体を見て、震えていた。
「ギ……ギィ……」
怯えている。
戦う気は、まったくない。
ベルが棍棒を構えた。
「待って、ベル」
俺はベルを止めた。
「アイツ、倒サナイ?」
「ああ。襲ってこないなら、倒す必要はない」
「分カッタ。レンノ言ウ通リニスル」
小さなゴブリンは、俺たちを見て、ブルブルと震えていた。
そして──
「ギィ……ギィィ……!」
泣きながら、森の奥へと逃げていった。
その背中を俺たちは見送った。
──これは多分偽善だ。
群れを倒してしまったから、あのゴブリンが生き残れる可能性は低いだろう。
でも、俺は無駄に命を奪いたくないんだ。
それが例え魔物だとしても……。
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討伐完了。
俺は地面に転がるゴブリンの死体を確認した。
全部で23匹。
依頼は「群れを討伐せよ」だったから、これで達成だろう。
「ベル、ありがとう。助かったよ」
「エヘヘ。ベル、役ニ立テタ?」
「ああ、すごく役に立った」
俺はベルの頭を撫でた。
ベルが嬉しそうに目を細める。
さて、討伐の証拠を持ち帰らないといけない。
ギルドでは、ゴブリンの討伐証明として「耳」を提出することになっている。
依頼を受けた時に説明されていた。
「……ちょっと気持ち悪いけど、しょうがないか」
俺は短剣を抜き、ゴブリンの死体に近づいた。
グロテスクな作業だが、これも冒険者の仕事の一部だ。
一匹ずつ、耳を切り取っていく。
「レン、手伝ウ?」
「いや、これは俺がやる。ベルは休んでてくれ」
「分カッタ」
ベルが近くの木陰に座った。
俺は黙々と作業を続けた。
正直、気持ちのいい作業じゃない。
だが、これが俺の稼ぎになるんだ。
しばらくして、23対の耳を袋に詰め終えた。
「よし、これで完了だ」
俺はベルのところへ戻った。
「ベル、今日は本当にありがとう。お前のおかげで楽に終わった」
「ベル、嬉シイ。レン、ノ役ニ立テタ」
「ああ。……で、お前、ご飯はちゃんと食べてるか?」
昨日の鑑定結果では、ベルは空腹度が高かった。
俺を待つことを優先して、食事を疎かにしていたのだ。
「ウン……食ベテル……」
ベルが少し目を逸らした。
嘘だな、こいつ。
「ベル。ちゃんと食べてくれ。俺のために無理しなくていいから」
「デモ……レン、待ッテタイ……」
「待ってくれるのは嬉しいけど、お前が倒れたら俺が困る。ちゃんと食べて、休んで、元気でいてくれ」
「レン……ベルノ心配、シテクレル……?」
「当たり前だ。お前は大事な仲間だからな」
俺がそう言うと、ベルの目がウルウルと潤んだ。
(レン……仲間ッテ言ッテクレタ……)
(嬉シイ……スゴク嬉シイ……)
(ベル、絶対レンノコト守ル……)
心の声が聞こえる。
「分カッタ。ベル、チャント食ベル。レンノ言ウ通リニスル」
「よし。じゃあ、今日はここで別れよう。また明日来るから」
「ウン! マタ明日!」
ベルが嬉しそうに手を振った。
……明日、何か食べ物でも持ってきてやろうかな。
普通の弁当じゃベルには足りないか。
肉の塊とか、そういうのがいいんだろうな。
考えながら、俺は街へと向かった。