※この作品はR-18です。

俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~   作:フレキシブルコーギー

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14.ゴブリン、知ッテル。弱イ。ベル、倒セル

 翌朝。

 

 チュンチュン……と、小鳥のさえずりで目が覚めた。

 

 俺はベッドから身体を起こし、窓を開けた。

 朝の光が部屋に差し込む。良い天気だ。

 

「さて、今日も頑張るか」

 

 昨日の報酬で装備を整えたし、今日からは本格的に冒険者として活動できる。 

 まぁ戦うのはベルだけど……うん……。

 

 革の胸当てを身につけ短剣を腰に差す。

 鏡を見るとすっかり冒険者らしい姿になっていた。

 

 よし、行こう。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 階下へ降りると、ミレーヌさんが朝食の準備をしていた。

 

「おはようございます、レンさん」

 

「おはようございます、ミレーヌさん」

 

 彼女はいつものエプロン姿。

 だが、俺の目にはどうしても昨夜の鑑定結果がちらついてしまう。

 

 ──「レンくん……レンくん……♡」

 

 脳内で再生される幻聴。

 やめてくれ。朝から変な気持ちになる。

 

「今日も装備、かっこいいですね」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 ミレーヌさんが微笑む。

 

(レンさん、本当に冒険者らしくなって……)

(かっこいい……なんだか胸がドキドキしちゃう……)

 

 心の声が聞こえる。

 好感度は順調に上がっているようだ。

 

「今日も森に行くんですか?」

 

「いえ、今日はギルドで別の依頼を受けようかと」

 

「そうなんですね。気をつけてくださいね」

 

「はい。行ってきます」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

 ミレーヌさんに見送られ、俺は宿を出た。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 冒険者ギルドに到着すると、朝から賑わっていた。

 

 俺は依頼ボードの前に立ち、今日の仕事を探した。

 

【薬草の採取】

 報酬:銀貨5枚(成果報酬あり)

 

 昨日と同じ依頼だ。

 ベルと組めば、また大量に稼げるだろう。

 

 だが──

 

【ゴブリンの討伐】

 報酬:銀貨8枚

 内容:森の北部に出没するゴブリンの群れを討伐せよ

 ランク制限:F~E

 

 こちらの方が報酬が高い。

 

 ゴブリンか。

 

 俺は少し考えた。

 

 昨日までなら絶対に受けなかっただろう。

 装備もないし、戦闘経験もない。ゴブリン相手でも危険だ。

 

 だが──今は違う。

 

 ベルが俺と共に戦ってくれるだろう。

 

 あの怪力が俺の味方だ。

 しかも絶対服従の忠誠心を持って。

 

 (ベルに倒してもらえば、楽勝なんじゃないか?)

 

 男として情けない……ような気もするが、しょうがない。頼れるベルがいるなら、頼りたいのだ。

 

 ヒモとか言うなよ。

 

 俺は【ゴブリンの討伐】の依頼書を手に取った。

 

 エマさんのカウンターへ向かう。

 

「おはようございます、レンさん……あ、今日は装備を!」

 

 エマさんが目を輝かせた。

 

(わぁ、レンさんかっこいい……!)

(装備を整えてきたんだ……真面目だなぁ……)

 

 心の声が好意的だ。

 

「おはようございます。この依頼を受けたいんですけど」

 

「はい、確認しますね……えっ? ゴブリン討伐ですか!?」

 

 エマさんが驚いた顔をした。

 

「レンさん、大丈夫ですか? これ、戦闘がメインですよ?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「でも……ゴブリンは群れで襲ってきますし……」

 

 エマさんが心配そうに眉をひそめる。

 

(レンさん、昨日薬草採取で成功したから、調子に乗ってない……?)

(ゴブリンは危険なのに……心配……)

 

 心の声が俺を心配している。

 ありがたいことだ。

 

「装備も整えましたし、自信があります」

 

「……分かりました。でも、本当に気をつけてくださいね。無理だと思ったらすぐに逃げてください」

 

「はい、約束します」

 

 エマさんが渋々ながらも手続きをしてくれた。

 

「あ、そうだ。これ、持っていってください」

 

 彼女がカウンターから何かを取り出した。

 

 小さな笛だ。

 

「これは緊急用の笛です。もし危険な状況になったら、これを吹いてください。近くにいる冒険者が助けに来てくれるかもしれません」

 

「ありがとうございます」

 

 俺は笛を受け取った。

 

 エマさん、本当に優しいな。

 

「それと……あの……」

 

「はい?」

 

「お、お仕事が終わったら……その……報告に来てくださいね! ちゃんと無事に戻ってきたか確認したいので……!」

 

 エマさんが顔を赤らめた。

 

(レンさんが心配……無事に帰ってきてほしい……)

(ああ、なんでこんなに心配しちゃうんだろう……)

 

 心の声が完全に俺を気にかけている。

 

「分かりました。必ず報告に来ます」

 

「は、はい! お待ちしてます!」

 

 エマさんの笑顔を背に、俺はギルドを出た。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 街の門を抜け、草原を歩く。

 

 目指すは森の入り口。

 ベルが待っているはずだ。

 

 しばらく歩くと、見覚えのある巨大な影が見えた。

 

「レン!」

 

 ベルが嬉しそうに駆け寄ってきた。

 地面が揺れる。相変わらずの迫力だ。

 

「おはよう、ベル」

 

「オハヨウ! レン、来タ! ベル、嬉シイ!」

 

 ベルが尻尾を振っている。豚の尻尾だ。

 完全に巨大犬だ。いや、……巨大豚?

 

「今日も一緒に頼むよ」

 

「ベル、頑張ル!」

 

 俺はベルに今日の依頼内容を説明した。

 

「今日はゴブリンを倒す依頼なんだ。森の北部にゴブリンの群れがいるらしい」

 

「ゴブリン?」

 

「ああ。小さくて緑色の魔物だ。弱いけど、群れで襲ってくるから危険らしい。……ベル倒せるか?」

 

「ゴブリン、知ッテル。弱イ。ベル、倒セル」

 

 ベルが自信満々に言った。

 

 やっぱりな。

 ベルにとっては楽勝なんだろう。

 

「じゃあ、頼むよ。でも──」

 

 俺はベルの目を見た。

 

「襲ってくるゴブリンは倒していい。でも、戦う気がないゴブリンは倒さないでくれ」

 

「……? ナゼ?」

 

 ベルが首を傾げた。

 

「可哀想だから」

 

「可哀想?」

 

「ああ。俺たちが襲われたら、正当防衛で倒すのは仕方ない。でも、向こうが逃げたり、降伏したりしたら、それ以上追いかけないでほしいんだ」

 

 ベルはしばらく考え込んでいたが、やがて頷いた。

 

「分カッタ。ヨクワカラナイケド……ベル、レンノ言ウ通リニスル」

 

「ありがとう、ベル」

 

 俺はベルの頭を撫でた。

 

 ベルが嬉しそうに目を細める。

 

(レン、撫デテクレタ……嬉シイ……)

(レン、優シイ……ベル、モット役ニ立チタイ……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 よし、それじゃあ行くか。

 

「森の北部へ向かおう」

 

「ウン!」

 

 俺たちは森の奥へと進んでいった。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 森の北部。

 

 依頼書によれば、ここにゴブリンの群れが出没するらしい。

 

 俺は周囲を警戒しながら歩いた。

 ベルが前を歩き、俺を守るように進んでいる。

 

「……ベル、何か分かるか?」

 

「ウン。匂イ、スル。ゴブリン、近イ」

 

 ベルが鼻をフゴフゴと動かした。

 

 さすが嗅覚が鋭い。

 

「どの方向だ?」

 

「アッチ」

 

 ベルが右手の茂みを指差した。

 

 俺はその方向を注視した。

 

 すると──

 

 ガサガサッ!

 

 茂みから、小さな影が飛び出してきた。

 

 緑色の肌。

 醜い顔。

 粗末な棍棒を握っている。

 

 ゴブリンだ。

 

 しかも一匹じゃない。

 次々と現れる。

 10匹……15匹……20匹以上いる。

 

「ギィィィ!」

「ギャハハハ!」

 

 ゴブリンたちが俺たちを取り囲んだ。

 

 完全に包囲されている。

 

 まずい──

 

 そう思った瞬間。

 

「レン、下ガッテ」

 

 ベルの低い声が響いた。

 

 俺は反射的にしゃがんだ。

 

 その直後──

 

 ドゴォッ!!!

 

 ベルの棍棒が、横薙ぎに振り抜かれた。

 

 一撃。

 

 それだけで、5匹のゴブリンが吹き飛んだ。

 

「ギャアアアアッ!!」

 

 悲鳴を上げながら、木に激突するゴブリンたち。

 

 そのまま動かなくなった。

 

 ……つ、強い。

 

 ベルの戦闘力、半端ねぇ。

 

「ギ、ギィィ!?」

 

 残りのゴブリンたちが動揺している。

 

 だが、数の優位を信じているのか、再び襲いかかってきた。

 

「ギャハハ!」

「ギィィ!」

 

 ベルは動じなかった。

 

 むしろ、楽しそうですらある。

 

「ベル、負ケナイ!」

 

 ベルが再び棍棒を振るう。

 

 草を刈るかのように、ゴブリンたちを次々と薙ぎ払っていく。

 

 俺は呆然とその光景を見ていた。

 

 楽勝、どころの話じゃない。完全に一方的な虐殺だ。

 

 数分後。

 

 地面には、20匹以上のゴブリンの死体が転がっていた。

 

「……ベル、すごいな」

 

「エヘヘ。ベル、強イ。レン、褒メテクレタ」

 

 ベルが嬉しそうに尻尾を振った。

 

 その時──

 

 ガサッ。

 

 茂みの奥から、また何かの気配がした。

 

 俺とベルが身構える。

 

 だが──

 

 現れたのは、小さなゴブリンだった。

 

 他のゴブリンより一回り小さい。

 子供……?

 

 ゴブリンは地面に転がる仲間たちの死体を見て、震えていた。

 

「ギ……ギィ……」

 

 怯えている。

 

 戦う気は、まったくない。

 

 ベルが棍棒を構えた。

 

「待って、ベル」

 

 俺はベルを止めた。

 

「アイツ、倒サナイ?」

 

「ああ。襲ってこないなら、倒す必要はない」

 

「分カッタ。レンノ言ウ通リニスル」

 

 小さなゴブリンは、俺たちを見て、ブルブルと震えていた。

 

 そして──

 

「ギィ……ギィィ……!」

 

 泣きながら、森の奥へと逃げていった。

 

 その背中を俺たちは見送った。

 

 ──これは多分偽善だ。

 

 群れを倒してしまったから、あのゴブリンが生き残れる可能性は低いだろう。

 

 でも、俺は無駄に命を奪いたくないんだ。

 

 それが例え魔物だとしても……。

 

 

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 討伐完了。

 

 俺は地面に転がるゴブリンの死体を確認した。

 

 全部で23匹。

 

 依頼は「群れを討伐せよ」だったから、これで達成だろう。

 

「ベル、ありがとう。助かったよ」

 

「エヘヘ。ベル、役ニ立テタ?」

 

「ああ、すごく役に立った」

 

 俺はベルの頭を撫でた。

 

 ベルが嬉しそうに目を細める。

 

 さて、討伐の証拠を持ち帰らないといけない。

 

 ギルドでは、ゴブリンの討伐証明として「耳」を提出することになっている。

 依頼を受けた時に説明されていた。

 

「……ちょっと気持ち悪いけど、しょうがないか」

 

 俺は短剣を抜き、ゴブリンの死体に近づいた。

 

 グロテスクな作業だが、これも冒険者の仕事の一部だ。

 

 一匹ずつ、耳を切り取っていく。

 

「レン、手伝ウ?」

 

「いや、これは俺がやる。ベルは休んでてくれ」

 

「分カッタ」

 

 ベルが近くの木陰に座った。

 

 俺は黙々と作業を続けた。

 

 正直、気持ちのいい作業じゃない。

 だが、これが俺の稼ぎになるんだ。

 

 しばらくして、23対の耳を袋に詰め終えた。

 

「よし、これで完了だ」

 

 俺はベルのところへ戻った。

 

「ベル、今日は本当にありがとう。お前のおかげで楽に終わった」

 

「ベル、嬉シイ。レン、ノ役ニ立テタ」

 

「ああ。……で、お前、ご飯はちゃんと食べてるか?」

 

 昨日の鑑定結果では、ベルは空腹度が高かった。

 俺を待つことを優先して、食事を疎かにしていたのだ。

 

「ウン……食ベテル……」

 

 ベルが少し目を逸らした。

 

 嘘だな、こいつ。

 

「ベル。ちゃんと食べてくれ。俺のために無理しなくていいから」

 

「デモ……レン、待ッテタイ……」

 

「待ってくれるのは嬉しいけど、お前が倒れたら俺が困る。ちゃんと食べて、休んで、元気でいてくれ」

 

「レン……ベルノ心配、シテクレル……?」

 

「当たり前だ。お前は大事な仲間だからな」

 

 俺がそう言うと、ベルの目がウルウルと潤んだ。

 

(レン……仲間ッテ言ッテクレタ……)

(嬉シイ……スゴク嬉シイ……)

(ベル、絶対レンノコト守ル……)

 

 心の声が聞こえる。

 

「分カッタ。ベル、チャント食ベル。レンノ言ウ通リニスル」

 

「よし。じゃあ、今日はここで別れよう。また明日来るから」

 

「ウン! マタ明日!」

 

 ベルが嬉しそうに手を振った。

 

 ……明日、何か食べ物でも持ってきてやろうかな。

 

 普通の弁当じゃベルには足りないか。

 肉の塊とか、そういうのがいいんだろうな。

 

 考えながら、俺は街へと向かった。

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