※この作品はR-18です。

俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~   作:フレキシブルコーギー

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2.異世界から転生してきました、女神にバグったスキルを押し付けられました、そのせいであなたのエロステータスが丸見えです

「あ、あの……大丈夫ですか?」

 

 エルフの女性──リーネが心配そうに近づいてきた。

 

 俺は必死で動揺を押さえ込む。

 

 7年間セックスしてないとか、亡夫との思い出とか、耳が性感帯とか、そんな情報いきなり見せられても困るんだが!?

 

 しかも子供が欲しかったが叶わなかったとか、切ない情報まで混じってるし……

 

「あ、はい、大丈夫です。ちょっと迷子になってしまって……」

 

 何とか声を絞り出す。

 

 リーネは俺の服装を見て、小さく首を傾げた。

 

「見慣れない服ね。遠い国からいらしたの?」

 

「えーと、はい。すごく遠いところから……」

 

 嘘は言っていない。異世界=現代日本とこの世界は、確かにすごく遠い。

 

(やっぱり旅人さんね。それにしても、装備も持たずにこんな森の奥まで……無謀というか、何か事情がありそうだわ)

 

 心の声が聞こえてくる。いやだから、聞こえないでくれ。

 

「この森は迷いやすいの。それに、奥の方には魔物も出るわ」

 

 リーネの表情が少し曇る。

 

「もしよかったら、わたくしの家にいらっしゃらない? 森の入り口まで案内もできるし、何か事情があるなら相談に乗れるかもしれないわ」

 

(この人、なんだか放っておけない雰囲気があるのよね。昔の夫に少し似ているからかしら……いえ、そんなはずはないわ。でも……)

 

 彼女の心の声は、どこか寂しげで、それでいて温かかった。

 

 未亡人。7年間の孤独。子供を望んでいたが叶わなかった過去。

 

 そんな情報が、俺の脳裏でぐるぐると回っている。

 

 彼女は明らかに善意で声をかけてくれている。それは心の声を聞いていれば分かる。

 

 だがこのまま彼女についていってもいいのだろうか?

 

 俺はこのとんでもないスキルのせいで、彼女のプライバシーを丸裸にしてしまっている。

 

 それでも──

 

 今の俺には、彼女の申し出を断る選択肢などなかった。

 

「……ありがとうございます。お言葉に甘えて、お邪魔させていただきます」

 

 俺は立ち上がり、軽く頭を下げた。

 

 リーネは安心したように微笑む。その笑顔は、森に差し込む木漏れ日のように柔らかかった。

 

「よかった。無理に引き止めるつもりはなかったけれど、このまま放っておくのは心配だったの」

 

(ああ、よかった。素直に受け入れてくれて……久しぶりに誰かと話せるのは嬉しいわ)

 

 心の声が聞こえてくる。やっぱり孤独だったんだな、この人。

 

「あ、俺……私は、黒崎蓮と申します。レンと呼んでください」

 

 異世界で「黒崎」という苗字が通じるかは分からないが、とりあえず名乗っておく。

 

「蓮……レン。素敵な名前ね。わたくしはリーネ・フォレストリア。リーネと呼んでちょうだい」

 

(レン……いい響き。なんだか、呼びやすい名前だわ)

 

 リーネは嬉しそうに俺の名前を口にした。

 

 不思議な感覚だ。彼女の心の声が聞こえるから、表情だけでは分からない本音が分かる。

 

 今、彼女は本心から俺との出会いを喜んでいる。

 

 7年間の孤独。人恋しさ。

 

 そんな背景を知っているからこそ、その喜びの深さが分かってしまう。

 

「こっちよ、ついてきて」

 

 リーネは薬草の入った籠を持ち直し、森の中を歩き始めた。

 

 俺は彼女の後を追う。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 森の中の道は、言われなければ絶対に分からないような獣道だった。

 

 木々の隙間を縫うように、リーネは慣れた足取りで進んでいく。

 

「この森に住んで、もう長いんですか?」

 

 沈黙が気まずくて、俺は何気なく話しかけた。

 

「ええ、もう……155年になるかしら」

 

「ひゃくごじゅう……」

 

 思わず声が裏返る。155年。

 

 そうだ、彼女はエルフだ。鑑定結果によれば342歳。人間とは時間の感覚が違う。

 

「驚いた? あ、そうね。人間の感覚だと長いわよね」

 

 リーネはくすりと笑った。

 

「エルフにとっては、まだまだ若い方よ。わたくしなんて、まだ成人して間もない頃にここに来たのだから」

 

(155年……夫と一緒に来て、夫を看取って、それからずっと一人……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 155年前に亡き夫と共にこの森に来た。そして7年前に夫を亡くし、それ以来ずっと一人。

 

 エルフの時間感覚でも、7年間の孤独は短くないのだろう。

 

「あ、あそこよ」

 

 リーネが前方を指さした。

 

 木々の間から、小さな家が見えてきた。

 

 いや、「家」というより「隠れ家」といった方がふさわしいかもしれない。

 

 大きな木の根元に溶け込むように建てられた、こぢんまりとした木造の家。

 

 壁には蔦が絡まり、屋根には苔が生え、まるで森の一部のように自然に佇んでいる。

 

 窓辺には色とりどりの薬草が干してあり、煙突からは細い煙が立ち上っていた。

 

「ここがわたくしの家よ。狭いけれど、ゆっくりしていって」

 

 リーネは戸口に立ち、俺を中に招いた。

 

(久しぶりにお客様が来るわ。掃除はちゃんとしてあったかしら……あ、ベッドのシーツは昨日替えたばかりだから大丈夫ね)

 

 心の声が可愛らしい。

 

 俺は軽く頭を下げて、家の中に足を踏み入れた。

 

 中は外観から想像するより広く感じられた。

 

 入ってすぐにリビング兼キッチンがあり、奥にはベッドルームがあるらしい扉が見える。

 

 天井からは乾燥した薬草の束がいくつもぶら下がっていて、空気にはかすかに甘い草の香りが漂っていた。

 

 家具は全て木製で、使い込まれて艶が出ている。暖炉には小さな火が灯っていて、室内は心地よい温かさに包まれていた。

 

「どうぞ、そこに座って。今、お茶を入れるわね」

 

 リーネは籠を置くと、手際よく湯を沸かし始めた。

 

 俺は勧められた椅子に腰を下ろす。

 

 改めて室内を見回す。

 

 壁には棚があり、そこに薬草の瓶がずらりと並んでいた。どうやら彼女は薬草師──このファンタジー世界でいうところの錬金術師か何かのようだ。

 

 そして、棚の隅に小さな額縁が飾ってあることに気づいた。

 

 そこには一枚の肖像画。

 

 金髪のエルフの男性だ。優しげな顔立ちで、穏やかな微笑みを浮かべている。

 

 多分、亡くなった夫だろう。

 

「お待たせ」

 

 リーネが湯気の立つカップを二つ持ってきた。

 

 俺の前にカップを置き、自分も向かい側に座る。

 

「ハーブティーよ。身体が温まるから、よかったら飲んで」

 

「ありがとうございます」

 

 カップを手に取り、一口飲む。

 

 ほんのり甘く、どこか懐かしい味がした。緊張が少しほどける。

 

「それで、レンさん……いえ、レンでいいかしら?」

 

「はい、呼び捨てで大丈夫です」

 

「ありがとう。それで、レン。どうしてあんな森の奥に一人でいたの? 何か事情があるのなら、話してくれない?」

 

 リーネの碧眼が、心配そうに俺を見つめてくる。

 

(この子、何か深刻な事情を抱えているみたい。力になれるなら、なってあげたいわ……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 彼女は本当に善良な人だ。見ず知らずの俺を心配してくれている。

 

 だが、俺は正直に話すべきだろうか?

 

 『異世界から転生してきました、女神にバグったスキルを押し付けられました、そのせいであなたのエロステータスが丸見えです』

 

 ……いや、無理だ。頭のおかしいやつだと思われるのが関の山だ。

 

 かといって、嘘をつくのも気が引ける。

 

「えーと、実は……」

 

 俺は曖昧に言葉を濁す。

 

 どこまで話すか。どう説明するか。

 

 考えあぐねていると──

 

「無理に話さなくてもいいのよ」

 

 リーネが優しく微笑んだ。

 

「誰にでも、話せないことはあるわ。落ち着いたら、ゆっくり整理すればいい」

 

(昔の夫もそうだった。辛いことを話すのに時間がかかる人だった。この子も、きっとそうなのね……)

 

 彼女は俺を責めない。急かさない。

 

 ただ静かに待っていてくれる。

 

 その優しさが、胸に染みた。

 

「……ありがとうございます」

 

「いいのよ。それより、お腹は空いていない? 簡単なものなら作れるけれど」

 

 言われて気づく。確かに空腹だ。

 

 異世界に来てから何も食べていない。いつの間にか日も傾き始めている。

 

「すみません、お言葉に甘えて……」

 

「遠慮しないで。客人をもてなすのは、久しぶりだから」

 

(本当に久しぶり。7年ぶりかしら、誰かにご飯を作るの……)

 

 リーネは嬉しそうに立ち上がり、キッチンに向かった。

 

 俺はその後ろ姿を見つめる。

 

 長い金髪が腰のあたりで揺れている。質素な緑のワンピースは身体のラインを隠しているが、それでも豊かな胸と腰のくびれは分かる。

 

 そして、何より目を引くのは──あの長い耳。

 

 鑑定結果が脳裏をよぎる。

 

【弱点部位:長い耳を優しく撫でられると理性崩壊】

 

 いやいやいや、何を考えてるんだ俺は。

 

 助けてもらった恩人に対して、そんな目で見るな。

 

 俺は頭を振って邪念を払い、ハーブティーを一口飲んだ。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 リーネが作ってくれたのは、野菜とキノコのスープと、黒パンだった。

 

 質素だが、素材の味が生きていて美味しい。特にスープは身体が芯から温まる。

 

「おいしい……」

 

 思わず呟くと、リーネの顔がぱあっと明るくなった。

 

「本当? よかった。久しぶりに誰かのためにご飯を作ったから、ちゃんとできているか心配だったの」

 

(嬉しい……褒められるの、久しぶり……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 そうか。7年間一人で暮らしていれば、褒められる機会もなかったのだろう。

 

 料理を作っても食べるのは自分だけ。「美味しい」と言ってくれる人もいない。

 

 そんな寂しさが、彼女の心の声から伝わってきた。

 

「本当に美味しいです。素材の味がしっかり出ていて、優しい味がします」

 

「まあ……そんなに褒められると照れるわ」

 

 リーネは頬を赤らめて俯いた。

 

 その仕草が、やけに可愛らしい。

 

(この子、優しいのね。昔の夫を思い出すわ……でも、あの人とは違うけれど、なんだか……温かい気持ちになる)

 

 心の声が聞こえるたびに、俺の胸が疼く。

 

 彼女は無意識のうちに、俺を「亡き夫」と重ねている。それは俺の容姿が似ているからではなく、きっと「一緒に食事をする」という行為自体が、彼女の中で大切な思い出と結びついているからだ。

 

 食事は穏やかな雰囲気の中で進んだ。

 

 リーネはこの森の話、薬草の話、時折やってくる行商人の話などを、楽しそうに語ってくれた。

 

 俺は相槌を打ちながら、彼女の話に耳を傾ける。

 

 異世界の知識を得られるのはありがたい。そして何より、彼女と話していると心が落ち着いた。

 

 やがて食事が終わり、リーネがカップを片付け始めた。

 

「さて、レン。今夜はここに泊まっていきなさい」

 

「え、でも……」

 

「森を夜に歩くのは危険よ。魔物も出るし、道に迷ったら大変。明日の朝、森の出口まで案内するわ」

 

(本当は、もう少し一緒にいたいだけなのだけれど……いえ、これは相手のためよ。そう、相手のため)

 

 心の声が可愛らしい。

 

 リーネは自分の本音を誤魔化そうとしている。でも、心の声は正直だ。

 

 彼女は俺と一緒にいたいと思っている。7年ぶりの「誰か」の存在が、彼女の孤独を癒しているのだ。

 

「……すみません。重ね重ねお世話になります」

 

「いいのよ。ベッドはわたくしので寝て。わたくしはソファで──」

 

「いえ、それは駄目です。俺がソファで寝ます」

 

「でも……」

 

「リーネさんは明日も薬草採りがあるんでしょう? 俺は若いから大丈夫です」

 

 押し問答の末、俺がソファで寝ることに決まった。

 

 リーネは予備の毛布を持ってきてくれて、ソファに敷いてくれた。

 

「何かあったら遠慮なく起こしてね。では、おやすみなさい」

 

「おやすみなさい。今日は本当にありがとうございました」

 

 リーネは微笑んで、奥の寝室に消えていった。

 

 俺はソファに横になり、天井を見上げる。

 

 激動の一日だった。

 

 トラックに轢かれて死に、女神に出会い、バグったスキルを押し付けられ、異世界に転生し、エルフの未亡人に拾われた。

 

 これからどうなるのか、全く分からない。

 

 だが、今夜は温かい場所で眠れる。優しい人に助けてもらえた。

 

 それだけで十分だ。

 

 俺は目を閉じ、ゆっくりと意識を手放していった。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 深夜。

 

 ふと、物音で目が覚めた。

 

「……ん……んっ……」

 

 微かな声。

 

 最初は何の音か分からなかった。だが、耳を澄ませると──

 

「……っ……はぁ……んん……♡♡」

 

 それは、寝室の方から聞こえてくる。

 

 甘い、押し殺したような声。

 

 俺の脳裏に、鑑定結果の一部が蘇る。

 

【オナニー頻度:月1回程度】

【最後のオナニーからの経過時間:12日】

 

 まさか。

 

 いや、でも。

 

 俺は息を殺して、暗闇の中で耳を澄ませた。

 

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