俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
ギルドに到着した。
俺は採取した薬草を持って、エマさんのカウンターに向かった。
「お帰りなさい、レンさん!」
エマさんが、笑顔で俺を迎えてくれた。
「はい、ただいま戻りました」
「今日の成果はいかがでしたか?」
「そうですね……量は結構採れましたけどレアなものはなかったかな」
俺は袋から薬草を取り出した。
エマさんが、薬草を確認していく。
「わぁ、たくさんですね! 状態も良好です!確かにレアものはないけど……量が多いので、追加報酬をつけますね!」
「ありがとうございます」
「合計で銀貨25枚になります」
さて。
俺はエマさんに魔族のことを聞こうかと思った。
だが──
(……やっぱりやめておこう)
俺が魔族のことを調べていると知られたら、まずい。
オルベリアは教会に潜伏している。
もし、俺が魔族について調べていることが何かの拍子でオルベリアの耳に入ったら──
俺がオルベリアの正体に気づいていることがバレてしまうかもしれない。
そうなったら殺される。
間違いなく殺される。
だから直接聞くのはやめておこう。
代わりに……。
「エマさん、一つお願いがあるんですが」
「はい、何でしょう?」
「ギルドに資料室ってありますか? 調べ物がしたいんです」
「資料室ですか?」
エマさんが少し驚いた顔をした。
「はい、あります。でも資料室は冒険者ランクによって閲覧できるエリアが決まっているんです」
「ランク……?」
「はい。Fランクは【一般閲覧エリア】のみ。Eランク以上になると【制限付き閲覧エリア】も利用できます。さらに上のランクになると、もっと機密性の高い資料も……」
なるほど。
ランクによって見られる情報が違うのか。
「今の俺だと一般閲覧エリアだけですね」
「そうですね……でも、レンさんはもうすぐEランクに昇格ですから!」
そういえばそうだったな。
確かリーシャさんを救出したときだったかにそんなことを言われてたな。
「あと数日中には──Eランクです!♡♡♡」
エマさんが、嬉しそうに言った。
(レンさんがEランクになったら……一緒にパーティ組んでくれないかな……)
(あ、でも私は受付嬢だから……ダメか。でも魔法くらいは使えるし……)
エマさん、そんなこと考えてたのか。
受付嬢と一緒に冒険は聞いたことがないぞ。
……いや、でも俺は弱いし……というか戦えないし。
彼女が魔法的なものを使えるのなら彼女の方が強い可能性も……?
「とりあえず、今日は一般閲覧エリアだけでいいです。使わせてもらえますか?」
「もちろんです! こちらにどうぞ」
エマさんがカウンターから出てきた。
俺を資料室まで案内してくれるらしい。ありがたい。
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ギルドの奥。
エマさんに案内されて資料室に到着した。
「こちらが資料室です」
エマさんが扉を開けた。
「おお……」
俺は思わず声を漏らした。
小さな図書館のような空間が広がっていた。
木製の本棚がびっしりと並んでいる。
本棚には様々なサイズの本や巻物が詰め込まれている。
静かで落ち着いた雰囲気だ……。
「すごいですね……こんな場所があったんだ」
「はい。冒険者の皆さんが持ち帰った情報や、各地から収集した資料が保管されています」
エマさんが説明してくれた。
「こちらの手前のエリアが一般閲覧エリアです。魔物図鑑、薬草辞典、地図、依頼の過去記録などが閲覧できます」
エマさんが本棚の列を指し示した。
「そして、奥の扉の向こうが……」
エマさんが資料室の奥にある扉を指さした。
重厚な木製の扉。
鍵がかかっているようだ。
「制限付き閲覧エリアです。Eランク以上の冒険者のみ入室可能となっています」
「なるほど……」
俺はその扉を見つめた。
魔族についての詳しい情報はあの向こうにあるかもしれない。
だが、今の俺はFランク。
入ることはできない。
「何か分からないことがあれば、カウンターに来てくださいね。私でよければお手伝いします」
「ありがとうございます、エマさん」
「それでは、ごゆっくりどうぞ」
エマさんが微笑んで資料室を出ていった。
俺は一人残された。
さて。
ここで魔族について調べよう。
一般閲覧エリアにどれだけ情報があるか分からないが……
何もしないよりはマシだ。
俺は本棚を見て回った。
魔物図鑑。
薬草辞典。
地理書。
冒険者心得。
依頼事例集。
……魔族に関する本はあるだろうか?
俺は本棚を探し始めた。
魔物図鑑のコーナーには様々な魔物の情報が載っていた。
ゴブリン、オーク、スライム、ウルフ……
だけど魔族についての記述は──
ほとんどない。
ようやく見つけたのは、冒険者基礎知識という本の中にあった、たった数ページの記述だけだった。
────────
【魔物と魔族の違い】
魔物:自然発生的に存在する生物。知能の高低はあるが、基本的に人間とは異なる生態系に属する。
魔族:人間に近い知能と文明を持つ種族。人間を敵視する傾向がある。強大な魔力を持つ者が多い。
【魔族の特徴】
・人間に変身できる者が殆ど
・高い知能と戦闘力
・寿命が非常に長い(数百年〜数千年)
・階級制度が存在する(詳細は上位ランク資料を参照)
・魔界で発生しているという説が濃厚
・懸賞金は当該魔族がどれだけ人類に被害を及ぼしたかの指標である
【遭遇時の対応】
・基本的には逃走を推奨
・単独での交戦は厳禁
・発見した場合はギルドに報告すること
────────
俺は本を閉じた。
……ほとんど役に立たない。
階級制度についても、詳細は上位ランク資料を参照と書いてあるだけだ
オルベリアは魔子爵。
子爵という階級が魔族の中でどの程度の強さなのか。
人間の爵位と同じものなのだろうか?
どうすれば倒せるのか。
弱点は何なのか。
そういった情報は一切載っていない。
やはりFランクの一般閲覧エリアでは限界があるか。
俺は奥の扉を見つめた。
あの向こうに行けば──
「くそっ……」
もっと詳しい情報があるかもしれない。
だが、今の俺にはその資格がない。
Eランクに昇格すれば、入れるようになる。
エマさんは言っていた。
昇格審査は、近日中だと。
それまで待つしかないか。
「はぁ……早く入りたいんだけどな」
とりあえず、他にも何か情報がないか探してみよう。
俺は再び本棚を見て回った。
「……ん?」
しばらく探していると一冊の古い本が目に入った。
『世界各地の伝承集』
伝承集?
何となく気になって、俺は本を手に取った。
パラパラとページをめくる。
各地の民話や伝説が記録されている。
ドラゴンの話。
精霊の話。
英雄の話──
……英雄?
俺はそのページで手を止めた。
────────
【救世の英雄】
約300年前、世界を恐怖に陥れた魔大公ベルゼリオスを討伐した英雄。
討伐した魔族は100体を越え、人類の救世主と謳われた。本名不明。
魔大公との戦いの後、姿を消した。一説には人間ではなく、神に遣わされた使者だったとも……
────────
英雄……?
魔族を100体以上もたおした……?
俺はその記述に目を凝らした。
どうやって倒したんだ?
単純に強かっただけ?何か秘密でもあるのだろうか……。
でもそれ以上の詳細は書かれていなかった。
伝承集は、あくまで伝説を記録しているだけ。
具体的な戦闘方法や弱点などは載っていない。
俺は本を棚に戻した。
……収穫は少なかったが、ゼロではない。
倒せないわけではない。
英雄……という存在。
オルベリアのデータを見た時も英雄アレクシスだったかと戦って傷を負っているという表記だった。
だから、英雄とやらは魔族を倒せるんだ。
でも、英雄ってなんだ?概念としての英雄は知ってるけど……冒険者とは違うのだろうか?
……魔族に関することじゃないし、誰かに聞いても大丈夫だな。
エマさんにでも──
その時──
「レンさん!!」
バタン!
資料室の扉が勢いよく開いた。
エマさんが息を切らして飛び込んできた。
「は、はぁ……はぁ……レンさん、よかった、まだいらっしゃいました……!」
「エマさん? どうしたんですか、そんなに慌てて……」
「あ、あの……!」
エマさんが俺の前で手を合わせた。
必死な表情だ。
「昨日のついでで申し訳ないんですが……!」
「昨日のついで?」
「は、はい……! レンさんが発見された月光蘭で作ったポーションの件です!」
月光蘭のポーション。
そういえば昨日エマさんに頼まれて教会に届けたんだったな。
「ポーションを教会で受け取って……貴族様のお家に届けてくれないでしょうか……!?」
「貴族の家に?俺がですか?」
「はい……! ごめんなさい、レンさんに頼むしかなくて……!」
エマさんが申し訳なさそうに頭を下げた。
(本当はギルドの配達員がやるべきなんだけど……今日は人手が足りなくて……)
(レンさん、怒らないかな……迷惑じゃないかな……)
心の声が聞こえる。
「それに……!」
エマさんが、顔を上げた。
「レンさんが発見者なので、きっと感謝されると思うんです! 貴族様にお会いできる機会なんて、そうそうありませんし……!」
「……」
俺は考えた。
貴族に届けるのはいい。
だけど……そのためには教会で受け取らなくちゃならない。
あの化け物……オルベリアがいる場所。
正直、行きたくない。
……いや、待てよ。
むしろ、これはチャンスかもしれない。
何も知らないふりをしてシスターからポーションを受け取る。
その際に──
オルベリアの様子を確認できる。
あの化け物が、今どんな状況なのか。
傷の回復具合はどうなのか。
鑑定で確認しておかないと。
監視しないと。
俺にしかできないことだ。
「分かりました。引き受けます」
「本当ですか!?」
エマさんの顔が、パッと明るくなった。
「ありがとうございます、レンさん! 助かります!」
「いえ、大丈夫ですよ。どうせ帰り道ですし」
「よかった……! ありがとうございます!」
エマさんが、嬉しそうに俺の手を握った。
(レンさん、本当に優しい……!)
(ああ、もう本当に好き……!)
「あ、これが貴族様のお屋敷の地図と紹介状です」
エマさんが書類を俺に渡した。
「貴族様のお名前は、アドルフ・ヴァン・クロイツェル伯爵様です。街の北側にある大きなお屋敷ですのですぐに分かると思います」
「分かりました」
「それでは、よろしくお願いします!」
エマさんが深くお辞儀をした。
俺は書類を受け取ってギルドを出た。
まずは教会だ。
あの化け物の巣窟へ再び足を運ぶことになる。
正直、怖い。
でも──
やるしかない。
俺は教会へと向かった。