俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
俺は依頼書を懐にしまい、ギルドを出た。
空は雲ひとつない快晴だ。風が心地よく頬を撫でる。
まずは森へ向かわないと。
ベルに肉を届けてそれからゴブリン討伐だ。
俺は街の門を抜けて、森への道を歩き出した。
市場で買った肉の包みが、ずっしりと重い。
道中、何人かの冒険者とすれ違った。
「今日はどこに行く?」
「そうだなぁ……森は怖いからやめとくか」
森は怖い……いや、そらそうか。俺みたいな低ランクの冒険者は森に入るのはあまり推奨されないのだろう。
薬草なら平原にも生えてる時があるし……。
実際ベルがいなかったら俺はもう死んでる。……まぁ、最初に殺されかけたのはベル相手だけど。
やがて、森の入り口が見えてきた。
木々が生い茂り、薄暗い空間が広がっている。
いつもの森だ。
俺は深呼吸をして、森の中へと足を踏み入れた。
「さて……ベルはどこにいるかな」
俺は周囲を見回した。
いつもなら、この辺りでベルが待っていてくれるんだけど。
「レン」
地面が揺れた。
木々の間から、巨大な影が飛び出してきた。
そして──抱きつかれた。
「レン 待ッテタ」
ベルだった。
メスオークの巨体が俺の体に覆いかぶさる。
柔らかくて温かい感触。
独特の獣の匂い。
「おはよう、ベル。遅くなったか?」
「ウウン ダイジョウブ イマキタトコ」
なんかカップルの会話みたいだな?
俺は肉の包みを取り出した。
「はい、今日の肉」
「ニク!」
ベルの目が輝いた。
包みを開けるとたっぷりの肉が姿を現した。
新鮮な赤身肉。
マルタさんが選んでくれた上質なものだ。
……あれ?なんかいつもより上質な感じが……。
フェラチオのお礼か?
……まさかな。
「レン……コンナニ…… アリガトウ」
ベルが嬉しそうに肉を受け取った。
そして、そのまま──
ガブリッ!
生のまま肉にかぶりついた。
「ウマイ」
ベルが夢中で肉を頬張る。
あっという間に一塊を平らげ、次の肉に手を伸ばす。
ムシャムシャ、ガツガツ。
見ていて気持ちがいい。
生肉を食べるのは理解できないけど……。
「美味しいか?」
「スゴク美味シイ レンノ持ッテ来ルニク、イツモ美味シイ」
ベルが満面の笑みで答えた。
彼女の笑顔を見るとこっちまで嬉しくなってくる。
やがてベルは全ての肉を食べ終えた。
「レン、アリガト」
「どういたしまして」
ベルが満足そうにお腹を撫でている。
「ベル、オナカイッパイ 幸セ」
「それは良かった」
俺も嬉しくなった。
ベルのためならまた肉を調達してあげたいと思う。
……それにしても、マルタさんには頭が上がらないな。
色々な意味で。
「なぁ、ベル」
「ン?」
「今日はゴブリンの討伐依頼を受けてきたんだ。一緒に来てくれるか?」
「ゴブリン 前モタオシタ ベル、強イ マカセテ」
ベルが力こぶを作った。
腕は、俺の太ももくらいの太さがある。
頼もしい。
「じゃあ、少し休憩してから行こうか」
「ウン 少シ休ム」
ベルがその場にどかっと座り込んだ。
地面が少し沈む。
俺もベルの隣に腰を下ろした。
木漏れ日が優しく差し込んでいる。
風が心地よい。
静かで穏やかな時間だ。
「ベル」
「ン?」
「お前と一緒にいると落ち着くよ」
「ベルモ レントイルト安心……」
ベルが嬉しそうに尻尾を振った。
俺はふと思う。
ベルは魔物だ。
人間社会では、敵として扱われる存在。
でも、こうして一緒にいると……
ベルはただの優しい友達にしか見えない。
種族なんて関係ない。
大切なのは心だ。
リーシャさんはベルを嫌っていた。
オークだからという理由で。
……それは悲しいことだと思う。
でも、いつかリーシャさんにも分かってもらえるといいな。
ベルがどれだけ優しくて強くて、大切な存在なのか。
「さて、そろそろ行こうか」
「ウン ゴブリン、ヤッツケル」
ベルが立ち上がった。
俺もそれに続く。
二人で森の奥へと歩き出した。
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森の中を進む。
ベルが先頭を歩き、俺が後ろをついていく。
ベルは時々立ち止まっては鼻をクンクンと鳴らしていた。
「ニオイ 探ス」
ベルの嗅覚は人間の比ではない。
魔物や動物の気配を遠くからでも察知できる。
薬草とかも探すの上手だしな。
しばらく歩いていると──
「レン」
ベルが急に立ち止まった。
「どうした?」
「ゴブリン 近イ」
ベルが警戒するように周囲を見回す。
「どっちの方向だ?」
「アッチ……」
ベルが森の奥を指さした。
俺は目を凝らす。
だが、俺には何も見えない。
「……ンッ?」
ベルが鼻を鳴らした。
「血……」
「血?」
「血ノニオイ……スル……」
ベルが呟いた。
血の匂い。
それはつまり──
誰かが傷ついている?
人間だったら助けないと……!
「行ってみよう」
「ウン」
二人で慎重に進んだ。
やがて、木々の向こうに何かの気配を感じた。
声が聞こえる。
「ギャハハハ!」
「ギギギッ!」
ゴブリンだ。
俺とベルは木陰に身を隠し、様子を窺った。
そこには──
数匹のゴブリンが何かを取り囲んで棒で叩いていた。
残酷な笑い声を上げながら、執拗に暴力を振るっている。
その中心で小さくうずくまっているのは──
「あいつは……!」
俺は目を見開いた。
見覚えがあった。
以前、ゴブリンの群れを討伐した際、一匹だけ見逃した小さな子供のゴブリンだ。
あの時は震えて逃げるだけだったあいつが、今は同族たちに襲われている。
「なんで……仲間じゃないのか?」
ゴブリン社会にもいじめがあるのか、それとも臆病者への制裁なのか。
理由は分からない。
だが──
一方的に暴力を振るわれている弱い者を見て、俺は胸が痛んだ。
「ギギッ!」
一匹のゴブリンが棒を振り上げた。
子供ゴブリンが怯えて体を丸める。
このままでは殺される……。
「……ベル。倒そう!だけど、虐められてる子供ゴブリンは攻撃しないでくれ!」
「? ヨクワカラナイケド……ベル、タタカウ!」
ベルが飛び出した。
ドスンッ!!
地面を蹴る音が響き渡る。
「ギャッ!?」
ゴブリンたちが驚いて振り返った。
その瞬間──ベルの攻撃が一匹のゴブリンの顔面に炸裂した。
「ギャアアアッ!!」
ゴブリンが吹き飛ぶ。
木に激突してそのまま動かなくなった。
「ギ、ギギッ!?」
残りのゴブリンたちが慌てて武器を構える。
だが、遅い。
「ブヒィィィ!!!」
次々とゴブリンを棍棒で打ちのめす。
「ギャアアアッ!」
「ギギギィィィッ!」
ゴブリンたちが、まとめて吹き飛ばされた。
木に激突し、動かなくなる。
圧倒的な力だ。
「ギギギギギ!!」
残った一匹がベルを殺そう粗末な棍棒で突撃するが──
ベルはゴブリンの首を掴み、片手で持ち上げる。
「フゴォォ……!!」
グシャッ。
鈍い音がして、ゴブリンが事切れた。
ベルはゴブリンの事切れた体を無造作に放り投げた。
「終ワッタ」
ベルが息を乱さずに言った。
流石だな、ベルは。
オークとゴブリンにはこれほどの差があるのかと感心してしまう。
……いや、ベルはオークの上位種だっけ?
そもそも上位種ってなんだろう……。
「ギッ……ギィ……」
「!」
そんなことを考えてる場合じゃない!
俺は急いで子供ゴブリンのところへ駆け寄った。
「おい、大丈夫か?」
子供ゴブリンは震えていた。
体中に傷がある。
血が滲んでいる。
怯えた目で、俺を見上げた。
「ギ……?」
目には恐怖と驚きが混じっていた。
俺はゆっくりと手を伸ばした。
「怖がらなくていい。もう大丈夫だ」
「ギィ……」
「大丈夫だ。俺たちはお前を虐めたりしない」
「……ギ……ギギ……」
「レン」
ベルが静かに言った。
「コイツ 弱イ。仲間ニイジメラレテタ」
「そうみたいだな」
全身に打撲の痕。
血が滲んでいる箇所もある。
このまま放置したら、死んでしまうかもしれない。
「ベル、こいつを助けてあげよう。薬草を拾ってきてくれ」
「レン?」
ベルが困惑した顔で俺を見ている。
「ドウシテ? コイツ、ゴブリン。イマ、別ノゴブリン、倒シタ。ナノニ、ナゼ助ケル?」
ベルの疑問はもっともだ。
俺はゴブリン討伐の依頼を受けてここに来た。
ゴブリンは駆除対象だ。
さっきベルが殺したゴブリンとこの子供ゴブリンに、種族的な違いはない。
なのに片方は殺し、片方は助ける。
矛盾していると言われても仕方がない。
「そうだな……自分でも変だと思うよ」
俺は苦笑した。
「でもな、ベル。こいつは怯えている……」
「……?」
「ああ。俺は敵には容赦しないつもりだ。でも、抵抗できないやつや助けを求めているやつを見捨てるのは……寝覚めが悪いんだよ」
ベルは首を傾げた。
理解できていないようだ。
正直なところ……俺も説明が出来ない感情なんだ。
ゴブリンは討伐依頼が出てるから、討伐していい存在なのだろうか。
じゃあ、オークの討伐依頼が出てたら俺はどうするんだ?
もしベルが冒険者たちに襲われたら俺はどっちの味方をする?
色んな感情が混じり合う。
俺は……。
その時だった。
ベルが不意に言った。
「……ワカッタ。レンガ、ソウ言ウナラ」
ベルが頷いた。
「薬草、探シテクル」
「ありがとう、ベル」
ベルが森の中へと走っていった。
俺は子供ゴブリンのそばにしゃがみ込んだ。
「もう少しの辛抱だからな」
「ギ……」
子供ゴブリンが怯えた目で俺を見ている。
敵意はない。
ただ、恐怖しているだけだ。
俺は優しく微笑みかけた。
「怖がらなくていい。お前を傷つけたりしないから」
「ギ……?」
子供ゴブリンが不思議そうに首を傾げた。
しばらくして、ベルが戻ってきた。
「レン 薬草、持ッテキタ」
ベルが両手いっぱいに薬草を抱えている。
「おお、沢山だ!ありがとう」
俺は薬草を受け取った。
これは……確か傷を癒す効果がある薬草だ。
前に貸して貰った図鑑で見たな。
葉を揉んで傷口に塗ればいいと……。
俺は薬草の葉を手のひらで揉み始めた。
ぐしゃぐしゃと潰していくと、緑色の汁が滲み出てくる。
「よし……」
俺はそれを子供ゴブリンの傷に塗った。
「ギッ!?」
子供ゴブリンが驚いて体を震わせた。
「大丈夫、痛くしないから」
俺は優しく声をかけながら、慎重に薬草を塗り込んでいく。
打撲の跡。擦り傷。血が滲んでいる箇所。
全ての傷に薬草を塗った。
「これでよし」
俺は手を止めた。
ゴブリンは、じっと俺を見つめている。
「ギ……」
目には驚きと……少しだけ、安心の色が混じっていた。
「痛みは少し引いたか?」
子供ゴブリンが小さく頷いた。
「そっか。よかった」
俺はほっと息をついた。
これで傷の悪化は防げるだろう。
「ベル、ありがとうな」
「ウン」
ベルが嬉しそうに尻尾を振った。
俺は改めてゴブリンを見た。
まだ怯えているようだ。
体を小さく丸めて、震えている。
無理もない。
さっきまで同族に暴力を振るわれていたんだ。
それに俺たちは人間とオーク。
ゴブリンにとっては本来なら敵になる存在。
信頼してもらうには時間がかかるだろう。
「ギ……」
子供ゴブリンが小さく鳴いた。
「ベル、この子をどうしようか」
「……?」
「このまま置いていったら、また襲われるかもしれない」
「ウン」
「だからなんとかして……」
その時だった。
自動的に鑑定が発動する──
【鑑定結果】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【基本情報】
名前:なし(野良ゴブリン)
種族:ゴブリン(下位種)
性別:メス
年齢:5歳(人間換算で10歳程度)
身長:87cm
体重:16kg
【心の声】
(痛イ……怖イ……)
(ニンゲン……オーク……ナンデ……ナグラナイ……?)
【特殊情報】
・知性:通常のゴブリンより高い(推定IQ60程度)
・状態:負傷中、栄養失調気味、恐怖状態
・危険度:なし(攻撃性ゼロ)
・同族からの虐待理由:戦闘拒否、臆病すぎる性格
・生存本能:高い
・懐きやすさ:普通(優しくされた相手には忠実になる)
【攻略ヒント】
・この子に必要なのは保護と安全
・食事を与え、安心できる場所を用意すれば信頼してくれる
・このままでは戦闘で死亡する可能性が高い。
・進化すれば知能や外見も人間に近づき、戦力になる可能性がある。
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……子供、か。
しかもメスだったのか。
どうする? このまま放置すれば確実に死ぬ……。