俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
俺は子供ゴブリンを見つめた。
怯えた目。
震える小さな体。
放っておけない。
「ベル」
「ン?」
「この子、俺たちで守ってやらないか?」
「……?」
ベルが首を傾げた。
「このまま置いていくわけにはいかない」
「ドウシテ? コイツガ死ンデモ困ラナイ」
ベルが困惑した顔で言った。
そうだよな。
ベルからすれば、理解できないだろう。
俺自身もうまく説明できないんだから。
「うまく言えないんだけど……助けたいんだ」
「……」
ベルがじっと俺を見つめた。
「ワカッタ。レンガ、ソウ言ウナラ」
「ベル……」
「ベル、レン信ジテル。ダカラ、レンガ守ルッテ言ウナラベルモ守ル」
ベルが真剣な顔で言った。
理解はしていない。
でも俺を信じてくれている。
それだけで俺は嬉しかった。
「ありがとう、ベル」
「ウン」
ベルが小さく頷いた。
俺は子供ゴブリンに手を伸ばした。
「ギッ!?」
子供ゴブリンがビクッと震えた。
「大丈夫。お前を傷つけたりしない」
「ギ……」
子供ゴブリンがおずおずと俺の手に触れた。
小さくて震えている手だった。
俺は優しく頭を撫でた。
「ギ……ギィ……」
子供ゴブリンが小さく鳴いた。
まだ恐怖は消えていないが……少しだけ、安心したような顔をしている。
さて、問題はこの子をどうするかだ。
俺はベルを見て言った。
「ベル……悪いけど、このゴブリンと一緒にいてやってくれないか?」
ベルが首を傾げた。
「街に連れて帰るのは危険すぎる。ゴブリンは魔物扱いだから、見つかれば即座に殺される」
「ン……」
「だから森で暮らすのが一番安全だ。ベルも一緒にいてくれれば、この子を守れるだろ?」
「ウン。ベル、強イ。守レル」
ベルが頷いた。
よし、これで方針は決まった。
問題は──
「そういえば、ベル」
「ン?」
「お前って、どこに住んでるんだ?」
「ドコ?」
ベルが不思議そうに首を傾げた。
「いや、家とか……寝る場所とか」
「ベル、適当ニ寝テル」
「適当に?」
「ウン。疲レタラ寝ル。起キタラ歩ク。ソレダケ」
ベルがケロッと答えた。
「……拠点はないのか?」
「キョテン?」
「その……決まった場所というか……」
「ナイ。昔ハ、群レノ集落アッタケド……今ハナイ」
そうか……人間に滅ぼされてしまったから……。
それからずっと放浪生活を送っているのか。
「じゃあ、雨が降ったらどうするんだ?」
「木ノ下デ寝ル」
「寒い時は?」
「我慢スル」
「……それは大変だな」
俺は少し心配になった。
ベルは強いけど、やっぱり安全な住処があったほうがいい。
それにこのゴブリンもこれから一緒に暮らすならちゃんとした場所が必要だ。
「うーん……家……」
俺は考えた。
森の中で安全に暮らせる場所。
家を建てるのは無理だ。
俺に建築スキルはないし、資材もない。
だったら……。
「洞窟とかないかな?」
「ドウクツ?」
「ああ。前にリーシャさんを見つけた時みたいな洞窟だ」
あの時の洞窟は小さくて、ベルは入れなかった。
でももっと大きな洞窟があれば。
ベルとこの子が一緒に住めるかもしれない。
それに、俺も色々と街で買ったものを置いておけば中継拠点として使えるかもしれない。
この森の探索にも便利だ。
「よし、洞窟を探そうか」
ベルが頷いた。
子供ゴブリンは、俺の言葉を理解できていないようだが……不安そうにこちらを見ている。
「ギ……?」
「大丈夫。お前が安全に暮らせる場所を探すんだ」
「ギ……」
俺は子供ゴブリンを抱き上げた。
軽い。
人間の子供と変わらない重さだ。
「ギッ!?」
子供ゴブリンが驚いて俺にしがみついてきた。
小さな手が、俺の服をぎゅっと握りしめる。
「怖がらなくていいぞ。落とさないから」
「ギ……」
子供ゴブリンが、恐る恐る俺の顔を見上げた。
目にはまだ恐怖が残っている。
でも──
少しだけ、信頼の光が宿り始めているような気がした。
「じゃあ、行こう」
「ウン」
そうして森の中を歩き始めた。
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洞窟を探して森の中を歩く。
ベルが先頭を歩き、俺が子供ゴブリンを抱えて後ろをついていく。
木々の間を抜け、獣道を進む。
時々魔物の気配を感じるが、ベルが低く唸るとすぐに逃げていった。
やはりベルは強い。
その存在感だけで他の魔物を寄せ付けない。
「ベル、何か見えるか?」
「マダ……」
ベルが鼻をクンクンと鳴らしながら周囲を確認している。
俺は腕の中の子供ゴブリンを見た。
「ギ……」
子供ゴブリンは不安そうに周囲を見回している。
でも、さっきよりは落ち着いているようだ。
俺の腕の中が安全だと少しずつ理解してきたのかもしれない。
しばらく歩いていると──
「……?」
ベルが立ち止まった。
「どうした?」
「アッチ 岩ガ多イ」
ベルが指さした方向を見る。
確かに木々の向こうに岩肌がむき出しになっている。
「行ってみよう」
「ウン」
岩場へと向かった。
子供ゴブリンを抱えたまま、慎重に足を進める。
やがて、目の前に大きな崖が現れた。
そして──
「あった」
崖の側面に黒々とした穴が開いていた。
洞窟だ。
「おお……!」
俺は近づいて中を覗き込んだ。
暗くて奥が見えない。
でも、入り口は広い。
ベルでも十分に入れそうだ。
「ベル、ちょっと中を確認してくれるか? 熊とか魔物とかいないか見てきてくれ」
「ワカッタ」
ベルが洞窟の中に入っていった。
ドスン、ドスンと足音が響く。
熊とかいたら困るな。でも、追い出すのは可哀そうだから先住民がいたら引き返そう。
……そもそも熊に勝てるのかな?オークと熊……どっちが強いんだろうか。
そんなことを考えていると、しばらくして、ベルが戻ってきた。
「どうだった?」
「広イ! 奥マデ続イテル デモ、魔物イナイ」
「そうか、それは良かった」
魔物がいない洞窟。
これは運が良い。
「中、見テミル」
「ああ、行こう」
俺は子供ゴブリンを抱えたままベルと一緒に洞窟の中に入った。
洞窟の中は、思ったより広かった。
天井は高く、ベルが立っても頭がつかえない。
奥行きもある。
「おぉ……なんか光ってる?」
入り口から10メートルほど進むと少し開けたスペースがあった。
道中は真っ暗闇だが、広間には光る茸が生えていた。
これで視界も確保できる。
「ここなら寝泊まりできそうだな」
「ウン イイ場所」
ベルが満足そうに頷いた。
地面は固いが、草や布を敷けば寝床にできるだろう。
それに──
チョロチョロ……
「お、水もあるのか」
洞窟の奥には小さな水の流れがあった。
岩の隙間から湧き出ているようだ。
俺は水の流れに近づいて、手ですくってみた。
冷たくて綺麗な水だ。
「これなら飲めるな」
「ミズ イイ」
ベルが嬉しそうに水を飲んだ。
俺も子供ゴブリンを降ろし、水を指さした。
「ほら、飲んでみるか?」
「ギ……?」
子供ゴブリンが恐る恐る水に口をつけた。
そして──
「ギ……♡」
嬉しそうに水を飲み始めた。
よっぽど喉が渇いていたのだろう。
ゴクゴクと音を立てて飲んでいる。
「よかったな」
「ギ……ギィ……」
子供ゴブリンが少しだけ笑ったような気がした。
「よし、ここに決まりだ」
俺は洞窟の中を見回した。
広さ、水、安全性。
全て揃っている。
ここならベルとこの子が安心して暮らせるだろう。
「明日、街で寝床用の布とか食料を買ってくるよ」
「レン アリガトウ」
ベルが俺を見た。
「ベルモ安心シテ寝レル!」
ベルが嬉しそうに尻尾を振った。
その時──
「ギ……ギギ……」
子供ゴブリンが小さく鳴いた。
俺を見上げている。
その目には、まだ恐怖が残っている。
でも──
少しだけ、安心したような光も宿っていた。
「よし、お前にも名前をつけてやろう」
「ギ……?」
「名前がないと呼びにくいからな」
俺は考えた。
何がいいだろう。
小さくて、弱くて、でも生き延びようとしているこの子に相応しい名前。
「……リノはどうだ?」
「リノ?」
ベルが首を傾げた。
「ああ。小さくて可愛らしい響きだろ?」
「リノ……」
ベルが頷いた。
俺は子供ゴブリンに顔を向けた。
「お前の名前は、今日からリノだ。いいか?」
「ギ……?」
リノが首を傾げた。
そして──
「リ……ノ……?」
小さな声で自分の名前を呟いた。
「そう、リノだ」
「リノ……リノ……」
リノの顔が少しだけ明るくなった。
「リノ……リノ……♡」
嬉しそうに自分の名前を繰り返す。
なんだか可愛くて俺は笑ってしまった。
「気に入ってくれたみたいだな」
「ギ! ギギ!」
リノが初めて笑顔を見せた。
小さくて不器用な笑顔。
でも確かに笑っていた。
「よかった」
俺はリノの頭を優しく撫でた。
リノはもう怯えていなかった。
────────────────────────────────────────
洞窟を出て俺は少し考えた。
ゴブリンの討伐依頼は──
あ。
「そういえば、ゴブリンを倒してたな」
「ギ?」
リノが首を傾げた。
今日はギルドから依頼を受けてきたんだ。
さっき倒したゴブリンが群れだったのかな?
取り合えず、帰りの途中に耳を取るか。
「ベル、俺はいったん街に戻るよ」
「ソウ……」
「ああ。明日また来るからな。ニクも用意してくるから待っててくれ」
ベルが首を傾げたあと、すぐに納得したように頷いた。
「ニク! ニクホシイ!」
「そうだろ? だからベルはリノと一緒にいて、守っていてくれ。俺が戻るまで」
「ウン、ワカッタ。リノ、守ル」
ベルが力強く頷いた。
俺はリノに向き直った。
「リノ。俺は少しの間いなくなるけど、すぐにまた来るから。ベルと一緒にいるんだぞ」
「ギ……?」
リノが不思議そうな顔をするが、俺とベルのやり取りを見て何かを感じ取ったのか大人しく頷いた。
「ベルの傍にいれば安心だ。明日、美味しいごはんとか持ってくるから」
「……ギィ!」
ごはんと聞いてリノの目が少し輝いた気がした。
現金なやつだ。でも生きる力が強くていい。
「じゃあ、頼んだぞベル」
「マカセテ! レン、気ヲツケテ!」
二人に手を振って俺は洞窟を後にした。
振り返ると大きなオークと小さなゴブリンが並んで俺を見送ってくれているのが見えた。
奇妙な組み合わせだが……なんだか微笑ましい。
新しい家族ができたみたいで、俺は少し温かい気持ちになりながら森を抜けた。
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街に戻った俺は、まず冒険者ギルドに向かった。
腰に括りつけた袋には、ゴブリンの耳が入っている。
帰り際に回収したものだ。
これで依頼完了の報告ができる。
ギルドに入ると昼下がりの喧騒が広がっていた。
「あ、レンさん! お帰りなさい!」
俺の姿を見つけるなり、エマさんがパッと表情を明るくした。
笑顔を見るだけで、森歩きの疲れが癒やされるようだ。
「ただいま、エマさん。依頼の報告に来ました」
「えっ? もうですか!?」
エマさんが目を丸くした。
時計を見ると、依頼を受けてからまだ数時間しか経っていない。
「やっぱりすごいです、レンさん!」
エマさんが尊敬の眼差しを向けてくる。
(レンさん、本当にかっこいい……!)
(仕事も早いし、強いし……完璧……)
(汗の匂い、ちょっとドキドキしちゃう……♡)
心の声が聞こえてくる。
好感度が順調に上がっているようで何よりだ。
……いや、別に彼女を攻略しようとしてるわけじゃないけど。
俺はカウンターにゴブリンの耳が入った袋を置いた。
エマさんが中身を確認し、数を数える。
「はい、確かに確認しました!依頼達成です!」
エマさんが手続きを進め、銀貨を並べてくれた。
「報酬の銀貨20枚です。お疲れさまでした!」
「ありがとうございます」
銀貨を受け取り、懐にしまう。
今日の報酬は銀貨20枚か……。最近金貨を簡単に手に入れていたお陰で銀貨じゃ満足しなくなってきたな。
全部ベルのお陰だけだし、文句は言えないが。
さて、どうしようか。
俺はギルドを出て、空を見上げた。
ベルとリノのために洞窟に必要なものを揃えたい。
毛布に、食べ物に……その他もろもろだ。
まぁでも、それは明日の朝でいいか。荷物が増えるしな。
その前に──
ソフィア嬢のことが気になる。
毎日顔を出すと約束したし。
あぁそうだ。
解毒ポーション的なものがあれば買って行ってあげよう。
毒の大元……イザベラの投薬を止めないと完治はしないだろうが……それでも少しは調子が良くなるかもしれない。
一時的だろうけど、何もしないよりはマシだ。
弱り切った笑顔を思い出すと、じっとしていられない。
解毒ポーションが売っていそうな店を探そうか。
俺は大通りを歩き、店を探す。
だけど……
「しまったな……エマさんにポーションが売ってる店を聞かばよかった……」
この街に詳しくない俺が店を探そうとしても全然見つからない。
そもそもポーションは何処に売ってるんだ?教会……?いや、教会には気軽に足を運べない……。
そうして俺が街を練り歩いている時だった。
「ん?」
ふと、ぼろぼろの立札が目に入る。
文字ではなく、ポーションの絵が描いてある立札だ。
その奥には汚くて薄暗い路地裏が見える……。
「……」
なんか怪しい……いや、怪しすぎる。
でも……他になさそうだし行くしかないか。
警戒しながら進む。
薄暗い路地の奥にその店はあった。
蜘蛛の巣が張ったショーウインドウには、怪しげな水晶玉や干からびたトカゲの尻尾のようなものが飾られている。
魔法道具店 深淵の店
……名前からして怪しい。化け物とかいないよな?
だが、背に腹は代えられない。
俺は意を決して、重たい木製の扉を押し開けた。
ギギギィ……と錆びついた蝶番が悲鳴を上げる。
「いらっしゃい……」
店内は薄暗く独特のハーブと埃の混じった匂いが漂っていた。
カウンターの奥からしわがれた声が響く。
そこにいたのは一人の老婆だった。
フードを目深に被り顔の半分以上が影に隠れている。
手には杖を持ち、魔女のような風貌だ。
「あのぅ……解毒ポーションを探しているんですが」
俺は用件を伝えた。
老婆はゆっくりと顔を上げ、俺の方をじっと見つめた。
その瞬間、俺は違和感を覚えた。
いつものように鑑定スキルが発動する感覚がない。
……あれ?いつもなら自動発動するのに。
俺は意識して彼女を見つめた。
【鑑定結果】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(鑑定不能)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
え……?
今までは、女性相手なら勝手に発動したのに。
なのに、何も表示されない。
なぜだ?
彼女はどう見ても女性だ。おばあさんだけど。
メスであれば魔族や魔物にも効くはずなのに。
……もしかして、人間じゃないのか?
それとも、何か特別な防御魔法でも使っているのか……?
「解毒ポーションかね」
俺の動揺をよそに、老婆が口を開いた。
「あるよ。とびきり上等なやつがね」
老婆がカウンターの下から小さな瓶を取り出した。
透き通るような青色の液体が入っている。
「私が調合したものさ……そこらの安物とはワケが違うよ」
「……それはいくらですか?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「金貨1枚だ」
「えっ……」
普通の回復ポーションなら銀貨数枚で買えるはずだ。
ぼったくりにも程がある。
「た、高くないですか?」
「嫌なら他をあたりな。もっともお前さんが治したい相手の毒は、普通のポーションじゃ治せないだろうがね」
「ッ!?」
俺は息を呑んだ。
なぜ、それを……?
俺はまだ何も言っていない。
誰のために買うのかもどんな症状なのかも。
老婆の口元がニヤリと歪んだように見えた。
「買うのかい? 買わないのかい?」
老婆が急かすように杖で床を突いた。
「……」
金でソフィア嬢の健康が買えるなら、安いものだ。
俺には運良く手に入れた金貨がある。
ここでケチって後悔したくない。
でも、この老婆が作ったポーションは信用できるのだろうか?
分からない。
でも……今はこの手段しかない……。
「……買います。金貨1枚ですね」
俺は懐から金貨を一枚取り出し、カウンターに置く。
「ヒヒッ……毎度あり」
老婆が枯れ木のような手で金貨を素早く掠め取った。
そして、ポーションを俺の方へ滑らせる。
「いい買い物をしたね。それはきっと役に立つよ」
俺はポーションをひったくるように受け取った。
なんだか釈然としないが、品物は手に入った。
「どうも」
俺は短く礼を言って、早足で店を出た。
背中で老婆の不気味な笑い声が聞こえた気がした。