※この作品はR-18です。

俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~   作:フレキシブルコーギー

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38.私でよければ、お話をお聞きしますよ。貴女のような美しい御方は笑うべきです。

 楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。

 気づけば日が傾き始めていた。

 

 洞窟の外を見ると夕日が森を赤く染めている。

 

「そろそろ帰らないとな」

 

 俺が立ち上がると、ベルとリノも名残惜しそうに立ち上がった。

 

「レン、帰ッチャウノ」

 

 ベルが寂しそうに耳を垂れた。

 

「ああ。明日もあるからな。それに、あまり遅くなると街の門が閉まっちゃうし」

 

「ソウ……」

 

「ギ……」

 

 リノも俺の足にしがみついて、離れようとしない。

 

 俺は二人の頭を順番に撫でた。

 

「またすぐ来るよ。明日も美味しいもの持ってくるから」

 

「ホント? 明日モ?」

 

「ああ、約束だ」

 

「アリガトウ!」

 

 ベルが嬉しそうに俺に抱きついてきた。

 オークの巨体と筋肉、そして豊かな胸の感触が全身を包む。

 

「ギギッ! レン……!」

 

 リノも負けじと抱きついてくる。

 俺は二人を抱きしめ返した。

 

「じゃあな。二人とも、気をつけるんだぞ」

 

「ウン! レンモ、気ヲツケテ!」

 

「ギッ!」

 

 俺は名残惜しさを感じながらも、別れた。

 

 振り返ると、ベルとリノが洞窟の入口で見送ってくれている。

 二人の姿が見えなくなるまで俺は何度も手を振った。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 帰りの道は行きよりも足取りが軽かった。

 ……荷車も肉と荷物がなくなったお陰で、森でもなんとか引いてこれた。

 

 心が軽かった。

 ベルとリノが喜んでくれたことが、何よりも嬉しかった。

 

 森を抜け、街の門を通る。

 衛兵に見咎められることもなく無事に街の中へと戻ってきた。

 

 まずはマルタさんの店に行き、借りていた引き車を返却した。

 

「助かりました、マルタさん。これのおかげで楽に運べました」

 

「そりゃよかった。またいつでも使いなよ、坊や」

 

 マルタさんは笑顔で迎えてくれた。

 忙しそうだったので長話はできなかったが、彼女の気遣いがありがたい。

 

 さて。

 まだ完全に日が沈むまで時間がある。

 

 俺はソフィア嬢の様子を見に行くことにした。

 

 昨日渡したポーション。

 あれは効いたのか?あの後は眠ったようだが……その後の経過が気になる。

 それにイザベラの動きも気掛かりだ。

 

 俺は屋敷に向けて歩き出した。

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 クロイツェル伯爵家の屋敷へと続く並木道。

 夕日に照らされた石畳を歩いていると前方に屋敷の正門が見えてきた。

 

 そこにはいつもの門番が立っている。

 

 だが──

 

 門から、一人の男が足早に出てきた。

 

 若い男だ。

 身なりは良い。上質な生地の服を着ている。

 おそらく商人だろう。

 年齢は20代半ばくらいか。整った顔立ちをしているが、どこか神経質そうな印象を受ける。

 

 男は何かブツブツと呟きながら、怒ったような様子で早歩きに去っていく。

 

「ふざけるな……あの女……」

「金なら返しただろう……これ以上……くそっ」

 

 すれ違いざま、そんな不穏な言葉が耳に入った。

 男は俺のことなど目に入らない様子で、そのまま通り過ぎていった。

 

 ……なんだ今の男?

 

 俺は足を止め、男の背中を見送った。

 明らかに機嫌が悪そうだった。

 そして、あの口ぶり。

 

『あの女』

 

 この屋敷で商人がそう呼び捨てにするような相手。

 ソフィア嬢であるはずがない。

 

 だとしたら──イザベラか。

 

 俺は再び屋敷の方へ向き直った。

 

 門番が立っている。

 彼は去っていった男の方を、不快そうに顔を歪めて見送っていた。

 

 ゴミでも見るような目だ。

 

 俺が近づくと、門番がこちらに気づいた。

 

「……あぁ、アンタか」

 

 門番が気だるげに言った。

 

「こんばんは。精が出ますね」

 

「そうかね。ただ立ってるだけだってのに、変なのが出入りしてうるさくて敵わないが」

 

 門番がポリポリと頭を掻いた。

 

 俺は去っていった男の方を親指で指した。

 

「変なのって、さっきの人ですか?」

 

「……あぁ、そうだ。あの商人野郎のことさ」

 

 門番が吐き捨てるように言った。

 その表情には明らかな嫌悪感が浮かんでいる。

 

「最近は毎回あのアマ──」

 

 門番がそこまで言って、ハッと口を押さえた。

 

「……いや、奥様の部屋から怒鳴り声が聞こえてくるらしい」

 

 あのアマ、か。

 使用人たちからの人望の無さがよく分かる。

 

 門番は周囲を警戒するように左右を見回してから、声を潜めた。

 

「……あいつはイザベラの愛人でな」

 

「愛人……」

 

「ああ。屋敷中の使用人が知ってる。伯爵様だけが知らないんじゃないかってくらいだ」

 

 門番が苦々しい表情で続けた。

 

「金だか何だかで喚いてたって、メイドたちが噂してたよ。『約束が違う』だの『もう構わないでくれ』だの」

 

 なるほど。

 前に鑑定で見たイザベラの愛人か。でも、どうやら関係は良好ではないらしい。

 

 ……しかし、どういうことだろうか。

 前にイザベラを見た時に発動した鑑定では、あの愛人は金目当てだったような気がしたが……。

 もう金でも繋ぎ留められないくらい関係が悪化してるのか?

 

「……すまん、口が滑った。このことは……」

 

「もちろん。誰にも言いません」

 

「……助かるよ」

 

 門番がほっとしたように表情を緩めた。

 

「で? アンタまたお嬢様の所か?」

 

「ええ。様子が気になりまして」

 

「ありがたいな……アンタなら大歓迎だ。さぁ、通ってくれ」

 

「ありがとうございます」

 

 俺は門番に一礼して、門をくぐった。

 

 屋敷に入る。

 そして廊下を進む。

 屋敷の中は静まり返っていた。

 

 ソフィア嬢の部屋は二階だ。

 

 俺は階段を上がり、廊下を歩く。

 

 その時──

 

 ふと、どこからか香水の強い匂いが漂ってきた。

 

 甘ったるい濃厚なバラの香り。

 安物ではないが品がないほどに強い香りだ。

 

 そして──

 

 カツ、カツ、カツ。

 

 ヒールの音が近づいてくる。

 

 前方から誰かが来る。

 現れたのは──

 

 派手なドレスに身を包んだ女性。

 

 イザベラだ。

 

 前回と同じく扇子をパタパタと仰ぎながら、不機嫌そうに歩いてくる。

 

 いや、不機嫌どころじゃない。

 明らかに激怒している。

 

 顔は紅潮し、扇子を持つ手が小刻みに震えている。

 ヒールの音も昨日よりずっと荒々しい。

 

 そして──

 

 鑑定スキルが自動的に発動した。

 

 

【リアルタイム鑑定】━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

【現在の状態】

性欲:95/100(限界寸前)

欲求不満度:98/100(危険域)

イライラ度:MAX

殺意:60/100(上昇中)

 

【身体状態】

膣の状態:濡れているが相手がいない(欲求不満)

乳首:勃起(性的興奮)

体温:やや高め(性的欲求による)

 

【心の声】

(……チッ、あの役立たずが……!)

(明らかに私を避けてる……! あの若造……!)

(……いっそ、今夜ソフィアに大量の毒を飲ませてやろうかしら)

(あの娘と伯爵さえいなくなれば、遺産は全部私のもの……)

(そうすれば、マルコももっと私に優しくしてくれるはず……)

 

【特記事項】

・愛人マルコとの関係が急速に悪化

・セックスを拒否され、極度の欲求不満状態

・ソフィアへの殺意が高まっている

・今夜にも毒殺を実行する可能性:高

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 ……ッ!

 

 今夜、毒を盛る!?

 

 しかも大量に!?

 

 俺は背筋が凍る思いがした。

 

(どうする……?どうすればいい……!?)

 

 ここで、この女をなんとかしないと。

 

 その時、俺の脳裏に危険な考えが浮かぶ。

 

 ──殺すか?

 

 だが、その思考に思い至った瞬間、俺は冷静になる。

 

(お、俺は今、なにを考えて……)

 

 殺す……?

 

 俺が、彼女を?

 

 いくら悪人とはいえ、人間を殺す?

 

 なぜ、そんな思考になってしまうんだ。こんなに容易く。

 ソフィア嬢を守るためとはいえ、そんなことは許されない。

 

「……」

 

 そうしてイザベラは俺の前を通り過ぎようとして──

 

 ピタリと足を止めた。

 

「……あら?」

 

 冷たい視線が俺に向けられた。

 

 見下すような値踏みするような目だ。

 だが、昨日とは違う。

 瞳の奥にギラギラとした何かが燃えている。

 

「貴方……あぁ、レンとか言ったわね」

 

 イザベラが扇子で口元を隠しながら、尋ねてきた。

 

 俺は深く頭を下げたまま答えた。

 

「……今日もソフィアお嬢様のお見舞いに参りました」

 

「ふぅん」

 

 イザベラの眉がピクリと動いた。

 

(またソフィア……どいつもこいつもソフィアばっかり気にして!)

(まあいいわ、どうせあの娘は今夜で終わりよ)

(勝手にさせておけばいいわ。明日の朝には死体になってるだろうから)

 

 心の声が聞こえる。

 

「……」

 

 俺は怒りを抑え込んで、平伏したまま動かなかった。

 

 何か……何か手はないのか……!?

 

 ──その時だった。

 

 鑑定スキルが、再び反応した。

 

 

【鑑定・推奨行動】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

イザベラは極度の欲求不満と承認欲求の塊。

彼女の機嫌を取り、欲求不満を解消させることで今夜の毒殺を延期させることができる可能性があり。

 

★推奨台詞★

 

「失礼ですが……イザベラ様は本当にお若くてお美しいですね」

 

注意:彼女の承認欲求を満たすことが最優先。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 ……推奨台詞!?

 

 鑑定スキルが、俺に台詞を教えてくれている!?

 

 そんな機能まであったのか……!?

 いや……これまでにも何度か鑑定が俺を導いてくれたことはあった。

 

 一体、誰なんだ。これを書いているのは。

 

 だが、これは……。

 

 イザベラを誘惑しろってことか?

 

 俺は一瞬躊躇した。

 

 でも──

 

 ソフィア嬢を救うためなら、何だってする。

 たとえそれが悪魔に魂を売ることだとしても。

 

 俺は意を決して、顔を上げた。

 

 ──鑑定の通りに、動く。

 

「それはそうと──」

 

 イザベラが俺の方を見た。

 俺は鑑定スキルが表示した台詞を、そのまま口にした。

 

「イザベラ様は本当にお若くてお美しいですね」

 

 イザベラの眉がピクリと動いた。

 

「……え?」

 

 彼女の表情が、わずかに和らいだ。

 

(……何よ、急に)

(ご機嫌取り?なんでいきなり?……でも、昨日も私を褒めてたわね。じゃあ、本音かしら?)

(まぁ、悪い気はしないわ。本当のことだけど)

 

 心の声が聞こえる。

 

 効いてる……!

 

【リアルタイム更新 推奨台詞・貴女のような魅力的な女性を、何故みんな放っておくのでしょうか。俺には理解できません】

 

 俺は鑑定がリアルタイムで表示してくる台詞を言った。

 

「貴女のような魅力的な女性を、何故みんな放っておくのでしょうか。俺には理解できません」

 

 イザベラの瞳が、わずかに揺れた。

 

「……ふふ、口が上手いのね」

 

 彼女が扇子で口元を隠しながら、少し嬉しそうに微笑んだ。

 

(この子……やっぱり見る目があるじゃない)

(若い男の子に褒められるのっていいわ……♡)

(もっと言いなさい……♡)

 

 心の声が、明らかに好転している。

 

【リアルタイム更新 推奨台詞・いえ、本心です。俺の知るどんな女性よりも、イザベラ様は若々しくてお綺麗ですので】

 俺はさらに続けた。

 

「いえ、本心です。俺の知るどんな女性よりも、イザベラ様は若々しくてお綺麗ですので」

 

「あら……まあ、嫌だわこの子ったら」

 

 イザベラの唇が吊り上がり、扇子で隠しながらも満更でもない様子を見せた。

 先ほどまでの刺すような敵意が、明らかに和らいでいる。

 

(この子可愛いわね)

(マルコみたいに私を邪険にしないし……)

(もっと褒めてくれてもいいのよ……?)

 

 心の声がどんどん柔らかくなっていく。

 

 イザベラが一歩、俺に近づいてきた。

 濃厚な薔薇の香りが強くなる。

 

「急にそんなこと言ってくるだなんて……あなたもしかして、純朴そうに見えて女ったらし?」

 

【リアルタイム更新 推奨台詞・私は思ったことを言ってしまう体質なので……申し訳ございません】

 

「私は思ったことを言ってしまう体質なので……申し訳ございません」

「謝ることはないのよ……正直者ってことでしょ?好きよ、そういうの……」

 

 イザベラは意味深に微笑むと、俺の肩に手を触れた。

 だが、俺は逃げなかった。

 

 そして──最後の台詞を言った。

 

【リアルタイム更新 推奨台詞・──しかし、何かお怒りのご様子】

 

「──しかし、何かお怒りのご様子」

 

「え……?」

 

 イザベラが驚いたように目を見開いた。

 

【リアルタイム更新 推奨台詞・私でよければ、お話をお聞きしますよ。貴女のような美しい御方は笑うべきです。……ソフィアお嬢様の様子を見てからでもよろしければですが】

 

「私でよければ、お話をお聞きしますよ。貴女のような美しい御方は笑うべきです。……ソフィアお嬢様の様子を見てからでもよろしければですが」

 

 俺はできるだけ優しく、心配するような表情を作った。

 

 イザベラの瞳が、揺れた。

 

(……この子、なに?もしかして誘ってるの?)

(話を聞いてくれるって……何が目的?)

(あの男……マルコは私の話なんて全然聞いてくれないのに……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 イザベラは少し考えるように俯いた。

 

 そして──

 

「……そうね。ソフィアの様子を見てきたら、私の部屋に来なさい」

 

「はい」

 

「愚痴くらい聞いてもらってもいいわよね。貴方、優しそうだし」

 

 イザベラが扇子で口元を隠しながら微笑んだ。

 

(ま、こんなに褒めてくるんなら話し相手くらいにはなってやろうかしら)

(マルコの代わりに愚痴を聞いてくれるかもしれないし)

(こいつ、よく見たらマルコより若いし……ふぅん……)

 

 心の声が明らかに変わっている。

 

 殺意が……下がっている。

 

 イザベラは俺の頬に手を伸ばし、軽く撫でた。

 

「じゃあ、待ってるわ。あまり長くしないでね」

 

 そう言うと、イザベラは優雅に身を翻した。

 

 カツ、カツ、カツ……。

 

 ヒールの音が遠ざかっていく。

 

 だが、先ほどまでの荒々しさはなく、どこか軽やかな音だった。

 

 俺はイザベラが角を曲がって見えなくなるまで、その場に立ち尽くしていた。

 

 ……やった。

 

 鑑定スキルの推奨台詞が効いた。

 

 イザベラの機嫌を取ることに成功した。

 

 だが──

 

 これは一時しのぎに過ぎない。

 

 根本的な解決にはなっていない。

 

 それに、俺はイザベラの部屋に行くと約束してしまった。

 

 あの女と二人きりで部屋にいる……。

 鑑定は俺に何をさせようとしているのだろう。

 

「……」

 

 だが、ソフィア嬢を救うためなら仕方ない。

 彼女の為なら、俺は何でもしてやる。

 

 俺は深呼吸をしてソフィア嬢の部屋へと向かった。

 

 まずは彼女の様子を確認しないと。

 

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