俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
ソフィア嬢の部屋の前に立つ。
深呼吸をして、心を落ち着ける。
俺は扉をノックした。
コンコン。
「ソフィアお嬢様、レンです」
中から、返事が聞こえた。
「レン様……! どうぞ、お入りください!」
その声は──
明るかった。
昨日よりもずっと明るくて、力強い声だった。
俺は驚きながら、扉を開けた。
そして──
「レン様……! お待ちしておりました!」
ベッドの上で身体を起こしているソフィア嬢の姿が目に飛び込んできた。
……え?
俺は思わず足を止めた。
ソフィア嬢が自分で身体を起こしている。
昨日は起き上がることすらままならなかったのに。
それだけじゃない。
顔色が全然違う。
昨日の青白く病的な肌ではなく、ほんのりと血色が戻っている。
頬にもわずかに赤みが差している。
瞳にも生気が宿っていて──。
「ソフィアお嬢様……?」
俺は信じられない思いで、彼女に近づいた。
「レン様、見てください! 今日はこんなに元気なんです!」
ソフィア嬢が嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔は昨日の儚げなものではなく、少女らしい明るさに満ちていた。
「昨日、レン様がくださったあの湧き水……あれを飲んでから身体がとっても楽になったんです!」
「本当ですか……!?」
「はい! 夜もぐっすり眠れましたし、朝起きたら身体がとっても軽くて……!」
ソフィア嬢が両手をぎゅっと握りしめて、喜びを表現する。
「息をするのも、昨日より全然楽なんです! それにご飯も少し食べられました!」
「ご飯を……」
俺は心の中で歓喜した。
効いた……!
あのポーションが、効いたんだ……!
その時──
鑑定スキルが自動的に発動した。
【鑑定結果】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【基本情報】
名前:ソフィア・ヴァン・クロイツェル
種族:人間(貴族)
職業:伯爵家令嬢
身長:141cm
体重:38kg(かなり痩せている)
スリーサイズ:B72/W52/H75
処女:Yes(純潔)
経験人数:0人
【身体状態】
状態:衰弱(中度)← 昨日:衰弱(重度)
【心の声】
(嬉しい……! こんなに身体が楽になるなんて……!)
(レン様がくださったあの水……本当に神様の力があったんだわ……!)
(もっと元気になって、レン様とお外に行きたい……!)
(レン様に、もっとお話を聞かせていただきたい……!)
【特記事項】
・ポーション投与により毒素が大幅に減少
・完全な解毒には至っていない(継続的な投与が必要)
・栄養状態が改善し、身体機能が回復傾向
・精神状態も大幅に改善
【推奨行動】
・ポーションの継続投与(2〜3日に1回)
・毒の供給源(イザベラ)の排除が最優先
・栄養価の高い食事の摂取を推奨
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……すごい。
あのポーションは、本物だったんだ。
ただし──
完全には治っていない。
そして、推奨行動には「毒の供給源の排除」と書いてある。
やはり……イザベラを何とかしない限り、根本的な解決にはならない。
だが、今は──
今はソフィア嬢の回復を喜ぼう。
「レン様……? どうかなさいましたか?」
ソフィア嬢が不思議そうに俺を見つめている。
俺は慌てて笑顔を作った。
「いえ、何でもありません。ソフィアお嬢様がお元気そうで本当に嬉しいです」
「ありがとうございます……!」
ソフィア嬢が満面の笑みを浮かべた。
俺は椅子に座り、彼女の傍に寄った。
「でも、無理はしないでくださいね。まだ完全に治ったわけではないですから」
「はい、分かっております。でも……本当に嬉しいんです」
ソフィア嬢が両手を胸の前で組んだ。
「昨日まで、私……もう長くないんだって、分かっていました」
「ソフィアお嬢様……」
「お父様も、使用人の方々も皆優しくしてくださるけれど……優しさの裏に諦めの色が見えていたんです」
彼女の瞳が少し潤んだ。
「でも、レン様は違いました。レン様は私に希望をくださったんです」
「……」
「レン様の素敵なお話は……私に生きる希望を与えてくれた……」
ソフィア嬢が俺の手を、そっと握った。
細くて、温かい手。
昨日は冷たかったのに、今日はちゃんと体温がある。
「ありがとうございます、レン様。私……レン様のおかげで、まだ生きていたいって思えるようになりました」
彼女の言葉が、胸に突き刺さる。
俺は……この子を救ってみせる。
イザベラなんかに殺させない。
「ソフィアお嬢様。俺は貴女を必ず元気にします。だから……諦めないでください」
「はい……!」
ソフィア嬢が頷いた。
そして──
「今日も、お話を聞かせていただけますか? レン様の冒険譚……大好きなんです」
「もちろん」
俺は優しく微笑んで、彼女の手を握り返した。
そして、今日の冒険譚を語り始めた。
──森の奥深くに住む、優しい魔物たちの話。
──人間に怯えながらも、懸命に生きる彼らの姿。
──そして、種族を超えた友情の物語。
ソフィア嬢は、目を輝かせながら聞いていた。
時折「まあ……!」とか「素敵です……!」とか、感嘆の声を漏らす。
表情は本当に楽しそうだった。
病気のことなんて忘れてしまったかのように。
俺は語り続けた。
彼女が笑顔でいられる時間を、少しでも長くするために。
そして──
物語が終わりに近づいた頃。
ふと、ソフィア嬢が俺を見つめて言った。
「レン様……私、夢があるんです」
「夢……ですか?」
「はい。いつか、元気になったら……レン様と一緒にお外に行きたいんです」
彼女の瞳が遠くを見つめる。
「この部屋の窓からしか見たことのない、広い空の下を……レン様と一緒に歩いてみたいんです」
「……」
「街の市場を見て、森の中を散歩して、川のせせらぎを聞いて……。レン様がお話ししてくださった素敵な世界をこの目で見てみたいんです」
ソフィア嬢が、少し照れたように微笑んだ。
「わがままですよね。こんな身体で」
「いえ」
俺は力強く首を振った。
「わがままなんかじゃありません。きっと叶う」
「本当ですか?」
「ええ。俺が、必ず叶えてみせます」
俺はソフィア嬢の手を握りしめた。
ソフィア嬢が満面の笑みを浮かべる。
(……そういえば、今日は伯爵はいないのかな?)
俺はふと思い出してソフィア嬢に尋ねた。
「ソフィアお嬢様……伯爵様は今日はいらっしゃらないんですか?」
「お父様ですか?えぇ。お父様は今日、領地の視察に出ていて……」
ソフィア嬢が少し寂しそうに微笑んだ。
「今日は帰れないそうです。一緒にいて欲しいけど……お仕事がありますから」
「そうなんですか……」
俺は頷いた。
伯爵も大変だ。
本当は娘の傍にいてやりたいと思っているだろうに。
貴族ともなると、俺の知らない苦労なんかも沢山あるんだろう。
領地の管理、他の貴族との付き合い……。
きっと休む暇もないんだ。
だが──
俺は何かに気づいた。
(合点がいった)
伯爵がいないからこそイザベラはマルコを呼び寄せたり、俺を誘ったりしているんだ。
とんでもない女だが……。
これはチャンスだ。
伯爵がいなければあの女を何とかできるかもしれない。
証拠を掴むなり、直接対決するなり……。
だが、具体的にどうすればいいかは……。
(鑑定に頼るしかない)
俺は心の中で呟いた。
どうやってイザベラに毒の投与をやめさせるのか。
殺すわけにはいかない。それは俺の良心が許さない。
かといって伯爵に直接告発しても、証拠がなければ信じてもらえないかもしれない。
イザベラは伯爵の妻で俺はただの冒険者だ。
立場が違いすぎる。
(……)
考えても答えは出ない。
取り敢えずソフィア嬢に別れを告げよう。
ポーションは効いたが、鑑定によるとまだ継続投与は続けなきゃならない。
怪しげな老婆の店にも行かなくちゃならないし、イザベラも何とかする……。
やることは山ほどある。
俺は立ち上がり、ソフィア嬢に向き直った。
「ソフィアお嬢様。そろそろ失礼します」
「もうですか……?」
ソフィア嬢が少し残念そうな顔をした。
「でも、また明日も来ます」
「本当ですか!?」
「ええ。約束します」
俺は優しく微笑んだ。
「それに、あの湧き水……まだ手に入るかもしれません。もし手に入ったら、また持ってきますね」
「ありがとうございます、レン様……!」
ソフィア嬢が嬉しそうに顔を輝かせた。
「レン様がいてくださるだけで、私……本当に嬉しいんです」
「俺もソフィアお嬢様とお話しできて嬉しいです」
俺は彼女の手を、もう一度握った。
「じゃあ、また。無理はしないでくださいね」
「はい! レン様も、お気をつけて!」
ソフィア嬢が手を振ってくれる。
俺は部屋を出た。
「……」
扉を閉めると廊下の静寂が戻ってきた。
俺は大きく深呼吸をした。
「……さて」
次はイザベラの部屋だ。
あの女と二人きり。
ソフィア嬢を救うためなら、俺は何だってする。
俺は廊下を歩き出した。
イザベラの部屋は……どこだろうか。
使用人がやけに少ない……というか見当たらないので場所も聞けない
もしかして今日は愛人と会う日だから使用人の数も最小限にしてるのかもしれないな。
だが──好都合だ。
大きな音を出しても誰も気づかない。
「取り合えず歩いて探すか……」
豪華な装飾が施された廊下を進んでいくと、やがて大きな扉が見えてきた。
扉の前で俺は再び深呼吸をした。
心臓がドクドクと激しく鳴っている。
緊張しているのか、それとも怒りなのか。
多分、両方だ。
俺は扉をノックした。
コンコン。
「イザベラ様、レンです。約束通り参りました」
中からすぐに返事が聞こえた。
「どうぞ、入りなさい」
甘ったるい、蠱惑的な声。
俺は扉を開けた。
そして──
目の前に広がったのは驚くほど豪華な部屋だった。
大きな天蓋付きベッド。
金糸で刺繍された赤いカーテン。
壁には高価そうな絵画が飾られている。
部屋の中央には、ソファとテーブルが置かれていた。
そして──
ソファにイザベラが座っていた。
先ほどまでのドレスではなく、薄手のガウンのような服に着替えている。
肩が露わで胸元も大きく開いている。
濃厚なバラの香水の匂いが部屋中に充満していた。
「いらっしゃい、レン」
イザベラが扇子で口元を隠しながら、艶っぽく微笑んだ。
「さあ、こちらに座りなさい」
彼女がソファの隣を指差す。
俺は一瞬躊躇したが、覚悟を決めて部屋に入った。
扉が背後で閉まる音がした。