※この作品はR-18です。

俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~   作:フレキシブルコーギー

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47.今だ、ベル!!

 ベルがホーンラビットに向かって突進した。

 

 ドドドドッ!

 

 地面が揺れる。

 

 オークの巨体が、猛スピードで駆ける。

 ベルが拳を振り上げた。

 

 そして──

 

 ホーンラビットの横っ腹に、ベルの拳が叩き込まれた。

 

「よし!」

 

 俺は思わず声を上げた。

 

 やった。

 

 ベルの一撃が決まった。

 

 これで──

 

 だが。

 

 ホーンラビットは、すぐに立ち上がった。

 

「……!」

 

 俺は息を呑んだ。

 

「まだ、倒れない……?」

 

 ホーンラビットが、ベルを睨んだ。

 

 赤い目がさらに光を増した。

 

 怒っている。

 

 そして──跳んだ。

 

 すごい速度で。

 ベルに向かって。

 角を突き出して。

 

「ベル! 避けろ!」

 

 俺が叫ぶ。

 ベルが反射的に身体を捻った。

 ギリギリで角をかわす。

 

 だが──

 

 ホーンラビットの後ろ足が、ベルの肩を蹴った。

 

「グ……!」

 

 ベルが呻いた。

 

 身体がよろめく。

 

 ホーンラビットは着地するとすぐに反転した。

 

 そして、再びベルに突進する。

 

 速い。

 速すぎる。

 

 角と拳が、激しくぶつかり合う。

 

 一進一退。

 どちらも、譲らない。

 

「……!」

 

 俺は唖然とした。

 

 嘘だろ。

 ベルと互角……?

 

 ベルは強い。

 

 オークだから力も強いし、戦闘慣れもしている。

 

 それなのに……なんて強さなんだ。

 

 激しい攻防が続く。

 

 ベルの拳がホーンラビットの身体を捉える。

 ホーンラビットの角がベルの腕を掠める。

 お互いに傷を負いながらも、戦い続けている。

 

「くそっ……!」

 

 俺は焦った。

 

 このままじゃ、まずい。

 ベルが疲弊してしまう。

 俺もなんとかして援護しないと。

 

 でも、どうやって?

 

 俺には戦う力がない。

 

 あるのは──

 

 【鑑定】だけ。

 

 メスにしか効かない鑑定。でも……あいつはオスだ。

 

 完全に無力だ。

 

「くそっ……!」

 

 俺は歯噛みした。

 

 役立たず……!

 この鑑定は本当に役立たずだ。

 

 そして、俺も……。

 

「ブゴォォ!!」

 

 ベルとホーンラビットが、激しくぶつかり合っている。

 ベルの息が、荒くなってきている。

 

 疲れてきているのが分かる。

 

 まずい。

 

 このままじゃ──

 

 その時だった。

 

「ギ……ギギ……!」

 

 小さな声が聞こえた。

 

 俺は振り向いた。

 

 リノだ。

 

「リノ……?」

 

 リノが、何かをしようとしている。

 

 その顔は、恐怖に引きつっていた。

 

 でも、同時に──

 

 強い意志が宿っていた。

 

(コワイ……コワイ……デモ)

(ベル、助ケナキャ……)

 

 心の声が聞こえる。

 

 リノが勇気を振り絞っている。

 小さな身体で恐怖に震えながらも。

 

 ベルを助けようとしている。

 

「リノ、危ない! 下がって──」

 

 俺が叫ぶ。

 

 だが、リノは止まらなかった。

 

「……ギィ!!」

 

 リノが叫んだ。

 

 その瞬間──

 

 リノの手から、火が放たれた。

 

 ボッ!

 

 小さな火球。

 弱々しい炎。

 だが、確かに魔法だ。

 

 火球が、ホーンラビットに向かって飛んでいく。

 

 そして──

 

 パシッ!

 

 ホーンラビットの背中に当たった。

 

 爆発はしない。

 ダメージもほとんどない。

 弱い魔法だ。

 

「……!」

 

 ホーンラビットが、動きを止めた。

 

 そしてリノの方を向いた。

 

 赤い目がリノを捉えた。

 

 グルルル……。

 

 低い唸り声。

 

 ホーンラビットが、リノに向かって一歩踏み出した。

 注意がリノに向いた。

 ベルから意識が逸れた。

 

「リノ!」

 

 俺は叫んだ。

 

 ホーンラビットがリノを狙っている。

 

 小さな身体で、あの化け物の攻撃を受けたら──

 

 即死だ。

 間違いなく、即死だ。

 

「リノ、逃げろ!」

 

 俺が叫ぶ。

 

 だが、リノは動けなかった。

 恐怖で、身体が固まっている。

 小さな身体が、ガタガタと震えている。

 

(コワイ……コワイ……)

(動ケナイ……)

 

 心の声が聞こえる。

 リノが恐怖に支配されている。

 

 俺の身体が、勝手に動いた。

 

 考えるより先に。

 俺はリノの前に飛び出していた。

 

「レン!?」

 

 ベルの声が聞こえる。

 

 でも、もう遅い。

 ホーンラビットの角が、目の前に迫っている。

 

 速い。避けられない。

 

 次の瞬間だった。

 

「……っ!」

 

 ものすごい衝撃音が響いた。

 

 だが──

 痛みはない。

 俺は、目を開けた。

 

 そこには……。

 

「ベル……!?」

 

 ベルがいた。

 

 俺とホーンラビットの間に割って入っていた。

 

 ベルの太い腕が、ホーンラビットの角を掴んでいた。

 力任せに止めている。

 

ギリギリギリ……。

 

 ベルの腕が、震えている。

 ホーンラビットが、角を押し込もうとしている。

 

 ベルが俺を守ってくれた。

 自分の身を挺して。

 

「グ……ウゥゥ……! オォォォッ!!」

 

 ベルが呻き声を上げ、渾身の力を振り絞ってホーンラビットを正面から押し返した。

 

 ズザザッ!

 

 土煙を上げてホーンラビットが後方へ弾き飛ばされる。

 二匹の間に再び距離が生まれ、互いの出方を窺うように激しい睨み合いが始まった。

 

 ベルの額からは汗が流れ、必死に息を整えている。

 

(レン……守ル……)

(リノモ……守ル……)

 

 何かをしないと。

 何かできることを──

 

 考えろ。

 

 考えろ。

 

 何か、方法があるはずだ。

 

 俺にも、できることが──

 

 その時だった。

 俺の視界に、突然文字が浮かんだ。

 

 

 

【鑑定より緊急提案】━━━━━━━━━━━━━━━━

 

対象:レン(使用者本人)

状況分析:ホーンラビット戦闘継続中

ベルの疲弊度:67%(このまま継続すると10分以内に戦闘不能の可能性)

 

【推奨行動】

 

①今すぐ左手側の大木の後ろに回り込む

②地面に落ちている枯れ枝を拾う(長さ1メートル以上のもの)

③ベルが攻撃を仕掛けるタイミングに合わせ、ホーンラビットの右後ろ脚を枝で思い切り叩く

④ホーンラビットの注意を分散させることでベルの攻撃精度が上がる

 

注意事項

直接戦闘は厳禁。あくまで注意散漫を狙うこと。

レンの現在の戦闘力ではダメージを与えることは不可能。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

「……え?」

 

 俺は目を瞬かせた。

 

 ホーンラビットの弱点とかじゃない。

 

 俺自身の動き方だ。

 ベルを援護するために、俺がどう動けばいいか。

 

 ありがたい。

 本当に、ありがたい。

 

「……分かった!」

 

 俺は小さく呟いた。

 

 やってやる。

 俺にできることをやってやる。

 

 俺は鑑定の指示を頭に叩き込んで動いた。

 まず、左手側の大木を確認する。

 

 ある。

 

 太い幹の木が、ホーンラビットの斜め後方に立っている。

 俺は足音を立てないように慎重に動き始めた。

 

 草を踏みしめる音を抑えながら。

 息を潜めて。

 ホーンラビットの視界に入らないように。

 

 今、ホーンラビットの意識はベルに集中している。

 

 二匹が激しく睨み合っている。

 

 今がチャンスだ。

 俺は大木の後ろへと回り込んだ。

 木の陰に身を潜める。

 ドクドクと心臓が鳴っている。

 

 怖い。

 怖いけど、動かないと。

 

 俺は地面に目を落とした。

 枯れ枝を探す。

 長さ1メートル以上のもの。

 

 ……あった。

 

 足元に、太めの枯れ枝が落ちていた。

 俺はそっと枝を拾い上げた。

 ずっしりとした重さ。

 

 乾燥していて硬い。

 これなら、振るえる。

 俺は枯れ枝を両手で握りしめた。

 

 掌に汗が滲む。

 

 次は──タイミングだ。

 

 鑑定の指示通り。

 ベルが攻撃を仕掛けるタイミングに合わせて。

 ホーンラビットの右後ろ脚を叩く。

 

 俺は木の陰からそっと頭を出して、戦況を確認した。

 

 ベルとホーンラビットが、まだ睨み合っている。

 ベルの息が荒い。

 汗が流れている。

 

 疲弊しているのが、目に見えて分かる。

 だが、目はまだ死んでいない。

 強い意志が、その瞳に宿っている。

 

(レン、安全ナトコロニイルカ……)

 

 ベルの心の声が聞こえる。

 

 戦いながら、俺のことを気にしてくれている。

 

 ……本当にありがとう。

 でも今は、俺がお前を助ける番だ。

 

 俺は枝を握り直した。

 ホーンラビットの位置を確認する。

 

 右後ろ脚。

 

 そこまでの距離は……3メートルくらいか。

 走れば、すぐに届く。

 

 だが、今は動くな。

 

 タイミングを待て。

 

 ベルが攻撃を仕掛ける瞬間を。

 

 ドクドクドク……。

 

 心臓の鼓動が、耳に響く。

 

 待つ。

 

 待つ。

 

 待て。

 

 その瞬間だった。

 

「オォォ……!!」

 

 ベルが吼えた。

 攻撃を仕掛けるタイミングだ。

 

 ベルが全力で突進する。

 

 ホーンラビットの意識が、完全にベルに向く。

 

 今だ──!

 

「……!」

 

 俺は木の陰から飛び出した。

 

 全力で走る。

 草を踏みしめ、地面を蹴る。

 ホーンラビットの右後ろ脚に向かって。

 

 3メートル。

 

 2メートル。

 

 1メートル。

 

 俺は枝を思い切り振り上げた。

 

 そして──

 

 バシィン!!

 

 ホーンラビットの右後ろ脚を、枝で力いっぱい叩いた。

 

 俺の全力の一撃だ。

 

 ダメージは……多分ない。

 

 分かってる。

 

 だが、それでいい。

 

「──!?」

 

 ホーンラビットが、驚いたように動きを止めた。

 

 一瞬。

 ほんの一瞬だけ。

 

 後方からの予想外の攻撃に、意識が乱れた。

 ベルへの集中が、切れた。

 

 その隙間が──

 

「今だ、ベル!!」

 

 俺は叫んだ。

 

 ベルが俺の叫びに反応した。

 

 一瞬の迷いもなく。

 

 ベルがホーンラビットに向かって全力で拳を放った。

 

「ブモォ!!!!」

 

 ベルの拳が、ホーンラビットの顎を下から突き上げた。

 

 渾身の一撃。

 

 ホーンラビットの身体が、大きく宙に浮いた。

 

 そして──

 

「ギ……イィィィ!!」

 

 地面に叩きつけられた。

 

 砂埃が舞い上がる。

 

「……!」

 

 俺は息を呑んだ。

 ホーンラビットが、地面に横たわっている。

 

 動かない。

 完全に、動かない。

 

 赤く光っていた目が、閉じている。

 

 ……倒した?

 

 倒したのか?

 

「……」

 

 俺はホーンラビットをじっと見つめた。

 

 ピクリとも動かない。

 

 ……倒した。

 

 本当に、倒した。

 

「……やった」

 

 俺は呆然と呟いた。

 膝が笑っている。全身が震えている。

 

 怖かった。

 本当に、怖かった。

 

 でも──

 

 やった。

 

「レン!!」

 

 突然、背後から声が聞こえた。

 振り向く間もなく──

 ベルが俺に抱きついてきた。

 

「うわっ……!」

 

 オークの巨体が俺を包み込む。

 

 ものすごい力で抱きしめられる。

 

 胸が顔に押し付けられる。

 

 ……苦しい。

 

 でも温かい。

 

「レン! レン! アリガトウ!」

 

 ベルが興奮した様子で俺を抱きしめながら叫んだ。

 

「デモ、レン、飛ビ出シテ……ビックリシタ!!」

 

 ベルが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

 

「レン、怪我ハ?」

 

「大丈夫だ。お前こそ、怪我は?」

 

「ベルハ、平気!」

 

 ベルが笑顔で答えた。

 でも、腕に掠り傷がいくつかある。

 

「掠り傷あるじゃないか」

 

「コレクライ 平気!」

 

(レンガ心配シテクレテル……♡)

(嬉シイ……♡)

 

 心の声が聞こえる。

 

 まったく……。

 

 俺は苦笑しながら、ベルの傷を確認した。

 幸い、深い傷はない。

 掠り傷だけだ。

 

 よかった。

 

 その時──

 

「ギ……ギギ……」

 

 小さな声が聞こえた。

 

 リノだ。

 リノが、恐る恐るこちらに近づいてきた。

 

 ホーンラビットが動かなくなったことを確認しながら、おそるおそる歩いてきた。

 

「リノ、大丈夫か?」

「ギ……」

 

 リノが俺の足元まで来て、俺の服を掴んだ。

 

 小さな身体が、まだ震えている。

 

(コワカッタ……)

(レン……ベル……ヨカッタ……)

 

 心の声が聞こえる。

 

「リノ……お前のおかげで助かった」

「ギ……?」

 

 リノが顔を上げた。

 

 不思議そうな表情だ。

 

「お前が魔法を使ってくれただろう。あれで、ベルへの集中が乱れて……それで俺が動けた。お前がいなかったら、もっと苦しい戦いになってたよ」

「ギ……ギギ……」

 

(リノ……役ニ立ッタ……?)

(嬉シイ……)

 

 リノの目が、じわりと潤んだ。

 

「ギ……♡」

 

 リノが小さく笑った。

 笑顔が、眩しかった。

 

「みんな、本当に、ありがとう」

 

 俺はベルとリノの頭を、順番に撫でた。

 

 二人が嬉しそうに声を上げた。

 

 俺は横たわるホーンラビットを見た。

 

 角は鋭く尖っている。

 

 ……これが討伐証明になるのか。

 

 角を一本、持って帰らないと。

 

「これ、切れるのかな……」

 

 俺は懐からナイフを取り出した。

 そして、ホーンラビットの角の根元に目をやる。

 

 先ほどのベルの強烈なアッパーカットのせいか、太い角の根元には深いヒビが入っていた。

 

「これなら……!」

 

 俺はそのヒビの隙間にナイフの刃を深く差し込み、テコの原理を利用して思い切り体重をかけた。

 

 メキ、メキメキッ……バキィッ!

 

 鈍い音を立てて、角が根元からへし折れた。

 俺はそれを持ち上げようとして──

 

「ぐっ……お、重い……」

 

 鋭い角。俺の背丈くらいあるじゃないか……。

 これをギルドに持って行けば、討伐完了として認められるはずだが……。

 どうやって持っていけばいいんだ。引きずるしかないのか?

 

 俺は立ち上がり、深く息を吐いた。

 足がまだ震えている。

 

 心臓がまだバクバクしている。

 

 でも──

 

 終わった。

 とにかく、終わった。

 

「ベル、リノ。このウサギの肉、食べるか?」

 

 俺が言うと、ベルの目が輝いた。

 

「タベル!!」

 

「ギギッ!!」

 

 リノも嬉しそうに声を上げた。

 

 ……そうだよな。

 

 これだけ大きいホーンラビットだ。

 肉も相当あるだろう。

 二人にとっては、ご馳走だ。

 

「じゃあ、洞窟の前で焼いて食べよう。リノ、また火を頼んでいいか?」

「ギ……!」

 

 リノが元気よく頷いた。

 俺はホーンラビットの巨大な死骸を振り返る。俺には到底運べない重さと大きさだ。

 

「ベル、悪いんだけど……お肉のほう、担いで運んでくれるか?」

「マカセテ!」

 

 ベルは嬉しそうに胸を叩くと、巨大なウサギの身体を軽々と肩に担ぎ上げた。

 俺は空を見上げた。

 

 木々の間から見える青空。

 

 俺は歩き出した。

 

 獲物を背負ったベルと、ご機嫌なリノが、俺の隣を歩く。

 

 さっきまでの恐怖が、少しずつ遠ざかっていく。

 

 俺は自分の背丈ほどあるホーンラビットの角を、よいしょと引きずりながら歩いた。

 

 重い。肉よりも……。

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