俺の鑑定スキルがなんかおかしい ~女性のエロステータスが丸見えなんだが~ 作:フレキシブルコーギー
ホーンラビットを仕留めた後、俺たちは洞窟へと戻った。
リノが魔法で火を起こし、ホーンラビットの肉を焼いた。
じゅうっ……。
あの巨体だけあって肉の量は相当なものだった。
香ばしい匂いが漂ってくる。
さっきまで命がけで戦っていた相手が、今は食卓に並んでいる。
……なんか、不思議な気分だな。
でも、ベルとリノは全然そんなことを気にしていない。
目を輝かせて肉を頬張っている。
「オイシイ」
「ギギッ」
二人の食欲は、まるで衰えていない。
……あれ。
よく考えたら、さっき俺たちは肉を食ったばっかりだ。
まだそんなに時間が経っていない。
俺は全然食べられなかった。
少し口をつけただけで、もうお腹いっぱいだ。
でも、ベルとリノは普通に食っている。
むしろ、さっきより勢いよく食っている気がする。
(魔物はいくらでも食えるのか?)
まぁ、ベルもリノも戦ったからな。
あれだけ動けばカロリーを消費するだろう。
お腹が空いても不思議じゃない。
俺は足手まといだったからな……。
ほとんど何もしていない。
鑑定の指示に従って枝を振っただけだ。
消費カロリーなんて、たかが知れている。
……情けないな。
俺は自分の皿を見つめながら、苦笑した。
ベルとリノが幸せそうに食べている横で、俺は胃袋と格闘していた。
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食事が終わった頃には、すっかり日が傾き始めていた。
オレンジ色の光が、木々の間から差し込んでいる。
「じゃあベル、リノ。今日はありがとう。俺はこのツノを持って帰るよ」
両手で抱えれば何とかなるが……街まで持っていくとなると、結構キツそうだ。
「レン、重クナイ?」
ベルが心配そうに俺を見た。
「重いです……」
俺は素直に答えた。
隠してもしょうがない。
重いものは重い。
ベルが俺の返答を聞いた瞬間──
「フフッ……」
笑い出した。
大きな身体を揺らして、楽しそうに笑っている。
(レン……正直ナトコロ……カワイイ……)
(ウソツカナイデ、重イデスッテ言ウトコロ……)
心の声が聞こえる。
ちょっと、笑いすぎだろ。
「ギギ……!」
リノも俺の顔を見て、口元を押さえて笑っていた。
二人に笑われてしまった。
……でも、まぁいいか。
二人が笑ってくれている方が、嬉しい。
「レン、ベルガ、持ッテク」
ベルが言った。
「え、でも森の外に出るのは……」
「森ノ入口マデ ダイジョウブ」
ベルがツノに手を伸ばした。
「ひょい」
ツノを、片手で軽々と持ち上げた。
「おお……!」
俺は思わず声を漏らした。
俺が両手で抱えても重かったツノを、ベルは片手でひょいと持っている。
流石はオーク。
俺みたいなヒョロ人間とは、根本的に身体のつくりが違う。
「ギギッ!!」
リノが感動したように声を上げ、ベルに向かってパチパチと拍手した。
俺も思わずつられて拍手した。
俺たちは森の入口へと向かった。
ベルが先頭を歩き、ツノを片手で担いでいる。
その隣をリノが歩き、俺がその後に続く。
夕暮れの森は、朝よりも静かだ。
鳥のさえずりも、少しずつ遠ざかっていく。
代わりに、虫の声が聞こえ始めていた。
しばらく歩くと──
木々が途切れて、街道が見えてきた。
森の入口だ。
「着イタ」
ベルが立ち止まった。
「レン、ガンバッテ」
ベルが俺に向かって言った。
温かい笑顔だ。
「ありがとう……」
俺は苦笑しながら頷いた。
ベルが俺を見送ってくれている。
リノも、俺の足元まで来て見上げていた。
「ギ……レン……」
「また来るからな」
「ギギ……!」
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街の門が見えてきた。
石造りの大きな門。
横には衛兵が二人、槍を持って立っている。
俺はツノを抱えたまま、門へと近づいた。
「……おい。大丈夫か? それ」
衛兵の一人が、俺を見て声をかけてきた。
心配そうな顔だ。
当然か。ヒョロヒョロの若者が、自分の体長に迫るような大きなツノを両手で抱えてよろよろと歩いているんだから。
側から見たら、相当情けない光景だろう。
「……だ、だ、大丈夫です」
俺は息を切らしながら答えた。
「ホーンラビットを、討伐したので……ギルドに持って帰ります」
「ホーンラビット? このツノが?」
衛兵たちが目を丸くした。
「ホーンラビットのツノなんてカバンに入るくらいだろ?」
「どこの化け物のツノだよ」
「あー、なんかデブのホーンラビットだったみたいで」
「デブウサギねぇ……まぁいいや、頑張れよ」
衛兵が苦笑しながら俺を通してくれた。
俺は門をくぐった。
街の中に入ると、少しだけ人通りがある。
夕方の街は、仕事帰りの人々や買い物をする人たちで賑わっている。
すれ違う人たちが、俺を見て目を丸くしている。
「あの子、何持ってるの?」
「な、なんだ?ドラゴンのツノ? 一人で討伐したのか?」
ひそひそと、噂が広がっていく。
……恥ずかしい。
早くギルドに辿り着きたい。
俺は街の人たちの視線を背中に感じながら、足を進めた。
ギルドの建物が、視界に入った。
見えた。
もう少しだ。
あと少しで──
「ぐっ……ぬおおお……」
俺は最後の力を振り絞って、ギルドの扉を押した。
扉が開く。
暖かい空気と、賑やかな声が流れ込んできた。
「ひぃ……ひぃ……」
俺は肩で息をしながら、ギルドの中へと足を踏み入れた。
ようやく、辿り着いた。
腕が震えている。
全身に疲労が積み重なっている。
足もガクガクだ。
俺はその場でへたり込みそうになりながらも、なんとかカウンターへと向かった。
「あ……」
エマさんの声が聞こえた。
エマさんが俺とツノを交互に見ながら、固まっていた。
口が半開きになっている。
目が真ん丸になっている。
いつも笑顔のエマさんが珍しく言葉を失っている。
周囲を見ると──
ギルドの中にいた冒険者たちも、全員こちらを見ていた。
さっきまで賑やかだったギルドが、一瞬でシンと静まり返っている。
全員の視線が、俺とカウンターの上のツノに集まっていた。
(なんだ……?)
「レ、レンさん……これって……?」
エマさんがおそるおそる口を開いた。
声が少し震えている。
「ホーンラビットのツノです……」
俺は息を整えながら答えた。
その瞬間──
ギルドの中がざわめいた。
「ホーンラビット?」
「んなアホな……デカすぎだろ……」
「いや待て、本物か?」
「形は確かにホーンラビットのツノだが……」
冒険者たちが顔を見合わせている。
ベテランっぽい男が、眉間に皺を寄せてツノをじっくりと眺めた。
「見たことねぇ大きさだぞ、これ」
「ホーンラビットって、せいぜいこぶし大のツノだろ? こんなの聞いたことない」
「お前、一人で倒したのか?」
冒険者たちが俺に向かって口々に話しかけてくる。
「ちょっとすみません! 計測させてください!」
エマさんが我に返ったように声を上げた。
慌てた様子で、カウンターの下から計測道具を取り出した。
定規のようなもの。
そして羊皮紙に書かれた一覧表。
エマさんがツノの長さを測り始めた。
真剣な表情だ。
いつもの笑顔が消えて、仕事の顔になっている。
数値を確認する。一覧表と見比べる。
そして──
「レンさん! これ……特殊個体ですよ!」
エマさんが顔を上げた。
目が興奮で輝いている。
「特殊個体?」
俺は首を傾げた。
聞き慣れない言葉だ。
「はい! 特殊個体というのは……」
エマさんが説明してくれた。
聞けばこの世界には、通常の魔物とは違って特殊個体と呼ばれる突然変異みたいな魔物がいるらしい。
それは同じ種族でも数ランク上の強さを持つもので、身体が異常に大きかったり通常個体にはない能力を持っていたり。
そして何より──レアな素材が取れるという。
通常個体のツノより遥かに硬く、魔力を帯びているため武器や防具の素材として非常に高い価値があるらしい。
「この大きさ、鋭さ……これ、Cランク級の大物です!」
エマさんが断言した。
声が、ギルド中に響き渡った。
一瞬の沈黙。
そして──
「Cランク級!?」
「マジか!?」
「Eランクがそんなもん倒したのか!?」
ギルドの中が、一気に騒がしくなった。
Cランク……凄いのかな。
俺が今Eランクだから、二つも上……凄いのかもしれないけど。
実感が、全然湧かない。ていうか倒したの俺じゃないし。
「お前、本当に一人で倒したのか?」
さっきのベテランっぽい男が俺に歩み寄ってきた。
体格のいい、強そうな冒険者だ。
でも、目は敵意ではなく純粋な驚きに満ちている。
「……あー……そうですね……はい……」
俺は曖昧に答えた。
俺一人じゃないけど、俺が現場にいたのは本当だし。
……ベルのことは言えないからな。
「Eランクが特殊個体のホーンラビットをな……」
男が唸った。
「傷一つないじゃないか、お前」
言われて、俺は自分の身体を見下ろした。
確かに。俺には傷がない。
だって俺は枝を振っただけで、本当の戦闘はベルがやってくれたからな。
だから俺には傷がない。
当然だ。
でも、周囲からはそう見えないらしい。
「すごい……Cランク級を、かすり傷一つなく……」
「本物の実力者だ……」
「Eランクなのに……」
冒険者たちが口々に言っている。
エマさんも──
(信じられない……!特殊個体のホーンラビットを、一人で……!)
(しかもかすり傷一つないなんて……!どれだけ実力があるの……!?)
(レンさん、本当はどれだけ強いの……!?♡)
心の声が聞こえる。
エマさんが一人で激しく興奮している。
まぁ俺が倒したわけじゃないからね。
うん……。
ベルが倒したわけだから。
俺はただ枝を振って、ホーンラビットの気を逸らしただけで。
(ていうかツノを運んでくるだけでハァハァ息を切らしてる奴が本体に勝てるわけないだろ……)
今の俺の疲れ果てた様子を誰も見えてないんだろうか?
でもなんかなんかみんな大騒ぎしているので何も言わないでおいた。
言ったところで、信じてもらえないだろうし。
「レンさん、本当にすごいです……!」
(やっぱり本当の強さはEランクどころじゃないんだ……!)
(それをずっと隠してたのかな……♡かっこいい……!♡)
心の声が聞こえる。
どんどん誤解が深まっていく。
まぁ……Eランクどころじゃないのは本当だ。多分Fランクの最底辺が俺の実力だからな。
……まぁ、いいか。
「それで、これ……買い取ってもらえますか?」
俺は話を変えるように言った。
「もちろんです! これは高値がつきますよ!」
エマさんが嬉しそうに頷いた。
そして羊皮紙に計算を始めた。
周囲の冒険者たちが、まだ俺をちらちらと見ている。
ひそひそとした話し声が聞こえてくる。
「あのEランク……只者じゃないぞ」
「ああ、短期間でEランクに上がったって聞いたが……」
「それだけじゃないな、あれは……」
俺は聞こえないふりをしてエマさんの計算が終わるのを待った。
腕の疲労感がじわじわと戻ってくる。
足もまだ重い。
全身が戦いと荷物運びの疲れを訴えている。
早く宿に帰ってゆっくり休みたい。
暫くして、エマさんが計算を終えて顔を上げた。
「大体金貨80枚くらいになりますね! それとギルドの貢献値も大量ですよ!」
「金貨80枚!?」
俺は思わず大きな声を上げた。
周囲の冒険者たちが、またこちらを見た。
でも、そんなことを気にしている場合じゃない。
金貨80枚。
金貨80枚だと。
今まで薬草採取でせっせと稼いで、銀貨を積み上げてきたのに。
ウサギのツノ一本で、金貨80枚。
ど、どんだけ価値があるんだこのウサギのツノは!
特殊個体、恐るべし……。
あの化け物みたいなウサギが、まさかここまでの価値を持っていたとは。
でも、ありがたい。
本当にありがたい。
これでいろいろ出来ることが増える。
ベルとリノに、もっといい食事を持っていけるし。
洞窟の環境も、もっと整えてあげられるかもしれない。
それに──
ソフィア嬢のポーションも沢山買えるな。
ソフィア嬢の身体には、まだ必要なものだ。
今まではギリギリの資金でやりくりしていたが、これだけあれば当分は心配しなくていい。
俺は胸の中でホッとした。
「はい、こちらが金貨です」
エマさんが、革袋をカウンターの上に置いた。
ずっしりとした重み。
金貨の詰まった革袋を手に取ると、その重量が手のひらに伝わってくる。
……なんか、実感が湧いてくる。
金貨80枚。
本物だ。
「それにしても、レンさんは本当にすごいですよ……!」
エマさんが目を輝かせながら言った。
「この調子で大物を狩ってたら、レンさんならすぐにDランク……いや、Cランクになれるかも……!」
エマさんが興奮した様子で続ける。
(レンさん、このままどんどん上のランクに……!)
(もしかして、Aランクとかも夢じゃないんじゃ……!♡)
心の声が聞こえる。
エマさんの夢想がどんどん大きくなっていく。
いや、もう大物は狩りたくないです。
あのウサギ、一歩間違ってたら俺もベルも串刺しになって死んでたし。
角が地面に刺さった時の音が、まだ耳に残っている。
あれが俺の腹に刺さっていたら、と思うと……。
背筋が寒くなる。
「そ、そうですかね……でもまだしばらくは普通のウサギ狩りとか、薬草採取とかしようかな……あはは……」
俺は引きつった笑いで答えた。
すると──
「いやいや、謙遜しなくていいですよ!」
「そうだそうだ!」
「Cランク級の特殊個体を倒しておいて、薬草採取はないだろ!」
周囲の冒険者たちが口々に言ってくる。
みんな、「謙遜してぇ~」とでも言いたそうな顔をしている。
笑いながら俺の肩を叩いてくる人もいる。
マジで謙遜とかしてないから止めて欲しい。
俺を殺す気か。
次も特殊個体が出たら今度こそ死ぬぞ。
俺はヘラヘラと曖昧な笑顔を浮かべながら、冒険者たちの好意を受け流した。
「あ、ありがとうございます……精進します……」
「頼もしい若者だ!」
「期待してるぞ!」
冒険者たちが笑顔で言ってくれる。
ありがたい。
本当にありがたいんだけど。
もう絶対に特殊個体とやらと戦いたくない。
俺は心の中で固く誓った。
──そうして。
「はぁ~疲れた。まさかこんな大事になるなんて」
ギルドを出た。
腰にはたんまりと金貨が入った革袋。
ずっしりとした重みが腰に当たるたびに伝わってくる。
金貨の重みだ。
ツノの重みとはまた違う。
こちらは嬉しい重みだ。
「でも……大変だったけど見返りも大きかったな」
俺は独り言を呟いた。
夕暮れの街は、橙色の光に染まっている。
人々が家路につく時間帯だ。
仕事終わりの職人。
買い物帰りの主婦。
子供を連れた親。
皆がそれぞれの日常を送っている。
俺は金貨の重みを感じながら、歩き出した。
向かう先は──
老婆のポーション屋だ。
ソフィア嬢のポーションを、補充しておかないといけない。
金貨が入った今なら、まとめ買いもできる。
当分の分を確保しておけば、安心だ。
俺は路地を曲がった。
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「この前のポーション? あぁ、金貨50枚に値上がりしたよ」
「はぁぁぁ!?」
俺の絶叫が店に響いた。