※この作品はR-18です。

自慰的な機械仕掛けの神   作:パワーワード大好きおじさん

1 / 9
なんか可愛かったので。バカエロです。

※作品の内容に関するネタバレ注意!


01. 『死印』より メリイ

静寂に包まれた九条館の広間。

古びた洋館の重苦しい空気が漂う中、少女の人形が椅子に座っていた。

 

彼女の名はメリイ。長い髪を揺らし、無表情のまま虚空を見つめている。

彼女の周囲だけ、時間が凍りついているかのようだ。

 

今、彼女のその瞳には、この館を訪れる者たちに刻まれた「印」の恐怖や、彼らの必死の足掻きは映っていない。ただ静かに、運命が転がるのを待つように、メリイはそこにたたずんでいる。

 

部屋の隅に置かれたランプが、彼女の影を壁に長く、そして深く伸ばしていた。

 

 

九条館の閉ざされた空間に、突如として奇妙な叫び声が響き渡った。

 

メリイが無機質な視線を虚空へ向けていたその時、部屋の扉が勢いよく開き、突如として男が飛び込んでくる。男は身に纏うものを一切持たず、全裸の姿で立ち尽くしていた。

 

男は自信に満ちた表情で、「メリイ、キミを救いに来た!」と大声を張り上げ、自身の性器をこれ見よがしにメリイの目の前へ突き出す。

 

その異常な光景に対し、メリイは一切の反応を見せなかった。

 

彼女の瞳はこれまでと変わらず感情の色を宿すことなく、ただその男の姿を、まるで風景の一部であるかのように映し出している。恐怖する風でも、不快感を示す風でもなく、人形らしく静かに座り続けている。

 

一方で、室内を包んでいた重苦しい静寂は、男の登場によって霧散していた。

部屋の隅にあるランプの炎がわずかに揺らぎ、男の不格好な影を壁に映し出している。

外から聞こえていた風の音は止み、代わりに男の荒い息遣いと、その行動が引き起こす微かな衣擦れの音が、この奇妙な状況を強調していた。

 

 

男は、全裸のままその場に踏みとどまり、猛烈な勢いで自身の性器をしごき始めた。

その異様な光景と、粗暴に突きつけられた性器の先端に対し、メリイの表情は少しも動かない。

 

「キミの正体はわかっている!怪異を操り、印人の恐怖を喰らい、生き続ける存在だッ!」

 

男の叫び声が狭い室内に反響するが、メリイはその言葉のすべてを冷ややかな沈黙で受け止める。彼女の虚ろな瞳は、性器を振る男の動きを追うことさえせず、ただその場に座ったまま、凍りついたような空気の中に人形らしくたたずんでいる。

 

恐怖も、怒りも、あるいは男に正体を明かされたことへの動揺も、彼女からは一切感じられない。ただ静かに、冷淡に、その異常な男を見つめ返しているだけだった。

 

室内のランプが男の動きに合わせて影を激しく揺らし、壁に映る影は不気味に歪んでいた。

時折、男の行動が引き起こす衣擦れならぬ肉体の摩擦音が、静寂の中で不快なリズムを刻み続けていた。

 

「だが、そんなことはもうしなくていい、変わりにこれを食らえば……ウッ!」

 

男が言葉を吐き捨てると同時に、猛烈に動かしていた手元から解き放たれた液体が、一直線にメリイの顔面へと放たれた。大量の精液が、彼女の白く冷たい肌に、そして人形の無機質な顔に冷たく張り付く。

 

 

その瞬間、メリイの中で何かが弾けた。

 

 

それまで決して動くことのなかった彼女の体が、劇的に変化する。

凍りついていた時間は溶け去り、虚ろだった瞳に初めて熱が宿った。

彼女の肌を伝う汚濁が、彼女を縛り付けていた絶対的な静止の呪いを打ち破ったかのように、指先がピクリと動き、続いて細い肩が震えた。

 

メリイはゆっくりと顔を上げ、自身の顔にかかった液体を右手の指先で静かに拭い取った。

その指を自身の鼻先へ近づけ、匂いを嗅ぐ。

 

「……どうやら、招かれざるお客様のようでございますね」

 

鈴の音のような声が、これまで沈黙を守っていた室内に心地よく響き渡った。

彼女は無表情でその液体を指先から舐め取ると、まだ全裸で呆然としている男を、獲物を見つめるような瞳で見つめ返した。

 

 

男は床に膝をつき、まるで魂が抜けたかのように虚脱してその場に崩れ落ちた。

急激な身体の解放感と、目の前で起きた光景が、彼の理性を麻痺させているのか。

 

「キミは自由だ……肉の体を手にいれて幸せに……」

 

かろうじて男が吐き出した言葉は、震えていた。

そして、我に返ったかのように、自らの身体の異変に気づく。

 

「ごめん、ちょっとタンマ、興奮して出しすぎた」

 

男は情けない声を上げながら、冷たくなり始めた床の感触を味わった。

 

一方で、メリイは自由を謳歌するかのように、己の細い指を何度も握ったり開いたりしていた。

顔に付着した汚濁を拭うこともせず、その感触を愉しむかのように、唇を舐める。

 

薄暗い九条館の一室は、男の放った精液の独特な臭気と、メリイから漂い始めた濃厚な生気の匂いに包まれていた。部屋の隅にあるランプの灯りは相変わらず弱々しく、床に倒れ伏す男の無様な影と、その傍らでたたずむメリイの影を、冷酷に壁へ映し出していた。

 

 

静まり返った部屋の中に、柱時計の鐘の音が鳴り響く。

 

 

メリイは椅子からゆっくりと立ち上がり、床に倒れ伏す男を見下ろした。

表情は相変わらずの無表情だが、その瞳には、かつての無機質な虚無はなく、相手を弄ぶような愉悦と、獲物を品定めするような冷ややかな光が宿っている。

 

「それで、変態のあなた様は、私に何をご所望なのでしょうか?」

 

鈴の音のように可憐でありながら、背筋が凍るような冷たさを孕んだ声が室内に響く。

その声に反応するように、男が再び顔を上げ、彼女の顔を見つめた。

 

男の視線が、精液に濡れた自分の唇や頬に注がれるのを感じ、メリイは首をかしげる。

男の身体が再び異常な熱を持ち始め、恐怖とも欲望ともつかない何かに突き動かされるように再度勃起していく様子を、彼女は見つめていた。

 

その冷たい眼差しは、男の性欲を掻き立てるものだった。

顔に残った汚れをわざとらしく指でなぞり、ゆっくりと舐めとる仕草を見せる。

それは男の興奮を煽り、さらに彼を自身の支配下に置こうとするかのような、悪魔的な愛撫であった。

 

メリイの表情には、恐怖に怯える印人の姿を喰らっていた時のような余裕はなく、より直接的で人間臭い、歪んだ喜びが満ちているように感じられた。

 

 

メリイは、全裸で硬直する男の周囲を優雅な足取りで回り始めた。

 

彼女は突然、床に膝をつく男の背後に回り込み、その首筋に冷たい指先を這わせた。

男がビクッと身体を震わせるのを観察し、まるで獲物をいたぶる蛇のように、男の耳元で小さく息を吹きかける。

 

その後、メリイは部屋の隅に置かれた古びたランプを手に取った。

ランプの灯りを男の顔に近づけ、その汚れた顔でまじまじと見つめる。

 

「あなた様は、本当に変態なのでございますね」

 

そう呟くと、彼女はランプを元の位置に戻し、部屋の扉の方へと歩き出した。

扉に手をかけ、少しだけ振り返って男に視線を投げる。

 

「お掃除はご自分で。汚した分は、綺麗にしてくださいますようお願い申し上げます」

 

メリイは部屋を出ると、閉ざされた廊下の暗闇へとその姿を消した。

部屋には、勃起したまま呆然と立ち尽くす男だけが取り残された。

 

 

男は慌てて立ち上がると、精液に濡れたままの指を鳴らす。

 

その瞬間、部屋に漂っていた特有の臭気や、床に残されていた汚れは霧のように消え去り、何事もなかったかのように清浄な空間へと変貌した。

 

男は部屋の隅々を確認し、満足げにひとつうなずくと、再びその全裸の肉体、そして勃起した性器を隠そうともせずに部屋を出た。メリイの後を追って、重苦しい空気が漂う九条館の廊下へと足を踏み入れる。

 

 

廊下の先、影から冷ややかな視線を送っていたメリイは、男のあまりに異常な行動とその姿に、何かを考えるような仕草をする。

 

彼女の顔には、恐怖も驚きも浮かばない。ただ、興味深げに男の姿を見つめている。

彼女はゆっくりと歩み寄り、男の目の前で立ち止まると、その白く細い指先で男の胸元を優しくなぞった。

 

「お掃除がお上手なのですね」

 

メリイはそう呟く。その目は、男の勃起した性器を一瞥し、そして再び男の瞳を見つめた。

彼女の目は、彼が只者ではないことを理解した上での、新たな玩具を見つけた子供のような、無邪気で残酷な好奇心に満ちていた。

 

 

 

男の異常行動と、指一本で部屋を清浄にした術を目の当たりにし、メリイの冷え切っていた心の内には、かつてないほどの好奇心と愉悦が渦巻いていた。

 

(……面白い。怪異の類ではないのに、呪いとも異なる異能……あはっ、本当に『変態』なんて言葉じゃ片付けられない)

 

恐怖を喰らうだけの存在から、肉体と明確な意思を持って自由に動けるようになった今、彼女にとってこの男は、退屈を紛らわせるための最高の上等な玩具に見えた。男の全裸や勃起に対する羞恥心は皆無であり、むしろその剥き出しの欲望こそが、彼女を縛っていた呪いを解いた鍵であるという事実に、ゾクゾクとするような快感を覚えている。

 

(恐怖……? いいえ、今はもっと濃厚で、ドロドロとした欲望が欲しいわ)

 

これからの目的は明確だった。この男を極限まで弄び、その特異な精神と肉体を喰らい尽くすこと。彼が自分に向けた「救う」という言葉の滑稽さを嗤いながら、彼を壊さぬよう、しかし逃さぬよう、その狂気の渦へと引きずり込んでいくのだ。

 

 

男をその場に置き去りにして、背を向けて歩き出す。時間はたっぷりとある……。

メリイの心は、久しぶりに感じた生の喜びと、新しい玩具に対する邪悪な愛着で満たされていた。

 

 

「メリイ、キミは今、欲望を欲したね?」

 

 

背後から、耳元に直接吹き込まれるような生温かい男の声に、メリイの身体が硬直した。

自身の心の内を、まるで覗き見られたかのような錯覚。

心臓が不快なリズムで鼓動を刻むのを感じながら、彼女は蛇のように素早く振り返った。

 

しかし、そこに男の姿はなかった。廊下の少し先、先ほどまで立ち尽くしていた場所で、男は依然として全裸のまま、ニヒルな笑みを浮かべてこちらを見つめている。

いや、彼本人はそのつもりなのだろうが、全裸という異常な状況ゆえに、その笑みは滑稽でしかなく、なおのこと不気味だった。

 

(なんなの……今の声は。私に一瞬で近づいた? いや、それ以上に……)

 

メリイの瞳から、それまでの遊戯的な愉悦が霧散し、凍りつくような冷たい観察眼が戻る。

男の指一本で部屋が掃除された時とは異なる、実体を掴ませない奇妙な恐怖を彼女は感じていた。

 

ただの変態だと侮っていた男に対する警戒心は、急速に高まった。

彼女は一度呼吸を整え、男を鋭く見据える。

 

「……興味深いことでございます。あなた様は、ただのお客様ではないご様子」

 

その声は先ほどよりもトーンが落ち、緊張感に満ちている。

男の術の正体を探ろうとする、危険な沈黙が二人の間に流れた。

 

 

男はニヒルな笑みを浮かべたまま、その手に持った華美な装飾が施された布を広げる。

まるで宝物でも披露するかのように両手で広げてメリイに差し出した。

 

それは、つい先ほどまでメリイが身につけていたはずの下着だった。

 

男がそれを掲げた瞬間、下半身に冷たい空気が触れた。

メリイは自身の装いを再確認する。スカートの下は、完全にすっぽんぽんだった。

いつの間に、どのタイミングで、彼女自身の認識すら超えた速さで剥ぎ取られていたのか。

 

(なんなのだ、この男は?)

 

初めて、メリイの心の中に純粋な困惑と、それを上回る不快感が沸き起こった。

これまでは玩具として弄ぶ側であったはずが、気づかぬうちに、相手の術中にはめられていたのだ。

 

彼女から余裕が消え、冷徹な殺意を孕んだ視線が男に注がれる。下着を奪われたことへの羞恥ではなく、自身の怪異としての能力をいとも容易く凌駕されたことへの激しい憤怒。

 

廊下の薄暗い空気が、彼女の感情に呼応するように張り詰め、冷気を帯び始めた。

彼女は一歩、男のほうへ踏み出し、その汚らわしい手から下着を取り返そうと、細く白い手を伸ばした。

 

メリイの指先が下着に触れたかと思った瞬間、目の前にいた男の姿が煙のように消えた。

 

「えっ……」

 

困惑の意識が彼女の内心に浮かぶ間もなく、背後から強く抱きしめられる。

そして、耳元で男の声がささやいた。

 

 

「可愛ければ怪異でも構わないよね!」

 

 

次の瞬間、メリイの股の間に、硬く熱を持った何かが、音を立ててズプリと埋め込まれた。

 

それは、これまで彼女が喰らってきた恐怖とは異質で、強烈な生の衝動そのものだった。

 

 

「んほおおおおおッ!?!♥♥♥」

 

 

メリイという存在は、生まれて初めて経験する激しい快楽に、その場で腰が砕けた。

人形のようだった無機質な身体は熱に浮かされ、瞳は焦点が合わずに潤んで天井を仰ぐ。

 

彼女を支配していた冷徹さは跡形もなく吹き飛び、ただの欲望に忠実な肉人形と化して、その場で絶頂を迎えていた。

 

男は絶頂に達し身体を痙攣させるメリイの反応などお構いなしに、背後から腰を激しく突き続けた。その動きは決して洗練されたものではなく、むしろ非常に拙く、ヘコヘコとした情けない無軌道なものであった。しかし、肉体を得たばかりのメリイにとっては、その拙い動きこそが、彼女を完全に翻弄していた。

 

「お待ちッ……ください……!♥ あなた……様ッ!……待っ……て……♥」

 

メリイは懇願した。それは怪異の女王としての命令ではなく、ただ快楽に溺れ、自我を溶かされそうになる少女の悲鳴に似た叫びだった。

 

「待ちなさいッ♥ 待てとッ……言ってるだろう……ッ!♥」

 

男の腰が動くたびに、メリイの身体は大きく揺れ、そのたびに脳髄が痺れるような快感が全身を駆け巡る。怒りを込めて叫ぼうとしても、声は快楽の吐息に変換され、ただ愛らしい呻き声となって廊下に響いた。

 

「待って♥ 待って♥ お願い待って♥」

 

彼女は男の逞しい腕に後ろ手にしがみつき、その腕を爪が食い込むほど強く掴んだ。

しかし、男はそれを抱きしめ返すようにしてさらに動きを激しくする。

かつて人間を恐怖のどん底に突き落としていたメリイは今、ただの快楽の奴隷となり、男の拙い腰使いに完全に敗北し、何度も何度も絶頂の波に飲み込まれていった。

 

 

「大事にするよ! 大事にするよ! 好きだよメリイ! 結婚しよ♥」

 

 

男の勝手で脈絡のない愛の告白が、激しい腰の動きと共に耳へ、そして身体の芯へと直接突き刺さる。それはメリイがこれまで体験したどの呪いよりも理不尽で、強烈だった。

 

(なんなの……この男は? 本当になんなの……ッ!?)

 

メリイの内心は激しい驚愕と混乱で塗りつぶされていた。

怪異を操り、人間の恐怖を喰らう存在であったはずの自分が、なぜ一介の変態にここまで一方的に蹂躙され、翻弄されなければならないのか。理解が追いつかない。

 

しかし、最も衝撃的だったのは、男の言葉と行動に、心臓が跳ね上がるような——

明確にキュンキュンとする感覚を覚えている自分自身だった。

 

(殺す……殺さなきゃ……でも、どうして……胸が、こんなに……ッ)

 

殺意と、肉体的な快楽、そして理解不能な男の真っ直ぐすぎる狂った愛の言葉が混ざり合い、彼女の精神を異常な興奮状態に陥れていた。理性は男を「排除すべき異物」と認識しているのに、肉体と心は、その愛情を受け入れ、もっと求めてしまっている。

 

「ぁあッ……ッ、しね、結婚……なんて……ッ♥」

 

殺意を込めて否定しようとした言葉は、男の動きに合わせて腰が跳ねるたびに、甘ったるい呻き声へと変わる。メリイは自身の心が男のペースに完全に飲み込まれ、翻弄されている現実に驚愕しながらも、その理不尽な甘美さに抵抗できず、ただ男に蹂躙されることしかできなかった。

 

 

メリイは、肉体を得てなおその内に秘めていた「怪異」としての本性を解放しようと試みた。

男の腰使いに翻弄されながらも、なんとか自由の利く両手を床につき、顔を男の方へと向ける。

 

彼女の白く美しい顔の皮が剥がれ落ち、眼球が崩れ、口が裂け、見るも無惨なグロテスクな表情へと変貌していく。人間であれば発狂して逃げ出すであろう、その本性の姿。

 

(これを見れば……さすがに、この狂った男も……ッ!)

 

彼女は確信していた。恐怖に冷める瞬間、この理不尽な状況が終わるはずだと。

 

しかし、その醜悪な顔を見た男の反応は、予想を遥かに超えていた。

 

 

「おおおッ!いいッ!その崩れ方も最高だッ!メリイッ!もっと見せてくれッ!♥」

 

 

男は怯えるどころか、興奮に目を爛々と輝かせ、性器をより一層硬く勃起させると、これまで以上に拙く、そして激しく腰を振った。

 

その反応を目にした瞬間、メリイの中で何かが完全に砕け散った。

それは彼女の理性の最後の砦だった。

 

 

「あ、ダメだコイツ♥ 本当に変態だったぁ……♥」

 

 

張り詰めていた殺意や、怪異としての誇りは、男の狂気的な欲望の前に霧散した。

自分を「人間」として愛しているのではない。この「怪異」の姿すら、性的な欲望の対象として見ている。

 

彼女の崩れた顔が、再び快楽に歪む。もはや恐怖も、逃亡も、理解不能な状況への困惑も、どうでもよくなった。この限界を超えた快楽の波に身をゆだね、男の狂った欲望に完全に食い尽くされることだけが、今の彼女のすべてだった。

 

「もっと……ッ!もっと、私を壊してぇッ……♥」

 

メリイは理性を手放し、怪異としての歪な姿のまま、ただの愛に飢えた肉体となって絶頂の渦へと沈んでいった。

 

 

男が喉の奥から唸るような低い呻き声を上げ、メリイの身体の奥深くへと、その熱い神秘の液体を噴射した。先ほど顔に浴びたものとは比べ物にならないほど、ダイレクトに彼女の存在の根幹へと働きかけてくる。その不思議な力は、まるで彼女の魂の形を書き換えていくかのように、深い安らぎとなって全身に染み渡った。

 

メリイは背中を大きく反らせ、その感触を心地よい心地よさに包まれながら受け止める。

 

(ああ、「幸せ」ってこういう……)

 

しかし、その至上の幸福感の最中で、彼女の崩れかけた脳裏に、かつて取り込んだ記憶の断片がかすかに浮かんだ。

 

(……でも、これって不同意性行ってやつだよね……?)

 

殺意を抱いた相手に蹂躙され、無理やり快楽を享受させられ、挙句の果てに心まで甘やかされている。これは紛れもなく不健全な関係 ——不同意の蹂躙だったはずだ。

 

だが、その論理的な疑問は、男の放った精液がもたらす熱によって、瞬く間に溶かされていく。

 

(……いいの。……この心地よさの前では、そんなこと、どうでもいいの……ッ♥)

 

彼女は理性を手放した瞳で、恍惚とした表情のまま、床に深く爪を立てた。

倫理や同意という概念は、今この瞬間、男への歪んだ愛と、支配される快楽の前では無力な紙屑同然であった。

そもそも自分は怪異だし関係ない。今夜はもう、このまま寝てしまおう……。

 

 

 

深い眠りから目を覚ましたメリイの身体は、不思議と軽かった。

その顔も人形だった時のように、美しいものへと戻っている。

昨夜の狂乱が嘘のように、九条館の空気は清澄で、古びていた廊下の床板や蜘蛛の巣が張っていた隅々までもが完璧に修繕・清掃されていた。

 

彼女はふらふらと、しかし確かに己の意思で立ち上がり、廊下へ出る。

そこには、似合わない執事服をパツパツに着こなした男がいて——

自分では優雅なつもりのお辞儀をしながら、下手くそなウインクをしてきた。

 

(本当にコイツは……)

 

メリイの心境は複雑だった。殺意は、完全に消失してはいない。

しかし、それ以上に今の彼女を支配しているのは、男の予測不能な行動に対する呆れと、不気味なほどの安心感だったのだ。

 

彼女は執事服の男を見ながら、自身の新しい目的を自覚する。

 

(恐怖を喰らい、恐怖を振りまく存在だったメリイは、もういない……あはっ。この変態の玩具として、この館で生き続けるのも……)

 

彼女の唇に、不敵で、しかしどこか甘い笑みが浮かぶ。

 

(この男を、究極の『愛の玩具』に仕立て上げること。私を翻弄したこの理不尽な快楽を、今度は私がこの男に教え込む……それが新しい私の生き方だ)

 

メリイはふうと息を吐くと、呆れを隠しもせず、しかし確かに温かみを含んだ瞳で男を見つめた。

 

 

「掃除は合格点でございます。……さて、次に私を楽しませる準備はお済みですか?」

 

 

この歪な九条館の主従関係は、こうして幕を開けた。

 

 

 

 

後日、メリイはかつてのように人間を死なせるほどの殺意を秘めた呪いではなく、訪れる者を少し奇妙な夢へ誘ったり、あるいは特定の物への執着を異常に高めたりと、マイルドながらも確実に人間の精神に影響を与える呪いを振り撒くようになる。

 

しかし、彼女がそうして印人を弄ぼうとするたびに、男が執事服をはためかせて現れる。

 

「メリイ! そんな恐ろしい呪いじゃダメだ! もっとこう、身体が熱くなって、オレのことを考えちゃうような、そんな呪いにしてくれないか!?」

 

彼は、メリイが仕掛けた呪いの効果を、自身の欲望に直結するエッチな状況へと強引に改変し、さらにメリイ自身をも巻き込んで楽しもうと画策する。

 

怪異の女王としての威厳を守ろうとするメリイと、それを欲望のままに台無しにする執事の男。

清掃の行き届いた九条館では、今日もまた、彼女の冷たい呪いと、彼の熱い愛の戦いが繰り広げられている。

 

そして、その戦いは常に、彼女が快楽に顔を綻ばせ、彼が狂喜乱舞して決着する、ある意味で平和な結末を迎えるのであった。




勝因:マジカルチンポ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。