※作品の内容に関するネタバレ注意!
「亡霊は消えるべきよ。あんたも……わたしもね」
視界の端から、色が剥落していく。
吹き荒れる雪は白を通り越し、もはや透明なノイズとなってクロエの意識を削っていた。
熱を失った大地に身を預け、クロエは己の手のひらを凝視する。
魔力供給が途絶え、輪郭が滲んでいる。まるで、現像に失敗した写真のように、その存在は希薄で、頼りない。
「……でもま、悪くない結末じゃない?」
乾いた唇から零れたのは、自嘲の混じった呟きだった。
肺に取り込む空気は刃のように鋭く、凍てついている。かつてこの身を構成していた魔力は、冬の夜空へと霧散し、二度と戻ることはない。エミヤの模倣として作り上げた双剣も、今はもうその重みすら感じられなかった。
視線を上げれば、そこにはイリヤがいる。
泥を被り、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした、どうしようもなく不格好な「姉」の姿。
その隣には、同じように傷ついた美遊が立っていた。
クロエの胸を占めるのは、恐怖ではなかった。
ただ、ひどく静かな諦念と、それ以上に、どうしようもなくあふれでる愛しさだ。
指先が感覚を失っていく。雪の冷たさすら感じない。
自分はもともと、存在しないはずの影。
誰かの願いの代償として切り捨てられた、余剰分。
そんな自分が、ここまで歩いてこれたこと自体が奇跡のようなものだったのだと、消えゆく意識の中で反芻する。
(十分がんばった……よね。お兄ちゃん………)
「そんな……クロッ!」 「クロッ!!」
彼女たちの叫ぶ声が、遠い。
水の中に沈んでいくように、音は形を失い、ただの振動となって鼓膜を震わせる。
それでも、クロエは消えゆく力に抗うように、わずかに口角を上げた。
(……何よ、そんな顔して)
薄れゆく意識。
心臓の鼓動は、もはや雪の上に落ちる羽根よりも静かだった。
一秒ごとに、クロエという存在を定義する情報が、世界から削り取られていく。
腕を動かそうとしても、脳からの伝達は途中で霧に消え、指一本動かすことが叶わない。
言わなければ。
別れの言葉を。
伝えなければ。
感謝の気持ちを。
ただ、目の前のイリヤの瞳だけが、この世界で唯一の、鮮やかな色彩としてそこにある。
「頑張りなさい! お姉ちゃんが見守って……!」
突然の轟音と共に、視界に何者かが飛び込んできた。
それは季節外れという言葉すら生ぬるい、完全なる全裸の男だった。
世界がホワイトアウトしていく最中、その場に似つかわしくない不条理な存在の出現に、クロエの霧がかりかけた意識が一瞬だけ明瞭さを取り戻す。
「は……? 何よ、アイツ……」
呆然とした声が漏れる。しかし、その声は音として空気に震える前に、風に掻き消された。
男は狂気じみた自信に満ちた笑みを浮かべ、絶叫にも似た大音量で言葉を発する。
「間に合った……もう大丈夫だ! 何故って!? 私が来た!!」
その滑稽なまでに堂々とした宣言は、冷え切った戦場に異様な空気を撒き散らした。
凍り付いたような沈黙が、一瞬だけ現場を支配する。
「……え?」
イリヤが、涙で濡れた顔のまま呆気にとられ、口をあんぐりと開けた。
状況を理解しようとする思考が停止し、ただ理解不能な光景を凝視することしかできない。
美遊もまた、その男の存在に眉をひそめ、不快感と困惑が混ざり合った表情で硬直した。
男は周囲の反応など気にも留めず、消えかかるクロエの背後に音もなく回り込む。
手早く下衣を脱がせるその動きは、驚くほど流麗で、逆にその不気味さを際立たせていた。
クロエの身体は限界を超え、今まさに粒子となって霧散しようとしている。
輪郭がボヤけ、冷たい風がその身体を通り抜けていく中で、彼女は背後に迫る寒気ではない別の気配を感じ取り、最後に見開いた瞳に困惑を浮かべた。
男の勃起したぺニスがクロエの身体に打ち込まれた。
その瞬間、それまで彼女を蝕んでいた消滅の危機は霧散した。
代わりに走ったのは、苦痛ではなく、神経を直接直接電流で焼かれるような感覚。
あまりに強烈な快感だった。
その衝撃で、風に霧散しかけていた輪郭が無理やり引き戻され、粒子が集束していく。
現像に失敗しかけていた写真が、急激に色彩を取り戻して固定されるかのように。
「……ッあぁ!♥」
掠れていたクロエの声が、鮮明な色を帯びて空に響く。
冷たかった肌が急速に熱を持ち、失われていた魔力が身体の奥底から噴き出す。消えかかっていた「自分」という存在が、強引に、しかし完璧にこの世界へと繋ぎ止められていた。
男は、震えるクロエの身体を後ろから抱きすくめ、悦に浸った表情で言い放つ。
「私の聖槍で彼女をこの世界に繋ぎ止めた……ひとまず安心だ」
その男の言葉に、クロエは快感に瞳を濡らしながらも、強烈な不快感を覚えた。
自分は生き残った。存在も安定した。確かに、物理的な死は回避された。
だが、それは彼女が望んだ形だったのだろうか。
冷徹な魔術師としての矜持、あるいは一人の少女としての尊厳が、その男の行いに深い拒絶反応を示す。
生き永らえたことへの安堵感は、直後、それを凌駕するほどの不条理な屈辱感によって汚染されていった。
周囲でその光景を見ていたイリヤは、あまりの衝撃的な展開に顔を真っ赤にして叫ぶこともできず、ただ口をパクパクとさせて硬直している。美遊もまた、その凄惨とも滑稽ともつかぬ異様な光景に、言葉を失い呆然と立ち尽くしていた。
本当に安心か?
その問いの答えを出すには、あまりにも世界は混沌としていた。
「ジッサイ、アンシンだとも。彼女の貞操を考慮して挿入したのは後ろの穴だ」
男は事も無げにそう言い放つと、腰をグリグリと不規則に動かし始めた。
その動きに合わせて、クロエの安定しかけた身体が激しく揺さぶられる。
「ひぅ……♥あんっ♥うん……ッ!」
クロエは、唇を噛み締めようとして、代わりに小さな喘ぎ声を漏らした。
全身を駆け巡る奔流のような快感。それは彼女の魔術的回路を強制的に拡張し、限界を超えたエネルギーを注ぎ込み続けていた。屈辱を感じようとしても、快楽が意識を塗りつぶし、思考を純粋な感覚へと還元していく。
「む、聖杯をいくつか使って準備したが、やはりまだキツイな……」
男はクロエの反応を享受しながら、独り言のように呟いた。その言葉の背景にある、並外れた手段の行使を示唆する内容は、周囲の少女たちにはちょっと理解不能だった。
戦場の中心で、男が全裸で腰を動かし、クロエがそれに合わせて喘ぐ。
そのあまりに異様な光景は、戦いの終焉という緊張感をも凌駕し、その場にいる全員の精神を不可解な混沌へと突き落としていた。
呆然とする時間は終わりをつげる。
怒りか、あるいはこの場にそぐわない艶めかしい光景への拒絶か、二人の少女の顔はリンゴのように真っ赤に上気している。
全裸の男が腰を動かし続ける中、二人は意を決したように、同時にその男へと詰め寄った。
「あなた……っ、何して、何を考えてるのッ!?」
イリヤは声を震わせながら、男を指さして叫ぶ。
その指先は怒りと羞恥で細かく震えていた。
視線は、繋がったままの二人の下半身から必死にそらそうとしつつも、隠しきれない動揺から何度も戻ってしまう。彼女の叫び声は、あまりの状況に困惑しきっていた。
美遊はイリヤよりも一歩前に出ると、冷ややかな、しかし内側に激しい憤怒を隠した瞳で男を睨みつけた。
「……不謹慎極まる。今すぐ、その汚らわしいモノを彼女から離して」
その声は凍りつくほど冷たかったが、彼女もまた耳の裏まで真っ赤に染まっている。
目の前で起きている行為が、理解不能な魔法的な現象であることは理解できても、それが持つ生々しい艶っぽさまでを否定することはできない。
男は二人の剣幕などどこ吹く風で、動きを止めずに薄笑いを浮かべた。
クロエは快感の波に揺られながら、不安定な意識のまま、二人を見る。
「ちょ、ちょっと、二人とも……っ♥」
クロエもまた、その体勢のまま声を出そうとして、再び漏れ出る喘ぎ声に言葉を遮られる。
「先ほど言った通り、私がこの聖槍を抜けば彼女は消滅する」
男は腰の動きをピタリと止め、まだ結合したままの姿勢でイリヤと美遊に向き直った。
その顔には、事の重大さを理解していながらもどこか他人事のような、不敵な笑みが浮かんでいる。
「自分はこの世界を観測していた闖入者(ちんにゅうしゃ)だ。……まさにチンニュウ中だな、ハッハッハ!」
男の寒々しい言葉が戦場に響く。
その不謹慎極まる言葉に、詰め寄っていたイリヤは怒りで言葉を失い、ただ顔を真っ赤にして男を睨みつけることしかできない。その手は拳を握りしめられ、今にも男の顔面に叩きつけられんばかりに震えていた。
美遊は、男の言葉が持つ論理の強靭さに歯噛みした。
手段はともかくとして、現にクロエは消滅を免れ、息を吹き返している。彼が言った通り、クロエが助かったという事実の前では、どんな正論も倫理も無力に思えた。
本当に何も言えないのか?
美遊の胸の内で、熱い葛藤が渦巻く。クロエを守りたいという心と、目の前で起きている破廉恥な行為を糾弾したい心が、激しくぶつかり合っていた。彼女の瞳は怒りに燃えながらも、どうしようもない無力感に濡れていた。
その横で、クロエは快感と羞恥の狭間で朦朧としながら、後ろから繋がったまま自分を抱き抱える男の腕に爪を立てる。彼女にとって、この不条理な男が自分を繋ぎ止めているという事実は、感謝よりも深い、魂に刻まれるような屈辱として認識されていた。
イリヤはあまりの状況に思考がオーバーヒートし、顔を隠してその場に蹲りそうになりながらも、必死で立ち尽くし、ただその不条理な光景を見つめることしかできなかった。
「……ちっ」
クロエは舌打ちを一つ。
激しい屈辱を、這い上がってくる快感を、無理やり喉の奥へ押し込んだ。
消えかけていた輪郭は戻り、脈打つような熱が下半身から全身へと広がっている。
納得などできるはずがない。だが、消滅から免れたのは、間違いのない事実だった。
「……助かったわよ。……あーあ、もうッ、ありがとーね、助けてくれて!」
吐き捨てるような感謝の言葉。それは現実を認めたくない葛藤が入り混じったものだった。
その言葉の直後、クロエは自分の内側で渦巻く感情に気づき、凍りつく。
(……なによ、これ。この気持ち良さはなんなの……? 身体の奥が、熱くて……なんだか癖になりそうで……ッ)
内心の戸惑いを隠すように、彼女は繋がったままの男の腕をさらに強く掴んだ。
イリヤはクロエの言葉を聞き、顔を真っ赤にしたまま、拳を固く握りしめた。
「クロが……そう言うなら、これ以上は言わないけど……ッ」
しぶしぶと矛を収めるものの、その目はまだ男に対する不信と怒りで燃えている。
美遊もまた、唇を強く噛み締めていた。その表情は、不条理への憤りと、結果に対する納得の狭間で引きつっている。彼女もまた、深く息を吐き出し、張り詰めていた殺気をわずかに弱めた。
二人は顔を赤らめたまま、未だに全裸で結合している男に疑問をぶつける。
「……どうして、助けてくれたの? あなたに、何の得があるの?」
イリヤの声は震えていた。男の目的も、手段の異様さも、すべてが理解を超えている。
男は、今までの傲岸な笑みをふっと消し、イリヤの問いに対して驚くほど穏やかで、慈愛に満ちた優しい表情を浮かべた。
「誰かを助けるのに理由がいるかい?」
その場に響いた言葉は、聖人の如き深みを持っていた。
全裸で腰を動かしているという不条理極まる状況下で発せられた、あまりに高潔な言葉。
それは倫理的な矛盾を孕みながらも、あまりに強烈な正論としてその場に響き渡った。
素晴らしい言葉だ。
決して、間違いなんかじゃない。
だが、どこかおかしい。
イリヤと美遊の頭は、その言葉の正しさが理解できる。
しかし、それがかえって二人の感情を逆撫でした。
正しいことを言っている。なのに、やっていることは破廉恥で、最低で、最高にムカつく。
その矛盾が、彼女たちの心をどうしようもなく掻き乱す。
「うぅ……っ、なんて……なんて卑怯な……ッ!」
イリヤは悔しさのあまり顔を真っ赤にし、地べたをダンダンと踏み鳴らす。
その姿は、怒りよりも、正論で言い返せない幼児のような葛藤をあらわにしていた。
美遊もまた、唇を噛み締め、悔しさに瞳を潤ませながら、地面をつま先で何度か蹴る。
冷徹な彼女の表情が、怒りと羞恥で複雑に歪んでいる。
その光景を見て、男は満足げにうなずき、繋がったままのクロエの身体を優しくさすった。
「そうだな。言葉なんて、いくらでも綺麗に飾れる。だから、行為こそが真実だ」
その言葉に、再び怒りを爆発させようとするイリヤと美遊。
「あとは、私の聖槍(精巣)から聖液(精液)を彼女に注ぎこめば、彼女の存在が安定して確固たるものになるのだが……」
男は、真面目な顔で、しかしその内容は極めて破廉恥な説明を続ける。イリヤと美遊が、その言葉の意味を理解して再び赤面しそうになる中、男は視線をクロエに移した。
「……む。どうやら、これ以上私が動くのは無理そうだな」
男の言葉に、イリヤが不思議そうな顔をしてクロエを見た。
クロエは、先ほどまでの抵抗も屈辱も、もはやどこかへ霧散していた。
繋がれた後ろの穴から脳髄に直接響くような絶頂の余韻に、その顔は蕩けきっている。
焦点の合わない瞳はうっすらと開かれ、口元からは力なく息が漏れ出ていた。
男が腰を少し動かしただけで、クロエの華奢な身体はビクビクと痙攣し、激しい快感に全身を戦慄させている。
さらに、前方の秘部からは、彼女自身の愛液がタラタラと、垂れ続けていた。
「……あうっ♥……あうっ♥」
クロエは言葉になっていない嬌声を上げ、男の腕を力なく握る。
その様を目の当たりにしたイリヤと美遊は、言葉を失った。
先ほどまでの地団駄を踏むほどの怒りは、あまりに生々しく、あまりに淫らな光景の前に、困惑と羞恥によって完全に封じ込められてしまった。
「そこで、キミたちにも協力を要請したいのだ」
男は、快楽に顔を蕩けさせたクロエを抱きかかえたまま、姿勢を崩すことなくイリヤと美遊に向き直った。その目は真剣そのものだったが、言葉の内容は狂気じみていた。
「私の尻の穴から前立腺を刺激して射精をうながしてくれ。ほら、そこにちょうどいい魔法のステッキがあるだろう?」
そう言って男が顎で示したのは、戦場に転がっていたイリヤのルビー。
そして、美遊のサファイア。
「……え? 前立腺……?」
イリヤはキョトンとした顔で首を傾げた。
その言葉の意味が全く理解できず、純粋な困惑が顔に浮かんでいる。
一方で美遊は、その言葉の意味を瞬時に理解した。
瞬間、彼女の顔が茹でたタコのように真っ赤に上気し、怒りと羞恥が入り混じった表情で男を睨みつけた。
「……ッ! あなた、なんてことを……ッ!」
男は理解できないイリヤに向けて、丁寧すぎるほど淡々と説明を続ける。
「前立腺というのはだね、男の身体にある第二の性感帯のようなもので……そこをこう、魔法のステッキで直接刺激することで、より濃厚な聖液を、より速く、より多く──」
男の淡々とした説明を、二人の少女の脳が完全に理解を拒んだ。
それは倫理観とか羞恥心とか、そういう次元の話ではなかった。
現実と非現実、高潔と汚濁が渾然一体となったその空間で、脳がこれ以上不条理な情報を処理できないと悲鳴を上げていた。
イリヤは口をあんぐりと開けたまま思考がストップし、美遊はあまりの衝撃に膝から崩れ落ちそうになっていた。
「友達のため!友達のため!……うほほーい!」
男は少女たちの困惑を無視して、壊れたラジオのように同じ言葉を繰り返しながら、クロエと結合したまま自分の尻を横に振る。
その揺れがクロエの身体に伝わるたび、彼女の体内で快楽が爆発的に増幅された。
「あんッ♥ あんッ♥ ……おおッ?♥」
理性を完全に焼き切られたクロエは、蕩けきった表情のまま、蕩けるような嬌声を上げて痙攣する。その姿はあまりに淫らで、かつて戦場を駆けた少女の面影はどこにもなかった。
「……もはやこれまでね。狂気には狂気をぶつけるしかないわ……ッ!」
イリヤが震える声でつぶやき、覚悟を決めたように瞳を真っ直ぐに男へ向ける。
それはもう、怒りという感情を通り越し、この不条理な現実を受け入れ、破壊するための破れかぶれの決意だった。美遊もまた、その表情に諦めと狂気を浮かべ、無言で深く頷く。
少女たちが男の言葉に従うべく地面のステッキに手を伸ばしたその時、事態の収拾を諦めて沈黙していた二つのステッキが、魂の危機を感じて必死の声を上げた。
「ちょ、ちょっとイリヤさん! 正気ですか!? これは魔法少女のすることじゃあ!!」
「……お嬢様、おやめください。お願いですから、正気に戻……やっ……ヤメロォー!」
マジカルルビーとマジカルサファイアが、空間を飛び回りながら必死に抵抗する。
しかし、覚悟完了した少女たちの耳に、その必死の叫びは全く届かない。彼女たちは狂気に染まった瞳でステッキを握りしめ、全裸の男へと一歩、また一歩と近づいていった。
男の提案を受け入れた少女たちは、そして狂気の中へと足を踏み入れた。
戦場に少女たちの叫びとも歓喜ともつかぬ声が響き渡る。
「あああッ!!お尻ッ♥ どうしてこんなに気持ちいいのぉッ!♥ もっと、もっと強くこすって!♥」
完全に理性を溶かされたクロエは、男の聖槍の挿入と、指による乳首への愛撫によって性感帯を刺激され、背中を反らせて狂乱の叫びを上げていた。
その姿は、あまりに扇情的で、見る者の理性を剥ぎ取るような色香を放っている。
「うーん、ステッキのとっかかりが……。そう、そこそこ……」
男はグリグリと腰を動かしながら、美遊を指導し、ステッキを正しい位置へ導こうとする。
「……ヤメテ……ヤメテ……。こんなの、絶対におかしいです……ッ!」
マジカルルビーの叫びは、魔力を供給する美遊の無機質な視線に完全に無視されていた。
美遊は顔を赤く染めながらも、ステッキを握る手に力を込める。
「へえ、こんなので気持ちよくなるんだ……ふーん……」
マジカルサファイアは、呆然としながらも、その光景を記録していた。
ルビーが男の快感の源となっている事実に困惑しつつ、自分は助かったとホッとする。
そして、その光景を前に、イリヤは動揺しながらも、ある行動に出る。
「クロ、前も辛そうだから……舐めてあげるね……」
イリヤは顔を赤くし、熱っぽい瞳で見つめると、結合したクロエの前に這い寄り、彼女の秘部へと顔を寄せた。
「ふ、あぁッ……!♥ イリヤ……っ♥イリヤ……っ♥おねえちゃんッ!♥」
クロエは、背後からの絶頂と、前からの愛撫との刺激に、もはやまともな思考を放棄した。
男は、その様子をすべて見渡し、狂気と淫らさが混ざり合った惨状に、心底満足したよう
にうなずくと、盛大に放出した。
「……ヨシ!」
「何が『ヨシ』よ……っ」
激しい快楽の嵐が過ぎ去った後、クロエは地面に崩れ落ち、荒い息を吐きながら、辛うじて己の存在を繋ぎ止めていた。服は乱れ、瞳は焦点が合わないままだ。
しかし、男の言葉に嘘はなかったようだ。力が戻ってくるのが感覚で理解できる。
一方、男は全裸のまま優雅に立ち上がり、何食わぬ顔で残りの聖杯を手に取る。
「安心しろ。あらかじめ使用してある聖杯の効果で、物事はなんか上手くいくだろう」
フワッとした、あまりに根拠のない言葉に、その場にいた全員の思考が一瞬止まった。
己の存在と尊厳をかけた狂宴の直後に放たれた、あまりに無責任なそのセリフ。
しかし、聖杯の扱いには一家言ある美遊が、その言葉の裏にある不自然さに気づく。
冷めた瞳で男を見上げ、冷ややかな声を響かせた。
「……待って。その聖杯の出力なら、最初からそれを使ってクロを救えばよかったんじゃ? なぜわざわざ、あのような破廉恥な手段を……」
美遊の指摘に、イリヤもクロエも、そして二つのステッキも、ハッとした表情で男を見る。
論理的に考えれば、最初から聖杯を使えば、誰も心身に深い傷を負わずに済んだのだ。
男は指摘を受けると、心底面倒くさそうな顔をした。
「……サラダバー!」
唐突に意味不明な言葉を叫ぶと、空間に裂け目を作り、その中へ全裸のまま飛び込んだ。
轟音と共に、闖入者は去った。
後に残されたのは、崩れ落ちたクロエ、顔を真っ赤にしたまま呆然とするイリヤ、怒りに震える美遊、そして二つのステッキ。ついでに男が放り捨てた聖杯がひとつ。
沈黙。
やがて、誰からともなく弱々しい、しかし明確な殺意を込めた呟きがもれる。
「……あの男、絶対に殺すわ」
その言葉が、戦場に静かに響き渡った。
「三千世界の表も裏も、どこへ逃げようとも絶対に探し出す。そして、このわたしの手で惨たらしく殺す……!」
クロエ・フォン・アインツベルンは大地に両手をつき、決意に満ちた瞳で、消えた裂け目を睨みつけながら震える声で誓った。
その声には、先ほどまでの快楽の残滓は微塵もなく、ただ純粋な意思だけが宿っていた。
確かに、彼女は消滅から救われた。それどころか、男が自分に注ぎ込んだ汚らわしい聖液とやらの効果により、身体の内側から溢れんばかりの──
以前よりも強大な、確固たる存在力を感じていた。
男の言葉通り、この世界も何かいい感じに上手くいくのだろう。
置き土産として残された聖杯もあることだし。
だが、それはそれ。これはこれだ。
「……当然よ。あんなことして逃げるなんて、絶対に許せないわ!」
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが真っ赤に上気した顔のまま、クロエの決意に共鳴するように強く頷く。
恥ずかしさは怒りによって塗りつぶされ、その目は男への断罪の意思で輝いていた。
「そう。私たちの理性を冒涜した罪は重い。……絶対に、報いを受けさせる」
美遊・エーデルフェルトも冷徹に、しかしその瞳の奥に激しい怒りを燃やして同意する。
彼女の持つ殺気は、戦場の敵に向けられたものよりもはるかに深く、重かった。
少女たちは顔を見合わせ、無言のまま深く頷き合った。
救済への感謝よりも、その過程で受けた理不尽な魂の侮辱が、彼女たちをより深くひとつに結びつけていた。
戦場に転がる聖杯の輝きを背に、男への断罪を誓う少女たち。
それは、雪の下に隠された、新たな血の誓い──少女たちの「雪下の誓い」であった。
なんかこんな感じの話だったと思う。うろ覚え。