※作品の内容に関するネタバレ注意!
冷たい魔力の奔流がアウラの全身を包み込んでいた。
それは軍勢を束ねる断頭台のアウラである彼女にとって、到底信じ難い異質な気配。
油断などしていなかった。目の前に立つエルフの魔力制限が完璧だったのだ。
だが、格下だと思っていた相手の真の魔力量を理解した瞬間、全てが反転した。
「アウラ、自害しろ。」
フリーレンの口から放たれた言葉は、静かで、冷徹だった。
そんなはずはない。この私が。この断頭台のアウラが、跪き、命を差し出すと言うのか。
アウラの意識は激しく抵抗した。脳が、肉体が、その命令を拒絶しようと叫ぶ。
しかし、彼女自身の魔力を遥かに凌駕する魔力によって構成された「服従の天秤」は、無情にも彼女の自由を奪っていた。
自身の意志とは裏腹に、彼女の右手が腰の剣を抜いた。
震える手が剣を持ち上げ、刃の冷たさが自身の首筋に触れる。
「……ありえない……この私が……」
屈辱に顔が歪んだ。恐怖が全身を支配する。
喉の奥から這い出てきた言葉は、か細い呟きとなって霧散した。
涙が目尻から溢れ落ちる。それを拭うことすらできない。
腕が勝手に力を込めた。鋭い刃が薄い肌を切り裂き、白い首に食い込んでいく。
痛みよりも先に、自分が人間ごときに殺されるという事実が、アウラの精神を破壊した。
意識の浮上は、泥から這い上がるかのように重く、鈍かった。
アウラはゆっくりと瞼を開く。
視界に入ってきたのは、天井の高い豪華な寝室の景色であった。
天井には精緻な彫刻が施され、巨大なシャンデリアが柔らかい光を放っている。
寝台の下には分厚い絨毯が敷き詰められ、壁には高級なタペストリーが掛けられている。
ここは一体どこだ。
彼女は思考を巡らせようとするが、頭の中には霧がかかったように朦朧としていた。
喉の奥が焼けるように熱く、呼吸をするたびに酷く重苦しい。
(……私は、フリーレンと……)
記憶の端々が繋がらない。服従の天秤が傾き、自らの剣が首筋に食い込んだ――
最後に見たのは、あのエルフの冷ややかな目と、自身の返り血だったはずだ。
アウラは事態を理解しようと腕を動かそうとしたが、指先一つ上手く動かない。
まるで全身の感覚が、遠い場所にある物質を操っているかのように現実味がなかった。
動かぬ身体を無理やり動かそうとすると、全身に形容しがたい違和感が走る。
ここが死後の世界なのか、あるいは夢なのか。
それすらも判別できないまま、彼女は豪華な部屋の天井を虚ろに見つめ続けた。
アウラは自身の体が、首から下が存在しない、頭部のみの状態であること悟った。
通りで、手足を動かそうとしても霧の中を漂うような感覚しかなかったわけだ。
呆然としながら、周囲の状況を認識しようと視線を動かす。
その時、寝室の奥から、聞き覚えのあるくぐもった喘ぎ声が聞こえてきた。
視線を向けると、そこには寝台の上で男が、全裸の少女を組伏せている光景があった。
男は興奮に顔を歪め、少女は恐怖に涙を流し、逃げようと悶えている。
その少女の姿を見て、アウラは凍りついた。
あどけない容貌、桃色の髪。アウラ配下の一人、リーニエだった。
(……リーニエ……?)
軍勢を束ねる断頭台のアウラとして、かつての部下が無惨な姿を晒している事実に、アウラの精神に屈辱と憤怒がせり上がる。しかし、首だけの彼女には、その男を殺すどころか、叫ぶことすら叶わなかった。
男の下で抗っていたリーニエの動きが不意に止まった。
かと思うと、一瞬の隙をついて男の体を押しのけ、逆にその上にまたがった。
先ほどまでの恐怖に怯える表情は消え失せ、少女の顔には冷酷とも、あるいは愉悦とも取れる冷たい笑みが浮かんでいた。
アウラは自身の首だけでその様子を凝視する。
リーニエは全裸のまま、男の上でその華奢な腰を激しく振り始めた。
荒い呼吸と、肉がぶつかり合う音が部屋に響く。
男は興奮のあまり、聞いたこともない不快な喘ぎ声を上げて悶えている。
アオンアオンってなんだ?
(……あれ、こいつらってそういうプレイしてない?)
困惑するアウラの中で、ひとつの疑問が湧く。もしや、これは戦闘ではないのか。
屈辱的な情景だと思っていたが、二人は至極楽しげに見えた。
その時、激しく動いていたリーニエの視線が、部屋の隅にあるアウラの元へと向けられた。
二人の目が合う。
リーニエは腰の動きを止めぬまま、アウラに向かって小さく手を振った。
その顔は、まるで遊びに興じる子供のようだった。
「アウラ様が目覚めた」
リーニエはまたがっていた男に顔を向け、かわいい声で無邪気に告げた。
その言葉を聞いた瞬間、男は欲望の籠もった目をアウラの首へと向けた。
二人は全裸のまま寝台から這い降り、アウラが置かれている台のほうへ歩み寄ってくる。
むき出しの肌と、漂う体臭。通常であればアウラはそのような下卑た光景に激しい嫌悪を催したはずだが、現在の彼女にとっての優先順位は、その異常な状況の解明にあった。
男はアウラの前まで来ると、その動かぬ首を覗き込み、陶然とした表情で呟いた。
「……ゆっくりみたいで、かわいいな……」
耳を疑う言葉だった。アウラは動揺で硬直した。
魔王軍の幹部であり、人間の首を切りゴミのように処理してきたこのアウラが、このような状態で、人間からそのように評される。
「可愛い」などという言葉は、最大級の侮辱であり、同時に恐怖を感じるものだった。
男の目には一切の敵意はなく、ただ狂気じみた愛情のようなものが宿っている。
(……訳が分からないわ……)
思考が限界に達する。
断頭台のアウラとしてのプライド、配下であったリーニエの理解不能な態度、男の異常性。
すべてが噛み合わず、彼女の精神は混乱の渦に飲み込まれていった。
何が起きているのか。ここはどこなのか。首だけの彼女は、目の前の異常な光景を理解しようと、ただ濁った目で凝視し続けることしかできなかった。
「ここは、アウラ。キミは、オレオール」
男が訳の分からないことを口走る。アウラは困惑を通り越して呆れ果てた。
「アウラ」は自分だ。しかし「オレオール」とは一体何なのだ。聞いたこともない地名か、あるいはこの男の個人的な愛称か。
混乱するアウラの頭部を、男はまるで壊れやすい宝物を扱うかのように、両手で優しく抱き抱えた。温かい体温が伝わってくる。男はアウラを部屋の隅へ運ぶと、そこに飾られていた純白の衣装の前に立ち止まった。
ひらひらとしたレースが幾重にも重なった、白い豪華なそのドレス。
人間の婚礼で花嫁が着るものだと、アウラは過去に見た記憶の端から知識を引き出した。
そのドレスを身にまとっているものに目を向けて、アウラは絶句した。
マネキンかと思っていたものは、それはよく見れば、アウラの胴体だったのだ。
首から下の、見慣れた、しかし今は魔力を含まない抜け殻の肉体。
(何をしているの……っ)
首だけの状態では発せられない言葉が、喉の奥から漏れる。
男はアウラの抵抗など意に介さず、迷いのない動作で、アウラの頭部をその身体の首筋へと押し当てた。
(くっつくはずが……!)
アウラが心の中で叫ぶより早く、奇妙な感覚が全身を駆け巡った。
冷たい肌と肌が触れ合った瞬間、目に見えないエネルギーが二つを繋ぎ止める。
まるで吸い付くように、頭部と身体が一体化した。
嘘でしょ、とアウラは自らの身体を見下ろす。指を動かしてみる。――動く。感覚がある。
驚愕に目を見開いたまま、彼女は口を開いた。
「……くっついた!?」
魔法も使えず、ただの肉の塊だった首が、再び生を得たように自在に身体を動かしている。
アウラは理解できぬ現実に、ただ呆然と己の手を見つめ続けた。
「面倒臭いから、現代知識をアウラの頭にシュゥゥゥーッ!!超!エキサイティン!!」
男が理解不能な言葉を叫びながら、アウラの額に自身の掌を押し当てた。
その瞬間、脳内に激しい眩暈のような感覚が走る。思考の回路に、大量の異質なデータが直接流れ込んできた。それは呪文や魔力の操作法ではない。見たこともない景色、聞いたこともない言語、そして笑いを誘う奇妙な情報の羅列。
(な、何なのこれ……っ!?)
抵抗しようにも、男の手から流れ込む知識は彼女の精神を侵食し、強制的に定着していく。
「アウラ、自害しろ」という言葉がネット上でどれほど弄ばれたか。
自分と言うキャラクターがどのように愛されていたか。
この世界の真実、あるいはこの世界自体が物語であるということ。
数秒とも数時間とも思える情報の奔流が終わると、アウラの脳内は鮮明になっていた。
眉根に寄せていた苦悩の皺が、ふっと消える。先ほどまでの、プライドを傷つけられた屈辱感も、死への恐怖も、今の自分にはどこか他人事のように感じられた。
アウラは小さく息を吐き、喉を鳴らして笑った。
「ふふふ……なるほど。そういうことね」
上位世界――自分たちを客体化する存在の知識に触れたことで、彼女の認識の位階が超越したかのようだった。魔族としての価値観や誇りが、圧倒的な「ネタ」の知識によって塗り替えられ、気が楽になっていた。
アウラは自分を見つめる全裸の男と全裸のリーニエを眺めて、ドレスの袖を直した。
その動作には、先ほどまでの怯えはなく、むしろ一種の達観した余裕すら漂っていた。
「ここはオレオール……あるいはオーリオール。輝く光の環を意味する言葉だけど、魂の眠る地……いわゆる天国と呼ばれる場所だね」
男は事も無げに語った。先ほどインストールされた知識によれば、天国とは清廉な魂が行く場所であるはずだ。全裸で、しかも先程リーニエと淫らな行為に及んでいた男が、涼しい顔をしてその場所を名乗っている。
魔族である自分、そしてリーニエがここにいること自体が論理的に矛盾していた。
アウラは、男が現代知識を脳に直接流し込んだように、何らかの超常的な力を行使してこの状況を作り出したのだと察した。
自分を弄び、精神的な愉悦を求めてアウラの自尊心を蹂躙するつもりなのだ。
男はアウラの身体に近づき、顔を覗き込みながら高らかに命じた。
「アウラ、セックスしろ!」
「や……ッッ!やっぱりかァ~~ッッッ!!」
アウラは思わず素の声を上げて叫んだ。
インストールされた知識の中にある、古典的かつ直接的な命令。
リーニエが全裸で組伏せられていた時点で予想はしていたが、いざ面と向かって命じられると、やはり屈辱と混乱が入り混じる。っていうか、勝手にアゼリュられた……!!
「こんなドレスを着させてるんだし、そこはせめてお嫁さんって……!」
しかし、同時に脳裏をよぎる知識がアウラの思考を瞬時に分析した。
(……いや、待て)
『確定申告』。複雑怪奇な数字の羅列を計算し、国家という組織に金を納める手続き。
『シュールストレミングの開封』。殺人兵器にも等しい悪臭を放つ食料缶詰をあける。
現代知識の断片が、それらをさせられる行為に比べれば、目の前の全裸の男と戯れることなど、魔族のプライドを多少削り落とすだけで済むと語りかける。
(……まだマシかしら? いや、そんなわけないわよね!?)
合理的な判断を下そうとする理性と、羞恥心が脳内で激しく衝突し混乱する。
アウラは額に手を当て、頭を振りながら複雑な表情でその全裸の男を見つめ返した。
「けっこう気持ち良いし楽しいですよ、アウラ様」
全裸のまま、リーニエはそう言って無邪気に笑った。先程までの乱れた姿はどこへやら、彼女は近くの戸棚から焼きたての甘い香りを放つ物体を取り出した。
「やはり、アップルパイのバニラアイスのせは至高……」
リーニエはそれを机に並べると、椅子に座り、幸せそうな顔をして口に運んだ。
衣服を一切身につけないその肢体が、椅子の上で不必要に艶かしく揺れる。
その光景は、戦場を駆けた首切り役人の姿からは程遠い。
アウラは冷めた目で、その堕落しきった部下の様子を眺めた。
男が与えた現代知識と欲望の果てに、リーニエは魔族としての誇りも、戦闘の目的も全て忘れ去ったのだ。
(……魔族が堕ちたら、どうなるのかしら)
以前なら、汚らわしいと言って切り捨てていた光景だ。
しかし、今の彼女の脳内には「光堕ち」という、魔族にあるまじき概念がインストールされている。敵に身も心も捧げ、異界の娯楽に溺れるリーニエの姿は、まさにその体現とも言えた。いや、言えないかもしれない。なんか違う気がする。
「よくわからないわね……」
アウラは呟き、自分の手を見つめた。
己の精神を支配していたはずの魔族の誇りや、恐怖を煽る喜びが、甘いアップルパイの香りと男の歪んだ愛情によって薄められていくのを感じる。
魔族の自分が、より混沌とした、理解しがたい上位の何かへ書き換えられていくような奇妙な感覚に、アウラはただ困惑するしかなかった。
男は、今にも焼き尽くしてしまいそうなほど熱い瞳でアウラを見つめ続けている。
その眼差しには、純粋すぎるほどの情熱と、わずかな狂気が混ざり合っている。
「アウラ、キミと逢うために俺はこの世界に生まれてきた」
その言葉を聞いた瞬間、アウラの胸の鼓動が不意に高鳴った。
それは魔族としての冷徹な感情ではない。
もっと根本的で、抗いようのない熱い感情の波が胸を打つ。
男がアウラを抱き寄せようと手を伸ばす。
「……じゃ、じゃあリーニエのことはなんなのよ!さっきあんなことしておいて!」
アウラは動揺しつつも、心の中のツッコミが思わず口から出た。
リーニエは椅子の上でアップルパイを頬張りながら、二人を見てニコニコしている。
しかし、そのツッコミも虚しく、男の強い意志がアウラを包み込む。
不思議と、その言葉を信じてみたい、この熱量に身を任せてみたいという気持ちが、アウラの胸の内で急速に膨らんでいった。
(……もし、こいつの能力で気持ちを操られているのだとしても)
アウラは自嘲気味に思考を巡らせた。
どうせ自分は一度、フリーレンの手によって死んだ身だ。
服従の天秤で自らの首を落とした、あの屈辱と恐怖の中で一度終わった存在なのだ。
ここは死後の世界か、それとも現実を改変した夢の中なのか。
どちらにせよ、すでに魔族としての生はなく、ただの余興に過ぎない。
(私をわざわざ呼び寄せて、ここまで私を望んだということよね……)
その事実に、不思議と悪い気はしなかった。孤独な断頭台の支配者として生きてきたアウラにとって、ここまでの熱烈な愛着は、未知の心地よさを伴っていた。
アウラは頬を少し紅潮させながら、男の視線を真っ直ぐに受け入れ、ウェディングドレスの胸元を優雅に緩めた。
男の顔が急速に近づき、視界がその顔で埋め尽くされる。
次の瞬間、唇に柔らかくも熱い感触が押し寄せる。逃げ場を封じるかのように深く、そして強く求められるキス。男の舌が迷いなく口内へと侵入し、アウラの舌を絡めとった。
「んッ……」
アウラの喉の奥から、抗えない甘い声が漏れた。
魔族の冷徹な理性が、男の体温と甘い吐息によって急速に溶かされていく。
同時に、男の手がドレスの胸元へと伸び、布地を強引に押し下げて白い肌を露わにした。
手のひらが直接肌に触れた瞬間、アウラは全身を電流が駆け抜けるような感覚に襲われた。男の手は驚くほど熱く、その熱が肉体を通して直接魂にまで伝わってくるようだった。
男は優しく、しかし執拗にアウラの柔らかな膨らみを愛撫する。
そして、手のひらが敏感な乳首に触れ、無遠慮にこすり合わせた。
「ああぁッ……!!♥」
確かな、そして強烈な快感が全身を支配し、アウラは喘ぎ声を上げてしまった。
大魔族である自分が、一介の人間ごときにここまで身体を支配され、快楽に溺れている。
その事実がさらなる背徳感を生み、彼女の理性を心地よく麻痺させていった。
男の愛撫に身を委ねていたアウラの手が、ふとした弾みで全裸の男の股間へと触れた。
その瞬間、硬く熱を帯びた肉の塊の感触が手のひらに伝わる。
リーニエと淫らな行為に及んでいた時から、男のものは勃起し続けていたようだ。
その硬さと熱は、先ほどリーニエと交わっていた時から冷めることなく、限界まで張り詰めているようだった。
(……ずっと、このままだったのね)
今までは何とも思わなかったその突起物が、今の彼女には不思議と愛おしく感じられた。
自分に向けられた圧倒的な情熱の形のように思えたからだ。
アウラは男の目を妖艶に見つめながら、その熱い箇所を優しく手で握り、ゆっくりとしごいてやった。
「うおッ……あぁ……っ!」
男は身体をびくつかせ、その場で気持ち良さそうな呻き声を上げた。
自分の手によって男が容易く快楽に支配される様子に、アウラは支配者としての征服欲に似た喜びを感じた。嬉しくなった彼女は、手の動きを速め、より執拗に愛撫を続ける。
すると男は、アウラの腰に熱い腕を回し、その体を強く引き寄せた。
そのまま、片手をアウラの露わになった尻へと這わせ、豊満な肉を貪るように揉みしだく。
「っあ……!♥ん、ぅ……」
背骨を直接撫でられたかのような快感が全身を貫く。
尻を刺激されるたびに、腰から力が抜けそうになるほどの心地よさが襲いかかってきた。
アウラは快感に溺れながら、男の首に腕を絡め、さらに身体を密着させる。
彼女は、今や男の愛撫と己の快楽に没頭し、互いの肉体を貪り合う余興のただ中にいた。
男の手がドレスのスカートをたくし上げ、アウラの太ももの間へと迷いなく入り込む。
熱い指先が、アウラの湿った場所の割れ目をなぞり、ゆっくりと指を這わせていく。
その感覚にアウラの体が大きくビクついた。
指がクリトリスに触れ、優しく押しつぶすような刺激を与えた瞬間、電流のような熱い快感が全身を駆け抜け、彼女の理性を完全に吹き飛ばした。
「ふあッ……!?♥んんっ……!!♥」
アウラは快感に腰を引き、男の厚い胸板に頬を寄せて、すがりつくように抱きついた。
彼女は視界に入った男の乳首に舌を伸ばし、チロチロと弄ぶ。
指先は男のもう片方の乳首をつねり、コリコリと刺激を与えた。
男はその快楽にひるみつつも、指をゆっくりとアウラの中へ挿入していく。
肉厚な指が奥へ入ってくる感触に、アウラの腰がガクガクと震え、甘い喘ぎ声が絶え間なく漏れ続ける。
大魔族としての誇りも、断頭台のアウラという立場も、すべてはこの甘美な快楽の波の中に溺れ、消え去っていった。
男はアウラを軽々と抱き抱えると、そのまま部屋の寝台へと運んだ。
アウラは、ドレスの裾を乱しながら、柔らかなマットレスの上に横たえられる。
(……ああっ、私としたことが……)
己の身体が勝手に欲望に染まっていくことに恥じらいを感じながらも、アウラは男の視線にさらされて顔が熱くなるのを止めることができなかった。
心臓が早鐘のように鼓動を打つ。
男を迎え入れるため、アウラは自らの意思でドレスを脱ぎ捨て、ためらいながらも脚をゆっくりと開いて見せた。
(私……経験なんて……なのに、どうして積極的なの……?)
魔族として多くの命を奪い、支配してきたが、このような肌の触れ合いは初めてだった。
それでも、不思議と迷いはなかった。むしろ、男の熱を求めている己に驚く。
先ほど自分の手で行った男への愛撫を思い出し、疑問が頭をよぎったが、目の前に迫る男の瞳を見ると、そんなことはどうでもよくなった。
男が覆いかぶさり、アウラの脚の間に自らの身体を割り込ませた。
熱く硬直した肉の柱が、濡れたアウラの秘所へと、ずぶりと挿入されてくる。
「あぁあぁあん……ッ!!♥♥♥」
アウラは限界を超えた嬌声を上げた。
支配と隷属の境界が消え去り、男と一体になる心地よい快感。
それは、魔族の支配欲をも満たす、魂が震えるような恍惚感だった。
彼女は男の背中に爪を立て、その快楽に身を完全に委ねた。
アウラが自ら脚を開いて見せた姿に、男は興奮を隠しきれない様子で、激しく腰を振った。
アウラの内に収まった熱い肉の柱が、何度も何度も深い場所を突き上げる。
その必死で、むさぼるような動きを見つめながら、アウラは彼が自分に溺れているのだと感じて、胸が熱くなった。魔族にはない、人間の脆くも激しい情熱を愛おしくさえ思う。
「ああんッ♥ すごいっ♥ もっと動いて……もっと♥ あなたのモノが中でこすれて……!」
アウラは自分でも驚くほど艶っぽい声を上げ、男の腰に脚を絡めた。
挿入された部分がこすれ合うたびに、快楽の波が脳髄を直接揺らす。
男は激しく腰を動かしながら、荒い息の下でアウラに命令した。
「モノなんて言うな! チンポと言え!!」
その卑猥な響きに、アウラは一瞬戸惑ったが、すぐに快感に塗りつぶされた脳がそれを肯定した。男が求めているなら、それに従うのが今の余興のルールなのだ。
「……ッあ! ああぁッ♥ チンポ……あなたのチンポが! 奥に……っ!♥」
アウラが恥じらいながらもその言葉を口にすると、男は瞳を見開き、さらに激しく腰を打ち付けた。いいぞ、いいぞ、すごくいいぞ! と男はアウラをせめたてる。
アウラは男の言葉を聞くたびに、己の羞恥心が快楽へと変換されていくのを感じ、声を枯らして喘ぎ続けた。
男の腰の動きが尋常ではない速さになる。激しいピストン運動。
ベッドが軋む音とアウラの艶めかしい悲鳴が部屋中に響き渡る。
男の顔は快楽に歪み、限界が近いことを伝えていた。
「ああ、もう出そうだ……! くっ、お前のここが気持ちよすぎるからチクショウ……!」
アウラもまた、身体の芯からせり上がる強烈な痺れに、絶頂の淵に立たされていた。
脳内が真っ白に染まり、星が散るような幻覚が視界を埋め尽くす。
「きて……♥きてぇ……♥私ももう少しでイクからぁ……ッ!♥」
その時だった。男が獣のような咆哮を上げた。
「うおおおおッ!出る……もう出るッ!射精する!!射精してやる……!!」
「中に射精してやるぞッ!!!! 陸八魔アル……ッッッ!!!!」
アウラの快感に痺れていた頭が一瞬で冷えた。
熱いものが体内へ放出されるのとほぼ同時に、男の口から出た知らない女の名前。
(……りくはちま、アル……?)
混乱と、理由の分からない感情が、一瞬にして快楽を吹き飛ばした。
理性が弾け飛ぶ。アウラは瞬時に魔力を練り上げた。
それは彼女がかつて使っていた魔法とは比較にならない、禍々しくも巨大な漆黒の塊だ。
ゾルトラークなどというチャチなものではない。
すべてを消し去るような、究極の「何か」。
「⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛ーーーッ!!!!」
アウラが叫びとともにその極大魔法を放つ。
直撃を受けた男は、驚愕に目を見開き、精液を撒き散らしながら吹き飛んでいった。
壁に激突し、豪華なシャンデリアが砕け散り、部屋の中が煙に包まれる。
アウラは震える手で胸を隠し、吹き飛んでいった男を睨みつけながら荒い息を吐き続けた。
「誰なのよ陸八魔アルって!! リーニエですらないじゃないのよッ!?」
瓦礫の山となった寝室に、アウラの絶叫が響き渡った。
男のモノを愛おしく感じ、その男と一体になる余興を楽しんでいたはずだった。
それなのに、最後の最後に知らない女の名前を呼ばれたことへの屈辱。
それは魔族としての誇りというより、一人の女としてのあまりに人間臭い嫉妬だった。
首だけの時に感じた恐怖も、現代知識に支配された安堵も吹き飛び、純粋な憤怒が彼女を突き動かしていた。
崩れ落ちたシャンデリアの残骸から、男が腰をさすりながら這い出てきた。
先ほどアウラが放った、ゾルトラークを超えた何かは、超越者である彼の肉体にもそれなりの衝撃を与えたようだ。
男は照れたように笑いを浮かべながら、瓦礫を払いのけて言った。
「だって、ヒンメルならそう言ったかなって……」
その言葉を聞いた瞬間、アウラの脳内の知識が爆発した。
ヒンメル。フリーレンの仲間の、魔王を倒した人間。
そして、本人とは関係なく、やはりネットミームによって弄ばれる存在。
「ヒンメルはそんなこと言わない!いまヒンメル関係ないでしょ!!っていうか、ヒンメルなにしてるのよ!!」
アウラは髪を振り乱して叫び続ける。
男の言う「ヒンメル」という存在への理解が、逆に彼女の感情を激しく逆撫でしていた。
全裸で瓦礫の山の上に立ち、存在しないヒンメルに向かって叫ぶその姿は、かつての冷徹な断頭台のアウラの面影など微塵もない、あまりに滑稽で人間らしい姿だった。
「普通のヒンメルなら外にいるよ。少し離れたところで暮らしてるよ」
瓦礫の中でアップルパイを頬張っていたリーニエが、ケラケラと笑いながら口を開いた。
喧騒に一切関わらず、ただ状況を楽しんでいたかのような風情だ。
「……は?」
アウラは一瞬、何を聞かされたのか理解できずに固まった。
あのヒンメルがこの「魂の眠る地」に存在するというのか。
混乱する脳内で、先ほどインストールされた知識が急速に処理を行う。
この場所はオレオール……魂の集う場所……まさか本当に……?
(ヒンメルが……ここに……!?)
驚愕で、先ほどまで怒りに燃えていた理性が一瞬にして冷静さを取り戻す。
しかし、同時にこの状況の異常性に耐えきれなくなった。
全身を走る熱の残滓と、瓦礫の中で全裸で座り込んでいる男の姿。
もうこれ以上、この狂った余興に付き合っていられるか。
「……もういいわ! こんなところ!」
アウラは震える手でドレスを掴むと、男に背を向けて部屋の出口へと歩き出した。
「本物のヒンメルに会ったら言いつけてやるんだから! この変態人間がッ!!」
捨て台詞を吐き捨て、アウラは怒りと恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、未知の場所へと繋がる扉を蹴破るようにして出て行った。
その背中を、リーニエは手を振りながら、楽しげに笑って見送った。
「またね、アウラ様」
軽い別れの言葉。リーニエは男に媚びるでもなく、恐怖するでもなく、ただその場所に残ることを選んだようだ。この異常な空間において、堕ちた魔族の少女と超越者の男は、奇妙な共犯関係にあるかのように息が合っていた。
その後、あてどもなくさまようアウラはヒンメルと遭遇。
魂の集う場所で魂同士が触れあい、一瞬で相互理解が完了。
なんやかんやあってアウラはヒンメルと結ばれることに。
なんか子供まで出来ちゃった。三人も。
男とリーニエはくっついて、アウラたちとは近所付き合いが続いている。
そして幾星霜。
フリーレンがオレオールに辿り着いた時、アウラは怖くて泣きそうなほど怯えてしまう。
そんなアウラに対して、ヒンメルが優しい瞳で抱きしめながら言う。
「大丈夫、僕はずっと君のそばにいるよ」
それを目撃したフリーレンは、無事に脳が破壊される。
めでたしめでたしで終わりじゃない。