※作品の内容に関するネタバレ注意!
ウルトラスペースの最果て、命の鼓動さえ凍りつくような静寂に包まれた異界。
毒々しいまでの美しさを放つクリスタルの群生が、寄る辺ない光を反射して周囲を照らしている。
ルザミーネの瞳に、もはや理性という名の光は残っていない。
娘であるリーリエの必死の叫びも、かつて愛した世界への未練も、ウツロイドの分泌する神経毒によって塗り潰されていた。彼女が求めているのは、究極の美、そして自分を否定しない絶対的な存在のみ。
「……もう、いいわ」
その声は、掠れているが酷く冷徹だ。
ルザミーネが陶酔しきった表情で頭上を見上げる。
上空に漂っていたウツロイドが、彼女の招きに応じるように、ゆっくりと、しかし確実に降下を始めた。
半透明の、ドレスの裾を思わせる触手がルザミーネの細い肩に触れる。
次の瞬間、空間が歪むような異音が響き、ウツロイドは彼女の肉体を飲み込み始めた。
頭部から肩、そして胸元へ。
ゼラチン質の膜が彼女の皮膚と融け合い、ルザミーネの上半身は巨大な黒い傘の中に埋没していく。
金色の長い髪は、まるで神経細胞が活性化するようにウツロイドの体組織と混ざり合い、黒く変貌を遂げた。
「ああ……あああ……っ!」
快楽とも苦痛ともつかぬ叫びが、異形の口から漏れる。
融合は一瞬で完了した。
そこには、かつてのエーテル財団代表としての面影を残しつつも、完全にヒトを辞めたモノが浮遊していた。
黒い巨大な傘の内部には、ルザミーネの上半身が浮かんでいる。
四方に伸びた触手は意思を持つ蛇のようにうねり、先端に備わった鋭い爪が、床のクリスタルを無造作に削り取った。
圧倒的なプレッシャー。
それは生命としての格の違いを見せつける、美しくも禍々しい威圧感だった。
ルザミーネであったモノは、無機質な視線を目の前の敵——主人公へと向ける。
彼女の指先がわずかに動くと、その背後に従うポケモンたちのオーラが、凶暴な色を帯びて膨れ上がった。
もはや言葉による対話は成立しない。
絶望的なまでの静寂を破り、異形の美神がゆっくりと腕を振り上げた。
空間を裂くような轟音が響き渡り、クリスタルの破片が火花とともに四散する。
ルザミーネが放つプレッシャーは、融合前とは比較にならない。彼女の背後でうねる触手の一振りが、岩石を容易く粉砕し、大気を震わせる。連れ出されたポケモンたちは、ウツロイドの神経毒によって理性を焼き切られ、ただ破壊を繰り返すマシーンへと変貌していた。
主人公の相棒が膝をつく。
度重なる激突により、その身体には隠しきれない疲労が刻まれていた。
対するルザミーネは、異形の傘の中で冷酷な微笑を浮かべたまま、宙を滑るように距離を詰めてくる。彼女の瞳にはもはや慈悲の欠片もなく、ただ「不要なもの」を排除しようとする狂気だけが宿っていた。
「……っ、危ない!」
リーリエが叫ぶ。彼女の足元まで、猛毒のトゲが迫っていた。
周囲の仲間たちも、異世界の重圧と終わりの見えない猛攻に、防戦一方となっている。
このままでは、全員がこの冷たい静寂の底に沈むことになる。
主人公は、一歩前に出た。
震える拳を握りしめ、背後にいるリーリエと仲間たちを振り返る。その瞳には、絶望ではなく、揺るぎない決意の光が宿っていた。
「……みんな、ここはいい。下がってくれ!」
叫び声が、洞窟内に反響する。
リーリエが目を見開き、信じられないといった表情でこちらを見た。
「何を……何を言っているんですか!? 一緒に戦わなきゃ、こんなの……!」
「いいから! 早く!」
主人公は、追撃を仕掛けようとするルザミーネのポケモンを相棒とともに押し留め、強引に道を切り開く。背中で感じる仲間たちの動揺を、言葉の力でねじ伏せるように続けた。
「リーリエ、みんなを連れて外へ。……ここはオレが引き受ける。あとは任せてくれ。絶対に、絶対になんとかするから!」
その言葉は、単なる強がりではなかった。
自らを盾にし、逃げ場を確保しようとするその背中。
主人公の覚悟を悟った仲間たちが、苦渋の表情で足を止める。リーリエの瞳に涙が溜まり、唇が震えた。
「……信じて、いいんですね? 戻ってくるって、約束してください!」
主人公は答える代わりに、力強く頷いてみせた。
背後では、ルザミーネがさらに巨大なエネルギーの奔流を練り上げている。漆黒の触手が、獲物を仕留めるために大きく鎌首をもたげた。
「行け!!」
その一喝を背に、仲間たちが走り出す。
遠ざかっていく足音を聞きながら、主人公は再び、目の前の「化け物」へと視線を戻した。
静寂が支配するはずの異界に、ひび割れたガラスを引き摺るような、耳障りな笑い声が響き渡った。
「ふ……ふふ、あはははは!」
ルザミーネの異形の身体が、歓喜に震える。
融合したウツロイドの触手が、彼女の感情に呼応するように激しくのたうち、周囲のクリスタルを粉砕した。
リーリエたちが背を向け、必死に逃走していく様を、彼女は見逃したのではない。
ただ、あまりにも無力で、あまりにも「美しくない」羽虫たちが視界から消え失せるのを、至上の愉悦とともに見送ったに過ぎない。
圧倒的な強者の余裕。
もはや目の前には、ボロボロになった少年と、満身創痍のポケモンがたった一匹残るのみ。
勝利を確信したルザミーネは、仮面のような冷ややかな笑みを浮かべ、とどめを刺すべく触手を鎌首もたげさせた。
だが。
「……はは、ははははっ!」
不意に重なった笑い声に、ルザミーネの眉がぴくりと動く。
笑っていたのは、主人公だった。
絶望的な状況、逃げ場のない異界。仲間を逃がし、死地に取り残されたはずの人間が、腹の底からこみ上げるような笑い声を上げている。
ルザミーネの笑いが、困惑とともにひそめられた。
狂ったのか。あるいは、恐怖のあまり精神が崩壊したのか。
彼女は不快そうに目を細め、その異形の上半身を低く沈める。黒い触手が、威嚇するように主人公の喉元へ突きつけられた。
しかし、主人公の瞳から光は消えていなかった。
それどころか、その眼光は先ほどまでとは比較にならないほど、獰猛で、輝きを放っている。
口角を吊り上げ、剥き出しの戦意をルザミーネへと叩きつける。
「“待”ってたぜェ!! この”
その咆哮は、異界の冷気を一瞬で焼き尽くすほどの熱量を帯びていた。
仲間という「守るべき枷」が外れた今、その全身から溢れ出したのは、純粋な闘争本能。
絶望を喰らい、極限状態を愉しむかのような狂気的な笑みが、主人公の顔に刻まれる。
ルザミーネの表情が、初めて微かに強張った。
目の前の存在が、ただの「餌」から、自分を屠りかねない「獣」へと変貌したことを、本能が察知したのかもしれない。
主人公は、相棒のポケモンをモンスターボールに戻すと、一歩踏み出した。
異界の冷気が、一瞬にして別の熱量へと変質する。
主人公の瞳に宿ったのは、先ほどまでの正義感でも、仲間を守るための悲壮な覚悟でもない。
それは、ドロリとした粘り気を持つ、純粋で、かつ逃れようのない渇望の色だった。
「――当時は若く性欲をもて余していました」
独り言のような、あるいは神への懺悔のような呟きが、静寂を切り裂く。
ルザミーネの眉が、不快感と困惑でさらに深く歪んだ。何を言っているのか、この子供は。
融合したウツロイドの触手が、主の動揺を反映して細かく波打つ。
「――たった一度の過ち」
主人公は一歩、また一歩と、異形の美神へと歩み寄る。その足取りには迷いがない。
足元のクリスタルが、踏みしめられるたびに嫌な音を立てて砕ける。
「――僕は熟女好きではありません」
その声は、もはや詠唱だった。
自分自身に言い聞かせるような、あるいはこれから振るわれる暴挙への免罪符を求めるような、奇妙に落ち着いた響き。
だが、その言葉とは裏腹に、主人公がルザミーネを見つめる瞳は、獲物を値踏みする肉食獣のそれへと変貌していた。
「……ッ、何を……気味の悪い!」
ルザミーネの背筋に、得体の知れない悪寒が走る。
彼女はエーテル財団の代表として、また一人の女性として、数多の羨望や畏怖の視線を浴びてきた。だが、目の前の少年が向けてくるそれは、そのどれとも違う。
それは、彼女という「個」を無視し、ただその肉体と存在を丸ごと飲み込もうとするような、剥き出しの執着。思わずショックで、少し正気に戻る。
「結論……美人だったのが悪い」
断定するような低い声。
主人公の視線が、ルザミーネの顔から、ウツロイドと融け合った白い肢体、そして脈動する触手へと、なめるように動く。
その瞬間、ルザミーネの心が激しくざわめいた。
これまでは自分が「捕食者」であり、相手は「獲物」だったはずだ。
だが、この空間の支配権が、目に見えない何かに塗り替えられていくのを感じる。
本能が、警鐘を鳴らしていた。
目の前にいるのは、救済者でもなければ、敵対するトレーナーでもない。
自分を、理性の通じない別の次元へと引きずり込もうとする「何か」だ。
「……来ないで。近寄らないでと言っているのよ!」
ルザミーネの声に、初めて明確な動揺が混じる。
彼女は反射的に触手を振り上げ、防御の構えをとった。しかし、主人公の熱い瞳は、その仕草さえもご褒美であるかのように受け入れ、さらに深く、彼女の奥底を見据えていた。
ルザミーネの背後で、数条の漆黒の触手が爆ぜるようにしなった。
空気を切り裂く鋭い音が響き、それは回避不能な速度で主人公の胸元へと叩きつけられる。
物理的な破壊、あるいは神経毒による即死。そのどちらかが訪れるはずだった。
だが、触手の先端が少年の肌に触れる直前、見えない障壁に阻まれたかのように火花を散らして弾かれた。
「なっ……!?」
ルザミーネの驚愕を余所に、少年の歩みは止まらない。
その歩調は、まるでお気に入りの散歩道を歩むかのように、穏やかでさえあった。
「後悔はある。やり直しなど何度望んだかわからない」
淡々と、しかし重みのある独白が異界の静寂に染み渡っていく。
その声には、幾千の夜を越えてきたような、果てしない悔恨の響きが含まれていた。
ルザミーネは困惑する。この少年は何を言っているのか。
彼が背負ってきたはずの「正義」や「責任」とは、明らかに異質の熱量がそこにはあった。
「だが、それでも───俺は、間違えてなどいなかった」
少年が顔を上げる。
その瞳は、濁りのないクリスタルのように透き通っていた。
あまりにも純粋で、あまりにも真っ直ぐな、一点の曇りもない眼差し。
ルザミーネは思わず息を呑んだ。
(この子……なんて目を……。これほどまでに清らかな意志を、私は見たことがない……!)
かつての夫も、娘も、息子も、これほどまでに迷いのない光を自分に向けたことはなかった。
その神々しささえ感じさせる視線に、ルザミーネの心臓が高鳴る。
それは恐怖か、それとも救済への予感か。
だが、少年の口から零れ落ちた「真実」は、彼女の想定を無惨に、かつ無慈悲に粉砕した。
「だって、あなたは、そんなにもプルプルでスケスケのドスケベなんだから♥」
空気が凍りついた。
いや、凍りついたのはルザミーネの思考だった。
少年の瞳に宿っていた「清らかな光」の正体──それは、一切の倫理や常識をかなぐり捨て、ただ己の歪んだ性癖のみを羅針盤とした、狂信的なまでの肯定だった。
ウツロイドと融合し、ゼラチン質の膜に包まれた彼女の肢体。
粘膜のように脈動し、内部が透けて見えるほどに薄く引き伸ばされた異形の肌。
それが、少年にとっては神の導きにも等しい至高の造形として映っていた。
そう、この少年は、かつて前世においてルザミーネという存在に性癖を徹底的に破壊され、その執念の果てにこの世界へと降り立った、チート転生者であったのだ。
「……は……?」
ルザミーネの喉から、間の抜けた声が漏れる。
今、この子供は何と言った?
プルプル? スケスケ?
誇り高きエーテル財団の代表として、美の体現者として君臨してきた彼女が、これまでの人生で一度も向けられたことのない、あまりにも直球で、あまりにも下劣な、しかし魂の底からの賛辞。
なにかが致命的にマズイ。
彼女の生存本能が、かつてない最大級の警戒を告げていた。
目の前の存在は、自分を倒そうとしているのではない。
自分を、その歪みきった愛という名の檻に閉じ込めようとしているのだ。
「ぼくをみて……ぼくをみて……」
少年の声は、優しく、それでいて逃れようのない呪詛のように空間に染み渡っていく。
ルザミーネは、その異常な執着に当てられ、本能的な恐怖に身を震わせた。
彼女が背後から繰り出す触手の猛攻は、少年の周囲で歪む見えない力によって、まるであらかじめ軌道が決まっていたかのように逸らされていく。
何をしても届かない。言葉も、暴力も、ウツロイドの毒でさえも、この少年の歩みを止めることはできなかった。
少年の瞳は、もはや理性の仮面をかなぐり捨て、爛々と輝く情欲の炎を宿している。
その視線は、ルザミーネの半透明な触手がうねるたびに、吸い付くようにその「質感」を追い求めた。
「やめて……来ないで……ッ!」
高潔な女王としてのプライドが、音を立てて崩れていく。
だが、少年は止まらない。彼は、自分の股間へとゆっくりと手を伸ばした。
「──ぼくのポケットのなかのモンスターが、こんなにおおきくなったよ」
その宣言とともに、異世界の静寂を切り裂く、異様な音が響き渡る。
──ムラムラ。
──ムクムク。
──ビキビキ。
それは肉が膨張し、限界まで張り詰める、おぞましくも生命力に満ちた脈動の音。
少年のズボンの布地が内側から押し上げられ、その形状を維持できずに悲鳴を上げる。
そして──。
ボロンッ♪
軽快な、あまりにも場違いな擬音とともに、それは解放された。
ヘソの上まで反り返り、怒張した血管を浮き上がらせた、少年の「相棒(ポケモン)」。
それは、チート転生者としての業と執念が凝縮された、物理法則を無視するかのような威容を誇っていた。
「……っ!?」
ルザミーネの思考が、真っ白に染まる。
直視してはならないもの。しかし、その圧倒的な存在感から目を逸らすことなど、もはや不可能だった。
次の瞬間、ルザミーネの身体に異変が起きた。
ウツロイドと融合し、極限まで敏感になっていた彼女の神経系が、少年の放つ濃厚な雄のフェロモンと、その質量の視覚情報に直撃される。
「あ……ああ……っ、はぁっ、く……っ!」
彼女の頬が、ウツロイドの傘越しに見てもわかるほど、瞬時に朱に染まった。
融合した触手たちが、彼女の意思に反して、歓喜するように激しくのたうち回る。
股間から溢れ出す熱い衝動が、理性の最後の防波堤を一瞬で押し流した。
かつての傲慢な女王の瞳は、いまや潤みきり、焦点が定まらない。
口元からは絶え間なく吐息が漏れ、その肢体は少年の「モンスター」を求めるように、抗いがたく、卑猥に悶えはじめた。
一瞬。
たった一瞬で、ルザミーネは発情の檻へと叩き落とされたのである。
ルザミーネは、二人の子を成した母親である。成熟した女として、男という生き物の「それ」がどういうものか、知識としても経験としても弁えていたはずだった。
だが、目の前の少年が解放したそれは、彼女の知るいかなる理をも踏み越えていた。
天を突くように反り返り、怒張した血管が脈動するその質量。
視覚から飛び込んできた圧倒的な「雄」の象徴に、彼女の脊髄は真っ白に焼き切られる。
(……っ、はぁっ、あ……あああ……っ!)
これはウツロイドの影響なのか。それとも、神経毒によって過敏になった肉体が、少年の放つ濃厚な生命力に共鳴しているのか。
彼女の太ももは抗いがたく震え、融合した触手の一本一本が、まるで意思を持つ蛇のように、少年の熱源を求めてのたうち回る。
少年は、怯えるようにうねる一本の触手を、愛おしげにその手に収めた。
抵抗など、もはや意味をなさない。少年は逃れようのない力でそれを引き寄せ、ヌルリとした粘膜の感触を味わうように、深く、熱い口づけを落とした。
「……っ、ふ、ふああ……っ!?♥」
ルザミーネの脳内に、暴力的なまでの多幸感が奔流となって流れ込む。
頬を寄せられ、愛撫される。それだけで、彼女の精神の拠り所であったはずの「美への執着」が、ドロドロの愛欲へと書き換えられていく。
マズイ、これ以上は、自分という存在が消えてしまう。
そう本能が警鐘を鳴らす一方で、彼女の身体は、さらなる浸食を求めて熱く疼いていた。
「まずは、そのウルトラホールを楽しませてもらうね」
少年の口から漏れたのは、狂気そのものの宣言だった。
次の瞬間、重力を無視した少年の跳躍。
少年の身体が異界の虚空を高く舞い、ルザミーネの頭上へと肉薄する。
「やめ……やめなさい、そこは……っ!」
拒絶の言葉は、熱い吐息にかき消された。
ルザミーネの顔の間近。ウツロイドと融け合った、その半透明で弾力のあるゼリー状の傘。
そこに、少年の怒張した「相棒」が容赦なく突き立てられた。
──ビチャッ、という湿った衝撃音が響く。
「あ……がっ、ああああああああっ!!♥」
ルザミーネはのけぞり、絶叫した。
触れた箇所から、脳髄を直接灼くような激痛に似た快感が爆ぜる。
柔らかく、それでいて強固な弾力を持つウツロイドの肉壁が、少年の熱に侵食され、内側から激しく押し広げられる。
傘の内部に伝わる凄まじい硬度と、脈動する生命の振動。
それはルザミーネの精神を粉々に砕き、彼女をただの欲情する肉の塊へと変貌させるに十分すぎる一撃だった。
白目を剥き、よだれを垂らしながら、ルザミーネの肢体は激しく痙攣する。
融合した異形の身体が、少年の侵入を歓迎するかのように、より深く、より密接に、その怒張を飲み込もうと波打ち始めた。
異界の静寂は、もはや卑猥な水音と、高潔さをかなぐり捨てた女の絶叫によって完全に塗り潰されていた。
少年の腰が、ウツロイドの傘の肉壁を穿つたびに、ジュポッ、ジュプッという湿った粘膜音が周囲のクリスタルに反響する。それは、異世界の生命体と、少年の異常なまでの執念が力任せに混ざり合う音だった。
「あ゛ッ……!♥ あ、あ゛ぁぁぁッ!!♥」
ルザミーネの喉から、もはや言葉にならない鳴き声が漏れる。
融合した傘の内側を、暴力的なまでの硬度が掻き回すたびに、彼女の脳髄には白い火花が散った。少年の「相棒」が肉壁を押し広げ、奥底を蹂躙するたび、彼女の身体は弓なりに反り返り、指先までが激しく痙攣する。
「お゛ッ?♥ そんな、あ、あつい……なにかが、はいって……っ♥」
ウツロイドの半透明な肉体が、少年の熱に当てられてドロドロに融け始めていた。
神経毒による支配は、少年のもたらす圧倒的な快感という毒によって上書きされ、ルザミーネの精神は、ただ一点──少年の熱源を受け入れることだけに集中させられていく。
そして、限界が訪れた。
少年の全身の筋肉が鋼のように強張り、咆哮とともに、その「相棒」が熱い命の奔流を解き放った。
ドクン、ドクンと、脈動するたびに白濁した液体が、ウツロイドのゼリー状の体組織の中へと流し込まれていく。
「いっ、く……ああああああああああっ!!♥」
ルザミーネの絶叫が空間を震わせる。
半透明だったウツロイドの傘が、少年の放った白濁によって瞬時に濁り、マーブル状に混ざり合っていく。それは彼女の聖域が、少年の欲望によって完全に汚染された瞬間だった。
同時に、ルザミーネの肉体を強烈な絶頂の波が襲う。これまでの人生で味わったことのない、生命の根源を揺さぶるような多幸感。彼女の意識は一瞬、真っ白な光の中に消失した。
直後。
快感の余波で弛緩しきった彼女の身体から、寄生していたウツロイドが、その白濁を吐き出しながら力なく剥がれ落ちた。
「……ぁ、あ、はぁっ、はぁ……っ」
冷たい床に倒れ込むルザミーネ。
融合が解け、禍々しかった黒い髪は、元の美しい金髪へと戻っていく。
肌を覆っていた粘膜も消え、彼女は一人の、ただ疲れ果てた女の姿に戻っていた。
荒い呼吸を繰り返すたびに、胸元が激しく上下する。
ウツロイドの毒から解放され、冷気とともに正気が戻ってくるのを彼女は感じていた。
だが、その瞳には、先ほどまでの傲慢さは微塵もない。
ただ、快感の残滓に震え、涙に濡れた目で、自分を圧倒した少年を見上げることしかできなかった。
冷たい異界の床に伏したまま、ルザミーネの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「わたしは……なんという惨い事を……。愛する我が子たちに、あんな……」
ウツロイドの毒が抜けた脳裏に、自分がこれまでリーリエやグラジオに向けてきた冷酷な言動が、鮮明な罪悪感となって蘇る。彼女は震える両手で顔を覆い、己の過ちを悔いて咽び泣いた。歪んだ美への執着は消え、そこにはただ、取り返しのつかない過ちに絶望する一人の母親の姿があった。
その時、震える肩に温かな感触が触れた。
少年が隣に膝をつき、慈しむような、あまりにも優しい微笑みを向けていた。
ルザミーネは涙に濡れたまつ毛を震わせ、救いを求めるように彼を見つめ返す。
この少年なら、こんな自分でも許してくれるのではないか。そんな淡い期待が、彼女の胸を支配しようとした。
だが、少年の薄い唇から零れたのは、聖者の救済などではなかった。
「一粒で二度美味しい」
「……え?」
ルザミーネの思考が停止した。今、この少年は何と言った?
目の前で涙を流し、改心し、今から感動の和解が始まるはずの、美しきドラマの絶頂。
そこで発せられたのは、あまりにも世俗的で、あまりにも欲望に忠実な、お菓子か何かのキャッチコピーのような言葉。
(え? まだするの? 今、わたしって改心して、ようやく人間らしい心を取り戻した場面じゃなかった……? めでたしめでたし、で終わらないの……?)
混乱するルザミーネを余所に、少年の瞳には先ほどよりもさらに深い、底知れない情念が宿っている。
「これは治療なんだよ。ウツロイドの残滓を完全に浄化するには、もっと内側から……直接的な刺激が必要なんだ」
「ほんとぉ……? ほんとにそうなのォ……?」
ルザミーネの震える疑問の声は、拒絶というにはあまりにも弱々しかった。
少年ほどの存在がそう言うのなら、その言葉には何らかの真実があるのかもしれない。
……いや、そんなはずはない。この少年の瞳は、先ほどから一貫して「女」を求めている。
だが、不思議なことに、ルザミーネの心の内側にあったのは不快感だけではなかった。
若く、圧倒的な生命力を持つ少年に、こうして一人の女として貪欲に求められているという事実に、彼女の傷ついた心と肉体は、抗いがたい高揚感を覚えていた。
「さあ、始めようか」
少年の手は、驚くほど手慣れていた。
エーテル財団の代表に相応しい、機能美を備えた彼女の服の構造を、まるで熟知しているかのように的確に解いていく。
指先が肌をかすめるたびに、ルザミーネの身体はビクンと跳ね、一度は引いたはずの熱が、再び股間へと集まっていく。
「あ……っ、待って、まだ心の準備が……♥」
言いかける彼女の言葉を塞ぐように、少年がルザミーネの肢体の上へと覆いかぶさった。
重なり合う肌の温度。少年の胸板の厚さと、先ほど自分を文字通り粉砕した「相棒」の熱い脈動が、再びルザミーネを逃げ場のない快楽の予感へと引き摺り込む。
正気に戻ったからこそ、より鮮明に、より生々しく。
異界の闇の中で、美しき母親の悲鳴のような吐息が、再び上がり始めた。
「そもそも、40を越えてこの美貌というのがもはや詐欺なんだ。30代ならまだ倫理の範疇に収まったかもしれない……」
主人公は、ルザミーネの白く柔らかな肌を愛撫しながら、独り言のように、しかし確信に満ちた声で続ける。
「スレンダーなルザミーネさんも至高だが、金髪美女という素材には、いくら盛っても許される。古事記にもそう書かれている。」
「なっ、あなた……っ♥」
抗おうとしたルザミーネだったが、主人公の股間から流れ込む、チート転生者ゆえの不可思議な魔力に言葉を失った。それはまさに治療という名の創造。
主人公の相棒……チンポだよチンポ。
それが動くたびに、彼女の細胞が活性化し、時間が巻き戻り、肉体の質量が再構成されていく。
「あ……あああ……っ! 身体が……熱い、熱いわ……っ!」
目に見えて、彼女の肌には十代のような瑞々しい張りが戻り、目尻にわずかにあった年齢の跡さえも消え失せていく。腰のラインはさらにくびれ、反比例するように、豊かな胸元が少年の掌から溢れ出し、さらなる高みを目指して膨らみ始めた。
「……そ、そこまで言うなら……」
ルザミーネの瞳に、羞恥を上回る奇妙な対抗心が宿る。
どうせこの少年の毒牙から逃れられないのであれば、いっそ、自分自身の「美」の理想をこの少年に叩きつけてやろうという、彼女本来の強欲さが首をもたげた。
「……20代後半。そのあたりが、女が最も輝く時期よ。それから……胸はただ大きくすればいいというものではないわ。……もっと、こう、指先で弾くような弾力と……そう、形は雫のように、先までピンと……」
「なるほど、りかいした……!」
「乳首の色もよ! 少しでも濁るようなら、私はあなたを許さないわ……っ!♥」
二人の間に流れる空気は、もはや悲劇のヒロインと悪党のそれではない。
最高の「美」を追求するクリエイターと、その極上の素材による、狂乱の共同作業であった。
少年の指がルザミーネの指定したポイントをなぞるたび、彼女の肉体は魔法のように望み通りの形状へと変貌を遂げていく。かつてないほど若々しく、かつてないほど肉感的に作り変えられた己の肢体に、ルザミーネ自身も熱い吐息を漏らし、自ら少年の腰に脚を絡めた。
「どうだ、この完璧なルザミーネさんは……!」
「ええ、ええ……っ。素晴らしいわ、あなた……。これなら、何時間でも、何度でも『治療』を受け入れてあげてもよくてよ……っ♥」
若返ったルザミーネの柔らかな肌が、少年の逞しい肉体と吸い付くように重なり合う。
異界の床の上で、改心したはずの母親と、性癖を解き放った少年は、互いの熱量を競い合うように激しく、そしてノリノリで、二度目、三度目の絶頂へと向かって突き進んでいった。
ウルトラスペースの入口。
異界から漏れ出す冷気に、リーリエは何度も自らの細い肩を抱きしめた。
あの時、主人公の背中を見送ってから、すでに一晩が経過している。
『絶対に、絶対になんとかするから!』
その言葉を信じて、彼女は仲間たちとここで待ち続けていた。
一度は連れ戻そうと試みたが、空間の境界には見たこともない強固な障壁が張られ、一歩たりとも踏み入ることは叶わなかった。
(二人とも、どうか無事で……)
リーリエの脳裏には、最悪の結末ばかりが浮かぶ。
融合し、狂気に沈んだ母。それを止めるために、命を賭して戦う少年。
祈るような気持ちで闇を見つめ続けていた、その時だった。
ゆらり、と。
歪む大気の向こう側から、二つの人影が重なるようにして現れた。
「……あ!」
リーリエは駆け寄ろうとして、その場で凍りついた。
朝日に照らされながら現れたその二人からは、悲壮感など微塵も感じられなかったからだ。
そこにいたのは、何かを成し遂げた雰囲気の主人公と、その腕にこれでもかとばかりに密着して寄り添う母、ルザミーネの姿だった。
「……お母、様……?」
リーリエの喉から、掠れた声が漏れる。
だが、そこにいた女性は、彼女の知る母親とは決定的に異なっていた。
毒の影響でやつれるどころか、肌は真珠のような光沢を放ち、金髪は以前にも増して艶やかに波打っている。何より、その顔つきだ。
かつての傲慢な支配者の顔でも、狂った収集家の顔でもない。
潤んだ瞳で主人公を見上げ、頬を赤らめて熱い吐息を漏らす、あられもない「メス」の顔。
さらにリーリエの視線は、母の胸元で釘付けになった。
(……おかしい。記憶の中のサイズと、明らかに整合性が取れない……!)
重力に抗い、服を押し破らんばかりに主張するその双丘。
歩くたびにプルンプルンと、意思を持っているかのように、かつてない弾力で揺れている。
若返り、磨き上げられ、物理法則さえも超越したその肉体美。
そこから導き出される結論は、ただ一つ。
この一晩、この密閉された異界の中で、二人の間に何が行われていたのか。
母を「救済」するために残ったはずの少年が、一体どのような「手段」で彼女を正気に戻し、ついでに余計なことまで施したのか。
「…………」
リーリエの表情から、一切の感情が消え失せた。
眉間に深い皺が刻まれ、その瞳は深淵よりも暗く、冷たく沈み込む。
「あらリーリエ、そんなに怖い顔をしてどうしたの? 私はご覧の通り、彼のおかげで……こんなにも『健康』になれたというのに」
うっとりと自身の胸の感触を確かめるように、主人公の腕を強く抱きしめるルザミーネ。
「…………」
無言。
リーリエから放たれる、殺気にも似たドロドロとしたプレッシャーに、周囲にいたハウや仲間たち、そしてポケモンたちまでもが「ヒッ……」と短く息を飲み、数歩後ずさった。
(リーリエちゃん、目つき悪っ!)
(何その目怖っ!)
(……今のリーリエに話しかけたら、ガチで消される……)
周囲の戦慄を余所に、リーリエは冷徹な思考を巡らせる。
母を救ってくれた恩人。そして、かつて淡い憧れを抱いた少年。
だが、今目の前で「出来上がっている」この二人を、どう処理すべきか。
リーリエの手が、静かに、しかし力強く握りしめられる。
彼女の物語の本当の戦いは、今この瞬間に幕を開けたのだった。