「ティファを性的な目で見ないで、下さ、い……と」
もう何度目になるかわからない文字列を、私は溜息混じりに打ち込む。
もはや無駄。そんなことは、セブンスヘブンに来る酔っ払いに「お酒は控えめに」と言うくらい無意味だってわかってる。
でも、これが私のモーニングルーティン。
ストレッチをして、腹筋をこなして、ネットの海にこの虚しい祈りを放流する。
……正直、止め時を完全に見失っちゃったのよね。
「ねえ、クラウド。ちょっとこれ見て」
「……なんだ」
背後でバスターソードを磨いていたクラウドが、心底めんどくさそうに顔を上げる。
私は端末の画面を彼の方へ向けた。
「これ。ギネス級なんですって。『世界で最もポルノにされたキャラクター』」
「……光栄なことじゃないのか」
「全然っ! 全っ然光栄じゃないわよ!」
カウンターを叩くと、クラウドが少しだけ肩を跳ねさせた。
自分がそういう目で見られやすいタイプだっていう自覚はある。
格闘家として動きやすさを重視した結果のこの服装だし、多少の露出は仕方ないと思ってる。
でも、規模がおかしいのよ。
世界中の……それこそ星の数ほどのクリエイターたちが、私の関節の可動域を無視したとんでもないポーズの動画を作ったり、イタリアの国会(?)にまで私が乱入させられたり。
「私、星を救うために戦ってるはずなんだけど……別の意味で世界を救わされてる気がするの」
「……興味ないね」
「嘘言わないで。クラウド、あなただって結構な頻度で脱がされたりしてるじゃない」
「…………」
クラウドが黙って剣を磨くスピードを上げた。図星ね。
「いい? 私はセブンスヘブンの看板娘で、アバランチのメンバー。清純派で通したいわけじゃないけど、せめて……せめてね?」
もう一度、画面の投稿ボタンを強くタップする。
《ティファを性的な目で見ないでください。お願いします》
投稿完了。
一秒後には、リプライ欄に世界中の言語で「No」とか「Impossible」とか、あとなぜか私の3Dモデルの品質を絶賛するコメントが溢れかえる。
「……明日からは、『少しは服を着せて』に変えようかしら」
まあ、どうせ裸の方がマシな衣装を着せられるのだろうが。
私の明日は、どっちだ。
気分がくさくさするので、今日は早めに店を閉めて自室に戻ることにした。
シャワーを浴びる前、脱衣所の大きな鏡の前で自分の姿を眺める。
そこには、無駄のない曲線美が映し出されていた。
……いや、自分で言うのもなんだけど、我ながら立派な胸をしているものだ。
リメイク作品で、胸が小さくなったというクレームが殺到したという話には笑った。
ふと、視界の端に浮かぶ「カウンター」に目をやる。
これはこのメタ的な呪いにかかってから見えるようになってしまった、私がオナニーのネタにされた回数を示す禁断の数字だ。
「……また増えてる。みんな、寝る前のひと仕事ってわけ?」
桁が多すぎて、もはや星の寿命かというレベル。
世界中の男たちが、あるいは女たちが、画面の向こうで私を消費している。
「みんな無駄撃ちしすぎでしょ……。少しは魔晄炉のエネルギーにでも変換できればいいのに」
そもそも、私がここまで祭り上げられたのは、運が良かっただけだと思っている。
1997年という、ポリゴンがまだ角ばっていた神話の時代。
あのタイミングで、私は「象徴」になった。
そして、数限りない二次創作の作品たちが生まれた。
時代が下り、技術が進歩し、リメイクで私の肌の質感が産毛まで描写されるようになった時、二次創作の勢いはビッグバンを起こした。
エッチなやつ。そう、ほぼ全部エッチなやつのことよ。
「……ふぅ」
溜息をついて、別の数字を確認する。
私の数字よりは遥かに……そうね、数桁は下だけど、クラウドとエアリスの数字も並んでいる。
「クラウドとエアリスが、ほぼ同数……?」
あいつら、女装したクラウドで抜いてるの? それとも、あの清楚なエアリスをそんな目で?
……というか、クラウドとエアリスの数字が競ってる時点で、この統計データ自体の信憑性が怪しい気がしてきた。
「そうよ。きっとバグか何かだわ。だいたい、クラウドのあれで抜くなんて、世界中の性癖はどうなってるのよ。エアリスにも失礼よ」
自分を棚に上げて、私はシャワーの蛇口を捻った。
熱いお湯が肩を叩く。
「……明日もまた、知らない誰かの中で、私は何回も脱がされるんでしょうね」
濡れて肌に張り付いた髪をかき上げながら、私は鏡の中の自分に苦笑いした。
湯上がりの上気した肌が、冷たいシーツに触れて小さく震える。
鏡で見た「あの数字」のせいね。
ムカムカする……いいえ、本当はもっと心の奥底が、ざわざわと熱を帯びて疼いている。
世界中の視線に晒され、数え切れないほどの欲望をぶつけられている自覚。
それが、いつの間にか私自身の内側にも、澱のように溜まっていたのかもしれない。
(ふぅ……。毒されてるわね、私)
誰に見せるわけでもないのに、指先が自然と胸元の柔らかな膨らみへと伸びる。
手のひらで包み込むと、トクン、トクンと、鼓動が指に伝わってきた。
「ん……ッ♥」
熱を帯びた吐息が、静かな部屋に漏れる。
目を閉じれば、ネットの海で私を弄ぶ無数の「彼ら」の気配を感じるような気がした。
物理演算の限界に挑むような、あの破廉恥なポーズ。
現実にはありえない角度で曲げられる私の肢体。
頭の中では、あの忌々しいカウンターの数字が、一秒ごとに跳ね上がっていく。
一回、また一回。誰かが私で「果てて」いる。
その背徳感が、私の指先をより深く、より扇情的に、自分の秘部へと誘っていく。
「……っ、あ……」
滑らかな肌を指が這い、熱の源へと辿り着く。
自分の体なのに、まるで見知らぬ誰かに開発されているような、奇妙な高揚感。
世界一エッチなキャラクター。
そう呼ばれるたびに、私の体は、期待に応えるように淫らな感度を増していく気がする。
「いいわよ……。どうせなら、もっと……激しく、壊して……んんっ!♥」
腰が勝手に跳ね、シーツを強く握りしめる。
クラウドが見たら絶句するような、エアリスが聞いたら耳を塞ぐような、甘く、湿った声。
セブンスヘブンの看板娘は今、世界中の欲望を一身に浴びながら、自分自身の手で、かつてない絶頂へと堕ちていく。
指先が熱い粘膜をなぞるたび、脳裏にフラッシュバックするのは「私」の無数の情事。
それらはすべて、世界中のクリエイターたちが妄想の果てに産み落とした、歪で、淫らで、けれど抗いがたい快楽の記録。
「っ……、はぁ……っ、んん……!」
目を閉じれば、そこにはクラウドに股がり、腰を振る私の姿がある。
かと思えば、バレットの前に膝をついて口で奉仕する私の姿も。
それだけじゃない。敵であるはずの神羅兵たちに囲まれ、屈辱に顔を歪めながらも肉体の疼きに抗えない私は、獣のような咆哮をあげている。
さらにはエアリスと肌を重ね、女同士の甘く湿った秘め事に耽る私まで。
「……っ、あ……触手、までっ……えっ、触手!?」
現実の物理法則を無視した、あのヌルヌルとした異形の触手に絡み取られ、全身の穴を蹂躙されるおぞましい快感。
本来なら嫌悪感で吐き気がするはずなのに、今の私にはそれが最高に質の良いスパイスとして脳を焼いていく。
数え切れないほどのシチュエーションで、私は何万回、何億回と果てさせられてきた。
そのすべての「経験」が、今、私の指先にフィードバックされている。
世界で最も愛され、世界で最も汚された肉体。その自覚が、背徳の蜜となって溢れ出す。
「……あ、あッ……! みんな……見てるんでしょ……? 私の、これ……ッ♥」
弓なりに逸れた背中がシーツから浮き上がり、指先が最奥の熱を乱暴にかき回す。
頭の中のカウンターが狂ったように回転し、世界中の欲望と私の快楽がシンクロしていく。
清純な看板娘の仮面は剥がれ落ち、そこにあるのは、ただ淫らな「記号」として完成された一匹の雌の姿だけだった。
「んんっ、ふあぁぁ……ッ!!」
真っ白な閃光が脳を突き抜け、私は激しい痙攣と共に、自らが作り出した絶頂の波に飲み込まれていった。
開店準備を整えたばかりのセブンスヘブン。
昨夜の「自分による自分のための熱狂」が、まだ体の芯に重く残っているような気がして、私はわざとらしくグラスを磨く手に力を込める。
クラウドたちが不在なのは、本当に神様に感謝したい。
今の私があの真っ直ぐな瞳に見つめられたら、その瞬間に死にたくなる自信がある。
「……はぁ。でもさー、特定の方向で人気があるのよりは、まだマシだと思わない?」
カウンターの端で、ユフィが突っ伏したまま愚痴をこぼした。
彼女の前に置かれたカクテルグラスは、すでに三杯目……。
完全に、メタな悩みに毒されてるわね、この子も。
「ユフィ、あんまり飲みすぎないでよ」
「だってさー! 聞いてよティファ! アタシの例のカウンター、見た? クラウドやエアリスをぶっちぎってんのよ!?」
そう、ユフィの数字は意外とエグい。
特に「くっころ」系というか、忍びのくせに捕まって酷い目に遭わされるシチュエーションの需要が、昔から絶えないのだ。
「たしかに! アタシはマテリアを盗んだよ! ウータイのために、あんたたちのマテリアをネコババしたさ! それは悪かったと思ってるわよ! 反省もしてる!」
ユフィがガバッと起き上がり、空のグラスをカウンターに叩きつける。
その瞳は、理不尽な世界への怒りで潤んでいた。
「でもさぁ……アタシの尻穴は関係ないじゃんよーッ!! なによ『マテリアを隠す場所』って! 物理的に無理だし、そもそも痛いわよバカぁーッ!!」
「ちょ、ちょっとユフィ! 声が大きいわよ!」
慌てて彼女の口を塞ぐ。……わかるわよ、ユフィ。
私も「どこの筋肉でその乳を支えてるんだ」とか「その格好で格闘したらポロリするだろ」とか、物理演算と解剖学の限界に挑むようなコメントを何万件も浴びせられてきたもの。
「……いいじゃない、ユフィ。あなたはまだ『お仕置き』の範疇でしょ? 私なんて、世界中の全方位から『全裸で戦え』って思念を送られてるんだから」
「ティファのはさ……なんていうか、こう格が違うっていうか……。なんかレジェンドすぎて、もはや公共物だよね」
「……公共物って言わないで。余計に虚しくなるから」
私はまた、溜息をつきながらグラスを磨く。
「……ちょっと待って。ユフィ、あなたの言い方だと、私がマシな方みたいに聞こえるけど」
私は、磨き終わったグラスを光に透かしながら、冷徹な事実を突きつけることにした。
いいえ、自分自身に言い聞かせるためかもしれない。
「母数が違うのよ、ユフィ。世界中の有象無象が私を見てるってことは、それだけニッチな需要も全部ひっくるめて引き受けてるってことなの。……いわば、私は性癖の総合デパートみたいなものよ」
「……デ、デパート?」
ユフィが酔った目で私を見上げる。
「そうよ。王道の純愛から、ハードな緊縛、さらには人外、そして……もちろん、あなたの言った『そこ』だって、とっくに履修済みよ。世界中のクリエイターたちが、寄ってたかって私のあらゆる穴を開発し尽くしてるんだから」
そこまで言って、ふと背筋に冷たいものが走った。
マテリア。
ユフィが叫んでいた、あの魔力の結晶。
「……さすがに、マテリアを詰め込まれた記録は……なかったわよね? 私の『そこ』は、魔法を発動するためのスロットじゃないはずだもの。……ないわよね?」
思わず自分の下腹部あたりに手をやり、記憶のデータベースを必死に検索する。
巨大なバスターソードをねじ込まれそうになったり、バハムートに組み敷かれたりする悪夢のような動画は見た気がする。でも、マテリアは……。
「……ううん、待って。確か『穴埋め』っていう不穏なジャンルを見た気が……」
「ティファ、顔が青いよ? どしたの?」
「……なんでもないわ。ただ、世界中の想像力が、私の限界を軽々と超えていってる事実に戦慄しただけ」
私は震える手で、自分用に度数の強い酒を注いだ。
デパートは、もう在庫切れよ。これ以上、新しい属性を仕入れないでほしい。
「ねえユフィ、もう一杯飲む? 私に付き合ってよ。……今夜は、自分の『スロット』に何も入ってないことを確認しないと、眠れそうにないわ」
カウンター越しに、私たちは虚無を見つめて乾杯した。
星を救う前に、自分たちの尊厳が、世界中のメモリーの中で粉々に砕け散っている。
「ねえ、二人とも。そんなに怖い顔して、何を戦わせてるの?」
セブンスヘブンの扉が開いて、夜風と一緒にエアリスが舞い込んできた。
彼女は相変わらず、星の命を聞く聖女のような微笑みを絶やさない。
私たちの「メタな苦悩」なんて、ライフストリームの巨大な流れに比べれば、さざ波のようなものだと言わんばかりのしなやかさ。
「エアリス……。アンタ、自分のカウンターの数字がクラウドと競ってること、何とも思わないの?」
ユフィが恨みがましく尋ねる。
「ええ。だって、それだけみんなが私たちのことを『考えてる』ってことでしょ? 想いの力が星を救うなら、それも一つのエネルギーじゃないかなって」
聖女だ。この女、本物の聖女だわ。
自分の3Dモデルがどんな破廉恥な角度でレンダリングされていようとも、彼女はそれを「みんなの想い」として優しく受け流している。
私やユフィみたいに、いちいちエゴサして枕を濡らしたりしないのだ。
「……負けたわ。エアリス、あんたには敵わない」
「ふふ、そう? じゃあ、景気づけに三人で飲みましょうよ。今日は私が奢っちゃう!」
それからは、ひどい乱痴気騒ぎだった。
世界中の変態的なリクエストに対する愚痴を、高級な酒と一緒に飲み下す。
結局、私は人生で一番というくらい泥酔してしまい、這うようにして二階の自室へ戻った。
深夜。
回る天井を見上げながら、熱くなった体をシーツに沈める。
アルコールのせいで、昨夜の「スパイス」がまた疼き出そうとしていた時――。
コンコン、と控えめなノックの音がした。
「ティファ? 寝ちゃった? お水持ってきたよ」
エアリスだ。
彼女は鍵をかけていなかった扉をそっと開けて、月明かりの中、ベッドサイドに歩み寄ってくる。
ふわりと、彼女固有の花の香りが、酒の匂いに混じって鼻腔をくすぐった。
「……エアリス……。飲みすぎちゃった……」
「そうね。あんなにクダを巻くティファ、初めて見たかも」
彼女はクスクスと笑いながら、私の額に冷たい手を当てた。
その感触が、あまりにも心地よくて。
昼間話していた「二次創作」のイメージが、アルコールで理性のタガが外れた脳裏をよぎる。
『エアリスと肌を重ね、女同士の甘く湿った秘め事に耽る私』
「っ……あ……」
「どうしたの? どこか痛む?」
心配そうに覗き込んでくる彼女の瞳。
その純粋な光に、私の毒された欲望が、ひどく扇情的な色を帯びて反応してしまう。
二次創作の中の私たちは、もっと……もっと、言葉にできないほど淫らなことを、お互いに許し合っていたはず。
「ねえ、エアリス……。あなたも、知ってるんでしょ……? 私たちが、あっちの世界で……どんな風に愛し合わされているか……」
熱に浮かされた私の指先が、彼女の華奢な手首を、吸い付くように掴んだ。
「知ってるよ、ティファ……」
エアリスの声は、夜の静寂に溶け込むほど優しかった。
彼女は拒むことなく、熱を帯びた私の手をそっと握り返してくれる。
その指先は驚くほど繊細で、でも迷いがない。
「でもね、人間ってそういうものだから……。私、よく知ってるの」
彼女の瞳が、月明かりを反射して淡く光る。
スラムの片隅で、泥にまみれながら花を売っていた少女。
人々の欲望も、汚濁も、剥き出しの執着も……彼女はあの路地裏で、ずっと見つめてきたのだ。
「綺麗なものだけじゃ、生きていけないんだよ。誰かの心の中にある、ちょっと困っちゃうような熱い想いも……全部、その人の命なんだもの」
そう言って、エアリスはゆっくりと上体を倒し、私を包み込むように抱きしめた。
ふわりと、夜の風に乗って届くような、甘く切ない花の香りが鼻腔をくすぐる。
彼女の柔らかな胸の鼓動が、私の肌に伝わってきた。
「っ……あ……エアリス……」
「大丈夫。どんなに汚されても、ティファはティファだよ。……それに、あっちの世界の私たちが仲良しなのは、あながち嘘じゃないかもしれないし?」
耳元で囁かれた吐息が、アルコールで痺れた脳を直接愛撫する。
抱きしめられた腕に力がこもり、彼女の細い指が私の背中を優しく、それでいて何かを確かめるように這った。
世界中の誰かが描いた「私たち」の残像が、今、目の前のリアルな感触と重なっていく。
二次創作のワンシーンのように、私は彼女の首筋に顔を埋め、その温もりに縋り付いた。
「ねえ、ティファ……。今夜だけは、数字も、メタな悩みも……全部忘れて、私だけを見て?」
彼女の手が、私の寝間着の裾にそっと掛かる。
スラムの花売りは、どうやら私の心をこじ開ける鍵を、最初から持っていたみたい。
「ええ、そうねエアリス……。今夜だけは、全部忘れて……」
熱っぽい吐息と一緒に、私は彼女の細い肩に腕を回した。
月明かりに照らされたエアリスの瞳が、いたずらっぽく、それでいて鋭い光を帯びて細められる。
「ふふ、それじゃあ……『合意成立』よね♥」
エアリスは鈴を転がすような声でそう言うと、どこに隠し持っていたのか、足元からずっしりと重そうなボストンバッグを引き上げた。
「……え?」
ガサガサ、と小気味よい音を立てて、彼女はベッドの上に中身をぶちまけていく。
カチャリ、と冷ややかな音を立てる黒革の手錠。
視界を奪うための目隠し。
不自然なほど太く、凶悪な反り返りを見せるシリコン製のバイブ。
そして、枕元でカラカラと転がる色とりどりのローターたち。
「ちょっと、エアリス……? なに、そのプロの道具箱みたいなラインナップは……」
私の困惑を余所に、エアリスは手際よくバイブのスイッチを入れた。
「ブゥゥゥン……」という重低音が、静かな寝室に響き渡る。凄まじい振動だ。
「だって、世界中のみんなが望んでるんでしょ? 私たちの『深い関係』を。だったら、中途半端なことはできないじゃない」
エアリスが楽しげに笑いながら、バッグの底からさらに何かを取り出した。
それは、鈍い輝きを放つ球体。
「……マテリアっ!?」
思わず叫んでしまった。
それは武器に装着するための魔法の結晶。でも、彼女が手に取ったのは、明らかにスロット(穴)に入れることを前提とした、紐付きの特殊なモデルだった。
「これね、『ぜんたいか』のマテリア。さっきユフィが言ってたでしょ? 隠す場所がないなら、作ればいいんだよって」
「言ってない! ユフィはそんなこと一言も言ってないわよ!」
「さあ、ティファ。私たちの『限界』を世界に見せつけてあげよう?」
エアリスの手が、私の太ももを割り、熱い秘部へと迷いなく伸びてくる。
その手には、不吉に発光するマテリアが握られていた。
……嘘でしょ。
これ、百合展開っていうか、完全に「そっち系」のハードな二次創作の撮影現場じゃない!
「んっ……、あ……エアリス、待っ、そこはスロットじゃな……いッ♥」
私の悲鳴は、エアリスの唇と、自分の甘い嬌声にかき消されていった。
「ふふふ、気持ちいい? 女の子の体は女の子が一番よく知ってるの。構造も、どこをどうすれば『壊れる』かもね」
エアリスの、あの清廉な声が耳元で甘く弾ける。
それと同時に、背後から突き上げられるのは、私の中を直接揺さぶるような太い剛突。
ベルトの擦れる音と、彼女のしなやかな腰の動きが、私をシーツに深く沈めていく。
「あ、あッ……ん、おッ……!♥」
目隠しのせいで視覚は閉ざされ、手錠で自由を奪われた体は、ただ後ろから与えられる快感にのみ反応する装置に成り果てていた。
悔しい。悔しいのに、彼女の熟練の腰使いは、私の肉体の弱い部分を正確に撃ち抜いてくる。
「っ……あ、え、エアリス……っ、すご、い……っ♥」
「そもそもね、ティファ。あのカウンターの数字……ずーっと面白くなかったのよ。私を『スラムの花売り(意味深)』とか言って、清楚な顔したビッチ呼ばわりしてくる連中はいるし。じゃあなに、私はビッチだからティファより人気が出なかったわけなの?」
エアリスの指先が、私のクリトリスをいたぶるように、じりじりと押し潰す。
聖女の皮を脱ぎ捨てた彼女の言葉には、長年蓄積されたメタなストレスがたっぷりと込められているかのようだった。
「いい? 私は古代種なの。星の記憶も、人間の業も全部見てるのよ。……これくらいのテクニック、ライフストリームからダウンロードするなんて簡単なんだから♥」
「んぁああッ! ♥ ひ、ひぃ、そこ……ッ! もっと、強く、突いてぇ……っ!!」
乳首を指先でコリコリと弄られながら、最奥の柔らかな部分をえぐり取られる。
もう、プライドなんてどうでもいい。
世界中の変態たちの妄想が、今、エアリスという完璧な媒体を通して現実の快楽へと変換され、私の意識をオーバーフローさせていく。
「はぁ、はぁ……っ、あ、エアリス……あな、た……最高に……えっちよ……っ♥」
「ふふ、ティファもね。……ほら、もっとお尻振って? みんなが喜ぶような、いい声聞かせて。夜はまだまだ、終わってないんだから♥」
星を救うヒロイン二人の、公式には絶対に出せないリミット技の競演。
部屋は、花の香りと、吐き気がするほど甘い愛液の匂いに包まれていた。
「ん、んんぅ……ッ! ♥」
目隠しの暗闇の中、私の感覚は極限まで研ぎ澄まされていた。
後ろでは、数珠つなぎに連結されたいくつものマテリアが私の尻穴を容赦なく押し広げ、魔晄の熱を直接、内壁に伝えてくる。
重厚な圧迫感と、神経を焼き切るような振動。
でも、その背徳的な刺激が、私の奉仕の熱をさらに加速させる。
「あ、ぁ……っ、ティファ……そこ、いい……っ、上手ね……♥」
目の前で脚を開くエアリスの、甘く、湿った嬌声。
私は盲目のまま、彼女の芳醇な花の香りが立ち昇る場所へと顔を埋め、必死に舌を伸ばした。
「れろ……っ、んちゅ、はぁ……っ♥」
スラムで逞しく生きてきた彼女の、柔らかくも力強い生命の証。
その溢れ出した蜜を、一滴も逃さぬように絡め取る。
世界中で「聖女」と崇められている彼女が、今、私の舌先ひとつで腰を震わせ、古代種の矜持もかなぐり捨てて淫らな声を上げている。
……ああ、いいわ。
みんなが勝手に抱いている「エアリス」のイメージを、私の舌で塗り替えていく。
彼女もずっと、こうして誰かに、生身の女として乱暴に、情熱的に愛されたかったはずよ。
「んんぅッ! ♥ エアリス……っ、もっと、出して……っ。全部、飲んであげるから……!」
マテリアの振動が、私の尻穴から脳髄へと突き抜け、奉仕する口内を熱くさせる。
彼女の太ももにしがみつき、夢中で吸い上げ、舌を這わせる。
エアリスの指が私の髪に深く食い込み、絶頂を予感させるように激しく腰が突き出された。
「あ、あッ……! ティ、ティファ……っ、もう、ダメ……っ、星が……星が見えるぅぅッ!!♥」
彼女の叫びと共に、熱い飛沫が私の顔を濡らす。
連結マテリアの衝撃と、エアリスの激しい絶頂がシンクロし、私もまた、目隠しの奥で真っ白なライフストリームの奔流に飲み込まれていった。
嵐のような情事のあと、私たちは絡み合った肢体をそのままに、シーツの海に沈んでいた。
部屋にはまだ、甘ったるい香りと、使い込まれたマテリアの微かな魔晄の残滓が漂っている。
私の腕の中で、エアリスが天井のシミを見つめながら、ポツリと呟いた。
「ねえ、ティファ。……この前、ライフストリーム……じゃなくて、ネットの海を漂ってたらね、見ちゃったの。クラウドがセフィロスと、すごく……その、エッチなことをしてる映像」
「……ああ、それね」
私は彼女の肩を優しく撫でながら、冷静に応じる。
世界で最もポルノにされた女としての経験値が、私を悟りの境地へと導いていた。
あの二人の因縁は深いし、美形同士だ。あっちの世界の「腐」という属性を持つ人たちが、彼らをベッドに押し込むのはもはや自然の摂理といってもいい。
「いいじゃない、エアリス。クラウドが攻めなら、彼の威厳も保たれるわよ」
「……ううん、そうじゃないの」
エアリスが私の胸元に顔を埋め、少しだけ声を震わせた。
「クラウドがね、自分のその動画を……すごく嬉しそうに、ニヤニヤしながら見てたのよ」
「……は?」
私の撫でていた手が止まる。
待って。どういうこと?
二次創作の中のクラウドがセフィロスと絡んでいるのはわかる。
でも、それを「観測している側のクラウド」が喜んでいる……?
メタがメタを超えて、キャラクター崩壊の深淵を覗いているじゃない。
「私、それを見て……なんだか、すごく……やりきれないっていうか。私たちの努力は何だったんだろうって、思っちゃって……」
「……クラウド……あんた、自分からそっちの属性に寄せていくのは反則でしょ……」
「ごめんね、ティファ……。変なこと言って」
エアリスが小さく丸まる。
私は何も言わず、ただ彼女を強く抱きしめた。
私たちがどれだけ自分の尊厳と穴を守ろうとしても、当の主人公がセフィロスとの情事に悦んでいるのだとしたら、もうこの星の未来は絶望的だ。
でも、今はいい。
少なくとも今、私の腕の中にいるこの「花売り」の温もりだけは、確かなものなのだから。
私は深い溜息をつき、複雑すぎる感情を飲み込んで、彼女と共に深い眠りへと落ちていった。
ティファが述べているカウンターの数字は適当。
しかし、こちらが独自に導き出した計算式によると驚愕の事実が。
何がとは言わないが、家庭用のバスタブどころか、学校のプールいっぱいは余裕なのだ。
こわい。