※この作品はR-18です。

おっさんが若い美女にラブラブされる、冴えない男たちの短編集   作:Mr.Claude

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 金曜夜の残業オフィスで、童顔眼鏡でHカップのお団子新人ちゃんが「課長のにおい、します……♡」ってスーツの匂い嗅いで泣きながら告白して「おちんちんください、お嫁に行けないから課長がもらってください」って敬語でおねだりして、オフィスチェアの上で「あなたじゃなきゃやだっ♡」って名前呼びでイッてくれるお話♡



冴えない課長がHカップ巨乳部下に子犬みたいに求愛される話

 金曜日の午後八時、営業二課のフロアには俺と部下の女の子だけが残っていた。

 ほかの連中は定時かその前後にさっさと帰っている。週末の金曜に残業なんて、まともな社会人がすることじゃないしな。

 

 デスクの蛍光灯が一本だけ点いている。あとは非常灯の薄青い光。オフィスの半分以上が影に沈んでいて、空調もタイマーで切れたから、窓の外を走る車のエンジン音がやけに近い。

 

「課長、お疲れさまです」

 

 缶コーヒーが差し出された。ブラックの、自販機で百三十円のやつだ。

 小さな手だった。缶が大きく見えるほど細い指で、ネイルもしていない。彼女は桃山あんず。今年四月に入社した新卒、俺の部下だ。

 

「ああ、ありがとう」

「いえ、お代はいいですよ。いつもご馳走になってますから」

 

 あんずがにこっと笑う。丸い頬と、眼鏡の奥のくりっとした赤い目。緑みがかった黒い髪をお団子にまとめていて、後れ毛が首筋に何本か垂れている。

 化粧っ気は薄い。というか、童顔だからナチュラルメイクで十分なのだ。それでも唇にはうっすらリップが乗っていて、さっき塗り直したんだな、と気づいてしまう俺がいやらしい。

 

(いや、気づくだけだ。それだけだ)

 

 俺──関谷は、缶コーヒーのプルタブを引いた。

 四十三歳、独身。営業二課の課長を五年やっている。五年やって課長のまま。出世レースは三十代後半でリタイアした。

 髪は前頭部が後退気味で、スーツは量販店の二着セット。唯一の取り柄は飲み会の幹事がうまいこと。あとは人畜無害なオッサンだ。

 

「桃山、お前こそ帰れよ。金曜だぞ」

「もうちょっとだけ。見積りのフォーマット、直し終わったら帰りますから」

「見積りって……明後日提出のやつ?」

「はい。あの、伊藤さんに引き継ぎを頼まれまして」

 

 伊藤という男は営業二課の中堅で、あんずの教育係だ。仕事はできるが後輩への面倒見が悪く、見積りの下処理みたいな雑務を新人に振ることで知られている。

 言いたいことはある。あるが、部下同士のことに課長が口を挟むと角が立つ。

 

「……なるべく早く切り上げろよ」

「はい。でも、課長と二人の残業って、ちょっと嬉しいです」

 

 あんずがそう言って、隣の席に腰を下ろした。いつもの席は二列向こうなのに、わざわざ俺の隣だ。

 椅子がきしむ。軽い体重に対してオフィスチェアが大げさに鳴る。

 

(近っ)

 

 あんずの匂いがする。柔軟剤か、シャンプーか。薄いのに妙に鮮やかな匂い。空調の切れた夜のオフィスは、こういう匂いがよく通る。

 そして近いから分かってしまう。肩幅は狭い。手首も細い。なのに白いブラウスの内側だけが、不釣り合いなほど──まあ、その、胸の話だ。

 

 あんずの胸は大きい。最近の子は発育がいいとか、そういうレベルじゃない。初めて配属されてきた日、俺を含む営業二課の男性社員は一瞬黙り、それからわざとらしくパソコンに向き直ったものだ。

 

「……桃山」

「はい?」

「お前さ、俺の横に座るの、やめたほうがいいぞ」

「えっ」

 

 あんずが目を丸くする。眼鏡がずり落ちかけて、人差し指で押し上げた。

 

「なんでですか?」

「なんでって……いや、変な噂が立つだろ。課長と新人が二人きりで残業して、隣に座ってたら」

「でも、ほかに誰もいませんよ?」

「だから余計にまずいんだよ」

 

 あんずは小首をかしげた。お団子がゆらっと揺れる。

 

「私、課長の隣がいいです」

「聞いてないだろ今の話」

「聞いてます。でも、いいです」

 

 にこっ、と笑う。

 参った。こういうところが困るんだ。あんずは誰にでも敬語で、愛想もいい。だけど俺に対しては妙に距離が近い。なぜかは分からないし、聞いたこともない。

 聞けない。聞いたら、何かが変わってしまいそうで。

 

「……まあいい。見積り、分からないとこあったら聞け」

「はいっ」

 

 あんずはノートパソコンを開き、カタカタとキーを叩き始めた。

 俺も自分の書類に戻る。缶コーヒーの苦味が舌に残っている。

 

 三十分ほど経った。

 

 隣からカタカタという音が消えた。代わりに、規則正しい寝息が聞こえてくる。

 

「おい、桃山」

 

 返事がない。あんずは腕を枕にして、デスクに突っ伏していた。お団子が崩れかけている。後れ毛が頬に貼りつき、眼鏡は少しずれて、半開きの唇からかすかな吐息がこぼれている。

 蛍光灯の光が、白いブラウスの背中を照らしていた。うなじから背骨のラインが見える。ブラのストラップが、ブラウス越しにうっすらと浮き上がっていた。

 

(寝てるのか)

 

 まあ無理もない。入社半年の新人が、先輩の仕事まで引き受けて、金曜の夜に残業しているのだ。

 ため息をつく。上着を脱いで、あんずの肩にかけてやろうかと思った。

 だが手が止まる。

 

 肩に触れたら、起きるかもしれない。

 

 触れなくても、上着をかける動作で気づくかもしれない。

 そんなことを考えている時点で、俺は何かを期待している。あんずが目を覚まして、寝ぼけた顔で「あれ、課長……?」なんて言うのを。

 ばかばかしい。四十三の男が二十二の部下に何を期待してるんだ。

 

 上着をかけた。

 

「ん……」

 

 十分ほどして、あんずが目を開いた。

 焦点が合うまでに数秒かかる。俺のスーツの上着が肩に乗っていることに気づいて、ぱちぱちとまばたきをする。

 

「あ……すみません、寝ちゃって」

「気にするな、俺もよく寝る」

「嘘ですよ、課長いつも最後まで残ってるじゃないですか」

 

 体を起こしたあんずが、上着を胸の前で握りしめた。返す様子がない。

 

「課長」

「ん?」

「……あったかいです、これ」

 

 声が小さかった。さっきまでの明るいトーンとは違う。

 あんずはうつむいて、俺の上着に顔を埋めた。鼻先を生地にこすりつけるようにして、すん、と匂いを嗅ぐ。

 

「おい、桃山」

「課長のにおい、します……」

「やめろ、おっさんの汗くさいだけだ」

「汗くさくないです。缶コーヒーと……あと、課長のにおい」

 

 あんずが顔を上げた。

 眼鏡の奥の赤い瞳が、蛍光灯の光を受けて琥珀色に揺れている。涙ではない。寝起きの水分が、虹彩の上で揺れているだけだ。

 だけど、その目に見つめられると、心臓が妙な打ち方をする。

 

「課長」

「……なんだ」

「私、伊藤さんに嫌われてると思います」

 

 唐突だった。だけど驚きはしなかった。

 

「引き継ぎじゃなくて、押し付けですよね。見積りの下処理。他の新人には頼んでないのに、私にだけ」

「……」

「理由は分かってます。私がお酒の席で伊藤さんのお誘いを断ったからです。断ったっていうか、課長に助けを求めたからです」

 

 覚えている。先月の歓送迎会で、伊藤があんずに二次会を執拗に誘っていた。俺が「桃山は明日早いから」と割って入った。伊藤は不満そうだったが、課長の一言には逆らえなかったらしい。

 

「あのときから、態度が変わって」

「そうか」

「だから……あの」

 

 あんずが椅子ごと、こちらに近づいてきた。キャスターがフローリングの上を滑る音がする。

 膝が触れた。

 あんずのストッキング越しの膝が、俺のスラックスに当たっている。

 

「課長は優しいです。私にも、ほかの人にも。でも私、ときどき思うんです」

「なにを」

「私にだけ、もうちょっとだけ優しくしてほしいなって」

 

(まずい)

 

 あんずの声が、ほどけ始めていた。敬語の形は保っているが、語尾が溶けている。目は潤み、唇が微かに開いている。

 

「桃山、それは」

「あんず、って呼んでください」

「……は?」

「みんな桃山桃山って言います。でも課長には、あんずって呼んでほしいんです」

 

 あんずの手が、俺の膝の上に置かれた。

 細い指。爪はきれいに切りそろえてある。ネイルもしていない、素のままの手だ。

 その手が、俺のスラックスの布地を小さく握った。子犬がズボンの裾をくわえるみたいに。

 

「課長」

「…………」

「好きです」

 

 蛍光灯のジジ、という音がやけに大きく聞こえた。

 

「入社したときから。歓送迎会のとき助けてくれたからじゃなくて、もっと前から。配属の挨拶をしたとき、課長だけが私の目を見て『よろしく』って言ってくれたんです。ほかのひとは……胸ばっかり見てたのに」

 

 あんずの手が震えている。

 膝の上で、小さな指が、拳を作っては開き、作っては開いている。

 

「課長には目を見てもらえて、すごく、嬉しくて──だから」

 

 涙がこぼれた。あんずの頬を一筋の涙が流れ落ちて、眼鏡のフレームに沿って滴る。

 

「ごめんなさい、泣くつもりじゃ……」

「あんず」

「──え」

 

 名前を呼んだら、あんずが固まった。

 涙が頬の途中で止まったように見えた。目を見開いて、口を半分開けて、息を止めている。

 

 沈黙。

 

 逃げるなら今だ。課長として、大人として、桃山を帰すのが正しい。

 

 正しいことは分かっている。部下に手を出す上司は最低だ。二十歳以上も年の離れた女の子に欲情するなんて、救いようのないオッサンだ。

 

 だが。

 

 この子は俺の目を見てくれと言っている。俺だけに優しくしてくれと、震えながら言っている。それを拒んだら、あんずは二度と誰にもこんな顔を見せないかもしれない。

 

 俺はあんずの頬に手を伸ばした。

 

 涙を親指で拭う。眼鏡に触れないように気をつけながら、頬骨から顎にかけてそっと撫でた。

 あんずの肌は薄くて温かい。蛍光灯に照らされた産毛がきらっと光る。

 

「あ……」

 

 あんずが目を閉じた。頬を俺の手のひらに預けるようにして、小さく傾く。触れられたことを確かめるように。

 

「……泣くな」

「はい……はい……」

 

 返事をしながらも涙が止まらない。俺の親指が涙を拭うそばから、新しい雫があふれてくる。

 だから俺は──あんずの眼鏡を外した。

 鼻の両脇に、眼鏡の跡が赤く残っている。素の童顔があらわになると、あんずは二十二どころか十代にすら見えた。

 

「め、眼鏡……」

「ぼやけるか?」

「ちょっと……でも、課長の顔は見えます。近いから」

 

 近い。互いの息がかかる距離だ。

 あんずの唇がうっすら開いている。リップの上に涙の塩気が光っている。

 

(ここからは、もう戻れない)

 

 俺はあんずの唇に自分の唇を押し当てた。

 

「ん……っ」

 

 小さな声が漏れる。あんずの体が一瞬こわばり、それからふにゃっと脱力した。

 涙の味がする。塩辛くて、ほのかに甘い。リップの味が舌の先に乗った。

 

「は、ぁ……課長……」

「嫌だったら、押せ」

「……嫌じゃ、ないです」

 

 あんずの手が俺のワイシャツの胸元をつかんだ。押すのではなく、引き寄せるように。

 もう一度唇を重ねる。今度はあんずの方から舌先を差し出してきた。俺の唇のあいだに、おずおずと、遠慮がちに。

 

 ちゅ、ちゅる……

 

 唾液が混ざる音が、静まり返ったオフィスに響く。

 

「んっ……んぅ……」

 

 あんずの舌は小さい。俺の舌に触れると、びくっと引っ込み、でもすぐにまた伸びてくる。怖いもの見たさみたいに。何度も何度も、触れては引っ込み、触れては引っ込みを繰り返す。

 

「ん、はぁ……か、ちょう……もっと……」

「口、開けて」

「はぃ……あ、む……」

 

 舌を深く絡ませた。あんずの口の中はぬるりと湿っていて、舌の裏側がとくに柔い。歯の裏を舐めると、ぷるっと身体が震えた。

 キスしながら、あんずの背中に手を回す。ブラウスの上から触れた背中は薄くて、肩甲骨が手のひらに収まる。

 その手を下ろしていくと、腰のくびれに触れた。くびれから横に回すと──指先が沈んだ。ブラウスの布地ごと、指が埋もれていく。

 

「ひっ……」

 

 腰の横から手を滑り込ませて、胸の下に触れる。ブラウス越しでも分かる。柔らかくて、温かくて、重い。

 

「課長、そこ……」

「嫌か?」

 

 あんずがうつむく。顔が真っ赤だ。耳まで赤い。

 それでも俺の手を払いのけようとはしない。唇を噛んで、ほんの少しだけ首を横に振った。

 

「嫌じゃ、ないです。恥ずかしいだけ」

 

 ブラウスの上から、あんずの乳房を包む。両手でも収まりきらない。

 

「……すごいな」

「や、やめてください、そういうの……ずっとコンプレックスで……」

「コンプレックス?」

「だって、みんなそこしか見ないんですもん……胸が大きいってだけで、なんか……私じゃなくて、胸を見てるみたいで」

 

 声が震えている。

 ああ、そうか。こいつが俺の目を見てくれたことをあんなに喜んだ理由は、これか。

 

「あんず」

「は、い」

「俺は今、お前の顔を見てる。目も見てる。でも胸も触ってる。全部お前だよ。お前の目も、涙も、この胸も」

 

 あんずの目がうるうると揺れた。泣きそうな顔で、だけどさっきとは違う涙で、唇をきゅっと結んでいる。

 

「……脱いで、いいですか」

「え?」

「自分で、脱ぎます。見ててください」

 

 あんずの指がブラウスの第一ボタンに触れた。

 ぷちっ、と小さな音。

 鎖骨が見えた。肌は蛍光灯の下でも白い。

 

 第二ボタン。

 谷間の始まりが見える。ベージュのブラジャーのレースが覗いた。

 

「は、ぁ……」

 

 あんず自身が息を漏らしている。自分を脱がす行為に興奮しているのか、恥ずかしさで壊れそうなのか。たぶん両方だ。

 

 第三ボタン。

 ブラジャーの全景があらわになる。大きなカップが胸の重みで少し下に引っ張られ、乳房の上半分がブラからあふれていた。

 

「こんな……こんな格好、自分でしといて、恥ずかしいですけど……」

 

 あんずはブラウスの前を開いたまま、俺を見上げた。

 蛍光灯の青白い光が、細い鎖骨と、そこから信じられない曲線で膨らむ谷間を同時に照らしている。少女みたいな童顔に涙の跡が残っていて、眼鏡のない目は赤く潤み、唇は濡れてキスの光沢を帯びていた。

 

(うそだろ)

 

 こんな光景が現実であっていいのか。残業で人気のない金曜のオフィスに、こんな子が半分脱いで立っている。

 安物の缶コーヒーの横に、この子がいる。

 

「課長、座っててください」

「え──おい」

 

 あんずが俺のオフィスチェアを引き、座らせた。椅子がギィッと鳴る。

 それからあんずは俺の脚の間にしゃがみ込んだ。

 

「あんず!?」

「いいから。私に、させてください」

 

 あんずの指がベルトに触れた。留め金を外す手つきはぎこちない。だけど確実だ。

 

「経験は……あるのか」

「一回だけ。大学のとき……でも良くなくて」

 

 ジッパーを下ろされる。スラックスの中に手が差し入れられ、下着の上から俺のものに触れた。

 

「あ……おっきい……」

 

 あんずが、ぽつりとつぶやいた。反応している自覚はあった。キスした時点で、いやもっと前から、もう限界に近かったのだ。

 下着の中から引き出される。あんずの細い指が、勃起したペニスを握った。

 

「はぁ……」

 

 息を吐いたのはあんずの方だ。握った指の間で、俺のものが脈打っている。

 

「熱い……すごい、熱い……」

 

 あんずが顔を近づけてくる。吐息が先端にかかった。鼻先がかすめて、ぴく、と俺の腰が跳ねる。

 

「課長のにおい……」

 

 あんずは目を閉じて、ペニスの側面に頬をすりつけた。子犬が飼い主の手にすり寄るように、頬で、鼻で、匂いを確かめる。

 

「匂い嗅ぐな、恥ずか……っ」

「だめ。好きなんです、課長のにおい」

 

 ちゅ。

 

 先端にキスをされた。唇が触れただけで、腰の奥から電流が走る。

 気がつくと、あんずの髪に手を伸ばしていた。お団子の根元を、指先でそっと撫でる。

 

 ちゅる、ちゅっ、

 ちゅぱ、ちゅる……

 

 あんずの唇が亀頭を包んだ。舌先がカリ首の裏を撫で、裏筋に沿って這い上がる。

 

「ん、む……ちゅ、ぱ……れる……」

 

 下手だ。歯が当たるし、リズムも一定じゃない。だけど一生懸命なのが分かる。舌の先で形を確かめようとしている。どこが気持ちいいのかを探っている。

 

「あんず……歯、気をつけて」

「ん……ごめ、なさい……こう、ですか……」

 

 唇をすぼめて、歯が当たらないようにする。その動きで頬がきゅっとへこんで、吸引力が増した。

 

「っ……!」

「んっ、んむ、じゅる……ちゅぷ、ちゅぷ……」

 

 あんずの目が見上げてきた。涙の跡が残る童顔が、俺のペニスを咥えたまま俺を見ている。眼鏡がないぶん、目の大きさがよく分かる。潤んだ虹彩が、蛍光灯の光を拾ってキラキラしている。

 

(やばい、この顔は)

 

 吸い込まれそうだ。四十三年生きてきて、こんな目で見上げられたことがない。

 

「はっ、ぷ……課長ぉ……おいしい……」

「な、おいしいって……何が」

「分かんない……でも、おいしい……もっと……」

 

 じゅる、ちゅぷ、

 じゅる、ちゅぷ、

 

 あんずが頭をゆっくり前後させる。お団子がとうとう崩れて、髪がばさりと落ちた。

 緑がかった黒髪が肩にかかる。長い。こんなに長かったのか。毛先がゆるく巻いて、俺の太ももをくすぐった。

 髪の隙間から見える横顔は──。

 

「あんず」

「んぅ?」

「上がってこい」

 

 声が出た。自分でも驚くほど低い声だった。

 あんずがペニスから唇を離す。透明な糸が、唇と先端のあいだに一本引かれて、ぷつん、と切れた。

 

「いい、んですか……」

「いい」

 

 しばらく、二人とも動けなかった。

 デスクの上で、空になった缶コーヒーが蛍光灯に照らされている。

 現実だ。夢じゃない。

 あんずが俺の太ももに頬を預けて、ぼんやりと息をしている。唇が濡れて光っていて、頬は上気して赤い。

 

「課長」

「ん」

「上、行っていいですか」

 

 その声は、さっきまでの一生懸命なフェラとは違う、静かな決意を含んでいた。

 

 あんずの腕を引いて立たせる。スカートのファスナーに手をかけると、あんずは自分から腰をひねってくれた。

 するりと落ちたスカートの下から、ベージュのストッキングと白い下着が現れた。

 ストッキングの向こうに、透けて見える肌の色。太ももの内側にうっすらと汗が光っている。

 

「ストッキング、脱ぎますね……」

「いい。そのまま来い」

 

 俺はあんずの腰を引き寄せ、自分の膝の上に座らせた。対面で。椅子がギギッと大きく軋む。

 

「あ……あ、あぁ……」

 

 俺の勃起が、あんずの下腹部に触れた。ストッキングと下着ごしに、熱が伝わってくる。あんずの下着は、もう湿っていた。

 

「ここ、こんなに濡らしてたのか……」

「言わないでください……恥ずかしい……」

 

 あんずが両手で顔を覆う。ブラウスの隙間から、ブラジャーに押し込められた胸が見えている。

 

「顔隠すな」

「だ、だって……」

「見せてくれ。あんずの顔が見たい」

 

 手を下ろさせると、真っ赤に染まった顔があった。涙と汗で濡れていて、唇はフェラの名残でてらてら光っている。

 

「か、課長……」

「ん?」

 

 あんずが口を開きかけた。でもすぐには声が出ない。

 唇が動いて、止まって、また動く。喉が小さく上下した。

 

「あんず。何を入れてほしいか、ちゃんと言ってみろ」

 

 俺の声は、自分で思ったよりも落ち着いていた。

 

 あんずの目が大きく見開かれる。耳まで赤い。

 口がぱくぱくと動く。声にならない。

 

「む、り」

 

 やっと出た二文字は、ほとんど吐息だった。

 

「です」

 

 あんずの指が俺のワイシャツの裾を掴んでいた。白い指先が、布地に食い込んでいる。

 

 俺は何も言わずに待った。

 蛍光灯のジジ、という音がやけに大きい。あんずの呼吸だけが、荒く、近い。

 

「課長の、あの、その」

 

 何度も言い直す。目が泳いでいる。視線が俺から逸れ、天井にいき、床にいき、また俺に戻ってくる。

 唇を噛んだ。小さく息を吸って──

 

「お──おち○ちん」

 

 最後は早口だった。自分で言っておいて、あんずの顔がさらに一段赤くなる。

 指が俺のシャツを握りしめていた。爪の先が白くなるほど強く。

 

「偉いぞ」

 

 頭を撫でた。あんずがびくっと肩を震わせた。

 

「もう一回、全部言ってみろ」

 

 あんずが俺を見上げた。涙が溜まっている目で。恨めしそうな、でも逆らえない目で。

 唇が震えている。

 

「おちんちん、ください」

 

 一拍、あんずが息を吸った。

 

「あんずのなかに──入れて、ください」

 

 小さな声。でも最後まで言い切った。途切れなかった。全部、声にした。

 

 直後。

 

 あんずの手が俺のシャツから離れた。

 両手で自分の顔を覆う。

 指の隙間から、赤い目元が覗いている。

 

「もう、お嫁に行けません」

 

 震えた声が、掌の向こうから漏れてきた。

 

「こんなこと言っちゃったから……」

 

 指の隙間を、涙が伝い落ちた。

 この子は、たかだか「おちんちん」と口にすることすら罪だと思っている。それにだ、二十二歳で「お嫁に行けません」なんて、育ちが良すぎる。そんなこと今どき誰が言う? 

 

 でも──だからこそ、たまらない。

 胸しか見なかった連中には絶対に言わない言葉を、この子は俺にだけ、泣きながら言った。

 

 あんずが手を下ろした。

 涙の跡が光っている。泣きながら、俺をまっすぐ見ている。

 ──唇を重ねてきた。あんずの方から。

 涙の味がする。さっきと同じ塩辛さ。でも意味が違う。

 

 離れたあんずが、鼻をすすって言った。

 

「入れてください。お嫁に行けないなら、課長がもらってください」

 

 下着をずらした。ストッキングの股の部分を破く余裕はなかったから、あんずの方が自分で、もぞもぞと下着ごとストッキングの股布を横にずらしてくれた。

 指が触れる。あんずのそこは指先が火傷しそうなほどで、とろとろに濡れていた。

 

「ひぅ……っ」

「入れるぞ」

「はい……っ」

 

 先端を押し当てて、あんずの腰をゆっくり下ろしていく。

 

 ずぷ、と先端が飲み込まれた。

 

「あ、ぁぁ……っ」

 

 じわりと、熱い。

 あんずの中が俺を包む熱は、缶コーヒーの温もりとは全く違った。身体の芯から溶かされるような、甘くて重たい熱だ。

 

「っ……あんず、中、すごい……」

 

 きつい。あんずの中はものすごく狭くて、ペニスの先が入っただけで全体がきゅうっと締まる。

 

「痛いか?」

「痛く、ない。ちょっと、苦しいけど」

「ゆっくりでいい」

「はい……はい……」

 

 あんずが自分の体重で沈んでいく。重力に任せて、少しずつ。俺のものがあんずの中を押し広げていく。

 途中であんずが「ぁ」と小さく声を漏らし、腰の動きが止まった。半分くらいだ。

 

「大丈夫か」

「はい。奥に、当たって」

「無理するな」

「無理じゃないです。もうちょっと」

 

 あんずが俺の肩に手を置いて、ぐっと体を押し下げた。

 奥に当たっている感触がある。子宮口だろう。コリッとした弾力が亀頭を押し返してくる。

 

「ぁ……ぁぁ……入って、る……課長の、全部……」

 

 全部じゃない。半分より少し多いくらいだ。だけどあんずにとっては全部なのだろう。

 小さな身体のなかに、俺がいる。

 その実感が、じわりと胸に広がった。

 

「動くぞ。ゆっくりいくから、苦しかったら言え」

「は、い……」

 

 腰を小さく揺すった。引いて、押して。引いて、押して。あんずの中が俺の形を覚えようとするみたいに、壁がうねる。

 

「あっ……ん、あぅ……」

 

 あんずが俺の首に腕を回した。しがみつくように、体重を預けてくる。柔らかい胸が俺の胸板に押し潰され、形を変えた。

 ブラ越しの乳首が硬くなっているのが分かる。

 

 角度を変えた瞬間、亀頭がざらりとした隆起に触れた。

 あんずの腰がびくっと浮いた。

 

「あっ──そこ、そこ、いいです……!」

 

 膣壁の中ほど、天井側。触れるたびにあんずの膣がきゅうっと締まった。

 

 ここだ。覚えた。次も、その次も、この子が声を上げる場所を、俺は忘れない。

 

 繰り返し突く。小さな膣がきゅうきゅうと締まり、ペニスをしゃぶりつくように絡みつく。

 

「あっ、あっ、あぁ……かちょう、かちょう……」

「あんず……いい、すごくいい……」

「ほんと、ですか……? 私の、ので……きもち、いいですか……?」

 

(この子は)

 

 こんなときまで俺に確認をとる。認めてほしがっている。

 お前のおかげで気持ちいいと。お前のことを見ていると。胸だけじゃなく、全部。

 

「気持ちいいよ。あんずのなか、最高だ」

「っ……! あぁ……嬉しい……嬉し……」

 

 あんずの目から涙があふれた。さっきの悲しい涙じゃない。笑いながら泣いている。童顔がくしゃっと歪んで、鼻をすすりながら、腰を自分から動かし始めた。

 

「あっ、あぅ、あっ……課長、課長、課長ぉ……」

 

 名前の連呼が始まる。呼びかけの密度が跳ね上がっていく。

 

 あんずの足が俺の脚に絡んでいた。ストッキングの中で、足の指がぎゅっと丸まっているのが分かる。本人は気づいていない。身体だけが、快楽に正直だった。

 

「ん、あぁ、いい、です……あっ、あっ、奥、奥ぅ……んぁっ」

 

 あんずは俺の上で腰を使い始めた。前後に、小さく、だけど確実に。ストッキングのナイロンが俺の太ももとこすれて、しゃりしゃりと音を立てる。

 繋がった場所からは、もっと生々しい音がしている。

 

 くちゅ、くちゅ、

 くちゅ、くちゅ……

 

 濡れた音がオフィスに響く。誰もいないフロアに、あんずの喘ぎ声と水音だけが満ちていく。

 

「はぁ、あっ、あっ、かちょ……もっと、もっとください……」

「あんず、敬語……」

「あっ、ごめっ、なさ……あっ、あっ、だめ、もう、ことば、が……」

 

 敬語が壊れかけている。声の段階が上がっていく。

 

「せき、やさん……」

「っ……!」

「せきやさん、せきやさん、せきやさんっ、あっ、あぁっ……きもちいい、きもちいよぉ……」

 

 課長じゃなくなった。名前だ。俺の名前を呼んでいる。

 あんずの顔は涙と汗でぐしょぐしょだ。お団子がとっくに崩れた髪が頬に貼りつき、口元からは涎が糸を引いている。

 

 だけど笑っている。泣きながら、壊れかけながら、あんずは笑っている。

 

 甘い電流が、腰の奥から背骨を駆け上がった。

 あんずも同じだったのだろう。同時に身体が強張り、互いの目が合った。

 

 あんずの歯が俺の肩に食い込んだ。噛んでいる自覚なんてないのだろう。痛い。だけど、その痛みが愛おしい。

 

「せきやさぁん、あっ♡ もう、だめ、でしゅっ♡ なんか、くるっ──♡♡」

「いいぞ、そのまま」

「やだっ、やだぁっ♡♡ こわっ、でも、とまんないっ──あっ、あっ──」

「怖くない。大丈夫だ」

「あっ、あぁーっ……もうっ、せきやさんじゃなきゃやだっ、やだよぉ……っ!」

 

 あんずが俺の首に顔を埋めた。細い腕が、首にきつく巻きつく。爪が肩の後ろに食い込んでいた。短く切りそろえた爪でも、これだけ力を込めれば痛い。

 あんずの腰が止まらない。止めようとしているのが分かる。でも止まらない。小さな身体が俺の上で勝手にがくがくと跳ね、膣内がめちゃくちゃに収縮する。

 

「あ゛っ……ぁ、ぁぁ──っ♡♡♡」

 

 あんずの身体がびくん、と大きく跳ねた。

 口を開いて声にならない声を上げ、目をきつく閉じて、俺のシャツにしがみついたまま──絶頂していた。

 

「ぁ……は、ぁ……ぁ……」

 

 余韻のなか、あんずの指が俺のシャツの襟元をまさぐる。首筋に鼻を押し当てて、くんくんと匂いを嗅いでいた。

 壊れても、匂いを嗅ぐ。子犬みたいに。

 

「あんず……中、きつい。俺も、もう……」

「はい……出して、ください……あんずのなかに……」

 

 敬語が戻りかけている。だけど声は震えたままで、湿っている。

 

「中は」

「いいです。お薬、飲んでますから」

 

 俺はあんずの腰を両手でつかみ、最奥に押し込んだ。

 限界だった。ペニスの根元から熱い塊がせり上がってくる。

 

「ん゛……っ!」

 

 あんずが背中を仰け反らせる。ブラウスが大きく開いて、ブラジャーからあふれた胸が揺れた。

 

 一発目。あんずの子宮口に叩きつけられた。

 あんずの身体がびくんと跳ね、膣がきゅうっと脈打つ。精液を搾り取るように、膣壁がうねった。

 

「ぁ、あっ、あっ──あつい、なかに、あついの♡」

 

 二発目、三発目。出すたびにあんずの身体が小さく跳ねる。

 精液が送り込まれるのを、あんずは目を閉じて受け止めていた。まるで、大切なものを受け取るみたいに。

 唇がふにゃっと緩んで、へらっと笑った。

 

「えへ……えへへ……」

「……なに笑ってんだ」

「だって……嬉しいんですもん……」

 

 蛍光灯のジジ、という音が戻ってきた。

 二人ともしばらく動けなかった。あんずは俺の首に腕を回したまま、肩に顔を埋めている。

 繋がったまま、呼吸だけを合わせている。

 

「……重くないですか、私」

「軽いよ」

「嘘。おっぱい重いから」

「……まあな。すこし重い」

「ひどい」

 

 あんずが俺の胸を、こつんと拳で叩いた。力なんてほとんど入っていない。

 

「でも……いいです。課長に重いって言ってもらえるなら」

「なんだそれ」

 

 ゆっくりと体を離す。繋がりが解けると、あんずが小さく「あ」と声を漏らした。腕だけが、まだ俺の首に残っている。

 

「あんず」

「はい」

「……月曜、飯でも行くか」

「……飯って」

「メシだよ。昼飯。社食じゃなくて、お前の行きたいところに行こう」

 

 あんずが目をぱちくりさせた。それから、くしゃっと顔を歪める。また泣くのかと思ったら、満面の笑みだった。

 

「はいっ。行きます。絶対行きます」

 

 ブラウスのボタンを留め直しながら、あんずは何度も頷いた。眼鏡をかけ直すと、いつもの桃山あんずが戻ってくる。

 ただし、目が少し赤い。

 

「……その、私の見積りは」

「もういい。月曜に俺が伊藤と話す」

「え、でも」

「いいから。遅いし、タクシー拾え」

 

 あんずは立ち上がり、スカートを整え、かばんを持った。出口に向かいかけて、振り返る。

 

「課長」

「ん?」

「……私、明日と明後日は実家に帰る用事があって」

「うん」

「でも、次の土日は予定を空けます」

「ああ、うん……?」

「その次も、その次も、予定空けておきますから」

 

 ぺこりと頭を下げて、あんずは営業二課のドアを開けた。

 廊下の非常灯がぼんやりと、彼女の後ろ姿を照らしている。お団子が崩れたままの髪が揺れて、やがて見えなくなった。

 

 俺は椅子に深く沈み、天井を見上げた。

 デスクの上には、空になった缶コーヒーが二つ。片方は俺の、もう片方はあんずのだ。

 

 月曜日が来る。そのとき俺は何をすべきか、もう分かっている。伊藤と話をする。あんずの席を二列向こうから俺の隣に動かす。

 あとは──メシを奢る。奢って、あんずの笑った顔を見る。それだけだ。

 

「いや。土日のことも考えなきゃな」

 

 空調のない金曜の夜は、まだ少しだけ、あんずの匂いが残っていた。

 

(了)

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