小林ユウは、外見からしていわゆるギャルだった。髪を茶色に染めて、キラキラ光る櫛やらなにやらを頭に刺している。制服のブレザーを、上着が傷むのも構わずに大胆に腰に巻きつけ、ブラウスのボタンはいくつか外している。それなー、とよくつるむクラスメイトの間では、男女関係なく場を盛り上げていくその姿はまさしく陽キャそのものだ。
しかしそんな彼女が性に奔放かといえば、そうではない。入れ替わりクラスに彼女は断固として反対の立場をとっていたし、くじ引きで決まった僕のことを散々罵ったものである。
彼女にとって、ギャルは仮面だった。そうすることで、男女の境界を意識せずに済んだ。彼女が嫌いなのは、父親を連想させる男だった。根暗で、父親だからと権力を振りかざす、自己チューな男。
僕は根暗ということで、彼女から嫌われる立場にあった。しかし今、入れ替わり教室が開かれるたび、早いものがちで、彼女が僕とペアを組みたがる。
人は、変わるものである。
「あんたが変えたんやで」
小林さんは、僕の体で勢いよくズボンを脱ぎ捨てながら言った。たちまち裸になって、さあ抱かせてや、と言ってくる彼女は落ちたというべきか、それとも丸くなったというべきか。
「女の体って、男の体で抱きつくと、めっちゃふわふわしてん。ハグすると気持ちええわ」
有言実行とばかりに抱きしめられる。頬ずりされると、剃り残したヒゲが少しあたって痛い。
「男のセックスなら、イヤじゃないってこと?」
「それもあるけどなー」
少しムッとした顔で、でも正直に答える。触れるだけのように唇を重ねられる。
「でも、あんたはちゃんと受け止めてくれるやんか。だから、安心して体を預けられるんや。あんたの優しさ、母性って感じが好きやわ」
すりすり、すりすり、と彼女の長身に合わせて僕の体で背伸びする。猫の甘え方に似ている。下半身を、パンツごと勃起させている点を除けば。
「時々あんたみたいに、入れ替わった男の方が優しいことあるけど、なんでなんやろうなぁ」
「母性じゃなくて、父性かもしれないよ」
そのへんはしっくりこないのか、何度も首を傾げながら、やがて僕らはベッドにたどり着く。はっ、と口いっぱいに唾液を溜めたユウが、僕の胸にむしゃぶりつく。多分、入れ替わり授業もなく、本人に対してやったら絶対嫌がられただろう。僕も含めた、誰であっても。
むちゃっ、じゅるっ、ちゅっ、と柔らかな胸を沈ませながら、荒い息づかいとともに乳首が舌で何度もなぶられる。その突起を唇で捕まえて、ちゅうちゅう、と吸い始める。
「男の時ならエロいってわかるんやけどなぁ。女になったらなんで夢中にされるかわからんし、正直邪魔なんやわ」
「でも、胸にしゃぶりつかれると、求められてる感じがしない?」
「……まだ、女としてオトコを受け入れるの、準備できてないんやわ」
それにしても胸への吸い付き方は、まるで熱々のラーメンに挑む時のような息遣いで、彼女自身欲求に突き動かされているようだった。あちらの手が、僕の脇の下を通って、少し頭を起こされる。唇が斜めに突き刺さるように、僕の唇に重ねられた。
「あんた、すごいわ。あんた、好きやわ」
手がベタベタと、遠慮なく体のあちこちを擦る。いやらしい、と思わないでもない。でも、こういう姿を見せるのは僕だけ、と思うと悪い気がしないでもない。
「うち、あんたのこと好きなんよ。でも、うちが、ほんとのうちの体であんたを受け入れられるか、わからないんよ」
「所詮は授業だよ」
僕は言う。
「入れ替わってセックスできるなら、それでいい。本来の体でしないといけないのなら、僕はそれができる人か、許せる人とセックスするだけだ」
「なんね、あんた、うちに執着してくれんの?」
「嫌がる相手とするのはどうかと思うんだ」
「独占欲、見せてぇな」
がぶり、と乳首を噛まれた。ビクッとして、僕の身体が跳ね上がる。
「あんたがうちの初めてを奪ったんや。うちはあんたに童貞を捧げて、あんたはうちに処女を捧げたんやで」
「聞いているとおかしくなっちゃいそうだよ。ホントに」
太ももをひたひたと撫でられる。ゾクッとした快楽がお腹のあたりを抜けていった。
「なんでうちとあんた、これで性別逆じゃなかったんやろか。なんで、この授業の間だけの関係なん?」
「初めて入れ替わり授業を受けた時の反応も、結構きつかったけどね」
「言わんでくれてもええやん!」
がぶり、とまた乳首を噛まれる。まったくわがままな暴君である。
「で、悪いんやけど、うち、そろそろ入れたいんよ」
「はいはい、おいで」
ユウが嬉々として、下半身を滑り込ませようとしてくる。僕はMの字に開脚し、ついでにワレメを指で左右に引っ張った。ぬちっ、と音がして、秘所がゆっくりとこじ開けられる。そして、少しだけ腰を浮かすのも忘れない。こういったささいな気遣いが、女子側としては重要だったりする。
「あんた、ほんまにええ女やな」
「君の努力なしでは、君の美貌は保たれてないと思うけどなあ」
「でもうちは、女としてするのはいやや。うちの体に入ったあんたとしたいんや。あんたがうちの体に入ってるからこそ、こんなに魅力的って思いたいんや。誰とでも入れ替わったあんたが、他の男役に盗られるのは嫌なんや」
「それは約束できないよ」
「あんたは優しいから、誰の体に入っても魅力的な女の子になる。そんなんいやや。盗られるのはいやや」
なんだか急に不安定になり始めた。そんな彼女の背中を抱きしめる。
「好きなんや。あんたとずっとこうしてたい。でも、ほんとならうちがその役目を引き受けなあかんはずやったんや」
「入れ替わりは普通のことさ。少なくとも、この授業の中では」
ペニスが滑り込んできた。きゅうっと下半身が勝手に締まる。異物が入ってきたことが分かるのに、それを受け入れている自分がいた。体が、それを受け入れようとしていた。
んっ、と吐息を漏らして、小林さんがこちらの脚を掴んだ。自分の方に引き寄せて、腰を振り始める。
「あんたとのえっちが気持ちいいのは、好きなのは本当なんよ。でも、女としてあんたを受け入れられるか、自信がないんよ」
「今は難しいこと、考えなくていいから」
どうしても比較してしまうのか、表情を曇らせている小林さんの方に身を寄せる。体を起こして、そのまま彼女の太ももの上に乗った。
「うっ」
「動かないなら、僕が動くよ」
「んんっ、うちはそこまでえっちなオトコでも、オンナでもないのにぃ」
「僕と入れ替わりたがるからだよ」
両肩に手を置いて、腰を上下に振る。全身がばねになってしまったイメージである。体を振り上げては、ペニスという突起に落として貫くイメージをする。ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅっ、と肌と肌がぶつかり合う。小林さんが必死になって僕の体を抱きしめる。
「どこにも行かせへん。あんたはうちのもんや。うちの体を使っとる限り、あんたはうちのもんや。誰にもやらん。ぜったいにやらん」
「いいよ、それで」
「出すっ。出るわ。うち、あんたに射精しようとしてるっ」
「妊娠したいの?」
「やっ、それはいややけど、でも、中に出したいっ、孕ませたいっ」
「めちゃくちゃ言ってるなあ」
「中出しはマーキングなんや。あんたがうちのもんって、証明せんといかんのやっ」
乳房にかぶりつく。動きがどんどん激しくなる。振り落とされないように、首元にかじりつく。
「イク、イキそう、だめっ、出るわっ」
「いいよ、おいで」
「ああっ、あっ」
宣言通りに、小林さんは僕の中に精液を放った。独特の刺激臭がする。僕らは一旦腕をほどいて、ベッドのうえに転がる。くぱっ、とまんこを指で押し広げると、とろとろと精液があふれてきた。小林さんの視線は複雑だ。
「うち……うちじゃないうちは、中出しされても動じもせんで、そんな風にエロく振る舞えるんか……うちは、うちはなあ……」
「何でもかんでも比較するのは、小林さんの悪い癖だよ」
「ユウや。ユウって呼んでや。今だけでも、うちの女になってや」
ユウの体がのしかかってくる。僕は下敷きになりながら、冷静にペニスを探り当てる。そしてそれを、自らの秘所に押し当てた。早くも硬さを取り戻したペニスが、二回戦を求めていた。