「今まで何人の女子と寝たの?」
いたずらっぽく尋ねられる。もちろん、加賀見瞳子は、こちらの胸をしっかり揉むのを忘れない。
「ピロートークならせめて、んっ、正常位でお願いしたいかな」
「減らず口を叩くんだから」
僕は四つん這いにさせられて、後ろからペニスを突きこまれていた。少しふくよかな彼女の体は、抱きしめられるだけでほのかに熱くなってくる。重力に従って下に垂れる乳房を掬い上げるようにして、熱心に掌で揉みしだく。膝裏に彼女の太腿がぴったりと押し付けられる。
「で、何人と寝たの?」
「寝たというか、抱かれたというか。ねえ」
「なに?」
「せめて聞くか、突くか、どっちかにしてくれないかな。息が詰まりそうだ」
「はいはい」
くすくすと、笑い声が肩甲骨のあたりにぶつかる。ぬぽっ、と音がして、異物が抜けていく独特の感覚が体を襲う。でもそれは同時に喪失感でもある。
「すご。ちょっとチンチンで突いただけなのに、こんなにおまんこがとろとろ……」
「女子の秘密の場所はじろじろ見るもんじゃないって、お母さんに教わらなかったのかい?」
「チンチン抜いてそれだけ言うなら、塞ぐべきなのは下の口であってたかもね」
ふう、と熱い吐息を漏らしながら、加賀見が横に転がった。僕もうつ伏せから、姿勢を変える。加賀見が胸元に抱き着いてきた。胸というのは揉むためにあるものであって、揉まれるためのものではないと感じる。入れ替わっていても、男であれば、間違いなく。
「すごいな」
「なにが?」
「仰向けになって、視線を足の方にやっても――見えない」
「眼鏡なら枕元にあるわよ」
「おっぱいには無力だと思うけどな」
大きな乳房は、ロケットのように突き出ていて、しかも自分の力でちゃんと山脈を作り上げていた。じゃ遠慮なく、と加賀見は自分のものである巨乳を揉む。授業が終われば、また自分のものになる胸を揉むというのがどんな感じなのか、今のうちに楽しんでおこうという考えなのかもしれない。
「授業では5人の女子と」
「うわ、ヤリチンだ」
「ただ悲しいかな、授業外だととんとお声がかからない」
「つまり……童貞のまま?」
「体は勝手に卒業した状態で返ってきた。なんというか、裏切られた思いだよ」
「でも、授業では人気者なんでしょ?」
「そういう男子は、たまにいるらしい」
僕は頭の後ろで手を組んで、呟く。
「女子の目からしたら理想の女子とでも呼ぶべきオトコがね。そこから授業外でも恋人になれるかどうかは、本人の手腕にかかっているらしいけど……」
「けど、なに?」
「入れ替わった状態でならしたいけれど、自分の本来の性別じゃセックスをしたくないと思ってしまう女子も増えているらしい」
「この授業の功罪ってとこね」
やれやれと、加賀見が僕の体で肩をすくめた。
一年を通して行われるこの授業で、授業なんかで処女を散らしてたまるものかと一時的に男女の仲が急接近することがあるらしい。長続きしない男子は「駆け込み寺」と嘲笑われることもある。一方で同じようなことが童貞にもあって、「先にセックスが女子の体で行われると、一生童貞のまま過ごすことになる」なんていうジンクスも流行っている。それが事実なら、僕も行動を起こしていただろうと思う。
「しかし正直、そこまで気持ちよくないと言う話だけどね」
「なにが?」
「コンドーム付きのセックス」
「男子の体が初体験の女子が、そこまで気を回すと思う?」
苦笑が返ってきた。ごもっともな話だった。
女子は男子になりたがり、男子は女子になりたがる。女子が男子の快楽を味わってから「ヤリチン」になってしまうのは、子種を孕む側ではなく奔放にばらまける無責任さの虜になると聞く。
逆に男子は、好きになった相手をずっと抱きしめて、尽くす快楽が癖になるのだとか。相手が自分の体にしがみついて、息も絶え絶えになりながら自分の中で果てる姿がとても愛おしいのだとか。
何にせよ、この授業がさらに厳格になり、例えば単位を落としたら落第とか、入れ替わりは授業内で終わらず、はい今後はこの子の体で生活しましょうね、とかだったら、もっと皆慌てふためくだろうしもう少しヤリマンやヤリチンと呼ばれる人種も減るはずなのだが。幸か不幸か、僕らはポケットにいくつも可能性を隠したまま、緊張感のない入れ替わりを楽しめるというわけだった。
「ねえ、そろそろ再開していい?」
「せっかちだな」
「だって、授業が終わったら射精もこれっきりじゃない」
加賀見が不満そうに唇を曲げる。
「遅漏とか、不感症相手だとお互い苦痛らしいわよ」
「そうなの?」
「ええ。お楽しみを味わう間もなく終わっちゃった、って感じで」
加賀見がごろりと体を転がす。再び彼女が僕の体の上に覆いかぶさる。僕は膝を曲げてMの字を意識しながら股を開くのと同時に、少しだけ腰を浮かす。焦らすようにゆっくりと突きこんだつもりかもしれなかったけれど、肉棒は熱く、入ってきただけで敏感に膣がきゅっと締まった。
「もう、あんたのオマンコ、敏感すぎない?」
「自分の体が敏感なのは、喜んでおくべきじゃないかな?」
「ちょっと、出そうになったの!」
「ゆっくりでも、勢いよくでもどちらでもどうぞ」
ひらひら、と手を振ってやる。枕元の、冷やしたペットボトルに手を伸ばす。
「どーせ、授業が終わるまでの仲なんだから」
「言ったわね?」
加賀見が歯を食いしばりながら言う。
「なにか?」
「この授業終わった後、お互い一回だけ、自分の体で試してみない?」
「お付き合いしてからじゃなくて?」
「それすっ飛ばして、もうお突き合いしてるじゃない。欧米じゃ、カラダの相性を確かめてから付き合うって話よ?」
「僕もそれは聞いたことがある。でも、南米じゃなかったか?」
「どっちでもいいわよそんなこと!」
「はうっ」
ぐっ、と突き上げられて、体が少し反った。おへその辺りが上下して、胸が弾んだ。熱い吐息を隠さない「僕」の顔が舌なめずりして、胸の谷間にダイブする。
ちょっとムカついたので、おっぱいで窒息させてやった。さらに腰に、こちらの脚を巻き付けた瞬間に、加賀見はあっけなく射精した。その二分後にチャイムが鳴ったので、加賀見は何とか目標内に二発目を放つこともできたわけだ。
「で、ご満足いただけた?」
「満足いただけた、じゃないわよバカ」
ちょうど薬が切れて、彼女の上にのしかかっていた僕を、加賀見が睨みながら引きずりおろす。
ぬぽっ、と音を立てて膣からペニスが押し出された瞬間、股間から、ごぼっと精液が逆流した。
「え?」
「その……」
加賀見が目を逸らしながら言う。
「ピロートークの最中、ちょっと萎えちゃって、ゴムが外れてたのに気づいてなかったのよ……」
「あー……」
「どうしてくれんのよ、あんた」
「ピル貰ってこようか?」
「そこは、責任はとる、っていうとこでしょうが、このバカ!」
小突かれた。女子は、女子に戻った瞬間から逞しくなる。お返しに唇を奪っておいた。
「次のクラスの授業もあるので、はやく更衣室に行って、着替えるように」
見回りの教師の呆れたような声が、カーテン越しに聞こえてきた。