異世界迷宮でTS転生した俺に男の娘奴隷ハーレムを!! 作:毛のないおじさん
ボス部屋の前に七人いるので、てっきり七人組のパーティーなのかと思ったがどうやら違うようだ。
いや、それはそうか。パーティー編成のスキルで組めるのは六人まで。どう考えても一人多い。
順番が来た六人が、ぞろぞろとボス部屋へ入って行き、オレ達三人と残りの一人が残された。なるほど、六人組とソロだったのか。
しかしそれにしても、ソロか。
オレのように強力な武器を持っている訳でもないだろうに、魔物が三匹出てくる七階層までソロで登ってきたのか。
ふと思いたち、鑑定を使ってみた。
グシーヌ 女 25歳
探索者 LV13
装備 銅の剣 革のジャケット 革のグローブ 革の靴
……いや本当に、どうやってここまで来たんだ?
この装備とレベルでなんとかなるのか? ひたすらに避けて攻撃して倒したのか? マジで?
そうやって無遠慮に見ていたのが良くなかったのだろう。グシーヌが声をかけてきた。
「あの、なにか?」
「あっと……。いや申し訳ない。見たところ一人のようだったので、驚いて。ここまで大変だったのでは?」
「ああ……。それはまあ、それなりにです」
「仲間は見つからなかったのか?」
「女が一人だと、仲間を見つけるのも面倒が多いので、なかなか」
「では奴隷は?」
「パーティーメンバーを集めるためにお金もためているのですが、なかなかうまくいきません。どうしても出ていくばかりで」
「こればっかりはな」
そんなやりとりをしていると、なにか違和感があった。
いや、デジャヴだろうか? どこかでこんなやりとりを聞いたような……?
「七階層に上がるようになって二年を超えました。この前アイテムボックスの容量も大きくなったので、これを機に上の階層に移ろうかと」
「へえ」
「もうすぐ一人目もなんとかなりそうです。そうなれば私にも運が向いてくるでしょう。この戦いが終わったら探してみるつもりです」
デジャヴはどんどん強まり、そしてもう一つの思いが浮かんでくる。
この人をこのまま見送ってはいけない。
なぜかオレはそう思った。
「あー……ところでここのボスの事は知ってるか?」
「話には。ラピッドラビットですよね」
「ああ。良かったら、今回は一緒に戦ってみないか?」
「ユウ様?」
オレの突然の勧誘に、ローズとリリーが驚いていた。いや正直に言えば、オレも自分で驚いている。なんで共闘しようと思ったのだろう?
グシーヌも目を丸くしていた。
「それは……いったいなぜ?」
「いや、ラピッドラビットは面倒なやつだからな。勝てはするが、ソロでここまで来られる探索者が加わってくれるなら楽が出来ると思っただけだ。そちらもラピッドラビットが初見だと言うなら、悪い提案ではないだろう?」
オレは内心を隠し、グシーヌを勧誘していた。いや本当に、自分でもなんでこんな提案をしているのかわからん。
グシーヌは慎重に考えていた。
「ドロップ品はどうします?」
「今回は勉強代としてこちらに譲ってほしい。一度戦えば、次は自分でとれるだろう?」
本当は別にドロップ品が無くてもいいが、それはかえって怪しい。ドロップ品が目当てで勧誘したと思えば、こちらの提案にも乗りやすいだろう。
案の定、グシーヌは頷いてくれた。
「わかりました。今回は世話になる事にします」
「よろしく頼む。あー、ではちょっと待ってくれ。……よし。友に応えし信頼の、心のきよむ誠実の、パーティー編成」
詠唱省略のチェックを外し、しっかり詠唱してパーティー編成のスキルを使う。
そして一時的に四人組となったオレたちはボス部屋に乗り込んだ。
ラピッドラビットは移動も攻撃も全てが速い。オーバーホエルミング無しではオレも攻撃を当てるのは難しい。
そんなラピッドラビットに対し、グシーヌはほぼ互角の攻防を繰り広げていた。
ラピッドラビットに攻撃をかわされ、体当たりをくらう。そうかと思えば体当たりに対してカウンターを当てる。
かわし続けて当て続けるとはいかないが、それでも決して一方的にやられるだけではなかった。
やはりソロでここまで来たのは高い実力があったからだと納得する。
とはいえダメージのせいでグシーヌの動きは段々と鈍りはじめていた。
もし強力な装備があればダメージ勝ちして倒せただろうし、あるいはパーティーメンバーが一人でもいればやはり勝てただろう。
だがどちらもない今は、ソロのままでは命を落としたんだろうな。
(オーバーホエルミング)
オレはこちらに向かってくるラピッドラビットを見て、スキルを発動させた。
全てがゆっくりと動く中、全力でデュランダルを当ててラピッドラビットをはじき飛ばす。
「えっ?」
「回復アイテムがあれば今のうちに回復を。なければそのまま防御に専念してくれ」
「わ、わかりました」
オーバーホエルミングによって加速したオレの動きに驚いた様子だったが、グシーヌは指示を聞いてすぐにアイテムを口に入れてくれた。
その間にまた向かってきたラピッドラビットを、今度はオーバーホエルミングに加えてラッシュ・スラッシュを発動させてはじき飛ばす。
さすがに、ガクンと消費した感覚があるな。あと数回使えるかどうか……。
ラピッドラビットは今度はローズに向かい、さらにその次はリリーに攻撃した。
ローズは無理に当てようとはせず盾と剣を防御のために使って凌いだが、棍棒しか持っていないリリーは被弾してしまった。
「クソがッ! こっちに来いやぁ!!」
リリーの被弾を見てイラついたオレは剣を地面に擦り付け、大きな音を立てて注意を引こうとする。
目論見通り、ラピッドラビットはこちらに注目し、向かってきた。
(オーバーホエルミング)
コンパクトに当てることだけを考え、突きを何度もたたき込む。
「そして時は動き出す」
オーバーホエルミングが解除されるとラピッドラビットは後ろに吹き飛ぶ。
フッ、一度は言ってみたいセリフを言ってやったぜ。
溜飲を下げたオレはそのままラピッドラビットとの距離を詰めた。
(オーバーホエルミング! ラッシュ・スラッシュ!! もひとつラッシュ・スラッシュ!!!)
何度も攻撃を当てたことにより、MPの回復も済んでいる。
下からすくい上げるような切り上げと、上段からの打ち下ろしの両方でラッシュ・スラッシュを使った。
さすがにこれだけ攻撃を加えれば耐えきれないようで、ラピッドラビットはウサギの肉を残して消えていった。オレたちの勝ち。
……ふう。
一度にMPを大量消費したせいで、かなり体が重い。精神的な疲労感がため息となって出てきた。
オレは一度、腰を下ろすことにした。
そして、そんなオレにグシーヌが話しかけてきた。
「凄い動きでした。もし私一人でボスと戦っていたらと思うと、危ないところでした」
「いや、そちらもソロで上がってくるだけあって、いい動きだったじゃないか」
「いえ。今回は本当に助かりました。もう少し七階層で修行を積むことにします」
グシーヌは座っているオレに手を差し出した。
「今更ですが、私はグシーヌといいます」
「ユウだ。あちらはオレの奴隷のロズアードとリゼルだ」
オレ達は握手をぐっと交わした。
「どうも。それで、何かお礼をしたいのですが、私にできることはありませんか?」
「ん? いや、気にしなくていい。予定通り、ウサギの肉はもらえるわけだしな」
「ですが……」
「あー……そうだな。それなら、ひとつお願いがあるな」
「はい、なんでしょう?」
「魔物との戦い方を教えてほしい」
「戦い方……ですか? 私がユウさんに教えられる事はないと思うのですが?」
「いや、技術的な事はグシーヌの方がはるかに上手だ。是非頼みたい」
「そういう事でしたら……わかりました」
レベルに頼らない強さが大事なのは原作でも証明されている。
この出会いは誰にとっても転機になったようだ。