異世界迷宮でTS転生した俺に男の娘奴隷ハーレムを!! 作:毛のないおじさん
スチル・ハン ♂ 25歳 騎士Lv10
それが鑑定で読み取った結果だった。
伯爵家の次男でジョブが騎士、ねえ。それが本当なら年齢を考えると真面目に迷宮に潜っている貴族のようだな。
……とは言え、以前、ウザい貴族のガキに絡まれた事を思い出す。
このドワーフも鍛冶師ギルドで無理難題を受付に迫っていた。きっと同類だろうな……。
心の中でため息をつくが、まあ定価で毒針を売れば向こうも文句はないだろう。さすがに強奪しようとはしないはず……しないといいな……。
椅子に座りスチル・ハンに相対しながら覚悟を決めていると、さっそく買取金額の提示があった。
「毒針百本に対して4000ナールでどうだ?」
探索者ギルドで売る場合、毒針は10ナールだ。百本だと1000ナール。
つまり、相場の四倍を提示されたことになる。
えっ、どういうこと? なんでそんなに高額?
オレが心中の混乱から黙っていると、スチル・ハンは焦ったように続けた。
「むっ……足りないと言うのか。では4500でどうだ。これ以上はどこも出さんだろう」
「ああ……いえ。思ったより良い取引だと驚いてしまいました。その額で構いません」
「うむ。では銀貨四十五枚。確認してもらおう」
懐から財布を取り出し、テーブルの上に硬貨が置かれる。
オレは確認すると銀貨を受け取った。うーむ、まさか四倍で引き取ってもらえるとは。
そういえばこの世界のドロップ品は買値が売値の四倍だった。急いでいることを加味すれば、まあ適正な額での取引ということだろうか。
「良い取引だった」
「いえ、こちらこそ。……それにしても、大量に毒針を使うのですね。暗殺者にでもジョブを変えるのですか」
オレは銀貨をしまいながら、ふと口にすると、スチルは大いに驚いたようだった。
「その通りだ。パーティーメンバーがジョブを変える予定でな。だが、よく暗殺者のなり方を知っているな。あまり知られていないと聞いたが」
「あー……。まあ、迷宮攻略にあたり、有用な情報は集めているので」
「ほほう。お前はしっかり攻略を進めようと考えているのか?」
「ええまあ。いつかは五十階層まで行きたいですね」
そういうと、スチルはパンと膝を叩いて喜んだ。
「実に良い! ……迷宮は確かに資源でもあるが、人に災いをもたらす存在だ。それを忘れては人はやがて迷宮に飲まれることになる。世の探索者は小金を稼ぐだけの奴らばかりかと思っていたが、お前のような志のある者もいるのだな」
「恐縮です」
「うむ。気に入った。何かあればこのスチル・ハンに相談するがいい」
思ったより情熱のある貴族なんだな。鍛冶師ギルドでのふるまいは情熱が先走っただけだったのかもな。
いずれにしても、そういうことなら相談に乗ってもらいたい事があったな。
「ではさっそくお願いがあるのですが」
銀貨をしまい終えたところで、オレは切り出した。
「うむ。なんだ?」
「モンスターカードを手に入れまして、防具に付けたいのですが。そのためにコボルトのカードと竜革の装備を探しているのですが、なかなか防具屋には並んでいなくて。取り扱いのある店などを紹介いただければ、と」
スチルはふむ、と顎に手を当てた。
「コボルトのカードと竜革装備か。……なるほど、確かに竜革の装備はあまり防具屋には出回らないな」
「そうですよね」
「コボルトのカードはさすがに譲れんが、竜革装備ならば当家の倉庫より譲ろう。探している品は鎧か? ジャケットか?」
「助かります。品物は竜革製であれば問わないのですが、この目で見せていただければ」
鑑定して、スキルスロットの有無を確かめないといけないからな。
「では来るがいい」
共にギルドを出ようとすると、職員達が見送ってくれた。
厄介事が過ぎ去ったからか、ほっとしている様子だ。
オレも次に来る時は何事もないことを祈るよ。
歩きながらスチルは口を開いた。
「それにしても、パーティーに鍛冶師がいるのか?」
「ええ。ここにいる奴隷のリゼルがそうです」
リゼルが頭を下げると、スチルは気遣うような声色で続けた。
「ふむ。……モンスターカードの融合は失敗が付き物だが、わかっているか?」
「ええ。だからこそ、失敗するにしても自分の目で確認した装備を使いたいのです」
「……そうか。鍛冶師を無駄に使いつぶすつもりがないならいい」
奴隷の鍛冶師は失敗した時に大変だと原作でも言っていたものな。
貴族としてかギルド員としてかはわからないが、心配だったのだろう。
まあひょっとしたらオレも失敗した時にリリーに罰を与えちゃうかも知れない。
……そういうプレイもしてみようかな。ぐへへ。
スチルの屋敷は鍛冶師ギルドからそれほど遠くない場所にあった。貴族の屋敷というだけあってかなり広く、使用人が何人も忙しそうにしている。
案内された倉庫も広く、中にはいくつもある装備品が整然と並んでいた。
オレは鑑定を使いながら一つ一つ確認していく。
竜革の鎧、スロットなし。竜革のジャケット、スロットなし。……スロットありはグローブか靴、帽子だけだな。その中でもスロット四つついているのは竜革のグローブだ。
ま、鎧やジャケットは聖銀やオリハルコンに変えていく可能性も高いし、かえって好都合だったかもな。
「これをいただけますか?」
「うむ。志のある探索者に使ってもらえるならば、当家としても有意義だからな。とはいえ代金はもらうぞ。防具屋の相場で構わんな?」
「もちろんです」
八千ナールを支払い、オレは竜革のグローブをアイテムボックスにしまった。
依頼を受けに行って金が増えるどころか減ったが、いい結果になったな。
「あとはコボルトのカードか」
「はい。オークションを利用するつもりです」
「それがいい。付き合いのある商人がいるゆえ、紹介状を用意しよう」
「何から何まで助かりました。ありがとうございます」
「なに、これも貴族の責務のうちだ。よければ今後も取引させてほしい。素材が手に入った時などは声をかけてくれ」
「ありがたい話です。こちらこそよろしくお願いします」
そうしてオレ達はスチルと別れ、屋敷を後にした。
「後はコボルトのカードだな」
「はい、オークションですね」
「そうだな。二人はオークションは利用したことはあるか?」
「私はありません。売られる側だったので……」
「僕もです。売れ残りだったので……」
「よし行こうすぐ行こう」
うん……奴隷だった二人に聞いたオレが悪かった。
オークションの館は前に外から見たことがあるだけだが、かなり大きい。大きめのスーパーくらいはあるだろうか。
原作通り、ロビーに入れば仲買人達がこちらを値踏みしてくる。
うーんこれは確かにいい気がしないな。さっさと受付に紹介状を渡すか。
「ようこそお越しくださいました。スチル・ハン様のご紹介とのことですが」
そう言って現れたのはふくよかな猫人族の女だった。
シェラ・ムレット ♀ 35歳 武器商人lv18
鑑定するとそう表示された。武器商人か。うん、悪くない。
「シェラ・ムレットと申します。本日はどのようなお品をお探しでしょうか?」
愛想よく笑っているが、その顔はニコニコというよりニヤニヤに近い。なんだか胡散臭い。
まあそう見えるだけで、実際は信用できるとスチル・ハンは言っていた。大丈夫だろう。
……大丈夫だよな?
「コボルトのカードを探している」
「なるほど、コボルトのカードですか。なにと合成するにしても使えるカード。お目が高いですねぇ」
褒め方がわざとらしい。
あとなんか距離が近い。一歩どころか半歩まで近づいてきたぞ。
ニヤニヤ笑いもやめろ。
「最近はいくらで買える?」
「直近ですと5000、5050、5000ナールで売れています。今がお買い得ですよぉ」
原作でもそのくらいが相場だった。お買い得というのは本当だろう。
……なんか胡散臭く感じるのは気の所為だな、うん。
「おいくらで入札しますかぁ?」
「5000で頼む」
「賢明でいらっしゃいますねぇ。承りましたぁ」
いやマジで、この胡散臭さは商人としてマイナスだろ。
ハン家と長い付き合いがあって、スチルが誠実さは保証すると言ってなければ断っていたぞ。
紹介状が必要なのはオレじゃなくてシェラの方だったのでは……?