異世界迷宮でTS転生した俺に男の娘奴隷ハーレムを!! 作:毛のないおじさん
「ん?」
生活用品を買おうとしていると、ある金物屋が目についた。
この店、どこかで見たような……?
「いらっしゃいませ。なにかお探しですか? それともお住まいをお探しでしょうか」
店から女性が出てくる。
あー!
この人、漫画で出てきた人だ!
原作主人公の家を世話した女性だ。金物屋だが地域の顔役という事で、不動産も紹介してくれる人だった。
原作とは違う世界と思っていたが、こんなところで共通点を見出すとは……。
「どうかしましたか?」
いかんいかん、つい感慨にふけってしまった。
「いやなんでもない。家を紹介してくれるのか?」
「ええ。どういった家をお探しですか?」
色々と聞いてみると、原作主人公と同じ家を紹介してくれることになった。ありがたい。
この世界だと珍しい水洗トイレだしな。村だと外の穴に出して土に埋めるし、宿屋だと部屋においてある瓶に出して捨てるんだぜ。股を拭くタオルも共用だし。日本人としてはなかなかに辛かった。
ただこの家だと井戸は遠いし遮蔽セメントは塗ってあるしで、今だとオレは水魔法が使えないし、ワープもMPの消費が重そうだ。
もう少しレベルを上げてから契約したほうが良さそうだな。
「よし、この家を契約したい。ただ準備があるから、明後日からとしていいか?」
「ええ、かまいませんよ。明後日にウチへ来てください」
宿屋も明日までの金は払ったしな。明後日の朝にここへ来ればちょうどいいだろう。
午前中に買い物を終わらせ、オレ達はドルセアの宿屋へ戻った。
「よし! では準備ができたところで、今から迷宮へ行く!」
「は、はい。ご一緒いたします」
「大丈夫だ。基本的に戦うのは俺の仕事。ローズは敵を探すのが仕事だ。あとはまあ、ドロップ品を運んでくれ」
「その……良いのですか?」
ローズは不安げにこちらを見た。
この世界の奴隷は、一般的に肉の盾として扱われる。すでにそんな事はしなくていいと否定したが、常識で考えて、自分もそうしなければと思っているのだろう。
オレはニヤリと笑った。
「そもそも必要ない。オレの強さをしっかり見るといい」
まだどのジョブもレベル1のオレは、ボーナスポイントが99のままだ。
なのでまずジョブ設定をいじり、オレが探索者、英雄、村人。ローズが村人だ。
そして最終的にはボーナスポイントは武器6デュランダルで63、サードジョブで3、獲得経験値上昇5倍で15、必要経験値減少1/5で15、鑑定1、ワープ1、キャラクター再設定1に設定。
準備を整えたオレ達は、迷宮に挑んだ。
「ここが迷宮かー」
「え? ユウ様は迷宮に来たことは?」
「無いな!」
漫画版も読んだから大体の雰囲気は知っていたが、やはり実際に迷宮に入ると、違う。
光源が無いにも関わらずぼんやり光る空間。洞窟のように閉じた空間なのに乾燥した空気。
現実のようで現実とは違う、小さな違和感を残すこここそ、迷宮だ。
ドルセアの迷宮の一階層で出てくる敵は、原作のベイルの迷宮と同じニードルウッド。漫画で見たように、樹齢数年程度の細い木が動いているような姿だ。
近づいてデュランダルを一振りすると、ほとんど抵抗がなくニードルウッドの体は断ち切られた。
うん、やはり一撃で倒せる。楽勝楽勝。
「ユ、ユウ様、凄いです!」
後ろで見ていたローズが興奮しながらこちらへ近づいてきた。褒められると気分いいな、やっぱり。
……まあ凄いのはオレ自身ではなく、ボーナスポイントで現れるデュランダルなんだが。
「ローズもやってみるか? このデュランダルなら当たれば倒せるぞ」
「えっ……」
今は荷物持ちだが、ローズがどこまで戦えるのか見てみたい。まあ原作の、敵の攻撃を150%避ける狼人族さんの動きは無理だろうが、いずれ普通に戦うくらいはしてほしい。
そう思って、オレはデュランダルをローズに握らせた。
「で、では……」
ゴクリとツバを飲んで、ローズは新たに遭遇したニードルウッドに対峙した。
「ええ〜い!」
気合一閃、ローズはデュランダルを大きく振り下ろした。
……ニードルウッドのかなり手前で。
へっぴり腰で振った剣はニードルウッドにカスリもせず、ただ空振られた。
そして隙だらけのローズに、ニードルウッドのしなる枝が襲いかかる。
バチンッ!
「あうっ!」
「ローズ!」
デュランダルを落として倒れるローズ。
オレは慌ててローズとニードルウッドの間に体を割り込ませた。
バチンッ!
「いってえな、クソがッ!」
床に落ちたデュランダルをなんとか掴み、オレはニードルウッドに斬りつけた。
ニードルウッドは消滅し、さらにデュランダルが持つHP吸収スキルのおかげでオレの体からは痛みが引いていく。
「ローズ!」
「う……ううー……」
オレは半ばべそをかくローズに駆け寄り、その体を抱き寄せた。
失敗した。
原作で出てきたヒロイン達は、全員が最初から戦う覚悟を持っていた。だからローズもそうだろうと無意識に思っていた。
だがそんなはずがない。盗賊に囚われていたのだ。戦う気持ちは、その時に折られたに決まっている。
なのに、オレがローズに無理をさせてしまい、怪我を負わせた。
オレのせいだ。
「ごめん……ごめんな……」
「うぅ……申し訳ありません……」
「いいんだ」
オレ達はしばらく互いの体を抱きしめていた。
ローズに戦わせない事を改めて約束し、オレは先頭に立ち続けた。
分かれ道の度にローズはクンクンと匂いを確認し、魔物のいる方へ案内してくれる。
それだけで十分助かる。試しに自分でも嗅いでみたが、魔物の匂いは全くわからなかった。狼人族の鼻は本当に犬並みらしい。
……まあ原作の狼人族さんは、いちいち嗅いでいるような描写はなかったと思う。ノータイムで敵の方向を当てていた。あの回避盾のヒロインさんは、嗅覚もチートだったんだな。
見つけては斬る、見つけては斬るの作業を繰り返す。
やがてドロップのブランチでオレたちの鞄はいっぱいになった。
「だいぶ狩ったなあ……」
「そうですね……」
数分に1回は戦ったと思う。多分百には届かないが、七十は超えたろう。
いやー疲れた。
精神的にもだし、肉体的にも。なにせ午後いっぱいはずっと迷宮で戦った。
デュランダルで体力も回復してくれれば良かったのだが、どうやらHP吸収のスキルはそこまではしてくれないらしい。
とはいえだいぶ稼いだ。レベルは村人が5、英雄が2、探索者が3だ。
これで戦士と剣士、商人は解放された。あとは……。
「よし。あと少しだけ付き合ってくれ」
「はい、ユウ様」
ボーナスポイントを操作して、武器6から5へ。さらにジョブを変えて戦士と剣士も追加。詠唱省略をチェック。余ったポイントは腕力に。
「魔物はこちらのようです」
ローズの案内で、ニードルウッドに遭遇した。
今日、何度もやったように、まずは接近して一太刀。
「えっ」
ローズが驚きの声を上げる。なぜなら、ニードルウッドが生き残っていたから。
今まで一太刀で倒していたニードルウッドだが、武器の性能を落としたせいで一撃では倒せないのだ。
だが、今はそれこそが狙い。
ニードルウッドの反撃がオレの顔を激しく叩く。
痛みに怯みそうになるが、オレは剣を手放し、素手で殴りかかる。
ラッシュ、スラッシュ!
心の中で唱えた二つのスキルがオレのMPをガリガリと削る。こりゃ今は4回くらいしか使えないな。なんとかそれまでに倒れてくれるといいんだが。
バチン!
ニードルウッドの反撃がまたさらにオレの体を痛めつける。
「ユウ様!!」
ローズから悲鳴が上がる。
まあ自分の主が、突然剣を手放して殴り合いを始めればそうもなるか。
だが必要だからな。
ラッシュ、スラッシュ!
渾身のボディブローがニードルウッドに決まると、それでニードルウッドは煙のように消え失せた。
「ユウ様……! なぜあんな事を……」
戦いが終わり、ローズが近づいてくる。
「必要な事だったからな」
オレはキャラクター再設定画面を操作し、ジョブを変更した。
「手当て」
「えっ……痛みが……」
「僧侶のジョブの取得条件は、素手で魔物を倒す事だ。覚えておくといいぞ」
ローズは驚いて言葉を失ったのか、口をパクパクさせている。
デュランダルで回復したオレと違い、ローズは殴られた痛みを抱えたままだった。ローズを回復させるためには、どうしても僧侶のジョブが必要だった。
「私の、ため……?」
「元々はオレのミスだし、そもそも僧侶の取得は最初から考えていた。ローズのためというわけでもないな」
「……ありがとうございます」
チュッ。
ローズとオレはキスをした。