天真爛漫なハーフエルフ姫との入れ替わり 作:おくらいりーOh9lawinー
留学生に、やんごとなき身分の女子がいる。
初めての、妖精国からの留学生である。外国どころか異世界からの初の留学生に、てんやわんやになっている。耳が尖り、絶世の美女というのはまさしくファンタジーの中のエルフそのものだ。影のように片時も離れない、マントやケープをつけた年嵩のエルフが二人控えているので、クラスメイトの多くは遠巻きに眺めるばかりなのだが、肝心の本人はと言うと親しみやすく、ひょい、と顔を出しては積極的にクラスの男女に関わっていくものだから、距離感をぶっ壊されている連中をあちこちで見かける。
女子は女子で、同性らしくそのキャラが「ホンモノ」だとわかるのか、男子からこの絶滅危惧の天真爛漫お嬢様を守らねばと鼻息を荒くしている。
とはいえ、元から関わりの薄い僕には関係のない話である。
昼休み、屋上に向かう僕を、風のように通り過ぎた留学生のエレン。突き飛ばされたわけでもないのに、僕の体は一瞬バランスを崩した。振り返った彼女が目を丸くする。
「あっ!」
エレンがその場でくるりと回り、宙を舞う僕の方へと手を伸ばす。エレン様、と護衛の2人が悲鳴のような声を上げる。
待て、面倒事はごめんだ、なんて思うまもなく僕は踊り場の方に落ちていき、びたん、とサカナのように叩きつけられる。
「やれやれ」
身を起こすより早く、今度はエレン本人が降ってきて、僕の頭にヘッドバッドを繰り出した。衝撃と共に、目の前が真っ暗になる。
「だからっ、私が本物のエレンなのっ」
「そう言われても」
「さっきまでの話、聞いてたでしょ?それとも、まだあなたの恥ずかしいエピソードを披露しないと納得してくれない?」
保健室で目を覚ました。体のあちこちがまだ痛い。いてて、と声を上げながら起き上がると、おろおろとしていた護衛の一人がホッとしてこちらを見下ろした。
「エレン様が目を覚まされたぞ!」
「えっ!?」
「だから、エレンは私!」
顔を上げる。ぷっと頬を膨らませていじける、なよなよとした「僕」がいた。
「……は?」
「エレン様、ですよね?失礼ながら、あちらの殿方が、自分こそがエレンであるとおっしゃられて……一笑に付すには少々、気がかりなことをおっしゃられるもので……」
「……僕、え?エレン様って?」
「あっ、目を覚ましたんだね!」
ずずい、と僕がこちらに身を乗り出してくる。こちらの手をキュッと握り込んで、ふふっと笑う。
「わあ、鏡を見てるみたい!私が目の前にいるだなんて!えーと、君の名前は……豊崎くん、だよね!?」
「……ええと、はい」
護衛の二人が息を呑み、顔を見合わせた。
エルフのやんごとなき身分のお嬢様、人間一般ピープルと入れ替わる。
このセンセーショナルな出来事は両政府に激震を走らせたが、それでも一応、内々に済ませてくれたらしかった。
「とんでもないことをしてくれましたね」
苦り切った外交官の顔を今でも思い出せる。
「階段から落ちたのは僕のせいじゃないですよ」
「だとしても、です。彼女は傍系とはいえ王室の一員ですよ」
「はあ」
僕は庶民である。そのへんの話は全く分からない。
「ふふふ、ドキドキしちゃうね!」
ただ一人事情を知っているらしいエレンお嬢様が、僕の手を包み込み、エスコートしてくれる。あれよあれよという間に、僕は人間世界に国交を開く判断をしたとかいう、現国王の前に担ぎ出される。
その場からはこちら、日本側の人間が完全に締め出され、どこを見てもエルフ、エルフ、エルフ、である。
ただ、少し気になることがあって、エレンとそのボディーガードたち、そしてその周囲にいるエルフたちは耳が、少しばかり短い。
「その、僕は一体どうすれば……」
「豊崎さん、と言いましたね。豊崎マモルさん」
「はい」
名前を呼ばれて頷く。国王は、少し目を伏せたあと、なんだか同情的な視線をこちらに向けてきた。
「……あなたには、世継ぎを生んでもらいます」
「はい?」
むっふー、と楽しそうに息を漏らすエレンが、妙に張り切っている。
「元々我々エルフは長寿であり、閉鎖的な民族です。ゆえに国内も純血派とでも言うべき勢力が大きい」
ただ、そのエルフたちの異世界では過去、魔王と呼ばれる存在に立ち向かい、これを討伐した異端児のエルフがいたらしい。
エルフだけでなく、各種族の総力戦となった戦いに選び出された当時の跳ねっ返りのエルフは、そのまま勇者と子を成して、ハーフエルフという新たな民族を生み出した。
「ハーフエルフの祖となった彼女を仰ぐのは、なにもハーフエルフ自身だけではありません。純血派ですら彼女たちの血をつなぐことを求めている」
「……つまり?」
「私は子供を産んで、ハーフエルフの血を絶やさないようにしないといけないの!」
キラキラお目目で、エレンが言う。
「異世界からやってきた勇者が、どの世界からやってきたのか。当時の召喚術の資料から座標を見定め、最も近しい世界を洗い出し、そこから婿を迎えるつもりでした。」
「それは……えっと、エレンさんの役目ですよね……?」
「今はあなたがエレンですから……」
つまり、なんだ。
僕は子をなすためだけに生かされているような王室の傍系の女の子の体になってしまったので、このまま子供を作りなさい、と?
「あの、僕は男なんですけど」
「あなたの事情を慮って、せめて相手は元の体のあなたである、エレンをつけます。その方が我々としても、エレンをそのまま王室に戻せるのでありがたいのです」
「あの、僕の意志は?」
「これは政治ですからね。ある程度、人権は無視されても仕方がありません」
「王室側としてはそうかも知れませんが……」
僕の意志。という言葉を、その場にいる誰もが黙殺していた。何処からか拍手が響き出し、エレンが僕の腕を取る。
「大丈夫!公務も何もかも、私が全部やれるよ!」
「いや、僕の意志」
「あのおてんばなお嬢様が、このように年相応の落ち着きをもって、おしとやかにされている姿を見られるとは……わたくしはうれしゅうございます」
「僕の意志」
ひょい、と抱え上げられ、僕はエレンにそのまま引っ張り出されてしまった。
「あの、僕のい」
ぐちゅ、と音を立てて唇と唇が重なった。ふっふっふー、と楽しそうに笑うエレン。瞳にはイタズラっ子のような笑みが浮かんでいる。
和服に似たドレスの、重ねた部分がはぎ取られる。ふくよかな胸に引っかかって、かろうじて乳首が隠れている状態である。エレンが手を突っ込むと同時に、ぐにゃりぐにゃりと指に力を込め、胸をもみほぐしていく。ぺたん、と尻もちをついた形の僕は、時々触れられる敏感な箇所についつい腰砕けになる。体の芯が溶けていくような錯覚があって、股間のあたりから、とろとろ、と体が水のようにゆらぐ。
「マモルくん、でいいよね?君、とってもステキ」
唇を奪いながら、情欲に瞳を輝かせたエレンが言う。
「こんなに可愛い私、見たことないもん」
尻もちをついても体を支えられなくて、とうとうそのまま腰を突き出すようにして、床に手をついた。慌てて立ち上がろうとする僕の体にエレンが抱きついてきたかと思えば、そのままゆっくりとベッドの方に押し倒される。そっと払いのけるように足を開かされ、足と足の間に体が滑り込んでくる。
かわいい、とってもかわいい!とエレンが興奮した声で叫ぶ。
「僕は……」
「えいっ」
えいっ、なんて可愛らしいものではなかった。突き刺さったペニスが、男を知らずにぴっちりと閉じきっていた女の子としての入り口に殺到していた。槍で穴を開けるように、ぐり、ぐり、とペニスがねじ込まれる。寄りかかっていた程度だったエレンが、今完全に僕の方にのしかかっていた。首筋に顔を埋めて、腰だけ別の生き物のようにくねらせては奥へ奥へと進んでいく。どこまで入っちゃうのかなあ、なんて楽しそうな声が聞こえる。
一体僕は何をして、何をされているのだろう。現実感がなければ、喪失感もなかった。かわいい、かわいいと、今まで聞いたことのないほめ殺しに戸惑っていた。かつて見たことがないくらいに、エレンは生き生きとしていた。
熱心に打ち込む武芸への情熱を否定されることもなく、立ちションのような気軽さを味わうことができて、よそ行きの笑みを貼り付けてじっとしていることも、もうせずに済む。
そんなことを言いながら、エレンは僕の体を貪っている。いろいろと、相手方の事情を勝手に押し付けられた状態でありながら、僕は必要とされているんだろうか、とふと考えるようになる。半裸になって、股間をぬらして、スウスウとする肌であられもない姿をさらしながら、それを褒めてくれる人がいる。満たしてくれる人がいる。自分が塗り替えられてしまう錯覚とは、このようなことを言うのだろうか。
気がつけば、女としてエレンを求めている。ハグを求め、しっかりと腕に抱かれるのが心地よい。股間を突き上げられているのは御愛嬌というものか。
「ホントに愛してくれる?」
「そうだよっ」
「必要としてくれる?」
「もちろんっ」
それなら、と、僕はおずおずと唇を近づける。エレンが間髪入れずに唇を奪った。ヌメヌメとした唾液が、この体の中に流れ込んでくる。
「赤ちゃん、産もうねっ!」
エレンがはしゃいだ声で言った。髪を梳かれて、僕はとうとう、女として絶頂した。どく、どく…と熱い鼓動に合わせて上下するお腹、ちょうど子宮のあたりを、エレンが優しく撫で回していた。