天真爛漫なハーフエルフ姫との入れ替わり 作:おくらいりーOh9lawinー
エルフたちには欠点なものと言うか、苦手なものがある。本当に?と信じてもらえないかもしれないが、少なくとも、エルフの血を引く者たちは皆その傾向にあるようだ。
というのは、書類仕事である。
人間が人間の政治や社会しか持ち得ないのであれば、エルフらもまたエルフらの政治や社会しか持ち得ないのだ、とでも言うべきか。
もっと俗っぽく言えば、エルフたちは恐ろしく「締め切り」というやつに弱い。本人たちの時間感覚からすればあまりにも短すぎる上に、「美的感覚に欠ける」契約書の類は彼女たちの天敵なのである。
それは、ハーフとはいえエルフの血を引くエレンにも同様らしい。
「ヤダ!やだやだやだやだ!もういい!公務飽きた!書類仕事飽きたっ!」
立派な木材を切り出して造られた執務机に山積みにされた書類を前に、エレンがジタバタと暴れる。護衛兼秘書、というかお目付け役(侍従頭とでも言うのだろうか)が呆れたように首を振る。
「殿下、大事なお仕事ですよ」
「やだもん!提出期限が二週間しかない公文書なんて、死んじゃうよっ!」
ねっ、と話を振られて、僕はこめかみを押さえる。
「……公務は全部してあげる、と仰った方を、僕はよーく覚えてるんですが?」
「でもでもっ!まさかキミの体のサインが通用しないなんて思わないじゃない!」
エレンの言う通り、二人の体が入れ替わった状態でサインをしようものなら、筆跡は当然体に引っ張られてしまうわけで。
僕はハンコで決済できない書類にエレンの筆跡でサインするべく同じ部屋に待機させられているというわけである。筆跡の偽造?まさか。
「ねぇ、マモル〜、エッチしよ?」
エレンが目をうるうるさせながらとんでもないことを言い出した。
「エレン様」
「だってだって!私三枚も書類を片付けたんだよ!?ご褒美ないと動けない!」
それに世継ぎを残すのだって公務でしょ!とエレンは胸を張る。
「ねえマモルってば、おねがい?」
「……殿下はこんな風に仰ってますが?」
「いけません。伴侶となる方は、時に殿下に厳しく接していただきたく存じます」
「この裏切りもの!」
エレンがぷっ、と頬を膨らませるが、僕らは涼しい顔で見なかったことにする。
だって僕の体では、驚くほどその仕草は似合っていないのである。
「それに、二週間で提出しないといけない書類を片付けないといけない、と言う割に、殿下が僕を求める頻度、早すぎませんか?」
「マモルの体が悪いんだもん!」
「僕も男だったんですけど、そこまで早くないかなって」
書類を一枚終える。体をねだられて押し倒される。公務の再開まで一時間の休憩。それからまた一枚終えて、僕はようやく身につけた服を剥ぎ取られる始末である。
やってられるか、とも言いたくなる。
「マモルだって気持ちいいでしょ!?女の子の快感は男の子の数倍って聞くよ?」
「僕、そもそも童貞のまま女の子になっちゃったんで」
「この裏切り者!そんなこと言うなら私の体返しなさい!」
私だって女の悦びを味わう前に体を取られちゃった!と言い始めるエレン。もう完全に駄々っ子モードである。
ずずいっ、とこちらに寄ってきたエレンは、そのまま僕のスカート越しに執拗に太ももを撫でる。流石にこれは王室の人間でも、というより王室の人間だったらなおさらアウトなのではなかろうか。
「えっちしよっ?」
「いやです」
「セックス……しよ?」
「だめです」
「アンナには聞いてませんっ」
すりすり、すりすり、と愛撫がさらに強くなる。ぎゅー、などと言いながら、エレンが僕の胸元に顔を埋めて、ぐりぐりと顔を押し付けてくる。ふんすふんす、と鼻息も荒い。
「で、ん、か?」
「いたっ」
元男なので、急所もよく知っている。ズボン越しにぐりっ、とつねると、へっぴり腰になる。
でも逃げ出さないあたり、本気でこのお姫様は性欲にコントロールを奪われてしまっている。
「でもたまには、マモルからもこっちを求めてほしいなー……」
ちらっ、ちらっ、と声に出しながらこちらを流し目で見つめてくる。どんだけわがままなんですか、とも言いたくなるが、それが彼女の魅力でもあると思わされるあたり僕も十分手遅れである。
仕方ない。いつものように押し倒されたふりでゆっくりと倒れるべきだろうか。彼女に体重をかけるべきかそれとも、女子らしくエスコートを待つべきか、逡巡する。
アンナが、大きな、わざとらしいため息をついた。
「マモル様。はい、あーん」
「え?あ、あーん……?」
反射的に開いた口に、ぴっと丸薬が飛び込んでくる。飲み込むと言うよりも、口に入った瞬間から溶け出した。
その瞬間、体が燃え上がるように熱くなった。頭がクラクラっとして、咄嗟にエレンの方に抱きつく。すう、と空気を吸い込もうとして、鼻腔をオスのニオイが突いた。僕の下半身がいきなり腰砕けになった。融け始めた、とでも言うべき錯覚に、僕は体の疼きを抑えられなくなる。
「ちょ、マモルーーっ」
エレンが慌てて僕を抱き寄せて、自分の体を盾にする。僕は容赦なく、彼女ーー否、彼の体を押し倒す。噛みつくように唇を奪って、貪る。はあ、はあ、と熱い吐息を相手の口の中に送り込む。
「ちょっと、マモルに何したの!?」
「媚薬を飲んでいただきました」
「媚薬ぅ!?」
「エルフにしか効かない、本人の意志にかかわらず世継ぎを生まねばならない方に飲んでいただくように作られた、王室秘伝の薬です」
「ちょっと、なんでそんなものをーー」
「これでマモル様は何度でも、エレン様のお求めに応じてくださるかと」
「なんか違う!命の危険を感じるっ!」
「エレン……」
声がおかしい。ささやくような声しか出てこない。僕はまた、彼女の唇を奪った。目を白黒させる彼女が、かわいい。
「もう、ガマンできない……っ」
「マモル待って!待ってぇ!」
「もうこんなに……はちきれるくらいに大きくしてるくせにぃ」
「ごめんなさい私が悪かったから!私が悪かったからそのゾワゾワする声でささやくのやめてっ」
思えば僕がエレンを押し倒すのは初めてなんじゃなかろうか。体を跨いだ状態で馬乗りになり、ズボンとパンツを引きずり下ろす。ぶるん、とそそり立つそれを、股間にあてがって、ゆっくりと腰を沈める。
入れる前から、体は溶けていた。そこに新たな刺激が交わる。ぞくぞくぞくっ、と背筋を快楽が駆け上っていく。ああっ、と自分でもエロいなと思う喘ぎ声が漏れた。バスローブかと突っ込みたくなるくらいゆったりとした、エレンに着るようによくよく言い聞かされている自分の服の中に手を突っ込んで、ブラの下から自分の胸をもみしだく。
そんな必要さえなかった。足で腰をがっちりホールドした上で、がむしゃらに体を上下させる。僕の唾液が、びちゃっ、びちゃっと、エレンの方に降りかかるのが見える。股間はおもらししたように洪水になっていて、繋がっている今もエレンの股間を、僕の体液がびしゃびしゃと濡らしていた。
エレンがこちらの肩を掴んで、ぐぐぐっ、と距離を取ろうとする。
「ちょ、出ちゃう出ちゃう出ちゃうから!気持ちいいけどいったんストップーー!」
「ふぅん……もう、僕のことなんていらないんだ?」
「そうじゃないのぉ!」
「エレンのいじわる。やっぱり僕のことなんか体だけの関係なんだ」
言っていて悲しくなった。悲しくなったから、体がきゅうっと縮こまった。うっ、とエレンが僕の体をタップしたが、時すでに遅く、彼女は僕の中に射精していた。体の中で、エレンのそれがどんどん萎えていくのが分かる。
「……アンナ」
「はっ」
「この方にエリクサーを打ってあげて。私が満足するまで、ぜぇったい寝かせてあげないもん」
「もちろんです、エレン様」
「ちょっ、エレンは私!私だからねアンナ!」
「ちんぽでものを考えるお猿さんなど知りません。私のエレン様はおしとやかなお嬢様です」
「そりゃ最近は公の場に出しても十分それっぽく振る舞えるように教え込んでるのは知ってたけどぉ!」
「同じ女として、私はマモル様の味方なので……」
「女の子は私っ!私のほうだからっ!」
あんまりだよぉ!と嘆くエレンの首筋に、スチャッと注射器が当てられる。体を万全の状態にするエリクサーが惜しげもなく注ぎ込まれ、体が全快するのと同時に、本能が刺激されて、子をなすための準備が即座になされる。こちらが飲まされたのが媚薬なら、こっちは滋養強壮ドリンクだろうか。二人して、股間だけ蠢かせて、互いに潤んだ瞳で見つめ合う。
「ああもうっ、ゼッタイ、孕ませてやるんだからっ」
エレンがこちらの腰を掴んで、自分の腰を突き上げる。ばちゅ、ばちゅっ、ばちゅっ、と肉と肉がぶつかり合う音と、精液と愛液が混じり合う音が一緒になって耳に飛び込んでくる。
「搾り取ってやるっ」
「孕ませてやるっ」
「似合いのカップルですね、貴方がた」
呆れたようなアンナの声をよそに、僕らは獣のように互いを貪り合っていた。