※この作品はR-18です。

対魔忍ユキカゼ 傀雷の純愛   作:楠崎 龍照

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注意、必ずお読みください。
この世界に秋山達郎はいません。


1話 対魔忍ユキカゼ 傀雷の純愛 プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

五車学園。

言わずとも分かるだろう。

五車町にある対魔忍養成学校。

校長に対魔忍総隊長・井河アサギを始め、現役の対魔忍が任務の合間に教師として務めている。

 

今は朝のホームルーム。

学生対魔忍たちは自分の席に座り、担任の教師の話を聞いていた。

担任の教師は連絡事項、今週の目標などを話した後、「転入生を紹介する。入ってくれ」と言った。

 

「……」

 

扉の奥から今日から担任となる教師の声が聞こえ、私は一呼吸をしてから扉を開けた。

男女の視線がまるで紫外線のように空から降り注ぐような感覚だ。

壇上へと歩む私だが、その瞬間は数分の出来事にすら感じられた。

私は、腕を組み、視線をこちらに向いていない女の子に気づいた。

日焼けした健康的な小麦色の肌に薄紫色の瞳、茶色にわずかな赤みを帯び、高い位置で結ばれたツインテールから細いリボンが尾を引いている。

胸は……小さい。

 

「(あの人が……)」

 

水城ゆきかぜ。

雷を操る次世代エースと称され、同学年はおろか、対魔忍の中で知らない者はいない。

怪物クラスの強さを有していると担任になる教師は言っていた。

 

「本日付で転入した星埼 龍樹だ。対魔忍としての実戦経験は少ないものの、優秀な訓練成績を持っている」

 

担任の横に立った私に、彼はそう告げた後、「星埼、自己紹介を」と促した。

私は改めて姿勢を正し、視線の集まる中で自己紹介を始めた。

 

「はじめまして、星埼龍樹です。忍法は儡遁で、異形な人形を4枚まで操ることのできる忍法です。頑張れば、相手の動きも操ることができます。趣味は散歩と安いお菓子を食べながらコーヒーを嗜むことです。よろしくお願いします」

 

私は自己紹介を終えてお辞儀をした。

するとクラスメイトたちも座ったままぺこりとお辞儀を返してくれる。

チラリとゆきかぜの方を見たが、彼女は視線すら寄越さない。

だが、次に教師が言った一言で空気は一変する。

 

「今後の任務効率を考慮し、星埼 龍樹は水城とバディを組んでもらう」

 

海で遊んでいる最中に遠くから稲光と雷鳴が起きた時のように、教室のガヤガヤが一瞬にして消滅した。

ゆきかぜは初めてこちらを見る。

雷を操る能力を持っている人物とは思えない冷たすぎる目線。

 

「……は?」

 

眉を顰め、凍てつく一言。

 

「なんで私が」

 

誰がどう見てもあからさまな不満な表情と言葉を漏らすゆきかぜ。

雷に睨まれているような感覚に襲われる。

だが、教師は一切として動じることなく、「実力が拮抗しているからだ。競わせるより、組ませる方が早い」とピシャリと言い放つ。

 

「……」

 

彼女は舌打ちこそしなかったが、明らかに納得していない。

私はゆきかぜの方を見て、なるべく笑顔でお辞儀をした。

 

「これからよろしく、ゆきかぜさん」

「馴れ馴れしい。苗字で呼んで」

「あ、はい。これからよろしくお願いします、水城さん」

 

私の脳に雷が落ち、それに対して私は再びお辞儀をして即答する。

その様子を見ていたクラスメイトたちは「ふふ」や「んふっ」と小さな笑いを漏らした。

 

「……」

 

だが、彼女はそれを一瞥で沈黙させた。

再び、俺を見る。

 

「足、引っ張らないでよ」

 

彼女はムスッとした表情で言い放つ。

それに対して私は「ええ、なるべく善処するよ」と言った。

 

「善処じゃ困るの」

 

ゆきかぜはピシャリと言い切る。

その瞳の奥に、ほんの僅かな苛立ちがある。

何となく一人で戦うことに慣れすぎた者の目であると感じた私はそれ以上何も言わなかった。

教師も少しため息をつき、「星埼は1番奥の廊下側の空いてる席を使え」と言った。

 

「分かりました」

 

私は、もう一度クラスメイトになる人々に軽く一礼をしてから、教師に言われた空いている席へと向かう。

水城さんの横を通り過ぎようとした瞬間、声が落ちる。

 

「勘違いしないで」

 

水城さんの一言に私は足を止めて、彼女の方を見た。

 

「バディって言っても、私は私の戦い方をする。合わせられないなら、置いていくから」

 

サッとこちらの方を振り向く水城さん。

挑戦的な表情と視線が私の全身を貫く。

稲妻の前の静電気のような感覚が私の全身に走る。

……ゆきかぜに睨まれたオークたちの気持ちを理解しつつ、私は彼女に「置いていかれない程度には、どうにかして走りますよ」と返答する。

 

私がその言葉を口にした時、ほんの一瞬だけ彼女の目が細まった。

断じて笑ったわけではないのだが、完全に無関心でもなくなった。

と、言うべきだろうか?

 

「……精々ついてきなさい」

 

水城さんは一瞬の沈黙の後、視線を黒板へと向け直しながら言い切った。

雷が落ちた直後の緊張感がホームルームが終わった教室に残る。

五車学園に来て早々えらいことになったものだ。

私はこれから起きるであろう、クソ気まずい光景を想像して心の中でため息をついた。

 

 

 

─翌日─

 

 

何となく想像はしていたが、次の日に早速、五車学園の地下にある作戦会議室に呼び出される。

私が到着した時には既に水城さんが対魔忍スーツを着た状態で待っていた。

黒を基調とした光沢のあるボディラインが浮き出た対魔忍スーツだ。

他には赤のフリルやファーの装飾が入り、少女っぽさのオシャレを感じさせる印象がある。

ぶっちゃけた話、クソエロい。

そんなことを思ってる中で作戦会議が始まる。

薄暗い室内に煌々と光を放つ巨大なスクリーンがあり、その画面に映るのは廃ビルと思われる内部構造の地図。

 

「この廃ビルに淫魔で構成された犯罪グループがいると綴木からの報告を受けた。星埼と水城には、淫魔の殲滅をしてもらう」

 

教師は淡々と説明をする。

作戦会議のこの空気……教室とは180度違う、この空気感に私は額から脂汗を流した。

チラッと隣に立つ水城さんの方を見たが、彼女は腕を組んだまま、無表情で資料を見ている。

 

「以上だ。質問は?」

 

作戦の説明を終えた教師は2人の顔を見てから、少し強く問いかける。

それに対して私は「ありません」と一言。

水城さんは無言だ。

2人の反応を確認した教師は「よし。出動だ。無事に戻ってこい」と言い放つ。

 

私たちは「「了解」」と言って廊下へ出る。

長い廊下を歩き、エレベーターで上がり、下足室まで向かう中で、いつの間にか歩幅が揃っていた。

しかし、会話はない。

コツコツと耳障りの良い靴の音が聞こえるのみだ。

しかし、下足室に着くあたりで彼女が口を開いた。

 

「足手まといになるくらいなら、後方で観測してて」

「あー……前に出るな、と?」

「言わせないで」

 

私の問いに視線は前を向いたまま言った。

冷たい声だ。

私は今回の任務大丈夫か?

と少し不安に感じながらも「了解。水城さんの足を引っ張らないように、後方から援護するよ」と言った。

 

「……邪魔したら容赦しないからね?」

 

水城さんは全身に雷を走らせてこちらを見た。

 

「あぁ、その時は遠慮なく私に雷を落としてくれ」

 

私は平然とした態度で彼女に言った。

水城さんはそれに対して何も言わずにヘリコプターへと乗り込んだ。

 

 

─都内某所 廃ビル─

 

 

目的の場所である廃ビルに潜入する2人。

中は鉄と埃の臭いに混じって、どこか重い甘さの匂いが鼻を突く。

 

「……臭いわね」

 

水城さんが眉をひそめる。

私もそれには同意した。

 

何なんだこの重く伸し掛る甘臭は……。

キャラメル1tを密閉空間で1年間煮詰め続けたような地獄と表現しても問題のない匂い。

頭がクラクラする。

私が左目を閉じてこめかみを手でグリグリしていると、水城さんの指先で雷が微かに弾ける。

 

「いる」

 

彼女のその言葉を聞き逃さなかった私は、この気持ち悪さを振り払って、言われた通りバックステップで彼女から離れる。

次の瞬間。

天井から黒い影が落ちた。

 

「ふふ……あらあら彼氏連れの雌豚ちゃんが来たわね」

 

女の形をした淫魔が姿を現した。

紫の瞳が妖しく細め、不敵な笑みを浮かべる。

それに対して水城さんはライトニングシューターを構え、即座に攻撃に出た。

 

「うるさい」

 

─迅電─

 

ホーミング性のある雷弾が銃口から発射されて淫魔の方へと飛んでいく。

しかし、淫魔の微笑みは止まらない。

 

「強い子ほど、壊しがいがあるのよ」

 

甘い声がした次の瞬間────。

空気がムンっと重くなる。

鼻腔を刺す、濃密な匂い。

水城さんもそれに気づき、ホーミングする雷弾が乱れて淫魔から逸れた。

 

「っ……!」

 

一瞬。

本当に一瞬。

水城さんの呼吸が浅くなった。

それを見た淫魔は、クククッと喉をならして笑った。

 

「ほら、もう反応してる」

 

また先程の攻撃をしようする事を察した水城さんは次の手を打とうとした。

だが、その必要は無かった。

淫魔は突如として現れた異形な存在によって吹き飛ばされた。

 

「ぐぎゃっ!?」

 

先程とはうって変わって情けない声をあげる淫魔。

水城はバッと後ろを振り向く。

彼女の視界に映るのは、星埼の周囲に三体の異形な存在がおり、彼の指1本1本から紫色の糸が異形の存在と繋がっている光景だ。

正に人形術師というべきだろう。

 

彼の操る人形も人型に近いが、明確な首が存在せず、上半身が極端に肥大化し、下半身はやや細い、正に異形な存在としか言いようない風貌をしていた。

 

「言われた通り、援護しますよ。水城さん」

 

笑顔で彼女に言った。

流石の水城もこれには感謝を述べようと口を開こうとする。

しかし、先程の音に誘われた淫魔が大勢現れた。

 

水城さんは二丁拳銃を構える。

私は指を不規則に動かして異形な存在(以下、異人形とする)を水城さんの後方に立たせて、死角を無くした。

 

「さっきはありがとう」

「お気になさらず、早く終わらせましょう」

 

襲い来る淫魔に私と水城さんは全力で迎え撃った。

数分後、廃ビルが淫魔たちの墓地に様変わりする。

次世代のエースである水城ゆきかぜ、彼女のバディ相手に選ばれた星埼 龍樹。

対峙する淫魔が淫魔神なら敗北は有り得ただろうが、所詮は野良淫魔の集まり。

負けるはずが無かった。

先程の甘い匂いに包まれた空間からは想像もつかない焦げた臭いが廃ビル中に充満していた。

 

「さっ、任務完了ね。帰るわよ」

 

水城さんはそう口にして出口へと向かう。

私も「了解です」と言って水城さんの斜め後ろを歩く。

 

「……ゆ、だん……したな……!!」

 

私の背筋に悪寒が駆け巡り、後ろを振り返った。

振り返ったその視界には、生き残った淫魔が手のひらから真紫の弾を水城さん目掛けて解き放とうとしていた。

 

「っ!? 水城!!」

 

考えるより先に、身体が動いた。

大声をあげて彼女を庇うように出る。

異人形を出す暇は無かった。

真紫の弾は私に直撃する。

 

「っっっっっっ!!?」

 

視界が白く弾けた。

全身が甘く熱い。

 

「は、ざま……みろ……!」

 

淫魔は絞り出すような声を出し、バタリと力尽きた。

 

「あ、あんた、なんで……!?」

 

水城さんの驚く声が微かに耳に入るがそれどころではない。

身体が熱く、股間が酷くムズムズする。

抑え込もうとしても、衝動が波のように押し寄せる。

 

「なんで庇うような事をしたのよ!?」

 

辛うじて聞こえた水城さんの大声に私は必死に返事をした。

 

「ば、ばでぃ……だから……! これから……ばでぃ……!!」

 

絞り出した言葉を聞いた水城さんは「バカ!」と一言。

怒っているのか、震えているのか分からない。

 

「す、すまん……しょり……してくる……!!」

 

私は震える身体にむち打ち、今すぐにでも水城さんを犯したい衝動に駆られつつも、彼女の顔を何がなんでも見ないで廃ビルの奥へと向かおうとする。

 

「……ほんと、バカ」

 

その様子を見た水城は小さく呟いた後、何かを決めたように私の肩を掴む。

そして、くるりと水城さんの方に向かせた。

私は必死に視界を映さないように視線を斜め上へと向ける。

 

「私のせいでこうなったから、手伝ってあげるわよ……!」

 

水城さんは少し低めの声で呟く。

困惑して言葉が詰まる私を無視して、「バディなんだから」と水城さんは零す。

 

「私の身体で処理しなさい……!!」

 

水城さんは吐き捨てた。

 

 

 

 

続く

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