※この作品はR-18です。

美容スキルでクラスの女の子を可愛くしたい【4/1第1巻発売】   作:pelca

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第一章
第1話 ギフト『美容』


 世界にダンジョンが出現し、人類に『ギフト』と呼ばれる特別な才能が宿るようになってから既に三十年。冒険者という職業ができ、ダンジョンに存在する魔物を討伐したり、中にあるお宝――アイテムを求めるようになった現代。

 

 まだ、生ぬるい風が残る秋の季節に高校一年生の高梨弘世は、この日、冒険者ギルドを訪れていた。

 

 十六歳の誕生日を迎えると『鑑定』のギフトを持つギルド職員より、自分の持っている『ギフト』を知ることができる資格を得られる。

 

 弘世は今日、自分が授かったギフトを知るために冒険者ギルドの敷居を跨いだのだ。

 

 

「——高梨弘世さん、あなたのギフトは『美容』です」

「…………え?」

 

 

 弘世が告げられたのは戦闘の役に立たない『美容』のギフトだった。

 

『鑑定』を行ってくれたのは、冒険者ギルド職員の女性——冬月沙織。

 

 二十代前半見える彼女は茶髪ロングの髪を花のバレッタでまとめ、百七十センチの弘世より少しばかり低いが女性にしては高身長。スーツに収まっているその胸はぱつんぱつんで目に毒だ。

 

「ご安心してください。この情報はギルドで共有されるわけではありません。私にも守秘義務が課されており、当人の許可なく外に漏らせば処罰、もしくは犯罪者として捕らえられてしまいます」

「そ、そうですか……」

 

 淡々と説明する冬月だったが、弘世の顔色は悪い。それもそうだ。冒険者を目指していたのに、全く戦闘向きではないギフトを授かってしまったのだから。

 

 ダンジョンに挑むには資格がいる。どんなに弱いギフトであっても、戦闘系のギフトを授かること。『水鉄砲』や『スリップ』や『猫パンチ』なるギフトでも問題ない。それがギルドに認められればダンジョンに入る許可が出るのだ。

 

「ギルドの規約に照らし合わせると、高梨様のギフトでは冒険者の資格は得られません……残念ですが」

「はい……」

「ただ——それはとても重宝されるスキルとなるでしょう」

 

 うなだれる弘世。しかし、それを見てか急に声色を変えた冬月。

 先程までとは打って変わって体をもじもじさせ、キャリアウーマンを思わせる容姿なのにどこか態度がおかしくなっていた。

 

「今までに『美容』なるギフトを授かった事例はありません。高梨様は冒険者にはなれないかもしれませんが、あなたを求める人はきっといるでしょう——例えば私のように」

「え——?」

 

 冬月の言葉に顔を上げた弘世。冬月の顔を見ると優しく微笑んでいた。

 

「個人的なお願いはしてはいけないとは言われているのですが……今でなくても良いです。いつか高梨様が元気を取り戻した時、どうかあなたのギフトのスキルを私に使っていただけませんか?」

 

 おそらくギルドでの禁止事項に抵触するような言葉だったのだろう。

 しかし、どうしても我慢できなかったのか、冬月は自分の想いを弘世に告げた。

 

「最初は怖そうな人だと思っていましたけど、案外自分の欲求には素直なんですね」

「当たり前です。——女子は『美容』が大好きですから。恐らく私たち女子にとっては最強バフ効果のSランクギフトですよ」

 

 ギフトにランク付けなどされてはいないが、それほど貴重だという表現をした冬月。

 

「その言葉で少しだけ元気が出た気がします……」

 

 ただ、そう言われても今の弘世には、冬月にギフトを使おうとは微塵も思っていなかった。冒険者になれなかったショックがまだ大きいから。

 そしてどんなギフトを授かったのかは、誰にも言わないと決めた。

 

 昨日まで明るく話していた友人には顔向けできないが、冒険者にならなくても普通の生活は送れるのだから。

 

 

「わああああああ〜〜〜〜〜っ!!」

 

 ギルドから出ると、弘世は一人外で叫んだ。

 

「これからどうすれば良いんだよ……っ!」

 

 夢見ていた冒険者になれないとわかり、未来が暗闇に包まれた。

 期待していただけにショックも大きい。

 だから肩を落としてトボトボと家に帰るしかなかったのだ。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

「なあ弘世、ギフトどうだったよ?」

 

 翌日、学校に登校した弘世は、前の席の友人——葛原大和に声をかけられていた。

 

「はは、残念な結果だったよ」

「…………そっか。ま、元気だせよ! 俺だって戦闘向きのギフトじゃなかったんだからさ!」

 

 大和のギフトは『速読』。どんな本でもぱらっと捲るだけでその情報が全て頭に入るというもの。記憶力は変わらないのでもちろん忘れたりもするが、勉強にはうってつけのギフト。ただ、大和はギフトに頼らずに勉強を続けていた。弘世と同じく冒険者を夢見ていたが、すぐに切り替えて前向きになっていた。

 

「どんなギフトだったかは……」

「良いって良いって、その顔見ればわかるよ。言いたくないなら言わなくてさ!」

「お前って本当にいい奴だよな」

「まあ、お前の気持ちも少なからずわかるからな」

 

 同じく冒険者を目指していた友人として、これ以上ない言葉だった。

 

 

 そんな二人が会話しているのを遠目で見ていた女子生徒が一人いた。

 ギフトのスキルを発動させ、何かを感じ取っていたのだ。

 

「うそ…………っ」

 

 そしてスキルで見たものを理解し、その女子生徒はつい声を漏らした。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 放課後、弘世は一人で下校し、そのまま家へと帰る途中だった。

 

「——高梨くん、だよね?」

「えっ」

 

 弘世は突如声をかけられ驚いた。

 なぜなら、その相手がクラスメイトの林道ひびきだったらだ。

 

 ひびきは、クラスではカースト上位に君臨する女子の一人。

 高校に入学してから秋になる今まで一度も話しかけられたことはなかった相手だ。

 

 桃色の髪を肩まで伸ばしたボブヘアで目も大きくまつ毛も長い。シャツの上にはピンクのカーディガンをいつも羽織っている。さすがはカースト上位なだけあって美少女である。

 

 弘世はモテるわけではない。ただ普通の男子生徒でこれといって特徴がなかった。

 だから、女子から話しかけられることなんてないし、これからもなかっただろう。

 

「ちょっとついてきて」

「はっ!? えっ」

 

 急に腕を掴まれ、無理矢理に引っ張られていく弘世。

 ぐんぐんと歩き進めていくひびきに呆気に取られながらも、可愛い女子に手を引かれることを嬉しく思ってしまった弘世は拒否できなかった。

 

 そうして五分ほど。

 到着したのは——

 

「ここ、私の家。ほら入って」

「な、なんで!?」

「お願いっ! 私のお願いを聞いて!」

「えっ!?」

 

 初めて話した女子にいきなり家に連れてこられて驚く弘世。

 すると突然頭を下げはじめたひびき。

 

 その行為に驚き「わかったから、頭を上げて」と言う広世。結局、押しに負けてひびきの家に上がってしまった。

 

 初めて入る女子の部屋——しかも美少女の部屋ということに驚きを隠せない。

 家にはまだ家族は帰ってきていないようで、今は二人きりだとわかり、手汗がでてきてしまう。自分の部屋とは違い、ピンク中心の可愛いインテリアで揃えられており、何かの良い匂いが鼻腔をくすぐる。

 

「そこに座って?」

「う、うん……」

 

 中央にあった正方形のローテーブルの前に座らされた弘世。

 ひびきも同じく対面するように座ると、意を決したように話しはじめた。

 

「私ね、『願望』ってギフトを持ってるの。このギフトは自分が欲しいものがわかるスキルがあって、それで今朝高梨くんのことをスキルを通して見たら、とんでもなくオーラみたいなのが出てて光り輝いてたの!」

「つまり、林道さんの何かが俺を求めてるってこと?」

「うんっ! 少し話聞こえてたんだ。昨日ギフトの確認に行ったんでしょ?」

「そうだけど……」

「多分、そのギフトが私にとって今一番欲しいものなんだ。……それが何かはわからないけど、私の体が言ってるの……その力を私に使ってほしいって」

「そんな……」

 

 おそらく『鑑定』に近いギフトだと広世は感覚的に感じた。

 ただ、『鑑定』のように何のギフトを持っているのかわからないことから下位互換のようなギフトに思えた。

 

「だめ、かな……?」

「どうしよう……」

 

 弘世は迷っていた。

 冒険者になれなかったことから、自分のギフトは誰にも言わないようにしようと。

 

 しかし目の前のひびきは真剣な表情をしている。そして話したこともなかった相手を家に招いたくらいだ。

 弘世だってさすがにわかっている。女の子が男を家に上げることのハードルの高さを。そのハードルを飛び越えてまでひびきはお願いをしているのだ。

 

「私、高梨くんのギフト、絶対に誰にも言わない。もし言いたくなった時は、高梨くんに相談することを約束する!」

「わっ……」

 

 急に手を握られ、うるうるとした目で見つめられた弘世。

 

(これは罠だ、これは罠だ……いきなり手を握るなんて、あり得るわけ——)

 

「……俺が授かったギフトは『美容』って言うんだ」

 

(言ってしまったぁぁぁぁ〜〜!)

 

 広世はひびきの可愛さに負けてしまった。

 小さく柔らかい手の感触と近寄られることで感じた彼女の甘い匂いが脳を溶かし、抗えなくなったのだった。

 

 

 

 




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